クラン港からのドレージ輸送を行っています。(40ftの海上コンテナ積載)
さて、国鉄分割民営化後の日本の鉄道貨物は、線路があればどこでも走れる、という訳ではありません。
JR東日本やJR西日本は、自社路線を保有し、自社車両を走らせる第一種鉄道事業者。これに対し、JR貨物は、他社の線路を借りて線路使用料を支払い、列車を走らせる第二種鉄道事業者、という位置付けになります。
これは2006年頃の鉄道貨物営業路線図。現在は若干縮小区間もありますがほぼほぼ同じ。緑の実線は旅客営業のみのJR路線です。
実は、JR貨物は自社で保有する線路はごくわずかで、この図のような日本中のネットワークに貨物列車を走らせるためには、JR貨物はJR東日本やJR西日本などの旅客鉄道会社に線路使用料を払わなければなりません。
これに対し、トラック輸送は基本的に道路使用料は無料。高速道路料金は急行料金なのでこれは払わなければいけませんが、一般国道については運送業者が直接使用料を払う仕組みにはなっていません。
(間接的には重量税や燃油税から道路整備が行われています)
船や飛行機の場合、船舶保有会社や航空会社が自社で港や空港を整備することは殆どありません。(例外はあります)
これらは別法人や半官半民の第三セクターが整備と維持管理しており、港湾使用料や空港使用料を払う必要はありますが、日本国内の空域や海峡、河川の通過料は基本的に求められません。
(国際航路では、例えば運河通過料や上空通過料をその施設や国に支払う必要はあります)
日本の鉄道事業者はインフラ整備と維持管理含め、全て自己調達が求められている訳です。
最近でこそ、上下分離方式と称して、線路や地上設備を行政や特殊会社が保有し、鉄道会社は使用料を払って自社列車を走らせる仕組みが見られるようになりましたが、まだまだ一般的ではなく実例が少なく、しかも、線路や地上インフラを別の特殊法人が保有し、その上で複数の会社が自由競争で列車を走らせる、という鉄道は、海外では例がありますが日本にはありません。
インフラ使用料を運賃に転嫁せざるを得ないことが、日本の鉄道コストが高い一因、と言われています。
例外として、似て非なるものが、『神戸高速鉄道』、
神戸市内に向かうも分散していた、山陽電鉄、神戸電鉄、阪急電鉄、阪神電鉄の路線を、地下新線で結び、相互直通運転を行っています。
しかし、神戸高速鉄道自身は鉄道車両を保有しておらず、乗り入れる各社に車両使用料を支払い、自社路線の運賃収入を得ています。事業形態は第三種鉄道事業者の扱い。
だから他社路線使用料を払い収入を得るJR貨物とはちょっと事情が違う…。

難しいですねー。
さて、話がかなり逸れてしまったので、軌道修正を。
生産管理部長から搭載列車のダイヤが示されたので、確認してみます。
Web版コンテナ時刻表を開いて…。
貨物駅である南福井駅の発着列車を見てみると?
南福井7:51分発、大阪貨物ターミナル12:25着の列車は『高速貨物3094列車』とわかります。
さらにこの列車、大阪貨物ターミナル駅で編成が切り離され、各地の行先に再組成されることが読み取れます。その行先は、小名浜(東北)、神栖(茨城)、宇都宮、横浜・・・、と多岐に渡る。
そして、大阪貨物ターミナル発、神戸貨物ターミナル17:09着の75列車が、今回ウチの製品を乗せるコンテナ搭載列車。
念のため、大阪貨物ターミナル駅の時刻を確認すると、
メール情報のとおり大阪貨物ターミナル15:45発の75列車であることが確認できます。
ふと、ここで素人疑問が…?
大阪貨物ターミナル駅は、吹田貨物ターンミナル駅から分岐した約8㎞の支線の先の、行き止まり終着駅。
編成の解結(分割,連結)があるにせよ、それを吹田貨物ターミナルではなく、わざわざ進行方向を変え、一旦大阪貨物ターミナル駅に取り込む必要性があるのか?
ということ。
東海道本線上の吹田貨物ターミナル駅は、後で述べる『着発線荷役方式』の着発線8線と荷役線5線を有する広大な貨物駅。
元々は国鉄時代最大規模の吹田操車場があり、その跡地に建設されました。
着発線荷役方式とは、貨車を切り離すことなく、ホームに停車したままで、貨物の積み下ろしを行う方式。電化区間では架線高さを上げるなどして接触など支障ないように対応しています。以前は架線下荷役とも言いました。
しかし吹田操車場跡地が都市再開発ではなく、再び貨物駅機能の再構築となり、トラックの出入りも多くなる可能性があることに地元の理解が得られず、周辺貨物駅機能は、大阪貨物ターミナル、百済貨物ターミナルと吹田貨物ターミナルに分散して担うことになり、吹田貨物ターミナルの着発回数が限定されているのだそうです。
だから大阪貨物ターミナル駅に一旦取り込んで解結するのですね。
何とも効率が悪い…。
さて、次はコンテナサイズのお話。
コンテナ列車や貨物駅でよく見かけるのはこのサイズ。
JRのコンテナには、大きく分けて長さ違い3種類あります。
ftはフィート。12フィート(12ft)ならコキ100系貨車に5台、20フィート(20ft)なら3台、31フィート(31ft)なら2台積載することができます。
このうちISO国際海上コンテナ規格に合致するのは20フィート(20ft)。
【JR貨物を代表するコンテナ列車 2例ご紹介】
このうちJRコンテナとしては最も大きなサイズ31フィート(31ft)をフル積載して走っているのが、コンテナ貨物電車MC250系で蘇生された『スーパーレールカーゴ』。
佐川急便の貸切専用列車で、小口宅配荷物輸送の輸送高速化要請にJR貨物が応えたもの。
MC250系は、編成両端に2両ずつ制御電動車と中間電動車があり、中間付随車が12両の16両編成。電動車には31ftコンテナ1個、中間付随車には31ftコンテナ2個積載し、編成コンテナ数は合計28個。
(Wikipediaから)
MC250系は最高速度130km/h、東京貨物ターミナルと大阪安治川口間の約570㎞を6時間12分で走ります。それまでの機関車けん引最速列車は6時間40分。
スーパーレールカーゴの表定速度は91km/h、JR在来線特急の中でも最速クラス。あの151系ビジネス特急「こだま」は表定速度85㎞/hでした。
(Wikipediaから)
そしてもう一つは、
『トヨタ ロングパスエクスプレス』
愛知県のトヨタグループで製造された自動車部品を、トヨタ自動車東日本(株)岩手工場へ輸送するため、名古屋臨海鉄道の名古屋南貨物駅から、笠寺駅より東海道本線、そして東北本線を経由して盛岡貨物ターミナル駅まで、1日2往復運行しています。
列車種別は最高速度100km/hの高速貨物列車で、所要時間は15 - 20時間。
(Wikipediaから)
基本編成はコキ100系20両編成で、31フィート(31ft)専用コンテナを1車2個、最大40個積載します。
この図は古いので旧社名「関東自動車工業岩手工場」と書いてありますが、現トヨタ自動車東日本のことです。従来は名古屋港から仙台港までの海運とトラック輸送主体でしたが、現在はこの区間の輸送の8割を担うまでになっているとのこと。
名古屋臨海鉄道のディーゼル機関車にけん引される「トヨタロングパスエクスプレス」、略して”トヨロン” あるいは、”ロンパス”。
BSテレ東の『乗れない鉄道に乗ってみた』スペシャルで、ナレーション担当のテツ女”市川紗椰さん”が、”トヨロン”を牽く名古屋臨海鉄道のディーゼル機関車に添乗して、大興奮でしたねー。
(Wikipediaから)
専用の31フィートコンテナUA55A型。
片妻面に扉があり両側面がウィングの三方開き構造になってます。
(Wikipediaから)
自動車会社の鉄道輸送の関わりは古く、トヨタ自動車は、現_愛知環状鉄道、元は国鉄岡多線の北野桝塚駅に、完成車輸送ターミナルを置き、国鉄車運貨車ク5000による、完成車の全国輸送が行われていました。
ク5000では完成車にシートこそ掛けられていたものの、天候不順やブレーキ粉による汚れが問題になり、密閉構造の車運車が検討されました。
それが、コキ71低床コンテナ車(Wikipediaから)
カーラック方式で、30フィート級車載ラック2個、または12フィートコンテナ4個を積載可能とし、自動車輸送の復路も一般貨物を積載して返却できるよう設計。

1994年から2008年まで、名古屋貨物ターミナル駅から、、新潟や米子などへのトヨタ完成車輸送に使用されましたが、現在は用途廃止となっています。
他にも、長距離ドライバー不足解消を狙い、トラックごと貨車に積む『ピギーパック』輸送も試されましたが、バブル期崩壊後、コストが折り合わず廃車に。
こうしてみると、トヨタなど自動車会社も国鉄時代からJR貨物になっても、モーダルシフトに向けた可能性を鉄道会社と共に色々探っていた訳ですね。
近年、環境問題と、ドライバー高齢化や少子化で人手不足が問題になりつつありますが、再びこうした取り組みが前向きに議論されることを願っています。
(閑話休題)
さて、12フィートコンテナを積むコキ100系はよく見かける貨物列車のスタイルですが。
海上コンテナは国際規格(ISO)で決められていて、大きく分けて次の3種。
20フィート(20ft)m、40フィート(40ft)、と40フィートハイキューブ(40ftHC;いわゆる背高コンテナ)があります。
JRの12フィート(12ft)や31フィート(31ft)は海上コンテナ規格ではないのですね。
コキ110に積載された、20フィート(20ft)海上コンテナ。
コキ100系だと20ftの3個積みが可能。
40フィート(40ft)コンテナを1個積みしたコキ110形。
コチラは、ISO規格の20フィート級タンクコンテナ2個積みのコキ200形。
40ftハイキューブを積載すると、通常の海上コンテナより約30㎝高くなってしまい、車両限界と線路建築限界に抵触します。
このため、現在コキ100系での40ftハイキューブコンテナ輸送は、地上設備が対応できる東京-盛岡間にルートが限られ、自由度がありません。
このため再び低床貨車に注目が集まり、コキ73形が試作されましたが、JR貨物は車両製造コストが大きことを理由に、低床コンテナ車の量産に難色を示しているとのこと。
コキ73に40ftハイキューブを積載した様子。
コキ73は低床化するため、通常直径860㎟の車輪を直径610㎟にした空気ばね台車を履いています。車両が高価なのですね。
ここで、ようやく再び 『自社製品のモーダルシフト取り組みについて』 話を戻しましょう。
コンテナを仕立てて、送り試験を開始したという連絡メールが届きました。
コンテナは20フィート(20ft)、Gセンサー(加速度センサー)も仕込んだということで。
積み込む貨物駅の南福井駅ですが、1年ほど前に改修工事が終わり、着発線荷役が可能になっています。
☞【JR貨】南福井駅でのDE10形による入換作業終了
2021年10月10日をもって、南福井駅でのDE10形ディーゼル機関車を使用した入換作業は終了。翌日11日よりE&S方式(着発線荷役方式)が導入されます。
(2nd-train netから)
南福井駅着発線荷役方式初日。(JR貨物公式Twitterから)
そして、輸送テスト開始。
南福井駅での、当社製品を載せたコンテナの、3094列車積み込み風景です。
架線下の着発線荷役が行われています。
南福井はトップリフターではなく、大型フォークリフトなのですね。
神戸貨物ターミナル駅も、ホームが上下本線に挟まれた着発線荷役方式対応。
南福井で積み込んだコンテナを載せた75列車が、神戸貨物ターミナル駅に到着。
貨車はコキ104ですね。
神戸貨物ターミナル駅はトップリフター(上からつかむ荷役機械)が常駐。
仮置きされた後、トラックに載せられて神戸港埠頭に向かい、通関のあとコンテナ船でクアラルンプールに向けて出港することになります。
モーダルシフトは、民間企業だけの力ではなかなかメリットが出せません。
貨物輸送と国際物流、という高い視点で、コスト構造の矛盾を是正し、90年代のような新たな技術開発も積極的に行って、鉄道貨物と、トラックや船舶、航空機との共存を図っていくことを望みます。
最後に、
初冬の北鯖江駅を通過する、高速コンテナ貨物列車の連続写真を。
けん引機は、通称レッドサンダーEF510-9。
12フィートコンテナが連なり…、
目の前を、ダダンダダンという轟音と共に、駆け抜けていきます。
20フィートISO規格のタンクコンテナの姿も!?

機関車けん引の、黙々と働く列車はカッコいいですねー。
トップ画像解説、
北鯖江-鯖江間にて、元カシオペア牽引機のEF510-509が引く高速コンテナ貨物列車。
装飾を取り払った銀カマの車体が渋い…。。
☞【関連記事】【ガンバローJR貨物!】JRと国鉄の電気機関車
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