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2025年02月23日

スタンド型電子コンパックの初代 三菱電機 R35-SN 昭和44年

今回のレストア対象は、2台連続となる電子コンパックでございます。
前回のR30-SSの前年となる、昭和44年デビューのR35-SN。



ニコイチ修理のため2台用意。
ファンガードの無い方が部品取りですが、実は当初は逆のつもりでした。
部品取り機を買ってみたら、そちらの方が状態が良かったためガードを移植。

ファン径35cmで、首を伸ばすと140cm弱になるスタンドファンです。
仰角調整ネジの付くネックピースより上は、30cmファンの機種と共通部品が多数。
故に30cmファンも取り付け可能で…部品取りにした方は当初そうなっていました。
買ってから気づいて、後年の機種を買って移植した挙句の部品取り化。
可哀想な事をしたなぁ…一部は糧となりますので、有難く使わせていただきましょう。


本機は電子コンパックシリーズとしては初の大型機となります。
この後二代続くR35-SN系の初代です。

今の所確認できているスタンドタイプの電子コンパックは、このR35-SN~SN3の3種に限るようです。
SN3はSN2をベースにしたマイナーチェンジ版のため、電子コンパックの初代にして30cmお座敷扇であるR30-SXと同様、「初代だけ別設計」です。

その後は通常のプッシュスイッチなりに纏まったようですが、人間が立った状態でスイッチが手~目線の位置に来るスタンドファンの方が、何となく電子スイッチに向いている気がします。
重心が高くなるため、プッシュよりもタッチの方が軽く操作できるという点からも。
それでもあまり流行らず終息したという事は、やはりメリットが大きくなかったのでしょうか。

こう考えてみると、生物の進化を辿るかのようですね。



当時のカタログも手元にあります。
以前レストアしたR30-SX2にてご紹介したものです。
その中のシリーズ一覧に本機が載っています。
というか、このカタログで存在を知りました。

「豪華な洋間・応接間にふさわしい電子スイッチがついた洋間扇の超高級タイプです」

との事。
分類は「35cm高級洋間扇」。
ファン色はブルーのみです。
電子スイッチは「風速順送式」となっており、結果的に風速選択式はこのカタログでメインを飾っているSX2だけ。
更にその初期型に限られるようです。

何故そうなったのかは不明ながら、一つの仮説として考えているのは、誤動作を取り切れなかったという事。
以前レストアした個体が正にこのカタログの外見のスイッチ(数種バリエーションがあります)でしたが、風速を選んだ後に電子スイッチを無効化(固定モード)としないと、暫くの後、勝手にレンジが切り替わってしまうのです。
それはもうランダムにガチャガチャと。事情を知らなければ完全なオカルト状態。

てっきりプリント基板上のキャパシタ劣化かと思いきや、交換しても収まらず。
コールドスタートからは少々時間を置いて起きる事から、電子部品の温度特性に思えます。

そして同じSX2にも風速順送式があったり、選択式でもスイッチ形状が数種あったりするため、当時の三菱電機が「諸々努力した結果、選択式はダメでした」と結論付けたストーリーが見えてくるのです。
まぁ完全な妄想ですけれども…


さて、この個体…大型機ですのでどう進めましょうか。
コンパックの利点として操作部から上下が簡単に分離できますので、先にどちらに手を付けるかが迷いどころです。
何となく普段と違う所から手を付けたいので、やはり基台部分でしょうか。
その後、合体させて上部を手入れすればスマートかしら。
ではそうしましょう。

…誰と話してんだ。



という事で分離。
裏面を開けていきます。
スタンドファンの特徴の一つとしてキャスタを装備しており、三菱電機ではローラベースと呼びます。
似た機構として、東芝のロータリーベースがありますね。

キャスタはゴム製のため、経年劣化で罅割れと歪みが出ています。要交換。
しかし、ハンマーキャスタ製とあって規格品かと思いきや、ビス穴ピッチの長い方が33㎜という変なサイズ。
短い方は24㎜なので、今なら30×24が売っているのですが…いきなり壁です。
仕方ないので、近い寸法の車輪に打ち換えるか?

…と思ったところで閃く。
「取付穴を片方切ってしまえば良いじゃない」と。
それでワッシャを挟んで締めてしまえば問題無いのでは?
という事で、打ち換え用の車輪も一応用意しつつ、30×24mmピッチの物を用意する方向。
その車輪は7mm大きいですが…半径で3.5mmなら、恐らく底板に干渉はしないでしょう。
したらその時に対策を考えれば。



裏蓋を開けました。
コード巻き機構が無いので実にシンプル。
…そして汚ねぇ。

普段と違う異臭(油臭いというより刺激臭に近い)がしていましたが、錆が混じったせいでしょうか。
或いは裏面に砂が少々付いていた事から、一時屋外か半屋外(納屋的な)にあり、雨や湿気が入った可能性。
そこはかとない雑巾臭。

とはいえこの汚れ、冷静に見れば唯のグリスです。
見た目は焦げ付いた鍋のようですが、首の伸縮機構で配線を滑らせるためのグリス。
このまま置いておくのも嫌なので…



早々に清掃。
臭いも消えて、触っても汚れないので一安心です。



そして首も分離します。
主目的は首の交換。付け根のガーニッシュ取り外しと清掃はいわばオマケ。
今回はニコイチ修理ですので良いとこ取りする訳ですが、全体的に良い感じのこの個体、どういう訳か首の下半分(塗装部分)はもう1台の方が奇麗。
特に痛いのが正面にガリ傷がある事。

なので交換しますが…大型機故にベースと分離できる構造で助かりました。
普通の30cmクラスでは基台として一体成型されているため、基台そのものを換えるしかありません。

そうなると加飾パーツの移植になりますから、難易度と手間が一気に爆上がりします。
特にヘアライン仕上げの飾りパネル等、広い面積を両面テープ止めしてある奴。
奇麗に剥がすのが至難の業なので、安易にやると却って見た目を損ねてしまいます。
その辺の状態の良し悪しと、購入時の引きの良さが大事になってきます。



向かって右が外したもの、左が着けるもの。
共に正面を上に向けています。
汚れは同等ながら傷の有無が歴然。

なお着ける方…当初はロックビスを外しても首が上がって来ず一瞬困惑。
一端操作部から上を戻して引っ張り出したところ、何とパイプが曲がっていました。
バタンと倒したとか、横倒し状態で荷重をかけた(売りに出る前の回収時とか)かしら。
ファンガードやモートルカバーが無傷だった点からすると後者かも。

で、それは素直にパワーで解決。
山なりになる向きに倒して体重をかけたら直りました。



首の付け替え前にベースは洗剤で洗いましたが、結構な砂が出てきました。
乾燥中に「縁に巻いてあるガーニッシュの隙間が乾かないな」と思い直し、結局外してもう一度洗う事に。

すると隙間にまたまた砂が。
そしてやはり雑巾のような臭いが…外して良かった。
そりゃいつまでも床がザラザラする訳だ。



買ってきましたキャスタ。
少々大きいですが仮合わせしたら問題無し。
これを…



こうしてビスが通るように。
穴からずれる分はワッシャで押さえてしまいます。



普通にM4ワッシャでOKでした。
ビスもオリジナルのまま。





ネックの伸縮部ガーニッシュもこの通り。
メッキの錆び落としは何度やっても気持ちいい。
なおこの部分、メーカ次第では内部のスプリングの押えも兼ねているので、取外しは慎重に。

三菱では、30cm系は無関係、本機はビス2本が兼用(内部にもう2本、固定専用のビスがあり)。
完全にガーニッシュだけで押さえている例としては、富士電機OEM時代のゼネラル ハイクール等。



これで基台は完了。
ようやく折り返しにしてメイン作業に入ります。
首を縮めれば分解に丁度良い高さ。



ファンには取り付け方法の指示ラベルが残っていました。
貴重品です。
剥がしますが保管しておきます。





後は前回のR30-SSや昨年のR30-SX2と同じ。
劣化のほぼ見られないモートルカバーが嬉しいですね。

時代時代で各社の長短が出るものですが、この年代の三菱はモートルカバーがガサガサになります。
三洋は黄ばむけど粉吹きはしない印象。
ちょっとした素材の違いなんでしょうけれども…



開けました。
全く同じかと思いきや、早速違いに遭遇。
35㎝ファンとそのファンガードで重くなる分、カウンターウェイトが載っています。
キャパシタも4μFではなく5.2μF。線も太い。



モートル配線も4本です。極数が違うものと思われます。
ファン径5cmの差とはいえ、しっかり設計も変えてあるのですね。
フロアファンの部類という事で回転数(風量)のチューニングが違うのかも。



とりあえずカウンターウェイトを取りました。
…と、交換用キャパシタに5μFが無く、仕方なしに3+2にする事となりました。
さて、どうマウントしたら宜しいか。



これでどうだ。4μFと同じギアボックス上と順正位置の併用。

仮にウェイトを置いてみれば、見事なまでに神がかったクリアランスでした。
なおこれ、純正の取り付け位置は、30cm系の4μFだと大きくてカバーがつっかえるため無理な場所。
2μFのサイズでギリギリ収まりそうな感じでした。
このまま進みましょう。



首振り機構などはR-30系と全く同じなので割愛。
モートルを外してネックピースまで至れば、カバーが一部内側に入っているのを発見。
製造時からなのか、後から何かあったのか。



スプリングのハジケに気を付けつつ分解。
今回はグリスの変質が少々変わった方面に行ってまして、透き通ったままロウの如く硬くなっていました。
それでも戦前機よりはずっと楽に落ちましたので、サッとクリーニング完了。
次はプレスでネックピースのピン抜きをします。



抜けましたのでテンションスプリングの位置確認。



ところ変わって伸縮する首との接点へ。
鉄球と窪みによるラッチがある通り、本当はここで左右に向きを調整できます。
しかしここもまたグリスがロウか飴のようになっており、ほぼ固着しておりました。



続いて操作部です。
全体は大型ながら、首の一部に位置するため操作部はコンパクト。
この中にタイマとステッピングリレー、制御基板が収まっています。



電子スイッチとインジケータ。
この型のインジケータは、どうも経年でクラックが入るのが癖のようです。
実際に見てみればゲート(成型の際、樹脂を流し込む湯口の部分)から放射状になるようで、樹脂の流れに沿っての事のようですね。

例に漏れず本機も出てはいながら、良い感じに軽度な様子。
よく見ると背景にレザー調のシートが入っているのも、余計そう見せるのかもしれません。



内部の下側。ステッピングリレー付近。
この後で電子スイッチの錆び取り等々やるのですが…
これ、スイッチは溶着で固定してありますね。
タッチスイッチと言えどプラパーツに銅箔+クロームメッキなので。
最後までは外さずにやりますか。



ここまでで外したメッキパーツ達。
錆び落としを行います。



ギアボックス内は普通。



清掃完了。30cm系と全く同じ。



ちょっと眺めを変えてみたり。



電子スイッチの錆び取り中。
ふき取りで済ませるため、垂れないよう薄く塗ってます。



完了。



インジケータのレンズとレザー調遮光シート。
横並びだと余計に信号機っぽいですね。



クラックは現状この位。



作業も大詰め。モートルカバー清掃へ。
仕上りは撮り忘れ…



組みあがってきました。
本当にちょうど良い高さ。



キャパシタとカウンターウェイトの取り付け完了。
ウェイトの存在を忘れて配線したため、少々スマートさに欠ける取り回しとなりました。





ファンを磨いて取り付けたら完成です。
なかなかボリュームのある作業でした。



1速運転中。
インジケータのクラックは、組んでみると気にならない程度。

普段戦前型に慣れていると、この頃既に当たり前だった「1速が最低速」に一瞬だけ戸惑います。
風量は35cmファンだけあって、強力と言う程ではありません。

しかしそれが相応と言うもので、然程離れない距離で風呂上りに涼むには良さそうです。
今は寒さの盛りのため最も縁遠い季節ですが、あと5ヶ月ほど先…今年の夏の夜はこれですね。
せっかくスタンドファンなので、毎年にしても良いかも。
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Posted at 2025/02/23 22:55:59

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