• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+
イイね!
2016年11月17日

【桐生へクローバーな出張②】 追憶『在来線最速160km/h特急「はくたか」』

【桐生へクローバーな出張②】 追憶『在来線最速160km/h特急「はくたか」』

11月17日(木)
群馬県桐生市「クローバーな電装メーカー」へ出張、
ですが~。



翌日は「サプライヤー展示会」で、今日は移動日。
会場準備の集合時間は夕方なので、あちこち寄り道しながら群馬に向かっています。


さて「北陸新幹線はくたか」と「特急しらゆき」を乗り継いで到着した新潟県直江津。
元々は北陸本線と信越本線の分岐駅。
今も昔も鉄道の要衛であることには変わりありません。
 

北陸新幹線の開通で、信越本線と北陸本線が第三セクターに分割、転換された結果、直江津には、
・「JR東日本信越本線」
・「越後トキめき鉄道妙高はねうまライン」
・「越後トキめき鉄道日本海ひすいライン」
・「北越急行ほくほく線」
の、3鉄道事業者、4路線が乗り入れています。


直江津駅でピンポイント観測。各社の車両をチェックします。
電留線に停車するJR東日本のE127系と国鉄形湘南色115系。
(跨線橋から撮影)


直江津駅ホームに各社車両が勢揃い。
左から、JR東日本から越後トキめき鉄道に譲渡されたET127形、JR東E129系、越後トキ鉄日本海ひすいラインのディーゼルカーET122形、JR東E127系。



越後トキめき鉄道ディーゼルカーET122形です。
「日本海ひすいライン」は国鉄時代から電化されていますが、途中で電源方式が異なり、北陸線富山側は交流電化、新潟側は直流電化となっていて、糸魚川-梶屋敷間に交流-直流切り替えセクションがあります。
越後トキ鉄は高価な交直流電車の新製をやめ、運行コストの安いディーゼルカーを新造しました。


観光列車にも力を入れています。
えちごトキめきリゾート「雪月花」のポスター。
グラスエリアを大きくとったデザインのディーゼルカーで、形式はET122形1000番台。
妙高山と日本海の景色を見ながら、沿線素材のお食事を楽しめる観光列車。 


今日はウィークデーのため、車庫で整備中でした。(ズームで撮影)


11:29 これから乗車する、越後トキめき鉄道新井発-越後湯沢行き直通、
835M「北越急行ほくほく線」HK100形がやってきました。


JR東日本E129系長岡行 と並びます。


ここで、もう一度、路線と位置関係を整理しておきましょう。


1.「北越急行ほくほく線」という鉄道
「北越急行ほくほく線」は、信越本線犀潟から、松代、十日町を経由して上越線六日町までを結ぶ、全長59.5kmの第三セクター鉄道線として、1997年3月開業。
信越本線と上越線への乗り入れを考慮し直流1500Vで電化されています。
全線単線ですが、道路とは完全立体交差で全区間踏切なし

線名の「ほくほく線」は国鉄時代の計画路線名称「北越北線」を略したものですが、正式名称です。

その計画は、戦前まで遡ります。
元々直江津の隣、黒井と現ほくほく線沿線の浦川原の間には「頸城鉄道」が軌間762mmの軽便鉄道を開業させていました。それを延長させ松代地区の冬季交通遮断を解消したいとする陳情や、軍のあった高田と東京を直結する重要路線と位置付ける請願を経て、戦後は国鉄の建設予定線に昇格。1968年に工事実施計画が認可され着工されました。
頸城鉄道は、ほくほく線の工事と引き換えに1971年に廃止されています。


しかし累積赤字の拡大が続く国鉄財政の悪化により、国鉄再建法が施行され、1980年新線建設工事は凍結されます。
その後、建設を巡って、推進派の田中角栄と慎重派の君新潟県知事(当時)との確執を経ながらも、採算の取れる見通しあり、とする試算がまとまり、第三セクター北越急行株式会社が発足。1985年に工事を再開します。

そこへ、当時の運輸省が整備新幹線計画の停滞を背景に北越北線の高速化計画(スーパー特急計画)を打ち出します。整備新幹線計画には「フル規格」のほかに、建設コストを下げるための運輸省案、「ミニ新幹線」「スーパー特急」の3方式がありました。

「ミニ新幹線」は在来線の軌間を広げて新幹線を直通させるもの。
軌間以外は在来線規格のままなので最高速度は130km/h止まり、フル規格新幹線と直通運転でき乗り換えの面倒がなくなるのがメリット。
「山形新幹線」「秋田新幹線」がこれに該当します。

「スーパー特急」は、新幹線規格の高速新線に在来線軌間1067mmの線路を敷いて在来線直通列車を高速で走らせます。最高速度200km/h程度の運転が検討されていました。 当時の運輸省は スーパー特急の試金石として「北越急行ほくほく線」の高速化を具体化しようとしたのでした。

1988年「北越急行ほくほく線」の計画が修正変更され、JR直通特急を最高速度160km/h以上で走らせる工事が本格化します。



ところで北陸新幹線は当初軽井沢-長野が「ミニ新幹線」、富山県内と石川県内が「スーパー特急」での建設が検討されていました。しかし長野オリンピックの輸送問題や地元請願の結果、全線フル規格で整備されることになりました。



2.北陸からの新幹線連絡特急
「北越急行ほくほく線」が開業する前、北陸から東京に向かうには、長岡乗り換え、上越新幹線経由の「かがやき」「北越」ルートと、米原乗り換え、東海道新幹線経由の「きらめき」「加越」ルートがありました。

前号(①「かがやき」のお話し)で触れた、長岡乗り換えの新幹線連絡特急「かがやき」は人気を呼んで6往復まで本数を拡大。
さらなる高速化と時間短縮が熱望されていました。

「かがやき」「きらめき」「はくたか」と、「北陸新幹線」および「東海道新幹線」


1997年「北越急行ほくほく線」の開業と同時に、金沢-越後湯沢間をほくほく線経由で結ぶ新幹線連絡の高速特急「はくたか」が運転を開始します。

運転当初、ほくほく線内の最高速度は140km/hでスタートしましたが、段階的に引き上げられ、最終的に在来線最高速160km/h運転を行うようになりました

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「北越急行ほくほく線」を高速化するに当たり、これまでの在来線にはない対応が必要でした。

「新幹線」ではない「在来線」には、従来の「鉄道運輸規則」に代わる国土交通省令「600m条項」というのがあります。これは『在来線列車は非常ブレーキをかけて600m以内に停止できなければいけない』とする安全基準で、現在ブレーキの改良等により「JR在来線特急」や関西の「新快速」などの最高速度は130km/hが一般的になっています。

例外として、踏切が存在しない完全立体交差の「津軽海峡線」で、特急「スーパー白鳥」の140km/h運転が特別認可されていました。 「ほくほく線」も踏切のない路線であることから特認を受けたのでした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
軌間1067mmの「在来線」である「ほくほく線」を高速走行するため、車両と鉄道施設には、いろいろな配慮が成されています。


3.681系と683系
「ほくほく線」が開通する1997年までには、新生JRの特急車両が各社勢揃いしていましたが、軌間1067mmの在来線を160km/h以上の高速で走行できる性能を持つ車両は、JR西日本の681系以外にはありませんでした。
他の特急車両は、殆ど最高速度130km/hとなっています。

681系はそれまで主力の国鉄485系を置き換える目的で開発され、1992年に先行試作車が登場。
国鉄形車両を40年以上も使い続ける「どケチ」鉄道『JR西日本』ですが、車両技術開発では安易に妥協しないのもまた、その特徴です。
未だに人気の高い500系新幹線も、JR西日本の社風無くしては生まれませんでした。
683系は681系の後継車です。

JR西日本681系

681系は、高速安定走行のため徹底した軽量化と低重心化設計が施されています。
カーブを高速で走るための車体傾斜装置は搭載していませんが、半径600m未満の曲線区間では従来車両+15km/h、半径700m以上の曲線では従来車両+25km/hで走行することが可能です。

「ほくほく線特急はくたか」の運転開始に際し、北越急行も自社特急車を保有することになります。
それが681系2000番台で、9両2編成が増備されました。

基本構造やスタイルはJR西日本681系と変わりませんが、赤いラインの専用色。
「スノーラビット」の愛称が付き、側面には『SRE』(Snow Rabbit Express)のエンブレムがありました。

運転開始当初、JR東日本は485系3000番台を「はくたか」に充当していましたが、運用効率を上げるため車両性能の統一化が検討され「北越急行」は第3編成を増備します。それが2005年登場の683系8000番台です。
基本構造はJR西日本の683系ですが、JR西日本車はコスト低減のため160km/h対応装備を省いているのに対し、北越急行車には681系同様の高速対応装備が追加されました。

北越急行683系8000番台

北越急行所属の681系2000番台18両と683系8000番台9両は、「はくたか」廃止後、全車JR西日本に譲渡され、塗装変更ののち金沢-米原-名古屋間の特急「しらさぎ」に転用されています。


4.ノーズ可動クロッシング
「北越急行ほくほく線」は全線単線のため、主要各駅にはすれ違いのための側線とポイントが設置されています。

線路を分岐するポイントには、ノーズと呼ばれる線路の交差部分があります。
通常のポイントでは、車輪を通すための隙間が設けられた状態で固定されており、列車が通過すると衝撃と振動が発生するため速度を制限する必要があります。

ノーズ可動クロッシングでは、ポイントが切り替わる度にそれぞれの方向で隙間を無くすようにノーズが動き衝撃と振動が抑えられるため、速度制限を受けず高速で通過できます。




新幹線以外でノーズ可動クロッシングの採用は少なく、高速化に熱心な京浜急行などに使用例があります。


「ほくほく線」の『ノーズ可動クロッシング』




5.「G-G信号」 高速進行現時 
読んで字のごとく「ジージー信号」、「Green-Green」の略
160km/h運転を指令する信号機表示を示します。
(「ほくほく線」のG-G信号現時)



鉄道の信号には、道路信号と違い、前方区間に先行する列車がいて追突する危険があるかどうかを知らせる「閉塞信号」という表示方法が採られます。
「閉塞」とは自列車が走る区間には他の列車の進入を許さない、という考え方。

道路信号は『青→黄→赤』と変わりますが、閉塞信号は、先行列車が離れるに従い、後続列車が速度を上げることを許可します。
その表示は、先行列車が青信号で次の閉塞区間に進入すると赤、先行列車がそこから離れると次列車の徐行での進入を許可するので黄、先行列車が十分に離れると青。
という訳で、『青→赤→黄→青』と変わるのでした。


さらに鉄道信号には、速度を細かく指示するため「多灯式信号機」が使われます。

黄2灯で25km/h制限「警戒」、黄1灯は45km/制限で「注意」、黄‐青は75km/h制限で「減速」、青1灯はその路線の最高速度「進行」。
そして青2灯が「ほくほく線」で初めて採用された、160km/h運転を許可する「高速進行」です。


実際の運用では、「進行」表示されている閉塞区間に160km/h運転対応の681系、683系が接近すると車両側からの信号が検知され「高速進行」が現時されました。



関係者の熱意と数々の施策により実現した「ほくほく線」の160km/h運転。
「ほくほく線」での特急「はくたか」運転は18年間続きました。
2015年3月北陸新幹線の開業とともに、高速特急「はくたか」はその名称を新幹線に譲って全廃されました。

その間の安定輸送で蓄えられた内部留保は130億円余り。これは今後「ほくほく線」が赤字転落しても30年間は財源を補填して経営が持続できる金額、と言われています。

「はくたか」廃止後、北越急行は、沿線高校への通学利用の促進、普通車両HK100形を使用した在来線普通最速の「超快速」の運転など、経営安定の積極策も模索しています。

在来線列車の160km/h運転とそのノウハウは、その後、成田空港特急「京成スカイライナー」の成田スカイアクセス線に受け継がれ、日暮里-第2ターミナル間36分が実現したのでした。

京成電鉄AE形「スカイライナー」


さて、ほくほく線に乗車し、HK100形は十日町に到着しました。
上り「快速 直江津行」と交換します。
 

六日町で「北越急行」本社を見ながら、ほくほく線59.5kmの旅は終わり、JR上越線に入ります。そして終点越後湯沢へ。
 

直江津から1時間20分余り、越後湯沢0番線「ほくほく線ホーム」に到着


今や少し懐かしい、新幹線乗り換え口を歩いて新幹線ホームへ。


越後湯沢から「Maxとき320号」で高崎に向かいます。


次回③『群馬のローカル私鉄上毛電鉄』につづく 
(いったい、いつになったら桐生に着くのか・・・。 (;^^)> )


【参考】
Wikipedia 「北越急行ほくほく線」、「681系電車」
鉄道ジャーナルNo.586 2015年8月号、No.590 2015年12月号 
ブログ一覧 | 日記
Posted at 2016/11/30 01:23:25

イイね!0件



今、あなたにおすすめ

ブログ人気記事

晴れ(今日は)
らんさまさん

明日から5月です😁
港塾さん

スリーダイヤ
ヒロ坊おじさんさん

お疲れ様でした🙇(7777ゾロ目 ...
ゆう@LEXUSさん

色々メンテナンス〜
楽しく改造さん

Wes Montgomery - ...
kazoo zzさん

この記事へのコメント

2016年11月30日 7:11
おはようございます🎵

朝からお勉強させて頂きました(笑)
今日は夜勤なので、ゆっくりブログを楽しみました(^_^*)
コメントへの返答
2016年11月30日 9:32
おはようございます<(^^;)

お勉強? と呼ぶには・・・、
普段の生活では全く役に立たない知識ですからねぇ。

ただ、新幹線の向こうを張ったチャレンジングな「ほくほく線」は、以前から興味ひかれるのでした。
(^^)b
2016年11月30日 12:13
高速用のポイントの存在を知りませんでした(^_^;)

割と新幹線乗ってるのに〜(笑)

ほくほく線の存在は知らなかったです。
智頭急行みたいな感じなんでしょうか?

鉄の知らないこと多いです。
コメントへの返答
2016年11月30日 13:08
新幹線のポイントは、なかなか駅のホームからは見え辛いところにありますから。
「E4系Max」の1階に乗るとよく見えます。

そのとおりです。「智頭急行」は全線56km、成り立ちは「ほくほく線」とよく似ています。
「智頭急行」の場合も、電化160km/h高速化が検討されたのですが、短縮時間が3分ほどの差しかなく費用対効果が得られず、振り子式高速ディーゼルカーの130km/h運転に落ち着いたそうです。

「スーパーはくと」は大阪-鳥取間2時間30分台ですが、これがなかったら鳥取道高速バスの天下だったのでしょうねー。
(^^;)>
2016年11月30日 22:42
こんばんは~!
新幹線車両もJR各社によって少しづつ,デザインが違いますね。

仕事でもないと,最近電車に乗らなくなりましたが,いろんな電車があるんですね。
コメントへの返答
2016年12月1日 9:58
おはようございます(^^)

そうですねー。
今年3月、函館まで北海道新幹線が開通し、JR四国以外のJR5社が新幹線を運行しています。各社それぞれ特徴ある車両で興味深いです。

上場が決まったJR九州も面白いですよー。
(^^)b
2016年12月11日 12:08
1067mm幅の狭軌で160キロ運転はすごいですよね(^o^)

新快速の130キロ運転でも「速いなぁ~」と思うのに、さらに30キロもプラスとは(゜ロ゜)
コメントへの返答
2016年12月11日 13:28
1067mmですから凄いです。日本の高速鉄道史では語り継がれるべき逸話と思います。

しかも、連続する単線トンネルを160km/hですから。
681系に乗るとトンネルを出入りするたびに、圧力で車体が歪み、窓が動くのが解るほどでした。
(^^)b

プロフィール

「@バツマル下関 さん、木造3階建ての旅館が川の両岸にところ狭しと並び、旅情がありました。」
何シテル?   04/22 06:11
柴犬のLEN吉、本名「レン」永遠の12才です。 クルマでお出かけするのが大好き。 イベントで見掛けたら、声を掛けてください。 (^^)/
みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

<< 2025/4 >>

  12345
6 7891011 12
13141516171819
20212223242526
27282930   

リンク・クリップ

福岡クラシックカーミーティングエントリー受付中! 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2025/03/08 09:50:27
第17回門司港ネオクラ 先行エントリー受付開始! 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2025/03/01 08:04:40
来年のイベント開催予定 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2025/01/23 16:35:38

愛車一覧

トヨタ カローラレビン AE86LEVIN (トヨタ カローラレビン)
*4年落ちのワンオーナー車を中古で手に入れて34年。 *2012年レストアを決行して内外 ...
スバル エクシーガ クロスオーバー7 クロスオーバー7 Ⅱ (スバル エクシーガ クロスオーバー7)
22万7323kmを走破したトラヴィックの後継車としてLEN吉家にやってきた初代LEN吉 ...
スズキ ジムニー スズキ ジムニー
結果的に⁉ テリオスキッドの後継車となった日常の下駄車。 14万6172キロメートルを地 ...
ダイハツ テリオスキッド ダイハツ テリオスキッド
2004年式 (2008年5月購入) 日常の足から娘の通勤車として活躍後、その任をジムニ ...
ヘルプ利用規約サイトマップ

あなたの愛車、今いくら?

複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!

あなたの愛車、今いくら?
メーカー
モデル
年式
走行距離(km)
© LY Corporation