前々回、
前回に引き続き、空力の話です。
前回フロント、サイド、リア(下側)のスポイラーの話を書きましたが、話の流れからすると当然次はリア(上側)のスポイラーになりますね。
その前に言葉の定義をハッキリさせておこうと思います。ヒトによって使い方が異なっているみたいなんですけど、僕はリア上側についている空力デバイスについて、「スポイラー」と呼ぶものは『主に整流効果を狙ったもの』、「ウイング」と呼ぶものは『ダウンフォース獲得を狙ったもの』と使い分けます。
さてリア上側の空力デバイスを考えないとならない理由です。クルマは空気を押しのけて走っているワケですが、押しのけられた空気は車体に沿って後ろ側に流れていきます。そしてクルマの一番後ろまで来てしまった空気はその後どうなるかというと、空気が押しのけられ希薄になった空間に、渦を巻くようにして流れ込みます。
この渦を
カルマン渦と呼びます。
この言葉、大事です、試験に出ます。
カルマン渦を実際に見てみたいと思ったら、今晩お風呂に入る時に次のような事をしてみましょう。
まず湯船の中で掌を指を伸ばした状態でまっすぐ立て、ちょうど指の付け根くらいまでがお湯の外になるようにします。
続いて掌を立てた状態のままで、掌側、あるいは手の甲側に動かしてみましょう。
指の付け根あたりで、お湯が渦を巻くのが見られると思います。それがカルマン渦です。
カルマン渦がクルマの走行にどんな影響を及ぼすかって?
レースの場面で、
ジェットストリーム スリップストリームという走法を見た、あるいは耳にしたヒトは多いと思います。あれは前走車の作ったカルマン渦(が起きる原因となる空気が希薄な空間)に後ろのクルマが引き込まれる事で成り立つ走法です。ですからカルマン渦がなくなれば後ろのクルマは有利な点がなくなるわけで後ろに付かれても一安心……
いや、そうじゃなくて ww
空気が希薄な空間に引き込まれるのは後ろのクルマだけではありません。その空間を作った自車も引き込まれているのです。前に進んでいるクルマに後ろへ引き込む力が働いている、つまりその分余計なチカラを使わなければならない事になります。これはエネルギーの無駄遣いですね。
あと、風切り音もカルマン渦ができる事が原因といわれてます。
カルマン渦を発生させないような車体を作ればこの問題は解決するのですけれど、本気でそうしようと思ったら車体を潜水艦のボディ(涙滴型)のようにしないとなりません。最高速チャレンジとか燃費競争用の車体ならともかく、市販車でその形を取る事は事実上無理と思われます。
ですから考え方をちょっと変え、発生するカルマン渦の影響を少しでも減らすような工夫をしようと思うわけです。
そこでリアのスポイラーですよ。
セダンタイプに見られるトランク上のスポイラーは、車体後端まで来て渦を巻こうとする空気を車体から引きはがし、まっすぐ後ろへ流してやる事で発生するカルマン渦を小さくしようという考え方です。ダウンフォースを獲得しようという意図のウイングとは考え方、および形状が異なります。
特に僕が乗っているアクセラを初めとする FF のクルマで、後輪に必要以上の荷重をかける意味、ないでしょ。後輪にかかる荷重を増やしたら、相対的に前輪にかかる荷重が減る、つまりトラクションがかかりにくくなります。
これが例えば車体の中央(もしくはそれより前)にウイングを設置するなら意味はあるかも知れません。ですけどその位置にウイングを設置したら改造申請をしないと公道は走れないんじゃないかな。
第一カッコわるいでしょ www
一方ハッチバックタイプのクルマの場合です。ほとんどのハッチバックタイプのクルマにはリアウインドウにワイパーが付いてますよね(確か先代シビック type R には付いてなかった気が)。あれは豪華装備ではなく、必要なんです。車体の後ろで発生したカルマン渦が雨粒やはねた泥を巻き込み、リアウインドウを汚すからです。
これを防ぐため、ハッチバックタイプのクルマには、ルーフスポイラーとかテールゲートスポイラーとか呼ばれる、庇みたいな形のパーツを付けます。これによって巻き込まれる空気が後ろへ流され、スポイラーの後端で小さなカルマン渦が作られます。意図的に作られた小さなカルマン渦によって大きなカルマン渦ができにくくなるワケです。
こうしてリア側で空気をきれいに流してあげると、その分前からの空気の流れもよくなり、車体前部、それに連れられて車体下部の空気の流れもよくなるというおまけ付きです。
カルマン渦といえば、フロントのスポイラーの下部分、エアダムと呼ばれる部分でもカルマン渦を発生させています。ココにカルマン渦を発生させる事で車体を下に引き込み、ダウンフォースを得ているワケです。
最近グランドエフェクターという車体下部に取り付ける空力パーツが出てますけど、あれも名前のとおりにグランドエフェクトを利用しているとは思いがたいんですけど(車高が高すぎる)、カルマン渦を発生させてダウンフォースを得ているとすれば分からないでもないです。
さて、三日間に渡った空力の話、ぢつは前フリです。
(;・`д・´)な、なんだってー!!(`・д´・(`・д´・;)
と思ったアナタ、明日のブログは見逃せませんよっ !! <ぉぃ
Posted at 2007/08/09 17:23:00 | |
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クルマの技術の話 | 日記