
こんばんは。
「2024年も最後の一日となりました」というブログを作っている間に年が変わってしまいました。新年、明けましておめでとうございます。
さて、私のPBY32グロリアに搭載されているVG30DETエンジンですが、基本的なメンテナンスを定期的に行うのみで、出力向上を目的とするチューニングの類やエンジンの分解整備(オーバーホール)といったことは行ってきませんでした。
現状、特に問題が生じているわけではないのですが、エンジンオイルパンからのオイル滲みが漏れに近くなってきていることや、今後、エンジン本体の加工ができる職人の数も更に減っていくであろうこと、また、純正部品の欠品も進んでいくことは間違いないであろうことなどから、熟慮の上、数ヶ月の工期を見込んで、エンジンのオーバーホールを行うことに決めました。
これまで、実はエンジンのことについては意外と無関心というか、その車種に搭載されている中で最高の性能を持っているものを選んでおけば、とりあえず後悔はしないだろうという考えが支配的だったことも事実なのですが、最近は少し大人になったのか「意外とそうでもないのではないか」という考えに変わってきたところがあります。
その考えに至らせてくれたのは、他でもなくもう一台の愛車であるE350TDです。
これは、前期型のE550セダンからの乗り替えであり、E550はAMGを除けは最高の性能をもった、M273エンジンを搭載していました。このエンジン、大排気量の特性も生かしてカタログ燃費と実用燃費の差が非常に少ないという意味で、非常に優れたエンジンでした。
【M273エンジン】
5461CC V型8気筒DOHC(自然吸気)
最高出力:285kW(387PS)/6000rpm
最大トルク:530Nm(54.0kgm)/2800~4800rpm
使用燃料:ガソリン(ハイオク)
しかしながら、現在乗っているE350BlueTECステーションワゴンが搭載するディーゼルエンジンのOM642は、最高出力こそガソリン車のV6およびV8モデルからかなり落ちるものの、最大トルクの値や高トルクを発生する回転数の低さから、実用性ではピカイチと言えるもので、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの性質の違いだけでなく、自分の使用環境にあったエンジンを選ぶということを真剣に考えるとすると、エンジン選択というのも奥深い世界だと思うようになりました。
【OM642エンジン】
2986CC V型6気筒DOHC(ターボ)
最高出力:185kW (252PS)/3600rpm
最大トルク:620Nm (63.2kgm)/1600〜2400rpm
使用燃料:軽油
そのようなことから、Y32グロリア/セドリックに搭載されている5機種のエンジンのうち、VG30系のエンジンについて少し考えて、2024年を終わろうと考えました。
言うまでもないことですが、Y32グロリア/セドリックにはVG30DET(ツインカムターボ)、VG30DE(ツインカム自然吸気)、VG30E(シングルカム自然吸気)の3種類の3000CCエンジンが搭載されています。
この3種類を性格づけると、VG30DETがトップレンジ、VG30Eがベースモデル、VG30DEがその中間という考えが一般的であろうと思いますし、車両のグレード設定、特にGT系ではトップグレードのアルティマがVG30DET、ミドルレンジのSVがVG30DE、ボトムラインのGT(及びGT-S)にVG30Eというのが当初の設定でした。
なお、後期ではGT系にVG20Eも追加されますが、前期ではこの3グレードに実用上問題になるようなレベルの装備差もなくGT系は全車を3000CCとしたことで、場合によっては運転手付きで使うことも想定されるブロアム系やシーマとは異なり「専らオーナー自らが運転する最上級の車種」という位置付けを明確にしたということでした。
※他の高額車種ということでは、性格の違うGT-RやZは別にして、INFINITI Q45の立場はどうするんだ。という気もしますが…
【VG30DETエンジン】
2960CC V型6気筒DOHC(ターボ)
最高出力:255PS/6000rpm
最大トルク:35.0kgm/3200rpm
使用燃料:ガソリン(ハイオク)
【VG30DEエンジン】
2960CC V型6気筒DOHC(自然吸気)
最高出力:200PS/6000rpm
最大トルク:26.5kgm/4400rpm
使用燃料:ガソリン(ハイオク)
【VG30Eエンジン】
2960CC V型6気筒SOHC(自然吸気)
最高出力:160PS/5200rpm
最大トルク:25.3kgm/3200rpm
使用燃料:ガソリン(レギュラー)

実際に、エンジンの格付をする際に当時は特に重要視されていたのが最高出力であるわけですが、3機種の特性をプロットすると、このようになります。
あくまでカタログ上の比較ですので、実際の走行とは異なるところがあるものの、重ねて見ると意外に面白いとも言えます。
最高出力では40PS差のあるVG30DEとVG30Eですが、実は4000rpm付近までは非常にいい勝負をしている様子が伺えます。ここから先、ツインカムの利点である高回転の伸びが影響して最高出力では差が開くわけですが、常用域については、この表を見る限り「それほど差を体感しないのでは?」とも思います。

次に、一般的にエンジンの扱いやすさを考える指標と言われるトルク特性については、このようになっています。
これもVG30DEとVG30Eは、3200rpmまでは非常に接近したところにいます。このあとの粘り強さでVG30DEに価値があるわけですが、常用域のトルクについてはほとんど差を感じないようにも見えます。
実際に、わずかながら乗り比べた経験でも、VG30DEとVG30Eに実用上の目立った差は感じることがなく、使用燃料はVG30DEがハイオクなのに対しVG30Eはレギュラーという違いもあり、実用上ではVG30Eが優位とも言えます。
更には、後期型ではVG30DE系には油圧ブレーキブースターが継続搭載されましたが、VG30Eでは撤廃が進んでおり、この点でも長期的に見ると不安の種が一つ減ったという見方ができます。
Y32系は、シーマやレパードJフェリーも含め、サイズの接近しているスカイラインやローレル更にはFFレイアウトのマキシマとの差別化の観点からも、VG30系とVH41を主力とし、販売の主力となるグレード間の装備にもそれほど差をつけなくすることで、上級車種としての位置付けを明確にする狙いもあったようです。
しかしながら、モデル後半になるとユーザーの思考も実用的なものになったことやコスト削減圧力もあり、エンジン出力的には妥協しないお買い得仕様というものも明確に求められるようなったことから、VG30Eの性能と経済性(製造原価とランニングコスト)が見直されたとも言えるかと思います。
この流れは以降も顕著になっていき、Y33では前期こそ3000CCのお買い得仕様としてVG30E搭載車がそれなりの存在感を持ったものの、後期ではVQ25が登場し、VG30E搭載車よりも安価に設定されたことから、流石に旧世代となってきたVG20EやRD28の整理と併せ、お買い得仕様は2500CCで用意するという流れが明確になったとも言えますが、2500CCと3000CCという接近したエンジンラインナップもそれなりの悩みをもたらしたようです。
この近い性能を持ったエンジンを同じ車種に搭載してラインナップを形成するという点では、トヨタも日産もそれなりに苦心したようで、日産ではFR用エンジンがVQに統一されたY34でも、NAエンジンではVQ25とVQ30の違いを出すのに苦労した上に実用燃費では使い方によってはVQ25のほうが悪くなるケースも有るなど明確化も必要となった結果、Y50フーガからはVQ25は継続するものの、VQ30に代わりVQ35として2500CCモデルとの差を明確にし、排ガス規制に対応できないターボモデルの代わりにはV8のVK45というように、エンジンの上では明確に差をつける方向に動いています。
これは、クラウンやマークXも同じで、当初は2500CCと3000CCのラインナップだったものが、途中から3000CCよりも3500CCをメインに据える傾向が出ましたが、クラウンの場合はハイブリッドモデルの存在や、2500CCをレギュラーガス標準にするなどの戦略の違いもありました。
さて、翻って現在ですが、排気量違いのエンジンを積極的に用意するというよりは、エンジン車ではV37スカイラインのようにベースエンジンは同じで補機類の仕様や制御プログラムで特性を変えたり、純エンジン仕様とハイブリッド仕様に分けるといった形で差別化を図っている印象です。
電気自動車では、より出力を上げることができるという点ではモーターの違いというよりはバッテリーの違いで差別化を図るようになるのでしょう。しかしながら、研究中の走行中ワイヤレス給電(DWPT)が実用化された日にはどうなるのか、それよりもほとんど人間は運転しなくなり、クルマの出力を気にすることが過去のものになるのか。先のことはわかりませんね。
Posted at 2025/01/01 01:01:39 | |
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