東日本の広い地域に、甚大な被害をもたらした
台風19号。
千曲川が決壊し、JR東日本長野市新幹線車両センターに留置、検修中の北陸新幹線E7系8編成とW7系2編成の計10編成が冠水するという映像は衝撃的でした。
(産経新聞から)
新幹線の車両基地には広大な敷地が必要です。
北陸新幹線は12両編成。1両25mありますから、1編成の長さは300mになります。16両編成の東海道山陽新幹線は400mもあります。車両基地にはこれらを停め置く留置線のほか、点検修理を行う建物のある検修線が必要になります。
これだけの敷地を確保できるとなると、どうしても大河川に近い広大な平地を求めざるをえません。
この辺り、長野市穂保地区は、長野市作成のハザードマップでは最大10mの洪水が起こりえる、とされていますが、建設時の1990年代はまだハザードマップがなく、2mの盛り土をしたうえで建設されています。
実はこうした洪水リスクのある車両基地は全国に多く存在しています。
東海道新幹線の「大井車両基地(東京)」「鳥飼車両基地(大阪)」「浜松工場(静岡)」、山陽新幹線の「博多総合車両所広島支所(広島)」、九州新幹線の「熊本総合車両所(熊本)などは、河川氾濫や津波のリスクが高いとされています。
【参考】LEN吉ブログ2016年6月29日
『北陸新幹線 『白山総合車両所 見学会』 に行ってきた! 』
白山総合車両所は、手取川近くの平野にありますが、5m以上の高台に建設されています。
北陸新幹線は所属編成の3分の1を失いましたが、上越新幹線E2系やE4系の廃車を遅らせ、その置き換え用として上越新幹線用に製造したE7系を北陸新幹線に転用するなどして、10月25日から所定ダイヤの90%の本数を確保して全線の運転が再開されました。
11月19日
長野車両センターで、冠水した車両を解体する準備作業が始まったと報じられました。
(ASAHI DIGITAL から)
(ASAHI DIGITAL から)
冠水し浮き上がって脱線した車両を切り離し、ジャッキアップして線路に戻しています。
JR東日本もJR西日本も、冠水車両全編成 120両は廃車解体する、と発表しています。
開業当時の新製費用は総額330億円といわれますが、当別損失計上額は約150億円、償却分を差し引きこの損失額になるとのこと。
今、新造するにはこれとは別に1編成40億円近くの費用が掛かると言われます。
(疑問その1)
「冠水した車両は修理して使えないのか」、
「損傷していないように見える車体だけでも使えないのか」
といった、素朴な疑問が残ります。
しかし写真でもわかるように、車両の床上あたりまで冠水。鉄道車両の床下には、変圧器や整流器、インバータなどの電気電子制御機器が搭載されています。
これらが水に浸かると、たとえ完全に乾かしたとしても絶縁不良や腐食など電気的に損傷し使用できません。
スマートホンやパソコンを水の中に落としたことを考えれば、到底使えないことは理解し易いと思います。
また、洪水は非常に細かい泥の粒子が含まれており、それらの泥には細菌が存在します。
それが冠水によって隙間という隙間に入り込み、完全に除去できるものではなく、衛生上問題が残ります。
報道では床上に達した水は座席も汚染していたと言いますから、車内の被害も相当なのでしょう。
では、車体だけ、いわゆるドンガラの状態にして、新たな部品や機器を組み込めば、という議論もありますが、気密性の高い新幹線車両の特殊性から、機器や配線の工法を考えたとき、結局新しく作るほうがトータルコストは安い、という試算となったようです。
また、洪水の危険が迫る前に、
(疑問その2)
「新幹線車両を長野駅や飯山駅などの高架線に退避させられなかったか」
という声もあがっています。
これに対して、JR東日本は、
「台風19号が通過した当時、既に避難指示が発令され、運転士や係員が車両基地に近づけられなかった」
とコメントしていました。
本当にそうするしかなかったのでしょうか…?
これについて、台風や洪水の対応で教訓となる話を2つ、ご紹介。
【① 国鉄 0系新幹線が避難した】
先ほども触れた、
大阪『JR東海鳥飼車両基地』。
淀川水系安威川に近い大阪府摂津市にあります。
京都を出て新大阪に向かう時、右手にたくさんの新幹線が見えるのが鳥飼車両基地。
(Wikipedia から)
(Wikipedia から)
1967年7月9日夜、大阪北摂地域の集中豪雨。
鳥飼車両基地北側の安威川が氾濫し、車両基地が浸水。
NHK NEWS Watch9 でも 取り上げられた話題なのですが。
(NHK NEWS Watch9)
この時、国鉄新幹線総局と鳥飼車両基地は、21時34分安威川が警戒水位を超えてから洪水が押し寄せるまでの間に、基地に留置されていた0系新幹線13編成と保線用車両を、営業運転が終了した本線上に順次退避させた、のでした。
翌日の始発前に、今度は車両を駅に移動させ、始発から平常運転したそうです。
鳥飼車両基地ではそうした危険予知と避難訓練シミュレーションを日頃から行っていた、とのことでした。
この「専門家」のコメントは、現在の東海道山陽新幹線は13編成どころではない、という点では正しいですが、北陸新幹線の被害はコレより少ない10編成なので、新幹線の貴重な教訓として生かせなかったかという疑問が残ります。
この、東海道新幹線の高架線退避については『PRESIDENT OnLine』でも紹介されています。
(PRESIDENT OnLineから)
また、もっと身近なところでは、
【② バスが避難した】
長野電鉄グループ長電バスの、今回の台風19号の対応。
台風19号が通過直後の10月13日(日)、長電バス長野営業所は、浸水の危険が迫る中、路線バスの運休を決めたあと、運転士や職員がバスを次々に高台に避難させたそうです。
(乗りものニュースから)
台風19号で交通寸断「陸の孤島」へ高速バスなぜ運行できたのか? 実現の裏側
浸水が始まる中、避難を始める長電バスの高速・貸し切りバス。
洪水の中、避難する長電バスの路線バス。
その結果、車両の冠水被害は免れ、14日(月)には、浸水地域以外の一部路線バスと高速バスの運行が可能になったそうです。
国鉄(日本国有鉄道)とJR、そしてバス事業者。
体制や事業規模の違いはありますが、過去の教訓や、すぐ隣の事業者の対応例を見ると、330億円もの新幹線車両が成す術もないまま冠水していった事実に対し、もう少し何かできなかったのか。という残念な思いはあります・・・。
_
イイね!0件
福岡クラシックカーミーティングエントリー受付中! カテゴリ:その他(カテゴリ未設定) 2025/03/08 09:50:27 |
![]() |
第17回門司港ネオクラ 先行エントリー受付開始! カテゴリ:その他(カテゴリ未設定) 2025/03/01 08:04:40 |
![]() |
来年のイベント開催予定 カテゴリ:その他(カテゴリ未設定) 2025/01/23 16:35:38 |
![]() |
![]() |
AE86LEVIN (トヨタ カローラレビン) *4年落ちのワンオーナー車を中古で手に入れて34年。 *2012年レストアを決行して内外 ... |
![]() |
クロスオーバー7 Ⅱ (スバル エクシーガ クロスオーバー7) 22万7323kmを走破したトラヴィックの後継車としてLEN吉家にやってきた初代LEN吉 ... |
![]() |
スズキ ジムニー 結果的に⁉ テリオスキッドの後継車となった日常の下駄車。 14万6172キロメートルを地 ... |
![]() |
ダイハツ テリオスキッド 2004年式 (2008年5月購入) 日常の足から娘の通勤車として活躍後、その任をジムニ ... |
2025年 | |||||
01月 | 02月 | 03月 | 04月 | 05月 | 06月 |
07月 | 08月 | 09月 | 10月 | 11月 | 12月 |
2024年 | |||||
01月 | 02月 | 03月 | 04月 | 05月 | 06月 |
07月 | 08月 | 09月 | 10月 | 11月 | 12月 |
2023年 | |||||
01月 | 02月 | 03月 | 04月 | 05月 | 06月 |
07月 | 08月 | 09月 | 10月 | 11月 | 12月 |
2022年 | |||||
01月 | 02月 | 03月 | 04月 | 05月 | 06月 |
07月 | 08月 | 09月 | 10月 | 11月 | 12月 |
2021年 | |||||
01月 | 02月 | 03月 | 04月 | 05月 | 06月 |
07月 | 08月 | 09月 | 10月 | 11月 | 12月 |
2020年 | |||||
01月 | 02月 | 03月 | 04月 | 05月 | 06月 |
07月 | 08月 | 09月 | 10月 | 11月 | 12月 |
2019年 | |||||
01月 | 02月 | 03月 | 04月 | 05月 | 06月 |
07月 | 08月 | 09月 | 10月 | 11月 | 12月 |
2018年 | |||||
01月 | 02月 | 03月 | 04月 | 05月 | 06月 |
07月 | 08月 | 09月 | 10月 | 11月 | 12月 |
2017年 | |||||
01月 | 02月 | 03月 | 04月 | 05月 | 06月 |
07月 | 08月 | 09月 | 10月 | 11月 | 12月 |
2016年 | |||||
01月 | 02月 | 03月 | 04月 | 05月 | 06月 |
07月 | 08月 | 09月 | 10月 | 11月 | 12月 |
2015年 | |||||
01月 | 02月 | 03月 | 04月 | 05月 | 06月 |
07月 | 08月 | 09月 | 10月 | 11月 | 12月 |
2014年 | |||||
01月 | 02月 | 03月 | 04月 | 05月 | 06月 |
07月 | 08月 | 09月 | 10月 | 11月 | 12月 |
2013年 | |||||
01月 | 02月 | 03月 | 04月 | 05月 | 06月 |
07月 | 08月 | 09月 | 10月 | 11月 | 12月 |
複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!