• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+

菊菱工廠のブログ一覧

2024年08月14日 イイね!

シカ部員必携? ブルウル兄弟商会 21型商館時計 鹿印 明治30年頃

Instagramで先に整備前をアップしていた本個体、仕上りましたのでご報告です。
まずはビフォーの写真から。



特に変わったところは無い、21型の商館時計です。
状態は全体的に良好。



マークは鹿。
アメリカ系商館・ブルウル兄弟商会が明治30年に日本で商標登録したマークです。
同社は鳳凰やこちらの鹿(奈良公園でお馴染みの通り神の使いともされます)の他、「陸軍旗(日の丸が中央の旭日旗)」や「桜花」といった日本的なデザインのマークを多く登録しています。
第一次大戦の前で、第二次はだいぶ先という時代…当時の日米の関係も感じ取れるようですね。



ぬん。

今年流行りの鹿。
登録は明治30年6月16日で第9107号。
文字の無いイラストのみの登録なので、これを知っていないとどこの商館扱いか分からない一品です。



以前整備した同社の鳳凰印と同様、ダイヤルにも銘があります。
そのものズバリ「Deer」。

--------------------------------------
           YOU DEER
--------------------------------------

つい言いたくなる。
何しろこの時計は、当時特別な功績を上げたシカ部員へ贈られたもの…
嘘を書くな嘘を。

鹿と言えば、車好きからすればムーヴコンテでしょうな。
マニアックな所ならトヨタ キジャンか或いはジョンディアか。
意外と鹿絡み多い。

で、まさかこのギャグのために買ったのかと言えばそうではありません。
ブルウルの個体は鳳凰印以外持っていなかったのと、機械がなかなか良さげだったため。



シャトン留めの石に緩急針はスネイルカム付き。
その下のテンプは大き目で、ひげゼンマイは青焼きブレゲ巻きです。
全体が金色を帯びており、いかにも商館時計らしいヤーゲンセンスタイルのブリッジも素敵。
「稼働品」として出品されていたため、天真折れはリスク低めと判断しました。
結果問題無かったので当たりでした。

年代としてはマークの登録年もはっきりしている上、商館時計の定番機構が揃っています。
なので素直に明治30年頃として良いのではと思います。
ブルウル兄弟商会につきましては、鳳凰印の記事にてどうぞ。

それでは分解していきましょう。




機械の取り出し。
特に整備の記録などはありませんでしたが…



珍しいエラー品でした。
シリアルを打ち直しています。
元の番号に「8」を横向きに重ねて打刻し、取り消してあります。
消された方は「114594」でしょうか。



ケースと並べてナンバーズマッチを確認。
訂正の通り、114490が正しいシリアルのようです。
104番のズレは単なる打ち間違いでしょうか…
或いは114594となるはずが、出荷直前にケース交換になったとか?
真相は不明ですが面白い個性です。

地板の表側は普通の造りなので、サクッとバラして裏面へ。



裏面です。
ゴールド仕上げで地板は全面ペルラージュ仕様。
ブリッジには控えめなコートドジュネーブ。
奇麗になったら結構豪華な見た目になるかも。

緩急針にはスネイルカムにテンションをかけるようスプリングが付いています。
それが何となく鹿の角っぽい枝分かれなんですが…狙ったデザインなんでしょうか?



分解途中。
この個体は各部のビスが異様に強く締めてあり、変則的な順番での分解になりました。
その一コマですが、アンクルを取らないと4番車が抜けない配置でした。
普通もこうだっけ…?



本当はビスの長さ記録のため撮った一枚。この丸穴車のビスが一番苦戦しました。
精密ドライバの柄の細さでは力が足りず、注油とブリッジのバイス引っ掛け+ドライバをペンチで回して何とか外れました。



香箱とゼンマイ。
ゼンマイは途中で継いでありました。
穴開けと矢型加工による職人の仕上げです。
が…今後の事を考えると交換した方が良いかな。
合う奴が手持ちにあれば交換しておきましょうか。
一度折れた物は特性が変わっていますし、他の部分も折れるリスクがあるので…



という事で全バラ完了。
筒かなはかなり固く嵌っていたので今回は外さず。
石は数えると14…かと思いきや15石。
ガンギ車のブリッジが穴石+伏石でした。



いつものように洗浄して組み立てます。
が、スネイルカムは裏面が錆びていて回せない状態。



軽くペーパーがけ。後はオイルで十分かと。



ザラ回しです。
ここで気づいたのが、3番車ブリッジの石が欠けている事。
回すと4番の方へ若干ずれてしまいます。
まぁトルクの高い位置で回転も遅いので、大した問題は無いでしょう。
…多分。



テンプを組んで24時間動作確認スタート。
この時点では明らかな問題は無いようです。
テンプの振りも大きく、方向を変えても明らかな減速はしない模様。

なお、ゼンマイは合うものが無かっため再利用です。
かつて修理された職人さんの腕を信じます。



ガンギ車の回る瞬間が撮れました。
後はオイルが回って調子が出てくれればと願う限り…
スネイルカム付きは大幅な歩度調整ができませんので、あまり進み遅れが酷いと困るのです。
たまにスネイルカムを外されて出てくる個体は、これが原因なんじゃないかと疑っています。



続いてケース清掃。
こちらもいつも通りに進めます。



前面風防は今回も傷アリ。
やはり小傷による曇りに絞って磨きをかけて行きます。
大きいのは…埋めるとか何とかできないのかしら。
車のガラスリペアみたく…



そして組めば完成。
一応、12時上で日差-60秒前後にはできました。
但し姿勢差が大きいようで、向かって左90°では-150秒程、逆に右90°では+150秒程になります。
まぁ仕方ないか…スネイルカムを取らずにこの位になれば。



裏面は奇麗そのもの。
側面にも緩やかな凹みがあるだけで、却って目立たせそうなのでそのままとしました。





若干の錆びは残るものの、奇麗になった機械。
実は丸穴車の歯が1か所欠けておりましたが、巻き上げには支障無いようです。



輝きを取り戻したぬん。

次回も恐らく時計ネタになりそうです。
Posted at 2024/08/14 19:21:36 | コメント(0) | トラックバック(0) | 時計他アンティーク系 | 趣味

プロフィール

「仕上げ進行中 vol.2 http://cvw.jp/b/2115746/48592454/
何シテル?   08/10 22:31
菊菱工廠と申します。 「工廠」なんて言いましても、車いじりは飽くまで素人。 電装系なら結構自前でこなします。 ちょっとした金具作りなんかも。 ナ...
みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

<< 2024/8 >>

    123
45678910
111213 14151617
18192021222324
25262728293031

愛車一覧

三菱 エクリプスクロス 三菱 エクリプスクロス
アウトランダーPHEVと迷った結果、偉大な先代、コルトプラスの跡を継ぐこととなりました。 ...
シボレー サバーバン シボレー サバーバン
Super Wagon, Texas Cadillac… それはアメリカで最も長く続くモ ...
三菱 コルトプラス 三菱 コルトプラス
家族の車です。 私が免許を取った際の練習にも活躍しました。よって、免許取得以前からの付き ...
三菱 パジェロ 三菱 パジェロ
荒野の山猫、パジェロの初代後期型でございます。 88年9月MC版、4D56 I/Cター ...
ヘルプ利用規約サイトマップ
© LY Corporation