ご無沙汰しています、銀匙です。
ええっと、昨年まではコロナに怯えたり罹ったり、会社から見捨てられるような大病にかかって一世一代の大手術を受ける羽目になったりと散々なもんでしたが、どうにか厄の山場も過ぎたようでして。
それで久しぶりにネットで中古カメラの様子を見たんですが、すっかり様変わりしてますね。
とにかく古いレンズが無くなってる。無くなってるから値段も上がってる。
まぁこれは歴史的な円安を政府が放置プレイしてるから訪日外人が買い漁っていったのかもしれません。
で、私はというと一旦手放していたα7系のフルサイズミラーレスをもう1度買おうかと思いまして、ほうぼう探して中古のα7Ⅱを手にしたのでした。
α7Ⅱは何度か買って全部手放してきたのですが、α7R2とかα7Sとかα7Cとかに比べると、一番そつがないんですよね。
確かに斜めの光についてはα7R2が一番強かったですが、いかんせん画素数が多すぎて良いSDカードを買っても保存時間が遅い(画素下げればいいんですけど)
α7Sは別に良い所が無かったし(高ISOでは普通にノイズが乗った)、α7Cはとにかく重かった。α7Ⅲ以降は重すぎて問題外。
程々の重さで、4桁αやNEX6といったAPS-C系ミラーレスと共通のバッテリであるNP-FW50が使えて、オリジナルα7よりはオールドレンズ耐性があり、純正レンズじゃなくても手振れ補正が使えるってなると、α7Ⅱなんですよね。
数日前で8万円位とフルサイズ勢としては手頃な値段というのもありますし。
ただ、一番持ち出したのはオリジナルα7だった気がします。
とにかく小さくて軽かったから。広角では割とマゼンタ被りには悩みましたけど、軽さは武器なんですよ。
話がそれました。
で、そんなフルサイズミラーレスを買ったので、レンズもひとつ純正のいいやつ買おうかしらと思ったら、この数年で何があったのというくらい、デカくて、長くて、重くて、物凄く高くなってる。
一昔前の一眼レフ用レンズより酷い。
売り場に案内されて2秒で買う気を無くした私は、すごすごと店を後にしてカメラ街を彷徨いまして。
人間何年たっても基本的な習性、特に落ち込んだ時とかの行動って変わんないもんでして、気づいたら中古でもジャンク系の店を回ってまして。
昔に比べたら高くなったもんだなあと思いつつも見知ったレンズがある事にほっとしつつ、気づいたら2本ほど買っていました。
1本目は、オリンパスOMの28mmF3.5。
オリンパスOMレンズ(マニュアル一眼レフ用レンズ)は、庶民用の安価なレンズの方が良い性能を叩き出す名玉が揃ってます。
目しかピントが合ってない剃刀ピントとかボケを求める向きには合わないでしょうが、この28mmクラスでもF2やF2.8とかを差し置いて、一番安価だったF3.5が一番良い写りをします。
いわゆるオリンパスブルーを色濃く映し出し、コンパクトでそつがなく風景撮りにぴったりです。
フルサイズαとの相性も良く、安価なOM-αアダプタ1つで機能します。
今回手にした1本は大カビありでしたが、絞りもヘリコイドも問題なく、分解した形跡もなく、3500円でした。
2本目は、ペンタックスSMCタクマー55mmF1.8。
もう定番中の定番。旧世代の金属ローレット版ですが、タクマー55mmはM42レンズでもオールドレンズでもとにかく最初の1本として定番です。
単焦点に求められるキレイなボケと先鋭な写りを同居させ、45cmから無限まで普通にピントが合い、シンプルで頑丈な構造はよほどのハズレ個体を掴まない限り修理可能で、特にSMCコートはカビにも割と耐性がある。
私も一時期探していましたが、8枚玉の50mmF1.4なんてのもありまして、あちらはコレクターが暗躍したのか馬鹿みたいに値段が跳ね上がりましたね。
正直歩留まりとか実用的な意味での扱いやすさでは圧倒的に55mmF1.8の方が上です。ラフにシャッターを切ってもそこそこ見れた写真にしてくれるんです。
こちらの個体も大カビあり、曇りあり、黄変ありでしたが、絞りとヘリコイドは正常、分解した形跡なしで3000円でした。
10年くらい前なら両方とも500円とか1000円で見かけたもんですが、今更それを言った所で仕方ありません。ガソリンだって昔はリッター100円切ってたんですからね。
その2本と中古のフィルタ2つ買って持ち帰り、早速α7Ⅱにつけます。
操作性は問題無し。カビはやっぱり写りに影響が出てますね。
というわけで久しぶりに工具一式を引っ張り出し、極薄のニトリル手袋をはめ、薬剤を並べてオペ開始。老眼が進んだなあ。
OM28mmF3.5にせよ、smcタクマー55mmF1.8にせよ、何度となく分解した事のあるレンズですから手が何となく覚えてるもんでして。
何組か手袋をダメにしながらカビたレンズ面にたどり着き、富士フィルムのレンズ用カビ落とし剤と70%エタノールをつけたシルボン紙で交互に拭いていくとあらかた落ちました。
後は乾いたシルボン紙とエアダスターで吹き飛ばしつつ組み立てていきます。
そりゃまあLEDの強烈な直線光で見れば、特にクモリの方は見えてしまいますけども、白熱球程度の光なら小ゴミあり、程度には回復し、パッと見て判るような白っぽい濁りやクモの巣状のカビは消し去りまして。
α7とマウントアダプタでちょっとだけ∞を通り越すようにピント位置も調節しまして。
オペというか、オーバーホール完成でございます。
ところで、オールドレンズの魅力とは何かというと、一言で言えば郷愁、懐かしさなんですね。
物体が反射する光をデジタル的に正確に記録して保存して再現する事は、正直スマホカメラでも出来ますし、現在新品で売ってるレンズとカメラなら出来ると思うんです。
ただ、人間40だの50だの過ぎてきますと子供の頃とか若い頃の文化に懐かしさがあって、居心地が良くなるんですね。昭和という時代と文化なんて今から考えればとんでもないブラックな文化だった訳ですが、その時子供だった人間は、その頃の文明の端っこを現在見ると、ああ良いなあと思ってしまうわけです。
だから今若い人にその感覚を共感してもらうのは不可能です。今若い人達は30年40年先に、今の文化に触れると同じ感覚を有してくれるとは思いますが。
例えば。
こんな写真がありまして、撮ったのが一昨日と言ったらどう思いますか?
これがオールドレンズに嵌ってしまうか否かの分岐点とも言えます。
こういう、こってりした色遣いや、決して解像度の高くない、それでいて柔らかさ、優しさのある写りは、一言で言えば銀塩カメラの描写です。
それも電動モーター世代よりもう1つ前の、手でフィルムを巻き、ファインダーで2重像が1つに重なったらおもむろにシャッターボタンを押し込む、あの世代の感覚です。PENTAXならSPとか、CANONならF-1とか、ミノルタならSRT101とか、そんな辺りです。α7700より前です。
もう少し表現が古くなるとモノクロが似合うようになり、ライカの小さなレンズを血走って追い求めるようになるでしょう。
往年の写りで現在を撮ってみたい。
それが琴線に触れたら、きっとオールドレンズは楽しいと思います。
ちなみにこれを撮ったのはMD45mmF2という、ミノルタのパンケーキレンズとNEX6です。アダプタにフォーカルレデューサーをつけているのでAPS-Cカメラでもフルサイズと同じ画角で撮影出来ます。
MD45mmF2はパンケーキレンズですがダブルガウス構造を有しており、ボケの綺麗さに定評があります。ミノルタらしいこってりした色乗り、滑らかなボケ、いかにもという1枚になりました。
ずいぶん高くなってしまいましたが、ジャンクを直す技術が無くてもまだ2万もあれば定番や基礎的なレンズが買える今が、オールドレンズを趣味とする最後のチャンスかもしれません。ボディとしてもまともな程度のα7Ⅱは今後減っていくでしょうし。まぁこちらは別に何が何でもα7Ⅱでなければいけないわけではないので、まだ猶予はあるでしょうけども。
さて、特に今日からのGW後半戦は天気も良く休日の並びも良くて多くの人が4連休でしょうから、昨日の夜から首都圏を脱出する方向の高速は大渋滞、なーんてニュースを横耳にレンズを弄り回すのは楽しかったです。
折角大手術を経て半身不随にもならず、多少歩行困難になったぐらいで済んだわけですから、やれることをやって生きていこうと思います。
人間、楽しみが無いと労働とかいう苦役なんてしたくないもんです。
ただ生きるのだって一苦労なんですから。
皆様にも良い楽しみが見つかりますように。
では、では。