さて、すったもんだの挙げ句に合法と裁定されたブラウン GP、トヨタ、ウィリアムズのディフューザー。
控訴していた BMWザウバー、フェラーリ、レッドブル、ルノーの 4 チーム、そしてその他の 3 チームはこの裁定をどう思っているでしょうか?
例えばルノーのフラビオ・ブリアトーレ代表は
「アイルトン・セナの死のあと、マシンに一定以上の空力効果を盛り込まないというのが鉄則だった。しかし突然、今はそれが適法になってしまった」
と語り、
F1 が危険な道を転げ落ちていると批判したそうです。
これだけ読むと、ルノーは上の 3 チームが使っているディフューザーの取り入れには反対のようです。
しかし実際はこの裁定が下される前に、「チームは問題のディフューザ設計を開発する用意がある」と
語っています。つまり取り入れ自体に反対はしていません。
他のチームもほぼ同様と思われます。
今回の件だけではないですが、このようなルールのスキマを狙うやり方、日本人は好かないようですが、欧米の人には当たり前のようです。
日本人は「ルールに書かれていなくても、やっちゃいけないと思われるような事はやらない」と考えがちですが、欧米の人は「ルールで『やっちゃダメ』と書いてある事はやっちゃダメ、でも、書いてなければやっていい」と考えるようです。
F1 ではないですが、そんな考え方が垣間見える例を二つほど。
NBA の元スーパースター、マイケル・ジョーダン氏はご存知でしょうか? あの方の名前を冠したバスケットシューズが作られるほどの人気っぷりでしたが(当然宣伝も兼ねて、ご本人もその靴を履いて試合に出ていました)、そのシリーズの初めのシューズ、実は NBA の規定に違反していたんだそうです。で、罰金を払う事を命じられました。
その次の試合のとき、どうしたと思いますか? 今度は違反しない靴を用意したと思います?
正解は、「あらかじめ罰金を用意してその靴で試合に出た」です。
日本人ですと「『罰金を払え』と言われたなら履いちゃいけないんだな」、と思うのでしょうが、この方は「罰金を払えば履いていい」と考えたんですね。
もう一例。
競泳の泳法って、四種類ありますよね(自由形、背泳、平泳、バタフライ)。この中で最も新しく確立した泳法はバタフライです。オリンピック競技として採用されたのが 1956 年のメルボルンオリンピックから。
ではそれまでバタフライという泳ぎ方は無かったのか? といいますと、実はありました(現在とは少々違う泳ぎ方ですけど)。で、オリンピックでその泳ぎ方をしている選手もおりました。では、その選手はどの種目に出ていたのでしょう? 自由形? 違います。
正解は「平泳」です。
その当時の平泳の泳法規定は、
「うつぶせで、左右の手足の動きが対称的な泳法」
というものでした。
ここでちょっとバタフライの泳ぎ方を思い浮かべて下さい。
上に書いてある当時の平泳の泳法規定になんにも引っかからないでしょ? www
で、最初にバタフライの手の掻き方でオリンピックに出場した選手が出てきたのが 1928 年。その後じわじわとこの泳ぎ方をする人が増え、ついにはほとんどの選手がこの泳ぎ方をするようになったので独立した競技とした、ついでに平泳のほうにバタフライ泳法で泳ぐ人が出られないようにそっちのルールも改正した、という流れとなっております。
F1 においても中心となっているのは欧米の人達ですから、考え方の根本は一緒です。ですので、ルールのスキマを狙った今回のディフューザー論争、初戦と第二戦の結果が取り消される事は無いだろうと思ってました。まぁ全面 OK になるとも思ってませんでしたけど。
その代わりといってはなんですけど、あちらの方達、ルールに『やっちゃダメ』って書いてある事をやっちゃうともんの凄い勢いで叩き潰しにきますよ。
どんな感じに潰しにくるのかは、舞台は F1 ではありませんでしたけどトヨタさんがよーく知っていると思います(爆
Posted at 2009/04/18 19:17:31 | |
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