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2024年07月21日

一体いつからクロノと錯覚していた? コロン商会 21型クロノ風商館時計 明治22年頃

久々にやって参りました時計ネタ。
天真折ればかり引いて暫くやる気を失っておりましたが、ようやく面白くて直せそうな個体を入手できました。
それもかなりの変わり種を。







一見いつも通りの商館時計ですが、定番のスモセコの他にセンターセコンドもあります。
扱いはコロン商会で旗印(交差旗印、年代等は後ほど)。
普通はこの見た目だとクロノグラフなのですが…



機械がこちら。
3フィンガーブリッジとイングリッシュレバー脱進機、更に鍵巻き兼用設計も気になるものの、センターセコンドは本当にただの秒針らしい。
3番車に重なった追加のギアは、そのままセンターセコンドのギアと噛んでいる様子…
正体は「クロノグラフ風ダブルセコンド」だったのです。

とどのつまり…虚仮…!

等と言ってしまうと大変失礼で、コロン商会扱いの「ダブルセコンド仕様」はたまに出てくる模様です。
しかし今回入手の物と同じ機構っぽいのは検索ではヒットせず。
ネット上にあったのはガンギ車が中央付近にあるタイプでしたが、こちらはワンプッシュクロノから機構を一部取ったみたいな見た目です。
普通の時計に素直にギアを追加した形とも言えます。

まぁいずれにせよ、変態度の高いレアモデルと言うのは確かでしょう。
これが普通の値段で入手できたのは幸運でした。
当時モノの本物クロノとか、まともな状態なら手が出ませんから…

また、嬉しい事に洒落たチェーンが付いてきました。
編んだ紐のようにも見えますが、全部金属製のシングルアルバートチェーン。
洋銀製らしく特に高級な素材ではなさそうなものの、これまた個性的でヨシ。
直った暁にはこの時計専用のチェーンとして使いましょうか。
バータイプではなくナスカンタイプで使い勝手も良い。
当方スーツは数年に一度着るかどうかなので。

現状はゼンマイが巻き上げてあり、恐らく油切れにより動かない状態。
テンプはすぐに振りが止まるものの天真は無事なようです。
グラスバックの風防が失われているため、油切れが早まった可能性が高いかと思われます。
ケースは側面の凹みと裏面の摩耗はあるものの、致命的な痛みはありません。
ベストを求めればキリがありませんので、使い込まれた味として受け止めましょう。


さて、この時計の年代について。
今回の旗印は「コロン」とカタカナが入っていながら、スイスで商標登録がされているようです。
日付は1882年(明治15年)3月20日。703番の登録らしい。
日本での登録はどうかと言えば、調べ方が浅いor悪いのか見つけられず。
ただ、日本の商標登録第一号が明治17年なので、それ以前のマークであれば、国内未登録でも筋は通るでしょうか。
でも明治22年の価格表では、明治30年に国内登録される鶴印が既に出てるんですよね…どうなんでしょう。
ランク的には鶴→獅子→旗→星→無印(コロン銘のみ)の順になるようなので、ミドル~アッパーミドル位になりましょうか。


と言う事で、一つの基準で明治15年を最古としてみると、機構が少々新しすぎる気がします。
時計部分はイングリッシュレバー、つまりアンクル脱進機の仲間ですから、シリンダー式よりは後。
それでいて角穴車は鍵巻き兼用で仕上げられているため、アンクル式でも少々古めの部類と言えましょう。
アンクル脱進機とダボ押し時合わせの機構は凡そ明治22年以降とされるので、古くてもその頃かと思われます。

またこれが有力な手掛かりですが、「古時計どっとコム」様に掲載の明治22年コロン商会価格表(田中時計本舗)に、下記の名前が載っているのです。

「仝廿一型中三針脇セコンド付龍頭」

「仝」は「同」の異体字です。「廿」は「二十」。
旗印の一つとしてラインナップにあり、それの何が同じなのかと言えば、旗印シリーズの最初を見ると「銀側片硝子廿一型龍頭」とあります。
これは商館時計として定番の、800銀オープンフェイスケース龍頭巻きで合っているはず。
それとベースが同じという事です。
機械は「ニッケレーアンクル」と書いてありました。
これも合っています。

価格は12円50銭との事。旗印で一番高い。
基準は色々ありますが、初任給から見た価値判断としては、明治の1円は現在の2万円程度になるそうです。
とすると、この時計を現代で新品購入できたとすると、約25万円ほどとなるのでしょうか。

という事で少々逸れましたが、この時計は明治22年頃と言って良いのではないでしょうか。
いかがでしょう?
…正式名称は「銀側片硝子廿一型中三針脇セコンド付龍頭」とかなるのかな…呪文みたいな長さ。


では、シンプルとはいえ未知の機構に気を付けつつバラして行きましょうか。



普段通り機械を取り出しました。
今回はダイヤル裏に過去のメンテナンス履歴が書いてありました。
10.8.9は、8月9日は良いとして…和暦なのか西暦なのか不明。
西暦だとすれば今から14年前ですから、この状態でもあり得なくはないのかなぁ。
和暦ならば何となく平成な気がします。
大正・昭和なら年代的に漢数字にしそうというイメージです。



ブリッジにもシリアルはありましたが、こちらでナンバーズマッチを確認。
この裏蓋、刻印が斜めに入ってるんですよね。これもまた珍しいように思います(後で真相が判明)。



改めて表面。
ダボ押しのバネが中央付近から伸びるのが個性的と言えるでしょうか。
レバーと並行か、レバー支点の反対側から伸びるのが多数派だと思います。



裏面です。
今回は扱った事の無い機構が入っていますので慎重に…



それがこれ。どれだこれ?
左の軸付きが3番車で、右のはその上に刺さる(弱く圧入な感じの)センターセコンド用のギア。
やっぱりクロノではないダブルセコンドでした。
イレギュラーに2段構成なギアなためか、これが被さる4番車ブリッジと共に分解手順に少々悩みました。
半端に外して浮かせつつ別の方を外す…みたいな。



ここまで来ると、普段との違いは2番車の受けに別パーツがある位。
普通に分解できました。
センターセコンドの芯はかなり余裕ある穴を通っており、細いバネでテンションを掛けてギアを噛ませているようです。



香箱は中のゼンマイも良い感じ。
巻きを緩める時にまたハジケ祭しかけたのでヒヤリとしましたが…無事で良かった。



全バラ完了です。
後は折れていた長針をどうするか考えつつ、洗浄していきましょう。
風防も手配しないと。

今回も特にエボ―シュ工房のマーク等はありませんでしたが、コロン商会という事でCh.ホルマン社製の可能性が高いかと思います。
コロン商会扱いでホルマンの名前が機械に入るのは、それこそ多石3重蓋とかクロノとかの高級機らしいです。



組み立て途中です。
2段のギアはスポークをわざとずらして組んでみました。立体感が出るかと思い。
シリアル刻印の下に寝ているのがセンターセコンドの芯です。
それが1本バネの出ている穴に通ります。



アンクルを付ける前にザラ回し。
センターセコンドのテンションスプリングのせいか、割とすぐ止まるようです。
ただ変な抵抗は無さげなため、これでOKとします。



更に組んで機械だけでの動作確認。容器に入れて一晩放っておきます。
ブリッジの位置が決まらずアンクルの取り付けにちょっと苦労しましたが、無事動くようになりました。
テンプの振りも大きく、調子良さげです。
普通は無いはずのギアが1個飛び出ているため、「ちょっと違うぞ」感が良いですね。
2~4番のギアはくすんでいたので、軽く酸洗いをしています。



こちらはケースの再生です。
いつも通り酸洗いしてから磨きます。



磨いた後は側面の凹み修正。
大きな凹みはこの一か所。



完璧ではありませんがこの位にはなります。



いいタイミングで風防ガラスが届きました。
形状と厚みを優先して、1㎜ほど直径の大きい物を買いました。
ぴったりサイズは薄い物しか無かったので…



削り完了。
背後の白い粉が削ったガラス。
ベゼルに入るようになりました。



そのベゼルも、コジアケを引っかけた目立つ傷が。



そんな時は傷を消す魔法(物理)。



更に前面風防の傷もある程度消します。
深い所は仕方ありませんが、曇ってる感じの擦り傷は取りたいところ。
取付前のアフター写真は忘れました…



という事で無事完成。
サイズは21型なので、商館時計としては特に大型ではありません。
とはいえ懐中時計としては大きい方。
しっかりと大きさ・重さを感じられます。

折れていた長針は別のブレゲ針と接合。
構造的に中三針なので、長針の取り付け穴も短針同様のリブ付きです。
普通の商館時計からそのまま移植とは行かず。





2つのセコンドが同期して進行するのが面白いですね。
見ていて楽しい以外にも、やはり現代的な中三針スタイルは見やすくて便利です。
セコンドの同期はどうしてもややずれてしまいますが、140年近く昔の変わり種機構である事を考えれば十分な精度でしょう。



裏面は結構摩耗してます。
使い込まれた歴史です。
とても個性的な機種なので、きっと歴代オーナもお気に入りの一個だったのでしょう。





風防の戻った裏面内部。
大きなテンプが勢い良く振る様子はやはりカッコいい。
テンプの伏石など金属置き換え部分も無かったので、数字通りに14石揃っています。

最初にも書いた通り、普通は無いセンターセコンドのギアに3FB、鍵巻き兼用の角穴車、イングリッシュレバーと、特別な機能は無いながら見どころの多い機械です。
正統派の高級機には無い魅力かと。

なお風防の高さがギリギリとなってしまい、蓋を若干反らせて接触を回避しています。
何とか収まって良かった。



マークは真っすぐになりました。
実は蓋がベゼルと皿の2ピースになっていて(これは特に珍しい構造ではないようですが、今更知りました)、一旦外して付け直しました。
皿部分を内側に入れて、さも脱着可能な感じで出品されているジャンクを見かけますが、あれは単に外れてしまっただけだったのですね。
そのつもりで買った別のジャンクも、改めて確認したらちゃんと表からパチッと嵌りました。
脱着式にしてはちょっと緩すぎると思っていた折、納得と共に少々残念。

時計としての精度は、緩急針を限界付近まで進めていますが、それで日差-1分程度となりました。
テンプ周りは下手に弄ると後悔する恐れもあるので、それで使えるならヨシとします。
停止から巻き上げまでは龍頭の巻き回数で18回、動作は2日弱程度のようです。
十分実用的。
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Posted at 2024/07/21 22:10:28

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