ソニック・ソリューションズは
「開発元の米QUALCOMMとの契約期間が終了したため」という理由で、e-メールソフト「Eudora」日本語版の販売を 9 月 28 日に終了しました。
Eudora というと、10 年以上前くらいからインターネットを利用していたヒトならばかなりの割合で利用した経験があるのでは? と思うほど、一時は席巻した e-メールソフトですねぇ。メールが来たときの独特の着信音を思い浮かべるヒトもおられるんじゃないでしょうか。当然僕も利用していたことがあり、ちょっと懐かしくなったのと、特に日本での数奇な運命が目につきましたのでメモ代わりに一本書いとこうと思います。
Eudora は元々はイリノイ大学にいたスティーブ・ドーナーという人が研究の一環として開発したモノです。これは画期的なソフトで、それまで unix コマンドを使ってやり取りしていたメールが PC で気軽に使えるようになりました。
開発は進んでちょこちょこと改良されていきましたが、1991 年、クアルコム社が Eudora を買い取ります。これによってそれまでのフリーであった Eudora と、製品として販売している Eudora(当初は Eudora Pro って名前でした)とに分かれる事になります。
日本ではフリーのほうの Eudora を、中田了氏が日本語化して Eudora-J という名前で Macintosh 上で動くアプリケーションとして公開しました。
この Eudora-J、非常によくできたアプリケーションでしたが、元々の Eudora がフリーウェアとしての開発がストップしてしまいましたから、後発の e-メールソフトにシェアを食われ、衰退していきます。
で、Eudora Pro (その後 Eudora と改名)に乗り換えるヒトも多かったんですが、この頃の Eudora には競合ソフトと較べて欠点がありました。
一つは複数の e-メールアドレスを扱うのが苦手だった事。これは元々インターネットがこんな形で広まると思っていなかったからだと思われます。最初はソフトウェアの設定をアドレス毎に作製して、それを起ち上げる、というスマートではないやり方で対応してました。後に複数アドレスに対応した版がでましたが、それが実装された最初の版が、自分が今どのアドレスでメールを書いているのかが分かり難いもので、実際僕は職場のアドレスとプライベートなアドレスを取り違えてメールを送った事が何度もあります ww
もう一つ、最初は欠点ではなかったはずなのですが、無理矢理欠点にされてしまった部分があります。その原因をつくったのは他ならぬ
マイクロソフトです。
マイクロソフト、初めのウチはインターネットに乗り気ではありませんでした。例えば Windows 95 がでた当時、Windows がインストールされたマシンを起ち上げると、デスクトップには "マイクロソフトネットワーク" へつながるショートカットがあった事を覚えている方もおられると思います。マイクロソフト陣営はインターネットではなく、自社独自のネットワークを用意して、ユーザーをそこへ囲い込もうとしていました。これはとっても不評で、程なくマイクロソフトはインターネットを利用する環境を用意しました。それが "Internet Explolar" というブラウザと、"Outlook Express" です。
で、前にも書いた事がありますが、あの会社はお行儀が悪くて、それまであった規格を平気で無視します。ブラウザでは HTML を独自に拡張したり、e-メールではリッチテキストをデフォルトで送る設定にしていたりします。
これが最初は不評の嵐だったんですけど、シェアの高さで押し切ってしまいます。すると使っていくうちに便利になっていき、リッチテキストに対応していない e-メールソフトウェアのシェアは食われていく、という流れになっていきました。
Eudora は当初、それまでの規格通りにリッチテキストに対応していなかったので、この流れに乗り遅れました。また、この二つは OS と同時にインストールされますから、後からわざわざ買ってきてインストールしなければならない Eudora に対して有利に働きました。
そんな事も手伝い、Eudora のシェアは回復する事もありませんでした。昨年クアルコム社は、次期 Eudora をオープンソース化する事を明言、現在 penelope という名前で
開発が続いています。
さて日本においてですが、Eudora Pro から後の Eudora は、当初クニリサーチインターナショナルという所が販売権を持っていました。その販売権を 2002 年に買い取ったのが
オン・ザ・エッヂです。
この会社はその後改名し、
ライブドアという名前になりました。そう、あのライブドアです。
そして二年前のあのライブドア事件、あれで Eudora の販売低下に拍車がかかりました。会社などで PC を一括購入・インストールするソフトも指定する際、Eudora を入れてくれと頼むと、「ウチの会社は今あそことは取引できません」と断られるという始末です(実話)。
その後販売権はソニック・ソリューションズに引き渡されましたが、昨年のオープンソース化宣言と今回の契約終了によって、日本での Eudora は消えゆく運命となりました。
Posted at 2007/10/05 12:27:30 | |
トラックバック(0) |
PCねた | 日記