カタログ話(特別仕様車編)、今回はY32セドリック・グロリアの後期を取り上げることにします。本当は前期の特別仕様車からあまり時間を置かずで取り上げる予定が、私事情でしばらくの時間が過ぎてしまいました。そこは個人のマイペースということでご容赦願うということで。
参考までに
前期のリンクを貼っておきます。
Y32は、1991年(平成3年)6月に登場。
いくつかのバリエーション追加、特別仕様車の発売を経ながら、ちょうど2年後となる1993年(平成5年)6月にマイナーチェンジを受け、後期に移行しています。
バブルの恩恵を最大限に受けて登場したものの、それまで経験したことのない景気後退の波を被ることにより合理化を進めた、それがこのマイナーチェンジの最大かと思います。
また、グランツーリスモ、ブロアム、クラシックの3シリーズで登場したものの、グランツーリスモが想定以上に好評となる一方、ブロアム、クラシックはその影響を受ける状況となったことで、クラシックはブロアムに統合される形で廃止。ブロアムも外観等、グランツーリスモに寄せられる、そんな内容でもありました。
そんな後期の特別仕様車ですが、マイナーチェンジ後約半年を経過した1994年(平成6年)1月に登場しています。60周年特別記念車の登場からはちょうど1年経過という事で、重なる部分もそれなりに。
今回カタログをご紹介するのは、この時登場した3仕様の内、次の2仕様となります。
先ずは、グランツーリスモSII。掲載はセドリックです。
【ベースグレード】グランツーリスモ
【追加装備】
・ヘリンボーン柄モケットシート地
・運転席パワーシート(スライド、リクライニング、リフター)
・運転席ランバーサポート(電動式)
・CDプレーヤー
・16×61/2JJ BBS製アルミロードホイール
シリーズ最廉価となるグランツーリスモをベースに豪華装備を追加しています。
やはり最大の目玉は、BBS製16インチアルミホイールと断言してしまいます。Y32後期では、当初グランツーリスモシリーズの最上級、アルティマXに設定され、こちらに流用された形です。
BBS-RGと名付けられた製品ですね。
80年代後半に登場し、かなりの人気を集めたホイールで、他車ではオプション設定される事例も多数。この時期には後継となるRGIIも登場していたものの、RGも根強い人気がありました。私も憧れた一人でありまして、後年仕様違いを含めてかなりの本数を集めるに至ります。
この仕様で当時のお値段が315万円。
ベースとなるグランツーリスモが298万円ですから、17万円高でこれだけの追加はかなりお買い得感が高い印象を受けます。一つ上のグランツーリスモSは326万円で、こちらとの差は確かマルチリモートエントリーの有無くらいだった筈。(うろ覚えで書いています)
BBS-RGは、市販品も純正品も結構高いお値段が付けられていましたから、Y32の場合は標準アルミの差額とはいえ、お買い得感はかなり高かったように思います。
ここでマイナーチェンジにおける外観の変更内容について触れると、グランツーリスモ系は、シリーズ全体に共通するテールランプの変更もさることながら、スモールランプとターンシグナルの位置変更が一番の識別点かと思います。
この変更、個人的にはマイナー後の配置に一票を投じます。70・80クレスタ等を見てきた身にとっては、フォグランプの隣にはターンシグナルというのが受け入れ易いんですよね。下側のレンズをフォグ&スモールにすることで、クリアレンズで統一というのも一つの主張ではありますけれど。
次の特別仕様に移ります。もう一つは、ブロアムAVII。こちらはグロリアでの掲載となります。
【ベースグレード】ブロアムJ
【追加装備】
・AVシステム
・CDプレーヤー(AVシステム一体型)
・コンソールカセットデッキ
・オゾンセーフフルオートITエアコン&オートピュアトロン
・リヤアームレスト内蔵コントロールスイッチ
・照明付フードマスコット
・205/65R15 94Hタイヤ&15×6JJアルミホイール
こちらはマイナー前はクラシックSV相当だったものが、マイナーを機にブロアムJに名称変更された最廉価仕様がベースとなります。
こちらの最大の目玉は、AVシステム。まだまだGPSナビが高価だった時代ということで、ナビレスでの設定とされています。
エアコンとオーディオを一体化した仕様は、当時も今も経年での故障が懸念されるところですが、当時の最先端かつ高級車ならではの装備ということで十分な商品力がありました。今に至るセンターディスプレイの先駆けという見方もできるかと思います。
ディスプレイ周辺のスイッチと画面のタッチスイッチを併用させる操作性には、当時否定的な評論も少なくありませんでしたが、その後の推移からすると、判定結果は明らかと言えそうです。多機能をコントロールするには、こうした形でしか成立し得ないでしょうね。
その他の追加装備は、15インチアルミホイールに照明付フードマスコットということで、上級仕様に外観を整えつつ、最新鋭のインパネで高級を実感させる、そんな仕様ですね。隣のお姉ちゃん、後席の同僚や上司を喜ばせるに足る機器という書き方をしてもいいでしょう。
これでお値段は325万円。標準のブロアムJが299万円、ブロアムが335万円、共にAVシステムは無での価格ですから、これまたお買い得感は高く。
両仕様の外には、ブロアムJをベースに、前期で設定のあった15インチ鍛造アルミホイールにCDプレーヤー等を追加した、ブロアムJIIがあったようですが、残念ながらカタログ不存在となります。
こちらの価格は310万円だったようです。
で、実は当時一番いいなと思えたのは、ブロアムJIIであったりと。
ここでブロアム系の変更についても触れてみます。
ブロアム系の変更の主目的は、先に書いたとおり、グランツーリスモとの共用率を上げること。その結果、ライトが大型化される一方、グリルは小型化されています。個人的には前期のスッキリ感に票を投じたいところですが、後期も否定するほどではなく。
インテリアは、この時期らしい設定色の削減が大きいですね。前期からは、マルーン系のブラックチェリーが落とされています。
といったところで、いかがだったでしょうか。
登場当初はツインカムやツインカムターボの上級グレードが前面に出てアピールしたY32も、後期ではモデルライフ後半ということもあって、こうした廉価グレードをベースとした特別仕様車が販売の中心となりました。
その点は、当初はマジェスタを前面に出しながら、徐々にロイヤルが主力となったクラウンと基本的な軌跡は同じと言うことができます。
この時期のクラウンは、有名な140(何が有名かは書きますまい)、ということで、Y32は販売の点で善戦していました。クラウンは140ロイヤルをマイナーチェンジする際に前代となる130のテイストを復活させることで盛り返しを図りますが、Y32も負けないくらいの根強い人気がありました。それを支えていたのは、今回取り上げた特別仕様車の的確さが大きいように思います。
失礼を承知しながらで書くと、日産にしては珍しく勘所を抑えた、実に巧みな商品だったように思えて仕方ないのです。
当時も今も、この国では本当の高級よりも、ちょっとした高級感の方が喜ばれやすく、かつ財布の紐も緩めてもらい易い気がします。このちょっとした高級感は、時代によりその対象が変わるのですけれど、この当時のBBSやAVシステムは、その対象だったのではないでしょうか。
ここから四半世紀以上の時を隔てた今、個人的主観の前提で書いてしまうと、クラウンは新たな高級車像を確立できないままに、これまで築き上げた伝統を否定し過ぎて、また迷走と呼べる状態と認識しています。それはとても残念なことなのですけれど、さらに残念至極なのは、他社に迷走の間隙を突けるだけの商品が既に存在しないことです。
今の日産は、それを求めるのすら酷に思える状況に至ってしまいました。スカイラインこそ、厳しい中での奮闘と思えるものの、セドリック/グロリアの後継となるフーガに至っては、モデルチェンジどころか、いつまで続くのかという、瀬戸際にも思えます。
元々は、売れれば利潤も大きいセグメントだった筈なのですけれどね。。。
【車両価格の引用元】
・特別仕様車:Motor-Fan.jpの歴代モデル・グレードより(リンク)
・標準仕様:月刊自家用車誌掲載の新車価格表より