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2022年12月29日

実戦セッティングマニュアル マーチR PD1988.12

PD1988.12

実戦セッティングマニュアル マーチR

味付けは自由自在
ブッシュの交換だけで
戦闘力は大幅アップ

ノーマルでも十分実戦可能

 今年は台風のあたり年だったようだけど、国内ラリーのBクラスにも、小型だが
強力な台風が発生した。それがマーチRだ。スーパーチャージャーとターボという
2つの過給器で武装したマーチRは、ミラージュ、ジェミニ、サニー、カローラ、
シビック、プジョーなどが群雄割拠するBクラスに登場し、デビュー戦のモントレー
88から早くもその並々ならぬ戦闘力を見せつけている。
 全日本ラリー戦のシリーズ結果からいえば、田口盛一郎選手が操ったミラージュが
チャンピオンカーということになるわけだ。しかし、マーチRがデビューした第6戦
モントレーのSSの結果を見ると、13か所あったSSのうち、実に8か所でマーチRが
ベストタイムをマークしている。そのスピードを実証したわけだ。
 まあ値段のほうも120万円台と手ごろだし、オシッ!来シーズンはマーチRで・・
という人も多くなっている様子。でも、ダイヤモンドも磨かなきゃ光らない、
どんなクルマだってうまくセッティングしてやらなければ、そのポテンシャルを
フルに発揮できないヨ!ということで、今回はそのセッティングについて
報告しよう。
 まず、基本的なセッティングについてニッサン・モーター・スポーツ・
インターナショナル技術課の永島勉さんに聞いてみた。サスペンションに関しては
永島「マーチRはラリーユースのクルマということでラインオフの状態からダート
走行が可能なサスペンションが装着されています。だから、ビギナーの方ならば
タイヤをラリー用に付け替えるだけで実戦参加も可能です。ただ、仕様としては
最大公約数のユーザーに合わせて、どちらかというと悪路での走破性を重視した
セッティングですね。ちなみにスプリングのバネレートはフロントが1・0~1・8
kg/mm、リヤが1・0~1・8kg/mmで、ショックアブソーバーも悪路での走破性を
高めるなど減衰力設定になっています。
 それに対して、コーナリング性能を重視したセッティングになっているのが、
NISMOのオプションパーツで、スプリングのバネレートはフロントが2・2~2・5
kg/mm、リヤが1・4~2・2kg/mm。ショックアブソーバーも、各ピストンスピード
の減衰力を国内のラリーコースに合わせた設定になっていて、こちらは、走破性を
多少犠牲にしてもコーナーリング性能を高めたセッティングになっています。
だから、ユーザーのレベルや走る状況によって、選択するといいでしょうね」

フロントの3自由度モデル

サスペンションに関しては、このほかに各ブッシュ類もNISMOのオプションパーツが
数多くそろっている。
永島「そのなかで、まず交換しておきたいのが、これはサスペンションのブッシュ
とはいえないかもしれませんが、エンジンのマウント類です。それといううもの、
よくエンジン・マウントの強化は、アクセルON時のエンジンのワインドアップ
現象を抑えて、トランクションロスを減少させるのに効果的と言われていますが、
それに加えて、サスペンションの性能をフルに発揮させる点でも、大きく影響して
くるからです。
 これは、地面とクルマの関係を図にしてみるとよくわかりますよ(図1)。
まずタイヤですが、これには弾性があってある程度自由に動きます。サスペンション
もそうですね。ショックアブソーバーで規制はしているものの、ここは動きます。
そして、エンジン・マウントも振動や騒音の吸収のためにゴムでできているため、
その変形による動きがあります。つまり、地面からエンジンまでには3つの要素の
動きがあって、これを3自由度モデルということができるわけです。
 さて、ここで問題なのはそのひとつひとつの動きの作用で、例えば、路面からの
衝撃などでボディが浮き上がろうとする場合、エンジンがそれを抑えようとします。
これはひとつのメリットなんですけど、反対にボディが沈みたいのに、エンジンが
浮いているというチグハグな動きも出てくるわけです。
 つまり、3つの自由な動きがあるために、メリットもデメリットも出てくるわけ
ですね。でもコンペティンションユースということを考えれば、できる限り
コンスタントに安定しているほうがいい。そのほうが、サスペンションの
セッティングも考えやすいし、その性能もフルに発揮しやすいわけです。ただ、
タイヤに関しては、あくまでゴムですから弾性はあるし、サスペンションも自由に
動かさなければならない。残るはエンジンのマウントなんですけれど、これは、
コンペティンションユースということならば、振動や騒音は犠牲にしても、
ある程度動きを規制しておいたほうがいい、ということなんです。
 エンジンとボディを一体化させ、3自由度を2自由度にしようというわけです。
マーチRの場合、軽量なボディとパワフルなエンジンのクルマだけにエンジン・
マウントの強化は、特にしっかりやっておきたい」
 これは、サスペンションの性能をフルに発揮させるためにも最低限やっておきたい
部分。そのうえで、各ブッシュ類の選択によるドライブフィールの向上や、ステア
特性のセッティングも考える。
 永島「まず、フロントですが、NISMO では、K=1200kg、K=1500kgの2種類の
トランスバースリンク・ブッシュ(図2-A)とコンプレッションロッド・ブッシュ
(図2=B)そしてステアリングラック・インシュレーター(図2=C)を用意しています。
それぞれの効果を説明しますと、まず、コンプレッションロッド・ブッシュは、
パワーのオン/オフや路面からの入力によるロワーアームの前後の動きを抑えます。
そしてステアリングラック・インシュレーターは、強化することによって、ステア
リングのレスポンスが向上され、操作フィーリングがリニアになります。
 さて問題なのはトランスバースリンク・ブッシュ。これはステアリングラック・
インシュレーターとの組み合わせ方によって、ステア特性を変えることができます。
例えば、ステアリングラック・インシュレーター、トランスバースリンク・
ブッシュとも強化した場合は、ラインオフ時の特性をそのまま残し、剛性感を高める
ことでサスペンションのレスポンスが向上します。(図2-ア) 
 それに対してトランスバースリンク・ブッシュだけを強化するとラック・インシュ
レーターの変化量のほうが多いわけですから、ジオメトリー的にトーアウトになって
アンダーステア方向、反対にラック・インシュレーターだけを強化するとトーインになり、オーバーステア方向になるわけです。
 ノーマルのブッシュも含めると、トランスバースリンク・ブッシュが3種類、
ラック・インシュレーターが2種類選べることからフロントに関してだけでも6とおり
のセッティングが可能です。でも、あまり極端にやりすぎるとクルマの動きも極端に
なってしまいますので、いずれも強化品を使ってトランスバースリンクをK=1200kg
にするか、1500kgにするかで選択するのがお勧めです」

リヤだけでも広範な自由度

リヤに関しても、ブッシュによるセッティングの選択範囲は広い。
永島「マーチのリヤサスペンションは、4リンク・タイプです。この4リンク・
サスペンションは文字どおり4本のリンクが、8か所のブッシュによって支持された
レイアウトになっていて、主にロワーリングが前後方向の動きを、そして角度を
付けて装着されているアッパーリンクが左右の動きを規制しています。ただし、
ただ単にサスペンションの動きを抑え込んでいるのではなくて、その動きをうまく
利用しようという部分もあるんですね。
 具体的に説明すると、ラインオフの状態からロワーリンクのブッシュよりも
アッパーリンクの動きを優先する方向でコーナリング時に横力を受けると、
アッパーリンクの動きにロワーリンクが引きづられ、4WSの同位相と同じ状態に
なって安定方向になるわけです。だから、セッティングの上でも各ブッシュの
剛性バランスを変えることで味付けを変えられる(図3)。
 例えばアッパーリンク側だけを強化すれば(図4-A)、同位相に動いてアンダーステア
(安定)方向になるし、ロワーリンク側だけを強化すれば(図4-B)サスペンションは
平行移動するだけで同位相とはならない。ラインオフの仕様が、もともと
アンダーステア傾向なので、それを考えると、アンダーが弱まり相対的に
オーバーステア傾向になるわけです。
 NISMOのオプションパーツでは、アッパーリンク・ブッシュがK=600kgとK=750の
2種類、ロワーリンク・ブッシュが1種類設定されていますから、ノーマルのブッシュ
も含めるとかなり幅広いセッティングができます」
 さらに、ボディ側かアクスル側のどちらか片方を強化すると中間的なセッティング
も可能だし、このブッシュ類は、ロワーもアッパーもすべて同サイズなので、逆に
して使うことができるそうだ。そうなると、かなり広範囲なセッティングができる
わけだが・・・・
永島「ただ、フロントと同じであまり極端な方向にセッティングするとクルマの動きも極端になってしまいますから、スプリングやショックアブソーバー、フロントとの
バランス、ドライバーの好みやコース状況に合わせてうまくセッティング
したいですね。
 ちなみにNISMOのオプションパーツをロワーリンク、アッパーリンクともに装着
した場合、アッパー側がK =750kgのブッシュだと、ほぼラインオフの特性で全体的
な剛性がアップし、K=750kgのブッシュでは、ややアンダーステア(安定)方向に
なります」
 いずれにしても、ブッシュ類をうまく使えばサスペンションのセッティングの
自由度はかなり広いというわけだ。

実戦的なセッティングは・・・

 さて、その実戦的なセッティングに関して、2台のマーチRを実戦投入している
チームNRSの高崎正博監督は、
高崎「まず、ボディですが、ノーマルアスピレーションのマーチを2年間走らせ、
また、サファリラリーにマーチターボを走らせた経験から、フロントはストラット
ハウスとロワーアームの取付部周辺、フードブリッジとフロントピラーの接合部
(図5)を補強しています。
 もともとマーチは思った以上に丈夫なクルマなのですが、スーパーターボになって
絶対スピードが上がっていますから、このあたりの補強は、しっかりやっておきたい
ですね。また、リヤに関しては、大桃千明、島田親吾のふたりのドライバーが、
実戦テストを行っていますが、2戦消化した現段階では、まだ問題はありません。
ただ、将来的には、やはりリヤのリンク取付部周辺の補強も必要になってくる
でしょうね。
 サスペンションに関しては、NISMOオプションのスプリングとストラットを基本に
各ブッシュ類を変えて、ドライバーの好みに合わせたセッティングにしています。
例えば、大桃車ではフロントのトランスバースリンク・ブッシュとリヤのアッパー
リンク・ブッシュをノーマルにしてどちらかというとオーバーステア方向の仕様。
島田車に関しては、フルオプション(トランスバースリンク・ブッシュK =1200kg、
リヤアッパーリンク・ブッシュK =600kg )となっています。
 ブッシュに関しては、ノーマル、オプションパーツのほかにノーマルアスピレーシ
ョンのマーチのオプションパーツも共通で使えますから、かなり選択範囲は広い
わけです。しかし、フルオプションにして不満があったら、タイヤサイズ、タイヤ
空気圧なども含めて専門家に相談するのがいいでしょう。
 また来シーズンのレギュレーションでは、スタビライザーの交換が、かなり自由
になると聞いています。そうなれば現状のリヤ・スタビライザー径は22mmですが、
18mmのマーチターボ用も使えるようになるので、ステア特性、ロール剛性とも
さらに細やかなセッティングができるようになると思います。いずれにしても、
よりコーナリング性能を重視したATSUGI製ショックアブソーバーの開発をはじめ、
これからやることはたくさんあるし、マーチRは、もっともっと速くなりますヨ!」

スラローム競技でも有望!!

 そのマーチR、国内ラリーのBクラスはもちろん、スラローム競技での活躍を期待
する声も多い。来シーズンのスラローム競技のレギュレーションでは、Aクラスは、
ターボ換算が1・4倍なので、マーチRは1302cc。わずか2ccオーバーして1300~
2000cc以下のAIIクラスになってしまう。そうなると、ライバルはスターレット
ターボやノーマルアスピレーションの1600ccツインカム勢となり、排気量的には
やや不利なわけだが・・・・
永島「丸和オートランド那須のテストでは、ウェット・コンディションでしたが、
EPターボより2秒近くも速かったというデータもありますから、AIIクラスでも
見劣りなく走れると思います。特に面白そうなのが、ジムカーナのAIIクラスと
ダートトライアルのCIIクラスですね。
 ジムカーナのAIIクラスでは、スターレットターボやノーマルアスピレーションの
MR-2、CR-Xなどがライバルになると思いますが、マーチRの場合は、ボディが
コンパクトな上、車重も軽いから小回りが効く。しかも、リヤがドラムブレーキで
サイドブレーキ・ターンにもよく使えますから、かなりいけそうですね。
 ダートラのCIIクラスは、ターボ換算が1・7倍で排気量が2500以下ということに
なり、やはりスターレットターボあたりがライバルとなる。この2車を比較すると、
公認最低重量が、スターレットターボは、1295cc×1・7で2202cc。2000cc以上
なので最低重量は890kgとなり、ウエートを積んで走らなければならないわけです。
 それに対してマーチRは930cc×1・7で1581cc。1600cc以下なので750kgとなる。
重量の点でマーチRのほうが140kg有利になるのでかなり面白い戦いが期待できる
と思いますヨ。エンジンをはじめとするチューンアップパーツ関係も、遅くとも
来年の1月か2月には、グループAの公認を取るために、すでに開発していますから、
シリーズ初めから走れますよ」
 急ピッチで開発が進められているマーチR、来シーズンは国内、海外のラリーを
はじめ、ダートトライアル、ジムカーナといろいろなカテゴリーで暴風雨を
巻き起こす大型台風になりそうな気配だ。

2022年12月29日 投稿 ダブルチャージクラブ ek-10stとやま

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Posted at 2022/12/29 19:39:44

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