• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+

菊菱工廠のブログ一覧

2022年10月20日 イイね!

過去のレストア記録 ~ 大正7年 三菱電機「初号扇12吋」

これまでレストアしてきた扇風機は、手放した物も含めると恐らく60台程になると思います。
現在手元にあるのは50台程度かと思いますが、学生時代に購入・整備した物もあり、みんカラを始める遥か前の物が多数です。

という事で、記事の充実を図る意味でも、これまでの整備を振り返って投稿したいと思います。
日付は迷いましたが、投稿は現在時間として、本文中に作業した年月を記載する事にします。


前回から始まりました振り返り企画。
第二弾は「三菱電機 『初号扇12吋』」です。
前回の芝浦より更に一年古い大正7年型で、芝浦と共に現存数の多い三菱の戦前型の中でもレアリティの非常に高い機種です。
というのも、その名の通り三菱電機の発足後、最初に量産された機種だからです。

元は客船用の直流扇風機を手掛けていた三菱造船電機製作所が三菱電機のルーツであり、神戸造船所内にあった頃の品なので「Kobe」の刻印があります。
雷光型ガードが一番の特長ですが、芝浦や日立のそれとも構造が異なり、「MITSUBISHI」のエンブレムもきっちり取り付いているので、後から改造されたものではありません。
こちらを入手したのは2014年4月18日の事でした。

現在104歳の扇風機ですが、2度のコイル断線も乗り越えて動態保存となっています。
持ち主の気が向くと、現役として活躍もしています。



入手時。後ろに居る何かが分かった方は趣味が合う方です。
当然写真も2014年なので、背景のPC画面はXPです。
なお、新聞は私のではないのでお気になさらぬよう。
仮の電線を繋いでテストしたところ、現状では不動でした。







まずは分解しつつ状態を見ていきます。
取っ手のビスは固着している個体も多い中、運よく外す事ができました。



ファンとガード、ロータを抜いた状態です。
この姿を見ると、いつもマイクスタンドを思い出すのですがいかがでしょうか?









今回は首振りギアボックスの清掃をさっさと済ませてしまいました。
三菱の戦前型とそれベースの戦後型扇風機は、スパーギアとカウンターギアによる減速方式の物が多いですが、銘板に「Kobe」と刻印のある頃の型は芝浦と同じ遊星ギア式となっています。

それぞれ、遊星式を「甲型」、カウンターギア式を「乙型」と呼ぶのですが、後発の乙型はダイキャスト部品に不良を抱えたロットが多かったようで、「結晶粒間腐食割れ」という崩壊現象を起こしてしまう個体が多く見られます。
…なんか血鬼術みたいな名前だな。効果は電轟雷轟っぽいし。

唐突に脱線しましたが、同じダイキャスト式で作られたモートル受けの部品も同時に崩壊しているのが見分けポイントです。
富士電機の同時期の機種にも同様の現象が見られます。
甲型では何故か殆ど見られないので、この個体も将来安泰だろうと思っています。

最後の写真にはギアボックス底部に小穴が開いていますが、ここからギアボックス内とモートル軸にグリス・オイルが循環します。



他の本体部品も清掃完了。



モートル本体の受け部分です。
芝浦同様にボールベアリングとなっており、こちらは取り外しできました。
本来はこの位、キッチリと隙間なくボールが揃っているのです。





モートルのロータは芝浦とほぼ同じ。混ぜられたら見分ける自信なし。
後部のシム・ワッシャは真鍮・ゴム・圧縮紙の三種混合。





そして問題の断線箇所。
一番厄介なコイル断線が起きているようで、一本アホ毛のように立っている線がありました。
で、適当に繋いだところ…何と導通。
これ幸いと引き出し線を交換して完了としました。
この頃よくやっていた、黒電線三つ編み仕上げです
(なお、数年後に断線が再発したためコイルごと交換しています。それは後程。)。













いよいよ羽根磨きです。
作業前、酸洗い、研磨の順に写真を載せています。
この時代の扇風機は各社とも真鍮羽根で、塗装仕上げしない無垢仕様が多かったようです。
なので、この個体のように当時の錆び止め油が模様として残っているものも多く、私のレストアスタイルとしてもそれを受け継ぎ、クリア塗装はしていません。
それでもマシンオイルを塗っておけば、2年に一度軽く手磨きする程度で奇麗に維持できます。
クリアが剥げてそこだけ酸化して、手に負えなくなるよりもずっと自然です。

なお、三菱の羽根はハブに進角が付いておりスラントしているので、流用されていても一目でそれと分かります。
羽根自体の表面も滑らかなので、研磨すると非常に美しい仕上りになります。
芝浦はややマット、日立などはある程度凹凸のある表面のようです(主観ですが)。



本体が組みあがりました。
羽根ガードは一体型なので、羽根を取り付けてから最後に被せます。





ガードの溶接剥がれ補修と再塗装、エンブレム磨きが完了しました。



完成しました。こちらは現在の姿です。
数年前にも磨きましたが、少し地金部分がくすんできました。また磨かないと。

そして一旦の完成から数年後…使おうとしたら不動になっていました。

残念ながら、コイル断線が再発してしまいました。
とはいえ適当に補修しただけで正直不安でしたので、交換するいい機会と捉えました。





早速同じ神戸時代の機種(比較的良く出回っている型)をドナーに入手、タコ糸で結わえてケースをゴムハンマで叩き、何とかコイルの取出しに成功しました。

ケースはほとんど年式が変わらないはずですが、軸の先端やロータ軸受け周辺など、細かい部分に違いが見られます。
どちらが古い方かは忘れてしまいましたが…

なお、三菱電機も神戸時代の一時期に限っては芝浦同様「電線前方引き出し」のモートルでした。
なので同じく電線交換が難しいのですが、電線の状態も良いコイルを入手できたので、そのまま使用しています。
その結果、よりオリジナル度が高まる事となりました。
怪我の功名ですね。
Posted at 2022/10/20 22:14:09 | コメント(1) | トラックバック(0) | アンティーク家電 | 趣味
2022年10月20日 イイね!

過去のレストア記録 ~ 大正8年 16吋電氣扇 芝浦製作所 2025型

これまでレストアしてきた扇風機は、手放した物も含めると恐らく60台程になると思います。
現在手元にあるのは50台程度かと思いますが、初めの頃の物は学生時代に購入・整備しているので、みんカラを始める遥か前の物も多数です。

という事で、記事の充実を図る意味でも、これまでの整備を振り返って投稿したいと思います。
日付はどうするか迷いましたが、投稿は現在時間として、本文中に作業した年月を記載する事にします。


さて、振り返り第一弾は「芝浦製作所 2025型」です。
大正8年型なので、記事を書いている現在は既に100歳を超えています。

こちらの記事にて、「100歳の扇風機と30歳の車」と題して記事にしたものです。
入手は2010年9月13日…12年も前になります。
背景の17型LCDが懐かしいですが、この頃はまだXPを使っていたなぁ。



入手時の状態ですが、外観は良好ながら不動との事でした。
確かにモートルへ行っている電線が断線しており、交換を要する状態でした。









ひとまず分解しないと始まりません。
順次部品を外し、4枚目の通りパーツ状態となりました。



モートルのコイル、かご型三相式です。
戦前の芝浦製扇風機は各年式の物が多く残っていますが、12・16吋型はほぼ全てこのタイプです。通常4極ですが、一部6極の機種もあるそうです。

なお、初期のもの(羽根ガードが粗く、ガード外周が一本リングのタイプ)はモートルからの引き出し線が前方にあり、配線交換が難しいです。
本機は幸運にもコイルの断線は無かったので、引き出し線を何とか交換すれば動くようになるでしょう。



こちらは電源部。コイルやスイッチがまとまったシャーシは陶器でできており、「碍盤」という名称です。
松下幸之助氏の来歴に登場するのがこの部品です。



清掃しました。
100年前の電線なので被覆は布製ですが、ちゃんと色が残っているのが感動ものです。



こちらはモートル本体の受け部分。
首振りをスムーズに行うため、ボールベアリングとなっています。
この部分も清掃とグリス注入を行いますが、少々ボールが足りないような…





こちらはモートル内のロータ。
ネジ(スクリューギア)が切ってある方が後方で、首振りギアボックスと接続します。
4つの穴は傾斜して空いており、恐らくはロータ自体の回転でもって通風するよう工夫してあるのだと思います。
こちらも清掃して終了。

と、ここで気づきました。
シャフト後方のスクリューギア部の山が荒れています。



という事は…



首振り機構のリングギアが破断していました。
写真左のパーツがクラッチの一部ですが、スプラインがある通り本来は圧入されて一体になっているものです。
まぁ…それなりに嵌ったので、酷使しない限りは何とかなるでしょう。

同じ芝浦と言えど、12吋と16吋は部品サイズが微妙に違っており、確かこのギアも違ったはず。
年式によっても差があるようなので、行ける限りは再利用するしかありません。
部品取り機を買ってから使えなかった…では哀しいですから。











そして面倒な作業上位のギアボックス清掃。
これくらい古い機種だと大抵グリスが煮凝り(英国風に言えばベジマイト)のようになっているので、マイナスドライバーで大まかに削ぎ落して、溶剤で洗います。
パーツクリーナをよく使いますが、塗装との相性やグリスの解け具合を見つつ、シンナーや灯油(ちょっと残った越年灯油を再利用)を使い分けます。

後は組み直しつつグリスを詰めて完了。
なお、芝浦の扇風機は遊星ギア式です。











こちらも面倒な作業上位、羽根磨き。達成感が大きい分、まだ楽しい部類ですが…
上の2枚は作業前、次の2枚は酸洗い後、そして研磨の比較です。
この時は確か、酸洗いの後はドリルにバフを付けてピカール一発仕上げでした。
今はもう少し楽なメソッドを編み出しました。
表の磨きはまだ楽ですが、ハブの凹凸がある裏面はなかなか面倒です…面倒ばっかり言ってるな。







最後にエンブレムと銘板を磨いて完了です。
この時は、エンブレムはリュータとゴム砥石で磨いてから手仕上げしてました。
今では余計な傷をつけないよう、ストレートに手磨きしてしまいます。



という事で完成しました。
こちらのみ現在に近い2019年の姿です。







こちらはカタログ。大正8年版です。


今回の修理に当たっては、モートルへ行く電線を布電線とすべく、2本撚りの海外製アンティーク電線を無理矢理3本にして使いました。
なので雰囲気は出ましたが、グロメットを通すのが結構苦労した記憶があります。
本当は0.5Sq位の3本撚り布引き電線があればベストですが、そんな物は現代ではありません。

この後の修理では黒ビニール線を三つ編みにした時期が長かったですが、最近はその上にエンパイヤチューブを被せて当時風を演出する方法を思いつきました。
ビニール線三つ編みで仕上げた機体は、順次それに更新していきたいなと思います。
Posted at 2022/10/20 21:35:41 | コメント(0) | トラックバック(0) | アンティーク家電 | 趣味

プロフィール

「ヘッドライトLED化+ホーン交換 http://cvw.jp/b/2115746/48696117/
何シテル?   10/05 22:06
菊菱工廠と申します。 「工廠」なんて言いましても、車いじりは飽くまで素人。 電装系なら結構自前でこなします。 ちょっとした金具作りなんかも。 ナ...
みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

<< 2022/10 >>

      1
2345678
9101112131415
16171819 202122
23242526272829
3031     

愛車一覧

シボレー サバーバン シボレー サバーバン
Super Wagon, Texas Cadillac… それはアメリカで最も長く続くモ ...
三菱 エクリプスクロス 三菱 エクリプスクロス
アウトランダーPHEVと迷った結果、偉大な先代、コルトプラスの跡を継ぐこととなりました。 ...
三菱 コルトプラス 三菱 コルトプラス
家族の車です。 私が免許を取った際の練習にも活躍しました。よって、免許取得以前からの付き ...
三菱 パジェロ 三菱 パジェロ
荒野の山猫、パジェロの初代後期型でございます。 88年9月MC版、4D56 I/Cター ...
ヘルプ利用規約サイトマップ
© LY Corporation