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2025年05月05日

キメラに見えて実は… 三菱電機 400mm(16吋)扇風機 昭和22年?

やって参りました扇風機ネタ。
車のSNSのはずが、すっかり当ブログの持ちネタと化しております。

今回入手しましたのはこちらです。



三菱電機の緑の奴。
戦前型ベースの戦後製造16吋です。
ファンがエトラ扇ではなく、戦前型と同タイプとなっています。

このスタイルは時たま目にするのですが、大抵は「戦後の本体+戦前のファンでオールペンorファン塗装」というものか、「戦前機のガードを戦後製に交換してオールペン」といったキメラ個体。
なので真偽はともかく「疑わしきは敬遠」で買い手が付きづらく、こちらも珍しく入札1件で終了…見た目のコンディションに対して少々値が張ったのもあるでしょうか。

オリジナルでこのスタイルが無かったのかと言えば、それは嘘であります。あれは嘘だ。
芝浦(東芝)であれば睡蓮を戦後も作っていたのでよく見かけますし、ナショナル・KDKでもたまに見かけます。
しかし三菱となると、戦前の時点からエトラ扇があったためか、戦後の個体はほぼエトラ扇の印象があります。
実際、この個体も初めて見たと思います。
一見すると上に書いた通り、ファンだけ戦前から移植したキメラのようですが…



ファンとガードその他が全く同じ色のオリジナル塗装で、しかもファンの素材はアルミ。
P剥げ部分の腐食からもわかります。
戦前型であれば真鍮か鉄、そうでなければベークライト(三菱ではマイカルタと呼称)なので、これが証拠と言えましょう。





更に言えば、戦後製造でありながら電線が布巻きというのが特徴です。
同社製で有名な12吋細目扇(エトラ扇)でもたまに現れますが、これまた他社にも例がありまして…



東芝のC-4706、後の「ひまわり」の原型ではないかと考えている個体です。
ひまわり(ADF-30R-1、ひまわりR-1)より戦前型睡蓮に近い設計で、より終戦直後に近い時期の製品と思われます。

これも今回の三菱と同様、カラー化・ガードのデザイン研究が行われた戦後の製造でありながら、ビニール電線が登場する以前のもの。
袋打ち電線とポニーキャッププラグが使われています。

では、それらの特徴から一体何が分かるのかと言うと…今回の三菱機も戦後直後の製造ではないか、という予想。

度々年代特定の裏付けとしております論文、「我が国における扇風機の機能,形態及び色彩の変遷」を見てみると…
1948年(昭和23年)のアサヒグラフに、同じガード・エンブレムのエトラ扇が広告として載っています。
その上の本文には、1982年発行の三菱電機社史からの引用として、「扇風機では昭和22年に業界にさきがけて若葉色を採用し、涼しさ、軽快さに加えて家電品としての親しみを出すなどその後の躍進への始動となった」という記述もあります。

エトラ扇の広告は「業界にさきがけて若葉色を採用」した翌年ですから、カラー化した際の機種はエトラ扇じゃなかったかもしれません。
知る限り、戦前のエトラ扇は12吋しかありませんでしたから、戦後復興の時期と言う点からも、16吋のエトラ扇はもう少し後の登場だったとも予想できます。
となると、今回入手した個体が正にそれかも…と考えらえれないでしょうか。

もしこの予想が合っているとすれば、三菱電機初のカラー仕上げ扇風機と言う事になります。
戦前にもパールホワイトやブラウンの展開はありましたが、インダストリアルデザインの意味を含むものとしては、各社とも戦後がスタートです。

…ならば、三菱系初の扇風機(三菱造船MKW)・三菱電機初の扇風機(初号扇12吋)に加わる「第三の三菱初」がやってきた事になりますね。

では分解整備していきましょう。
状態は然して悪くないようですので、どこまで奇麗になるかでしょう。



いつものようにファンガードとファンから。
ですが一体型のガードなので、ファンとの分離は知恵の輪状態。
どうせファンの端は塗装が浮いているので、結構ガリガリに擦りながら外しましたが…
本来はどうしていたんだろうか。
先にファンを軸から外すのが正解なのか…

なお、今回の欠品はガード固定金具とビス1セットのみ。
鉄板から適当に作る予定。



配線を外すため裏面へ。
裏蓋は大変奇麗で、フェルト脚も完全に残っています。



碍盤です。
戦後製造らしく、白磁器の無垢にビス類は鉄製。
電線は端末仕上げとカレンダー処理から、オリジナルと見て間違いないでしょう。



取り出しました。
しかしこの個体は細かい塵が多い。



ここは収縮チューブで補修でしょうか。



マイクスタンドになりました。
基台に一本入っている縦線はP剥げ。
結構派手なのでタッチアップしたい所ですが、背面(モートル周辺)もそんな感じなので、いっそ味として受け入れるか悩みどころ。
黒だったら目立たないし、適当に塗ってもあまり間違いないのですが…



戦後製造の証拠の一つ。
戦前型ベースでありながら、脱着式のグリースカップがありません。

前後とも給油口の鉄球が無いのは…ただそうなっただけか。
或いは仕様なのかわかりません。



エンドベルとギアボックス。
油汚れが結構ですね。



モートルの中は意外と奇麗でした。
引き出し線の根元が解れているのはどう補修したものか。
素直に絶縁テープを巻くか、それとも工夫するか。



ネックの軸にはスナップリングが入ってました。
三菱の戦前型には無い特徴です。
その代わりとして、仰角の軸にビスが入れ子になる構造ではありません。
ここだけメッキなのも含めて戦後型によくある設計かと。
見た目をスッキリさせたという事かな。



ギアボックスを開けました。
グリスは少なく、周辺の汚れ具合からしても出て行ってしまった模様。

素材は鋳鉄からアルミダイキャストに代わっています。
基台はバランス保持のためか、引き続き鋳鉄のようです。
エンドベル共々、持つと思いの他軽くて変な感じ。



清掃しました。首振りカムはハンドプレスでピンを抜いて分解。



角度を変えて。



こちらは首振りアームとネックピース。
モートルを受けるベアリングの下には圧縮紙のシムが3枚。
これも戦前機には無いもので、改良点の一つでしょう。



碍盤にも塵が積もっています。
簡単に清掃すると…



驚きの白さ。
次は基台へ。



主に塵の除去でしょうか。
剥げを除けば塗装面自体は良好なようです。



軽く磨くとかなり奇麗になりました。
派手にガリ傷があるのはどうしましょうか…
この個体の塗装、銘板の凹部を含めて弱めのようです。
ちょっと引っ掛けたり圧を掛けるとパリッと行ってしまいます。
この1台が弱くなっているだけなのか、時期やメーカの特徴なのかは何とも言えません。



また、この個体で珍しいのがブッシュ。
色付きゴムブッシュは当時各社よく使っていましたが、今日まで無事なものは極めて稀。
驚く事に弾性が残っています。
電源コードの部分だけは溶けていたので交換しました。



モートル配線を戻します。
電源線は悩みましたが、外装が爪で引っ掻くと破けるレベルだったので交換。
せめてもと思い、東芝用の同色綿打ち(こちらは袋打ち)にしました。







という事で完成です。

P剥げが残念なのと、何となく納得行かない仕上がりになった点が複数あり、どうもやり切った感がありません。
金具も結局作る気が起きず放置。
いつか手を付ける日が来るかなぁ…
珍しい機種である事は確かだと思うので、ゆっくり過ごしてもらいましょうか。
ある日突然やる気が出て、色合わせしてタッチアップしたり…するかもしれません。
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Posted at 2025/05/05 23:07:42

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