吉田修一原作の長編小説
『路(ルウ)』
NHKと台湾公共電視台PTSの共同制作でドラマ化。
脚本は、「篤姫」も手掛けた川渕久美子。
全3話、5月30日(土)が最終回でした。
「プロジェクトX」的な、技術秘話とか苦労話が中心…、ではなく、
それに関わる、あるいは絡み合う人間模様を描いたドラマ。
なので、60分×3話では、ちょっと話を盛り過ぎの感があり、それぞれの背景が十分に伝えきれておらず、消化不良気味なのが残念…。
この物話のボリュームだと、10話くらいでないと描けないのでは。
という話は、またあとで触れることにして。
スラブ軌条の高架線を走る台湾高鐡 700T。
台湾高速鐵道、略して台湾高鐵。
その走行音は、日本の700系とそっくりでした。
最終回にもJR東海の700系が登場します。
帰国した春香を乗せて、富士山をバックに富士川鉄橋を渡る700系のぞみ。
トラブル続きで開業予定が遅れたことをマスコミにすっぱ抜かれる場面。
ニュース画面に700Tの先頭車がボンネット開放して連結器を見せる貴重な姿が!
元々は、フランス、ドイツを中心とするヨーロッパのシステムを導入するはずだった台湾高鐡。車両もTGVベースになるはずでした。
1998年ドイツの新幹線ICEが脱線転覆事故を起こしたこと、そして1999年に台湾大地震が発生したことを契機に、台湾高鉄は運転コアシステムを日本式新幹線方式に切替えることに計画変更。
コアシステム=電化、信号制御システム&車両は日本方式、レールは日本製(新日鉄)、分岐器はドイツ製、通信設備はフランス式という混合システムとなりました。
ドラマでは、台湾高鐡プロジェクトマネージャーのドイツ人副総経理ジャックバルトと日本の技術コーディネータ安西が激しくぶつかる場面が何度かありますが、そうした背景がわからないので、見ている人には理解し辛かったと思われます。
例えば、1話に登場する、乗務員扉とその窓の開閉にかかわる議論の衝突。
700Tには乗務員扉がありません。また、日本では新幹線でも駅出発時に車掌が乗務員室の窓から顔を出して安全確認をするのが普通ですが、台湾プロジェクトでは必要ない、と一蹴されてしまいます。
乗務員扉の無い台湾高鐡700Tと、JR西日本700系7000番台RAILSTAR。
モータ出力は700Tが285kw、700系は275kw。
台湾高鐡の総延長距離348.5km、駅数12駅は、
九州新幹線博多-鹿児島中央間の268.9km、12駅と規模的には近いです。
最急勾配35‰も同じ。
ちなみに日本の新幹線の中では、在来線扱いの山形新幹線38‰を除くと最も急な勾配。
最高速度は台湾高鉄が300km/hに対し、九州新幹線は整備新幹線法に基づき260km/h。
運行コアシステムは、実際の集中制御室が良く再現されています。
実際のシステム。
日本信号や京三製作所などの鉄道関連メーカが納入。
Taoyuan ⇒ 台北桃園にあるのですね。
サブシステムはTainan ⇒ 台南、Zuoying ⇒ 左営 に設置。
台北に近い、燕巣車両工場の場面です。
コチラは北陸新幹線白山総合車両所、何となく雰囲気が似ています。
さて、盛り過ぎというか消化不良なのが、
主人公 春香と台湾人建築士 劉人豪(エリック)との恋バナ。
学生時代の旅行中の出会いから8年ぶりに再会するも、春香は「婚約者がいるの」と伝え、エリックは「好きな人とは友達にはなれない」と、別れを告げるのですが…。
そもそも、東京の商社『大井商事』(モデルは三井商事ですね)から、台湾のプロジェクト会社に出向を命じられた春香が、現地でどんな業務をしているのか、あまり詳しく描かれていません。
位置づけとしては技術コーディネーターもしくはそのアシスタントのはず…。
プロジェクト仲介の商社が相手法人と打合せるときは、大抵単独ではなく関連するメーカや建設会社のエンジニアを伴うと思われるのですが、ドラマのように技術打合せが商社主体で進められるのも不自然です。
そして、
一時帰国した春香が、名古屋のホテルマンを勤める婚約者繁之に婚約指輪を返し、別れを告げる場面…。
うーん、何とも罪作りな…。
意識のすれ違いみたいなのは何となくわかるものの、場面展開が唐突なので、これも共感を得にくい描き方に…。
この辺り、このドラマの評価が極端に分かれるところで、春香の評価も両極端。
「春香はエリックと結ばれて欲しい」という声がある反面、「三股掛けた悪女」とか「繁之さんかわいそう」とか...。
波瑠さんの表情は、なんとも刹那的なんですけどね。
うーん、罪作りな。
小説では、婚約解消された繁之さんはうつ病になるらしいのですが…。
恋バナに振るなら、韓流ドラマのようにズルズルドロドロにしないと、海外ロケドラマではバランスが取れません。
やはり60分×3話では、背景を描き切れないんですね。
そして、マスコミすっぱ抜かれ事件の責任を取らされ、台湾高鉄を追われた運行管理副責任者のレスター ワンが、開業遅れを挽回するため、再びプロジェクトに戻ってくる場面。
これもちょっと唐突でした。
マスコミの信頼を回復するため、台湾高鐡プロジェクトは、レスターワンの提案で、1ヵ月間の本番ダイヤ無事故試運転を決行。
この1ヵ月無事故試運転は実際に行われたエピソードですが、それまでに至るトラブルや事故について触れられていないので、その必要性が伝えきれていないのが残念。
"なんでそんなことしなきゃいけないの?"というのが要る訳です。
トライ最終日の最終列車に、板橋駅から副総経理バルトと、春香の上司山尾が乗り込みます。指令所のモニターに映る二人。
座席表示も日本式。
700系のグリーン車。
シートピッチ1160mmは700Tも、700系も同じです。
700系0番台普通車と、700Tの標準車の座席です。
コチラもシートピッチは同じで、100系以来の1060mm。
3-2配置も一緒です。
試運転最終105列車が板橋駅を発車。
途中、鳥との衝突が伝えられますが、異常なしとして、列車はそのまま走行を続けます。
航空管制と同じ用語「バードストライク」なんですね。
実際、台湾新幹線の開業前後は、地上を300km/hで走る新幹線に慣れない鳥の群れが相当衝突したというエピソードがあります。
試運転105列車は終点の左営駅へ。
無事、1ヵ月無事故試運転を終え、歓声を上げる運行管理者やプロジェクト関係者。
議論がかみ合わない場面では、もう少し欧州側の主張や理念も伝えてほしかった。
そしてエンディングへ。
開業後間もない、台湾高鐵 板橋駅。
エリックが尊敬する台湾生まれの日本人建築家、ガンに侵され余命短い葉山勝一郎を、春香が台湾新幹線に初めて案内する場面(ややこしい)。
は、話が日本の台湾統治まで及び複雑なのでここでは割愛...。
これもまた、背景が深くて盛り過ぎな訳ですが。
ちなみに、この改札機はフランス式です。
ここで、これまた唐突に春香は、日本の建設会社に就職し台湾に一時帰国したエリックと再会。
エンディングの巻き過ぎストーリー感が漂いますが…。葉山に促され、春香はエリックと新幹線に乗車します。
車内で「台湾に残って仕事を続ける」と、エリックに伝える春香。
「また離れ離れだね」と、自身は日本で働くエリックの寂しげな表情。
でも「僕たちは運命なんだ」と、お互いの想いを伝える二人。
うーん、なんだか無理無理ハッピーエンドに持って行った気もします。
エンディングで、初めて出会った13年前、学生時代の旅行を回想するシーン。
この場面は、
「ローマの休日」のイメージなんでしょうねー…。
やっぱり、背景描写が圧倒的に不足しているのが残念。
「プロジェクトX」にするのか、
「韓流恋バナ」にするのか、
どっちつかずで中途半端なんだなー。
とはいえ、台湾高鐡とJR東海全面協力の、日台合作ドラマ。
意欲的なのは感じます。
巷の評価は賛否両論のようですが、私はアラ探し的にも楽しめました。
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