
中国の大手ポータルサイト、網易(ネットイーズ)は4月29日、「日本人はなぜ、食事の際に多くの碗を使うのか?」と題する記事を発表した。和食でさまざまな形状の器を使うのは、料理をおいしく味わうために利にかなった方法であり、食事の作法も大切と紹介。さらに器や盛り付けに重きを置く日本の食文化は「視覚芸術でもある」として「賛嘆」し「感嘆」すべきものだと評した。
中国人が戦後、改めて日本食に接するようになったのは1980年代だった。まず、高級ホテルに和食店が進出。それ以外にも日本風の飲食店ができた。日本に留学して帰国し、居酒屋などを開く人もいた。アルバイトで覚えた店の形態や調理法を生かした。そして、牛丼店、ラーメン店さらに、おにぎりなどを販売するコンビニもオープンした。
日本料理には次第に、「西洋料理と比べれば中華料理に近いが、それでも独自の美味しさがある」とファンも増えた。さらに、若い女性を中心に「油が少ない。ヘルシーだ」との評価が高まった。
網易の記事は、日本料理における作法や盛り付け、器の多様さを強調した。まず、中華料理のように大皿から取り分けるのではなく、1人ずつ盛り付けられていることについて、「衛生面の理由」との主張を否定した。
中国では、自国の習慣の問題点を指摘する際、「よいお手本」として日本の習慣が挙げられる場合がある。例えば中国には、「たばこを吸う場合、まずは居合わせた人に勧める」という礼儀がある。禁煙運動が盛んになると「日本人はたばこを他人に勧めない。健康に害があるものを勧めるのは、礼儀にかなわないからだ」と紹介された。
大皿を取り分けることが肝炎などの感染リスクを高めるとの啓発運動に力が入れられた際には「日本人は衛生概念が発達しているので、個別に料理を供する」と説明された。
網易の記事は、日本料理が1人分ずつ盛り付けられ、それぞれの料理に別の器が使われ、さらに醤油などの調味料が添えられる理由について「食べ物の本来の味がまじりあって、互いに損ねるのを防ぐため」と説明した。
「箸」については古い時代に中国から伝わったが、日本料理には欠かせないものになったと紹介。さらに、日本人は箸の使い方にさまざまな作法を設けたとして、「箸を使って料理全体を強引にひっくり返す」、「食べ物に突き刺す」、「箸をなめる」などはいずれもタブーと解説した。
料理を膳に載せる場合にもルールがあるが、視覚上の美しさだけでなく、たとえば「味の薄い物は左、濃い物は右」との基本原則があるので、「最初に手をつけるのは、左側の皿がよい」と紹介。ただし、「1つの皿を空にして、次の皿を空にする」といった食べ方は作法に反しており「ごはん、汁、おかず」というように食べて行くのが「正確な食べ方」と注意した。
器については四角形、円形、舟形、五角形、さらに古風な容器を模倣したものなどあり、「優雅で上品。実用性と鑑賞性を兼備している」と評価した。
それぞれの器における盛り付けは、料理を単純に規則正しく置くのではなく、「非対称の美しさの精緻を極めていることが、容易に見て取れる」と指摘。しかし、技巧のための技巧ではなく「食べ物の自然な美しさ」を示していると解説した。
記事は、日本料理が容器を重視したり、美しい料理をさらに美しく見えるよう配置することには「賛嘆」し「感嘆」してしまうと表現。「人は日本の美食のとりこになる」と論じ、その理由を「単純に味覚を求めてむさぼるものではない。その上を行く、視覚芸術の享受でもある」からだと絶賛した。
**********
◆解説◆
中国人の食事のマナーは、日本人とはかなり異なる。まず、宴席などの場だが、大皿料理を取り分けて食べる。その際には、自分が取るだけでなく、同席者に「取ってあげる」ことが、「親愛の情」を示すマナーだ。
もともとは「取り箸」を使う習慣がなく、自分の箸で相手の料理を取り分けていた。上記にもあるように1980年ごろからは「衛生面で問題がある」との指摘があり、「日本人と同じように衛生面を重視」との理由で「取り箸」が奨励された。現在は、高級料理店の場合ならば、従業員が来席者それぞれの小皿に取り分けることが多い。
宴席における中国人のマナーは、日本人に比べれば「ざっくばらん」で「大まか」な面もあるが、「食事は皆でリラックスして楽しむもの」との尺度で見れば、“合理的”とも言える。
日本人として違和感を感じるのは、むしろ「日常的な食事のシーン」だろう。もちろん人によって異なるが、日本では「不可」とされる箸の使い方も珍しくない。また、背中を丸めてのいわゆる「犬食い」、ことさらに咀嚼(そしゃく)の音を響かせたり、食べ物を口に入れたまましゃべるなどもよく目にする。
かつては社会においてある程度以上の階層の人は「振る舞い」や「作法」に気を使ったが、文化大革命期などには「優雅な振る舞い」を示すと「反動分子」として糾弾される恐れがあったので、人々が旧来からの礼儀作法を放棄したことが、現在の「食事の作法」にもつながっているとの見方もある。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:123RF) :サーチナ 2015-05-03 10:27
Posted at 2016/11/06 08:15:24 | |
トラックバック(0) | 趣味