
ボルトが外れない。
錆びて固着?ネジロック?ねじ山が潰れてるのに無理やりねじ込んだ?鉄とステンレスとか異種金属で電位腐食?同種材料だけど高温で固溶部分形成?
理由は色々あるかもしれませんが、最悪こうすれば何とかなる。 について。
対象はφ5mmのボルト以上でしょうか。小さなネジだと小細工が効きません。
また、下記に出てくる「刃」は、少々高くても有名な製造元のものを使った方が良いです。念の為。
<大事なポイント>
①深刻な固着レベル:
ボルトの軸ねじり強度よりも、ネジ部の固着が圧倒的に強ければ、回しても軸がねじれて折れるだけ。つまり軸を内側から破壊して外すしかない。
②滑れば回せるレベル:
ネジの固着レベルを下げればボルトを回して外せる状態にできる可能性がある状態
③舐めただけ:
単にネジの頭にある六角レンチやプラス、マイナスドライバー部分が舐めてしまっただけのレベル。ちょっと強めに締まってるくらい。
①②ほど固着していないはずの③なら、ボルト先端と工具先端の加工、ネジザウルスやパイプレンチ、バイスレンチ等 (KNIPEXが良いよという情報も コメント参照 ありがとうございます) の使用で回るはず。またはグラインダーやヤスリで溝を切ってマイナスドライバーで回す、大きめボルトなら鋭利なポンチで周囲を叩き回す。。等
回りそうだけど頭が無くなっているような場合は、ボルトに穴を開けて逆ネジタップやエキストラクターで抜く手も。ただしダメならあまり深追いしないで②へ。折れるとややこしくなります。折れた場合は①の対応。
③(舐めただけ)で難航する様なら「固着もひどい」はずなので、②の手段を駆使する。
ネジの頭をハンマーで叩く、ショックドライバーで回してみる(ここまでは汚さない手段)。
それでダメなら潤滑系に移行。油が付着する前提の作業です。
5-56はお手軽ですが効果はラスペネには敵いません。これらに類する潤滑剤を吹いてネジ部に浸透させます。たっぷりと、10分おきに数回は繰り返し。何なら数日待ちましょう。
それでもダメなら熱を加える系。ヒートガンやガスバーナー等。
加熱による膨張は絶対的な物で、温度分布や膨張係数差があると膨張に差が生まれます。するとそこに隙間が出来ます。加熱や極部的な冷却を組み合わせて隙間を開け、潤滑剤を浸透させ、固着レベルを下げる。最近は冷却潤滑系というジャンルも存在するんですね。
単に熱をかけるだけでも界面にズレが生じて結合が解かれる効果も。ただし赤熱するほど加熱しないと大きな効果を得るのは厳しいようです。アセチレンバーナーとか酸素バーナーとか。
(追記:小さめ熱容量のユニットでネジロック原因を含む固着なら、ワット数の大きいハンダゴテでボルト側かナット側を直接接触加熱する手段についても情報頂きました。温度勾配付きやすいと思います。詳細コメント参照 ありがとうございます。)
この②固着レベル下げ、を実施して、少々舐めたボルトを頑張って回して外れれば大成功。
※次にボルトを止めるならタップのさらい直しを忘れずに
しかしそれでも、ボルトを回す力に軸が負けて折れてしまう場合は最終手段①に移行。
軸が負けるレベルかどうかの確認方法としては、ボルトの頭にナットや別の軸を溶接するのが最終確認手段かと思います。
しっかり溶接すると熱も入って、②の最終手段まで駆使した上でボルトを回して、軸が折れたらいよいよ①の手段しかない。と諦める。もちろん溶接まで出来なくても、その手前までの手段で万策尽きる場合もあると思います。
さて最終手段の①ですが、最悪の最悪は、ねじ山を壊して一回り大きいネジを作り直す。またはヘリサート等を使ってネジ穴を再構築する手になります。
(ネジ穴の位置がズレてもサイズが変わっても良いなら以下は気にせず別の場所に穴を開けてタップを立てたほうが速い)
最悪の手段を覚悟したとしても
⚫︎「外れないボルトの真ん中に穴がある事」
がとっても重要になります。
穴を開けるに当たって、外れないボルト直径、つまり「ねじ山」の直径ではなく、ネジの谷の直径の7割以下(ボルト径が太いか、自信がないなら5割以下)の径で、それも細めのドリル径から始めて、ボルトに穴を開け直径を拡大して行きます。
必ず尖ったセンターポンチでセンター位置を決めてから。
ドリルが上からも横からもボルトの挿入方向と向きが合っている事を確認して、ゆっくり穴を開ける。
穴が空いたら、ここから手段は二つ。
逆ネジタップを立てるか、エキストラクターを使用して「回して」ネジを外すか、それともボルトを破壊して除去するか。
②を散々やった上で軸が折れたなら、①の固着レベルは相当酷い可能性があり、エキストラクターや逆ネジを使用しても回らず期待薄かもしれません。
困るのは、この道具が穴の中で折れる場合がある事。
くれぐれもエキストラクターはボルト径よりも一回り大きい物の使用をお勧めします。エキストラクターが食い込んでも、食い込み口が負けてしまうなら、深追いしてもあまりいい結果になりません。
ここで大事なポイントです。
ボルトのネジ谷径よりも小さな穴が、もしズレてしまった場合について。
その場合はエンドミルです。フライス盤の加工で使用する刃で、水平方向にも加工を進めることが出来ます。
ドリルにエンドミルの刃を付けて、横方向に力をかけると、ドリルでは難しい穴位置を真ん中に持っていくよう修正出来ます。
一回り小さな直径のエンドミルから始めて、センター位置を修正したのちに、直径を広げていく方が良いですね。
また、逆ネジタップやエキストラクターが穴の中で折れてしまった場合は、「超硬」のエンドミルを使って除去するのがおすすめです。
硬さ: 超硬>HSS鋼>鉄やステンレス>アルミ
先端の尖った超硬ドリルもありますが、中で折れた工具のセンターから穴位置がズレる可能性もあります。
このため油をしっかり供給しつつ超硬エンドミルで掘っていくのがオススメです。
尚、ある程度ボルト径が大きければφ1.5mmドリル等で折れた工具の周辺を掘って取り出す手もあります。また超硬リューターの刃で削っていく手も。ただしリューターも回転中心は加工力が無いので注意です。
ネジの谷の径より1mm、半径・厚みで言えば0.5mm程度小さい径までボルトの真ん中に穴が空いている状態に持っていきます。
ここまで来れば、後は薄いネジ山付きパイプ状態になっているボルトの残骸の破壊です。
キリや小さなマイナスドライバー、リューターを使って、固着したネジ山を内側から剥がしていきます。
少なくとも手前4回転分程度のネジ山が見えたら、ボルトと同じサイズのタップを「優しく」立てながら、奥にあるボルトの残骸が除去できるか確認しながら進んでください。
万一、タップが折れて詰まったら、また超硬エンドミルやボルトでタップを除去する事になります。
ねじ山を壊してしまったら、一回り大きなボルトサイズに変更か、ヘリサートを使った対応になります。
タップの進みが悪ければキリでほじくる、リューターで削る等の除去に戻って、ネジを壊さないように、更に進めて行きます。
さて、ネジ穴を壊さず①レベルで固着したネジも外せたでしょうか。幸運を祈ります。
ダメだったらヘリサートまたはネジ径拡大にトライしてください。
穴が真ん中に空いていれば、次の工程もスムーズに行くかと思います。
忘れるところだった。
次回固着しやすいネジを締めるときはモリブデンや焼き付き防止剤の塗布を忘れずに。