貧乏なおうちから船場の商家へ嫁いで来た御料んはん、やれ、家柄がちがう、格式がちがう、育ちが悪い、息子が哀れだ、ご近所に体裁が悪い、と奈良県出身の大女将のクソババにいじめ抜かれる。クソババのいじめは店や町内でも評判になるほどの激烈ぶり。番頭どんなどは、あのクソババ、ワシがこの手で絞め殺したろかと思うほどでっせ、と公言してはばからない。雪がしんしんと降る大晦日の夜、いろいろと忙ししておりまして先だって葬蓮の折にお借りしておりました提灯、年越すまでには何とかと思いつつお返しするんが今日になってしまいました、と御料んはんがミナミのお寺を訪れる。挨拶もそこそこにそそくさと帰る御料んはんと入れ違うように店の手代が慌ててやって来る。えらいこっちゃ、御料んはん首吊って死なはった!大女将のクソババの嫁イビリが原因に違いおまへん!これ、アホなことを言いなはんな、御料んはん、今さっき提灯返しに来なすったところじゃ、とたしなめる和尚。ふと見れば境内に降り積もった雪に足跡がない。はっと息を呑む一同。ちょうどその時、寺では除夜の鐘が鳴り始める。ああそうか、御料んはん、つりあわん家には嫁いだらあかん、って教えに来なすったんじゃなあ、としみじみ言う和尚。なんでですねん? と問う手代。これが提灯、あれが吊り鐘・・ではよいお年を。