
1月29日の日銀のマイナス金利導入には正直驚きました。その後、日本のマイナス金利導入を受け、ヘッジファンドなどの間で中国人民元が切り下げられるとの観測も広まっているようです。
年初からの筆者「経済・マーケット展望セミナー」のなかでも、今年のリスク要因として、「人民元切り下げ、もしくは変動相場制移行による人民元大幅安」の影響を挙げています。
そこで、仮に人民元が大幅切り下がった場合、日本経済への影響はどうなるのでしょうか?セミナーの中でも触れている仮説ですが、いくつか考察してみたいと思います。
■ 日本企業業績への影響
日本の企業、特に中国でビジネス展開し収益を挙げている製造業、非製造業の業績に悪影響が及ぶと考えらえます。例えば経常利益の1~3割程度を中国で稼ぎ出している企業があったとして、人民元が大幅に切り下げられれば、円換算した利益水準も圧迫されるでしょう。さらに、人民元が大幅に切り下がった場合、人民元以外の通貨に対しても円が上昇することで、日本企業の大幅減益要因となる可能性もあります。
■ 爆買いへの影響
昨年の流行語大賞になった「爆買い」にも少なからず影響が出ると思われます。
アベノミクスの中にもクールジャパンや観光立国という目標があり、その政策の効果が如実に表れた部分だったと思います。ただし、実際に中国からの訪日客が相当に増えている理由としては、中国人民元が相当に割高になっていることが主要因と考えています。その強くなった元を持って日本で「爆買い」をするというトレンドが出来上ったように思います。よって、仮に中国人民元が大幅に切り下がった場合は、日本への支出の漏出も抑えられ、いわゆる「インバウンド消費」も一服入れる可能性があります。
■ 物価への影響
仮に中国人民元が大幅に切り下がった場合は、円が対元、対他通貨への上昇する結果、輸入物価が押し下げられ、物価の押し下げ要因になると考えられます。
■ 消費増税への影響
上述のように、人民元の大幅安となれば、企業業績悪化、円高、爆買い縮小という可能性が強まり、アベノミクスの最大の成果ともいわれる円安と株高は修正されることになるでしょう。
さらに物価に関しても2%のインフレターゲットは遠い過去のものになってしまうかもしれません。それを避けるために来年4月予定の二度目の消費増税に関しても先送り云々の議論が台頭する可能性があると考えています。
これまでいくつか見て来たように、もし人民元が大幅に切り下がったら、日本経済へのインパクトは大変大きなものになると思います。
隣の大国の動向に関して、ビジネス上も資産運用上も、これまで以上に注意深くウォッチしていく必要があるでしょう。(執筆者:阿部重利)
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執筆者:阿部 重利【あべ しげとし】
■ 経済産業省認定 経営革新等支援機関 ヒューマネコンサルティング株式会社 代表取締役
■ 保有資格:BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ、CFP(R)、金融知力インストラクター、DCアドバイザー、年金・退職金総合アドバイザー、心理カウンセラー、キャリアコンサルタント、ワークライフバランスコンサルタント
■ 活動歴:金融機関での実務経験を生かし、経営顧問・コンサルティング活動の傍ら、全国各地で講演会をはじめ、年約150本の企業研修、講演会、セミナー、などを精力的にこなしている。そのパワフルでユーモア感のある語り口と説得力は各方面から好評を得ており、これまでコンサルティングや研修、講演を受けた企業人の知識やモチベーション・スキルアップに大きく貢献している。
■ 著作に、『実践 ワーク・ライフ・ハピネス2~成功する会社は仕事が楽しい~』(万来舎)、『働き方が変わる!会社が変わる! 実践ワーク・ライフ・ハピネス』(万来舎)、『コモディティ投資入門』(アスペクト社)、ほか、『フィナンシャル・アドバイザー』誌(近代セールス社)、『ファイナンシャル・プラン』誌(きんざい)等多数。 :サーチナ 2016-02-25 18:06
Posted at 2016/12/14 11:21:31 | |
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