新車で購入したジェミニの2号目。当時イルムシャーRという足回りの設定があったので、どうせならと、そのオプション仕様を選びました。車が届いてしばらくは、峠に行ってスターレット兄ちゃんやハチロクの後を追いかけてました。なんで後ろかというと、遅かったから。135馬力が110馬力より遅い。後から遅い理由は分かりましたが、それがなかったとしても遅い車です。実はいすゞ製4XEIの実力はこの程度です。遅かった理由は、新車なのにクラッチにオイルが漏れて滑っていたためですが、メーカーの品質管理のレベルも同様になのです。購入して半年はあちこちとトラブルがありました。
このままでは全然楽しめないと悟り、思いっきりチューニングすることにしました。「チューニングエンジンのパーツあるから買わない?」との話があったためですが。
RACラリー仕様の試作ハイカムと試作コンピューロムを入れ、ボアアップして圧縮比11。マッピングはこのカム用に設定されたカスタム仕様。ショップで行われていたような、ジャンパー線組み替えただけのなんちゃってECUではありませんから、スピードリミッター変更も回転リミッター変更もロム交換だけで行います。ジャンパーなど一切いじる必要がないのです。マッピングに関してもいじれるところは本当に微妙なところしか余地はないので、ショップの広告は大げさすぎます。そもそもメーカーはみすみす出力を抑えるようなことはしないのです。
チューンの結果、シャシダイの実測で145馬力でした。足回りは、当初は全日本ラリーで使っていたやはり試作品をそのまま入れました。LSDは当時クスコのタイプCが出たばかりだったので、それを組みました。ビスカスではやはりトラクションが薄いですね。このエンジン仕様はサーキットでは時速220キロまでは出たのだそうです。僕は計測する機会がなかったので、確認はしていませんが、同じ仕様で走っていたラリードライバーの方の計測ではそこまで出たといいます。
ジェミニのタコメーターの一万回転表示は、子供っぽくかなり恥ずかしいです。バルブのサージングのせいで、せいぜい7700回転しかまわらないのに。(初期の190は8300回転が上限だったような気がしますが)
市販のストック状態の4XEIの実測パワーは100から108馬力の間なので、カタログ値ははったりです。いすゞのエンジン選別品はもっと出ていたそうですが、一般品は、額面との落差がかなり大きいです。当事の雑誌のパワー計測では同クラスの車の中では常に最下位でした。ベストモーターリングのバトルでも常に最下位だったのは実力どおりです。1.3リットルクラスのシャレードやフェスティバよりサーキットタイムは遅いのです。実はFFジェミニはたいへん遅い車です。
ともあれ、チューンナップ仕様だと峠の登りでは、当時のシビックタイプRと遜色なかったです。あちらは実測でも額面どおりの160馬力。しかし、こちらは145馬力とはいえ100キロ軽いですから、なんとかなりました。2速立ち上がりのコーナーでバックミラーにEP-82やハチロクが見えたとしても、3速にシフトアップしてレッドゾーンに達する頃こはだいぶ後ろにほうに下がっているのが分かります。
回転リミッターと速度リミッターは、ROM調整でカットしています。排ガスもカットされています。ハイカムになっていたとはいえ、8000回転超えではやはりサージングが発生します。ハイドロリックバルブアジャスタがネックだったのだろうと思います。
整備手帳に計測グラフをアップしましたが、秋から冬にかけての気温の低いときは、かなり馬力があったという印象です。
ノーマルエンジンでの話ですが、夏登りで回すと燃焼温度が高くなり、オイルが沸騰してハイドロリックバルブがガチャガチャ言い出すのが「休め」の合図でした。加速でガソリンタンクの燃料が後ろに行ってしまい、燃圧が下がって空気が濃くなるせいでした。燃料タンクにバッフルがなかったためです。改良された後期のものはそういうことはありません。このエンジンが過熱した時にエキマニを見ると「真っ赤」です。まるでローターのように。いやー、よくこれでエンジンが壊れないものだ、と妙に感心したものです。いずれにしてもオイルにもエンジンにもあまり良い設計ではないです。
そもそも買い物車ベースだからそこまで想定していなかったんだろうと思います。普通買い物車にオイルクーラーなんて付けませんし。(いすゞのディーゼルターボにはそういう設定ありましたね。)
当初、改造エンジンには藤壺の蛸足もつけていました。しかし、峠のような標高の高いところに行くと燃調が合わずにガスが濃くなり、かぶりぎみになるので、捨ててしまいました。藤壺のは低速のトルクが薄くなるので、峠には向かないですね。後ろを走っていた人たちから「ガソリン臭いから燃調合ってないんじゃない?」とよく言われました。タナベのマフラーもただうるさいだけでメリットはなかったです。
車両重量が軽いせいもあって高速コーナーではS13やFCよりも速かったそうです。周りからは良くそのように言われました。「ターボ積んでいないのになんでこんなに速いんだ?」と不思議がられました。しかし所詮はチューニングエンジンであって実力ではないです。本当に速い人はやはり下りでしょう。そうなると当時のハチロク連中には土人のように速い人がたくさんいました。
イニシャルDの世界は下りなら本当にあの漫画のとおりです。僕もハチロクにいつもバンパーがくっつかんばかりに煽られていましたから。ボディの重たいGT-Rもいいカモでしたね。
廃車の理由は、ボディが弱くなってひどくねじれるようになったためです。サイドシル部がひどく錆びてしまったのが原因。エンジンは製作してから7.5万キロほどトラブルなしで回りましたが、後半にはだいぶ騒音も大きくなったので潮時と思い廃車にしました。カムも捨ててしまいました。ロムはネットで知った方に差し上げました。
6年くらい乗ったかもしれません。