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ダスティ・アッテンボローのブログ一覧

2011年06月17日 イイね!

危険な好奇心 No.3

295 『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M 2006/04/24(月) 03:21:39 ID:5CaStqefO
続き

その日から慎と帰ることになった。

その日は学校で噂の『トレンチコート女』(推定・中年女)には会わなかった。
次の日も、その次の日も会わなかった。
しかし、学校では相変わらず【トレンチコートの女】の噂は囁かれていた。
慎と一緒に下校することになり五日目、俺達は久しぶりに淳の見舞いに行くことにした。

お土産に給食のデザートのオレンジゼリーを持って行った。

淳の家に着き、チャイムを押した。いつもの様に叔母さんが明るく出て来て俺達を中に入れてくれた。

淳は相変わらず元気が無かった。ジンマシンは大分消えていたが、
淳本人は『横腹の顔の部分が日に日に大きくなっている。』
と言っていたが、俺と慎には全く解らなかった。むしろ、前回見たときよりはマシになっているように見えた。
精神的に淳はショックを受けているのだろう。
俺達は学校で流れている『トレンチコートの女』の噂は淳には言わなかった。
帰り間際に淳の叔母さんが俺達の後を追い掛けて来て、『淳、クラスでイジメにでも会っているの?』と不安げな顔で聞いて来た。
俺達は否定したが、本当の理由を言えないことに少し罪悪感を感じた。



301 『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M 2006/04/24(月) 03:40:18 ID:5CaStqefO
それから三日後、
その日は珍しく内藤と佐々木と俺と慎の四人で一緒に下校した。
内藤は体がデカく、佐々木はチビ。実写版のジャイアンとスネオみたいな奴ら。
もう俺と慎の中で『中年女』の事は風化しつつあった。学校で噂の『トレンチコート女』も実在したとしても、全くの別人と思えて来ていた。

その日は四人で駅前にガチャガチャをしに行こうと言う話になり、いつもと違う道を歩いていた。

これが間違いだった。

楽しく四人で話しながら歩いていると、佐々木が『あ、あれトレンチコート女ぢゃね?』
内藤『うわっ!ホンマや!きもっ!』と言い出した。
俺はトレンチコート女を見てみた。心の中で《別人であってくれ!》と願った。
トレンチコート女はスーパーの袋を片手に持ち、まだ残暑の残るアスファルトの道で、ただ、突っ立っていた。うつむいて表情は全く解らない。

慎は警戒しているのか、小声で俺達に『目、合わせるなよ!』と言ってきた。
少しずつ、女との距離が縮まっていく。緊張が走った。女は微動たりせず、ただ、うつむいていた。
女との距離が5㍍程になったとき、女は突然顔を上げ、俺達四人の顔を見つめてきた。そして、その次に俺達の胸元に目線を送って来ているのが解った。
!名札を確認している。



306 『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M 2006/04/24(月) 03:56:07 ID:5CaStqefO
俺は焦った。平常心を保つのに必死だった。
一瞬見た顔であの日の出来事がフラッシュバックし、心臓が口から出そうになった。
間違いない。『中年女』だ!
俺はうつむきながら歩き過ぎた。
俺はいつ襲い掛かられるかとビクビクした。
どれくらい時が過ぎただろう。いや、ほんの数秒が永遠に感じた。
内藤が『あの目見たけ?あれ完全にイッテるぜ!』と笑った。
佐々木も『この糞暑いのにあの格好!ぷっ!』と馬鹿にしていた。
俺と慎は笑えなかった。
佐々木が続けて言った
『やべ!聞こえたかな?まだ見てやがる!』
俺はとっさに振り返った。
『中年女』と目が合った・・・
まるで蝋人形のような無表情な『中年女』の顔がニヤっと、凄くイヤらしい微笑みに変わった。

背筋が凍るとはこの事か。。。
俺は生まれて始めて恐怖によって少し小便が出た。
バレたのか?俺の顔を思い出したのか?バレたなら何故襲って来ないのか?
俺の頭はひたすらその事だけがグルグル巡っていた。

内藤が『うわーっ、まだこっち見てるぜ!佐々木!お前の言った悪口聞かれたぜ!俺知らねーっ!』っとおどけていた。



311 『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M 2006/04/24(月) 04:13:03 ID:5CaStqefO
もうガチャガチャどころではない。曲がり角を曲がり、女が見えなくなった所で俺は慎の腕を掴み 『帰ろう!』と言った。
慎は俺の目をしばらく見つめて『あ、今日塾だっけ?帰らなやばいな!』と俺に合わせ、俺達は走った。

家とは逆の方向に走り、しばらくして俺は慎に『アイツや!あの目、間違いない!俺らを探しに来たんや!』
慎は意外と冷静に『マジマジと名札見てたもんな。。学年とクラス、淳の巾着でバレてるし。。』
俺はそんな落ち着いた慎に腹がたち『どーすんだよ!もう逃げ切れネーよ!家とかそのうちバレっぞ!!』

慎『やっぱ警察に言おう。このままはアカン。助けてもらお。』

俺『・・・』俺はしばらく黙っていた。たしかに他に助かる手は無いかもしれないと思った。
『でも、警察に何て言う?』と俺が問うと慎は『山だよ。あの山に打ち付けられた写真とかハッピー、タッチの死体、あれを写真に撮って、あの女が変質者って言う証拠を見せれば警察があの女を捕まえてくれるはずや!』

俺は納得したが、もうあの山に行くのは嫌だったが、仕方が無かった。

さっそく、明日の放課後、浦山に二人で行く事になった。

315 『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M 2006/04/24(月) 04:27:46 ID:5CaStqefO
明日の放課後、裏山に行く。その話がまとまり、俺達は家に帰ろうとしたが、『中年女』が何処に潜伏しているか解らない為、俺達は恐ろしく遠回りした。通常なら20分で帰れるところを二時間かけて帰った。
家に着いて俺はすぐに慎に電話した『家とかバレてないかな?今夜きたらどーしよ!』などなど。俺は自分で自分がこれほどチキンとは思わなかった。
名前がバれ、小屋に『淳呪殺』と彫られた淳が精神的に病んでいるのが理解できた。
慎は『大丈夫、そんなすぐにバレないよ!』と俺に言ってくれた。
この時俺は思った。普段対等に話しているつもりだったが、慎はまるで俺の兄のような存在だと。
もちろんその日の夜は眠れなかった。
わずかな物音に脅え、目を閉じれば、あのニヤッと笑う中年女の顔がまぶたの裏に焼き付いていた。

朝が来て、学校に行き、授業を受け、放課後、午後3時半。
俺と慎は裏山の入口まで来た。

156 『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M sage 2006/04/27(木) 04:50:46
ID:2G2sPLliO
俺は山に入るのを躊躇した。『中年女』『変わり果てたハッピーとタッチ』『無数の釘』
頭の中をグルグルと鮮やかに『あの夜の出来事』が甦ってくる。
俺は慎の様子を伺った。慎は黙って山を見つめていた。慎も恐いのだろう。
『やっぱ、入るの恐いな・・・』と言ってくれ!と俺は内心願っていた。

慎はズボンのポケットからインスタントカメラを取り出し、右手に握ると、俺の期待を裏切り、『よし。』と小さく呟き、山へ入るとすぐさま走りだした。
俺はその後ろ姿に引っ張られるように走りだした。

慎は振り返らずに走り続ける。
俺は必死に慎を追った。一人になるのが恐かったから必死で追った。

今思えば慎も恐かったのだろう。恐いからこそ周りを見ずに走ったのだろう。

『あの場所』が 徐々に近づいてくる。
思い出したくもないのに『あの夜』の出来事を鮮明に思いだし、心に『恐怖』が広がりだした。
恐怖で足がすくみだした時、『あの場所』に着いた。
そう、『中年女が釘を打っていた場所』『中年女がハッピー、タッチを殺した場所』『中年女に引きずり倒された場所』


【中年女と出会ってしまった場所】


160 『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M sage 2006/04/27(木) 05:19:27
ID:2G2sPLliO
俺は急に誰かに見られているような気がして周りを見渡した。いや、『誰かに』では無い、中年女に見られているような気がした。
山特有の『静寂』と自分自身の心に広がった『恐怖』がシンクロし、足が震えだす。
立ち止まる俺を気にかける様子無く、慎はあの木に近づきだした。

何かに気付き、慎はしゃがみ込んだ。
『ハッピー・・・』
その言葉に俺は足の震えを忘れ、慎の元に歩み寄った。
ハッピーは既に土の一部になりつつあった。頭蓋骨をあらわにし、その中心に少し錆びた釘が刺さったままだった。
俺は釘を抜いてやろうとすると、慎が『待って!』と言い、写真を一枚撮った。
慎の冷静さに少し驚いたが、何も言わず俺は再び釘を抜こうとした。
頭蓋骨に突き刺さった釘をつまんだ瞬間、頭蓋骨の中から見たことの無い、多数の虫がザザッと一斉に出てきた。
『うわっ!』俺は慌てて手を引っ込め、立ち上がった。
ウジャウジャと湧いている小さな虫が怖く、ハッピーの死体に近づく事が出来なくなった。それどころか、吐き気が襲って来てえずいた。
慎は何も言わずに背中を摩ってくれた。

俺はあの夜、ハッピーを見殺しにし、又、ハッピーを見殺しにした。
俺は最高に弱く、最低な人間だ。


161 『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M sage 2006/04/27(木) 05:39:52
ID:2G2sPLliO
慎はカメラを再び構え、『あの木』を撮ろうとしていた。
『ん?!おい!ちょっと来てーや!』
何かを発見し、俺を呼ぶ慎。俺は恐る恐る慎の元に歩み寄った。
慎が『これ、この前無かったよな?』と何かを指差す。
その先に視線をやると、無数に釘の刺さった写真が・・・
ん?たしか前もあったはずじゃ・・・

いや!
写真が違う!

厳密に言うと、この前見た『4・5歳ぐらいの女の子』の写真はその横にある。
つまり、写真が増えている!
写真の状態からして、ここニ・三日ぐらいに打ち込まれているであろう。
この前に見た写真は既に女の子かどうかもわからないぐらいに雨風で表面がボロボロになっている。

新しい写真も『4、5歳ぐらいの女の子』のようだ。

この時、慎には言わなかったが、俺は一瞬『新しい写真が俺だったらどうしよう!!』とドキドキしていた。

慎はカメラにその打ち込まれた写真を撮った。
そして、
『後は秘密基地の彫り込みを撮ろう。』と言い、又走りだした。
俺は近くに中年女がいるような錯覚がし、一人になるのが怖く、慌てて慎を追った。


163 『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M sage 2006/04/27(木) 06:07:52
ID:2G2sPLliO
秘密基地に近いてきて、俺は違和感を感じ、
『慎!』
と呼び止めた。

違和感

いつもなら秘密基地の屋根が見える位置にいるはずなのだが、屋根が見えない。
慎もすぐに気付いたようだ。
このとき脳裏に『中年女』がよぎった。

胸騒ぎがする。
鼓動が激しくなる。

慎が『裏道から行こう。』と言った。俺は無言で頷いた。
裏道とは獣道を通って秘密基地に行く従来のルートとは別に、茂みの中をくぐりながら秘密基地の裏側に到達するルートの事である。
この道は万が一秘密基地に敵が襲って来た時の為に造っておいた道。
もちろん、遊びで造っていたのだが、まさかこんな形で役に立つとは・・この道なら万が一、基地に『中年女』がいても見つかる可能性は極めて低い。
俺と慎は四つん這いになり、茂みの中のトンネルを少しずつ進んだ。

そして秘密基地の裏側約5㍍程の位置にさしかかった時、基地の異変の理由が解った。

バラバラに壊されている。

俺達が造り上げた秘密基地はただの材木になっていた。

しばらく様子を伺ったが、中年女の気配もないので俺達は茂みから抜けだし、秘密基地『跡地』に到達した。



181 『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M sage 2006/04/27(木) 16:32:42
ID:2G2sPLliO
俺達はバラバラに崩壊された秘密基地を見、少し泣きそうになった。
『秘密基地』言わば俺達三人と2匹のもう一つの家。
バラバラになった材木の片隅に大きな石が落ちていた。恐らく誰かがこれをぶつけて壊したのだろう。
『誰かが』?・・いや、多分『中年女』が。。
慎が無言で写真を撮りだした。
そして数枚の材木をめくり、『淳呪殺』と彫られた板を表にし、写真を撮った。
その時、わずかな板の隙間からハエが飛び出し、その隙間からタッチの遺体が見えた。

ハッピーとタッチ。
秘密基地よりもかけがえの無い2匹を俺達は失った事を痛感した。

慎は立ち上がり
『よし、このカメラを早く現像して警察に持って行こう。』
と言った。
俺達は山を駆け降りた。
山を降り、俺達は駅前の交番へ急いだ。
『このカメラに納められた写真を見せれば、中年女は捕まる。俺らは助かる。』
その一心だけで走った。

途中でカメラ屋に寄り現像を依頼。
出来上がりは30分後と言われたので俺達は店内で待たせてもらった。
その間、慎との会話はほとんど無かった。ただただ 写真の出来上がりが待ち遠しかった。

そして30分が過ぎた。



190 『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M sage 2006/04/27(木) 22:54:20
ID:2G2sPLliO
『お待たせしましたー。』
バイトらしき女店員に声をかけられた。
俺と慎は待ってましたとばかりにレジに向かった。
女店員は少し不可解な顔をしながら
『現像出来ましたので中の確認をよろしくお願いします。』といいながら写真の入った封筒を差し出した。まぁ現像後の写真が犬の死骸や釘に刺された少女の写真のみだから、不可解な顔をするのも当然だが・・・。
慎はその場で封筒から写真を取り出し、すべての写真を確認し、『大丈夫です。ありがとうございました。』と言い、代金を支払った。
店を出て、すぐさま交番へ向かった。

これで全てが終わる

駅前の交番へ二人して飛び込んだ。

『ん?!どうしたの?』
中にいた若い警官が笑顔で俺達を迎えてくれた。
俺達はその警官の元に歩み寄り、
『助けてください!』
と言った。


俺と慎は『あの夜』の出来事を話した。裏付ける写真も一枚一枚見せながら話した。そして、今も『中年女』に狙われている事を。


一通り話し終わるとその警官は穏やかな表情で『お父さんやお母さんに言ったの?』
俺たちは親には伝えてないと言うと、『ん~、んぢゃ家の電話番号教えてくれるかな?』と警官は言い出した。


286 『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M sage 2006/04/30(日) 01:58:44
ID:Ey4nh9XjO
慎が『なんで親が関係あるの?狙われているのは俺達だよ?!』とキレ気味に言い放った。
ちなみに慎の両親は医者と看護婦。高校生の兄貴は某有名私立高校生。
俺達3人の中で一番裕福な家庭だが、一番厳しい家庭でもある。
『あの夜』親に嘘をついて秘密基地に行き、このような事に巻き込まれた、などバレれば、俺や淳もだが、慎が一番洒落にならないのである。
『助けてよ!警察官でしょ!!』と慎が詰め寄る。
警官は少し苦笑いして、『君達小学生だよね?やっぱり、こーゆー事はキチンと親に言わなきゃダメだよ。』
と、しばらくイタチゴッコが続いた。

あげくに警官は『じゃあ君達の担任の先生は何て名前?』
など、俺達にとっては《脅し》に取れる言葉を投げ掛けてきた。
まぁ、警官にとっては俺達の『保護者及び責任者』から話を聞かないと・・・って感じだったのだろうが、俺達にとって、こういう時の『親・先生』は怒られる対象にしか考えられなかった。
そうこうしているうちに俺達の心の中に、目の前にいる 警官に対して《不信感》が芽生えてきた。
[このまま此処にいれば、無理矢理住所を言わされ、親にチクられる!]と。

290 『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M sage 2006/04/30(日) 02:31:44
ID:Ey4nh9XjO
(この警官は俺達の話を信じてくれてないのでは?)
と俺は思い始めた。
俺や慎が必死に助けを求めているのに、『親』『先生』ばかり言ってくる。
俺達は『中年女』の存在を裏付ける証拠写真まで持参しているのに。。
俺はもう一度警官に写真を見せつけ『犬をこんな殺し方する奴なんだよ!』と言った。
すると、警官はしばらく黙り込み、写真を手に取り、意外な一言を言った。
『ん~。。これって犬?なの?』

『は?』と俺と慎は驚いた。この人は何を言っているんだろう!と。
続けて警官は
『いや、君達を信じていない訳じゃないよ。じゃあもう少し詳しく教えて。ここが頭?』

警官は冗談を言っている訳では無く、本当に解らないようだ。
俺はハッピーの写真を取上げ
『だから、、、』
と説明しかけて言葉が詰まった。
確かに、この写真を客観的に見ると犬の死骸には見えないかも・・。と思った。
薄茶色に変色した骨に所々わずかに残っている毛。。。
俺と慎はハッピーが死体になった翌日にも見ているので、腐食が進んでいても元の形(倒れていた角度、姿)を知っているが、知らない奴が見るとただの汚れた石に汚い雑巾の様なものが絡んでいるようにしか見えないかも知れない。。

291 『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M sage 2006/04/30(日) 02:56:37
ID:Ey4nh9XjO
俺は冷静に他の写真も見てみた。
板に刻まれた『淳呪殺』・少女の写真に無数の『釘』。。
たしかに『中年女』の存在に直接結び付けるのは難しいのか?
ひょっとして警官は『小学生の悪戯』と思っていて、先程から『親・担任』などと言っているのか?
俺はこのまま此処にいては危険だと感じ出した。
『絶対、親を呼び出すつもりだ!』
俺は慎に小さな声で耳打ちした。
慎は無言で頷き、アゴをクイッと動かし、『外に出る合図』を送ってきた。
すると次の瞬間には慎は勢いよく振り向き、走りだした。
俺もすぐさま後を追い、交番から抜け出した。
後ろから『おいっ!』と警官が呼び止める声がしたが、俺達は振り向かずに走り続けた。

警官が追い掛けてくる気配は無かった。警官はおそらく
『悪戯しにきた小学生が、嘘を見破られそうになり逃げ出した。』
とでも思っているのだろう。
俺と慎は警官が追って来ていないことを充分に確認し、道端に座り込み、緊急ミーティングを開催した。

352 ハッピー・タッチ ◆XhRvhH3v3M sage 2006/05/01(月) 09:22:18 ID:jZMGGFeIO
『これからどーする?』
『どーしよ・・』
俺達は途方に暮れていた。最後の切り札の警察にも信じてもらえず、『中年女』から身を守る術を失った。
『これで全てが解決する』
と俺達は思い込んでいただけにショックはデカかった。
『このままだったら中年女に住所バレて・・・』
俺は恐かった。
すると慎が
『・・・しばらくあの女には出くわさないように注意して・・』
と言いかけたが
俺はすぐに『もう無理だよ!淳の学年とクラスがバレてる時点ですぐに俺らもバレるに決まってる!』と少し声を荒げた。
『でも、あの女、、、俺達に何かする気あるのかな?』
俺『?』
慎が言いだした。
『だってこの前俺ら学校帰りにあの女に出会ったじゃん。もし何かするつもりならあの時でも良かった訳じゃん。』
俺『・・・』
慎が続けて『それに山・・・もし俺らのことを許してないなら山に何らかの呪い彫りとかあってもいーはずじゃん。』

俺『・・・』

たしかに。山に行った時、確かに新しい『俺達に対する』呪い的な物は無かった。秘密基地は壊されていたが・・・
新しい『女の子の釘刺し写真』はあったが、俺達・・まして、フルネームが バレている淳の『呪い彫り』は無かった。




355 『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M sage 2006/05/01(月) 09:38:55
ID:jZMGGFeIO
俺は内心『そーなのかな?』と反論したかったが、しなかった。
それは、慎の言うとうり実は俺達が思っている程『中年女』は俺達の事を怨んでいない、忘れかけている。と思いたかった。
慎はもう一度『俺らを本気で怨んでいるなら何らかの《アクション》を起こすはずだろ?』
と、まるで俺を安心さすかのように言った。
そして『学校の近くをウロついてるのも、俺らを捜してるんぢゃなく《写真の女の子》を捜してる可能性もあるだろ?』
と言葉を続けた。
『そーか・・・』
俺はその慎の言葉を聞いて少し気持ちが楽になった感じがした。
と言うか慎の言った言葉を自分自身に言い聞かせ、自分自身を無理矢理納得させようとした。
それは【現実逃避】に近いかもしれない。
慎自身もそうだったのかも知れない。もう『中年女』から逃げる術が見つからず、言ったのかも知れない。
しかし俺は、、
俺達は、
『そーだよな!そのうち俺らのことなんて忘れよる!』
『もう忘れとるって!』
『なんだよチクショー!ビビって損した!』
『ほんま、あの女、泣かしたろか!』
とお互い強がって見せた。ある意味やけくそに近いかもしれない。


363 ハッピー・タッチ ◆XhRvhH3v3M sage 2006/05/01(月) 13:47:06 ID:jZMGGFeIO
しばらくその場で慎と『中年女』の悪口など、談笑していた。
辺りは薄暗くなり始め、俺達は帰宅することにした。
慎と別れる道に差し掛かって、『明日の帰り、淳の様子見に行こっか!』『おう!そやな!』
とお互い明るく振る舞って手を振り別れた。
俺の心は少し晴れやかになっていた。
『そーだよな・・慎の言う通り、中年女はもう俺達の事なんて忘れてるよな・・』
と。
まるで自己暗示のように繰り返し言い聞かせた。
足取りも軽く、石を蹴りながら家に向かった。
空を見上げると雲も無く、無数の星がキラキラ輝き、とても清々しい夜空だった。
今まで『中年女』の事でウジウジ悩んでいたのが馬鹿らしく思えた。
自宅に近づき、その日は見たいアニメがあるのに気付き、俺は小走りで家に向かった。
『タッタッタッタッ、、、』夜の町内に俺の足跡が響く。
『タッタッタッタ、、、』
静かな夜だった。
『タッタッタッタッ、、、』
ん?
『タッタッタッタ・・』
俺の足音以外に違う足音が聞こえる。
後ろを振り向いた。
暗くて見えないが誰もいない。気のせいか。。
ナンダカンダ言って俺は小心者だなと思いながら再び走った。
『タッタッタッタッ。。。』
『タッタッタッタ・・』
・・ん?誰かいる。




365 ハッピー・タッチ ◆XhRvhH3v3M sage 2006/05/01(月) 14:06:24 ID:jZMGGFeIO
俺はもう一度立ち止まり、目を凝らして後ろを眺めた。
・・・やっぱり誰もいない・・
確かに俺の足音にマジって後ろから誰かが走ってくる足音が聞こえたのだが?!
俺も淳のように自分でも気付かないうちに精神的に『中年女』追い詰められているのか?ビビり過ぎているのか?
しばらく立ち止まり、ずーっと後ろを眺めた。

ドックンドックン鼓動を打っていた心臓が、一瞬止まりかけた。

15㍍程後方、民家の玄関先に停めてある原付きバイクの陰に誰かがしゃがんでいる。
いや、隠れている。
月明かりでハッキリ黙視できないが一つだけハッキリと見えたものがある。
『コートを着ている!』
しばらく俺は固まった。
隠れている奴は俺に見つかっていないと思っているようだが、シルエットがハッキリ見える!
俺は一瞬混乱した。
『中年女だ!中年女だ!中年女だ!中年女!中年女!』
腰が抜けそうになったが、本能だろうか、次の瞬間
『逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ逃げなきゃ!』
ともう一人の俺が、俺に命令する。
俺は思いッキリ走った!運動会の時より必死に走った。もう風を切る音以外聞こえない程、無呼吸で走った。


413 『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M 更新遅くてスイマセンsage 2006/05/02(
火) 17:47:42 ID:VN7lh4fvO
無我夢中で家に向かって走った。
家まであと10㍍。
よし!逃げ切れる!

『!』
一瞬、頭にあることがよぎった。
【このまま家に逃げ込めば間違いなく家がバレる!】
俺はとっさに自宅前を通過し、そのまま住宅街の細い路地を走り続けた。
当てもなく、ただ俺の後方を着いて来ているであろう『中年女』を巻く為に。。

5分ほど、でたらめな道を走り続けた。
さすがに息がキレて来て歩きだし、後ろを振り向いた。

もう、『中年女』らしき人影も足音も聞こえて来ない。
俺は周囲を警戒しつつ、自宅方面へ歩き始めた。
再び自宅の10㍍程手前に差し掛かり、俺はもう一度周囲を警戒し、玄関にダッシュした。
両親が共働きで鍵っ子だった俺はすばやく玄関の鍵を開け、 中に入り、すばやく施錠した。
『。。。フぅー。。』
安堵感で自然とため息が出た。
とりあえず慎に報告しなければと思い、部屋に上がろうと靴を脱ごうとした時、玄関先で物音がした。
『!?』
俺は靴を脱ぐ体制のまま固まり、玄関扉を凝視した。
俺の家の玄関は曇りガラスにアルミ冊子がしてある引き戸タイプなのだが、曇りガラスの向こう側に。。。
玄関先に誰かが立っている影が映っていた。


451 『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M sage 2006/05/03(水) 08:46:27
ID:FVrpBt6MO
玄関扉を挟んで1㍍程の距離に『中年女』がいる!
俺は息を止め、動きを止め、気配を消した。
いや、むしろ身動き出来なかった。まるで金縛り状態・・・『蛇に睨まれた蛙』とはこのような状態の事を言うのだろう。
曇り硝子越しに見える『中年女』の影をただ見つめるしか出来なかった。
しばらく『中年女』はじっと玄関越しに立っていた。微動すらせず。
ここに『俺』がいることがわかっているのだろうか?・・。
その時、硝子越しに『中年女』の左腕がゆっくりと動き出した。
そして、ゆっくりと扉の取手部分に伸びていき、『キシッ!』と扉が軋んだ。
俺の鼓動は生まれて始めてといっていいほどスピードを上げた。
『中年女』は扉が施錠されている事を確認するとゆっくりと左腕を戻し、再びその場に留まっていた。
俺は依然、硬直状態。。
すると『中年女』は玄関扉に更に近づき、その場にしゃがみ込んだ。
そして硝子に左耳をピッタリと付けた。
室内の様子を伺っている!
鮮明に目の前の曇り硝子に『中年女』の耳が映った。
もう俺は緊張のあまり吐きそうだった。鼓動はピークに達し、心臓が破裂しそうになった。
『中年女』に鼓動音がバレる!と思う程だった。




457 『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M sage 2006/05/03(水) 09:18:17
ID:FVrpBt6MO
『中年女』は二、三分間、扉に耳を当てがうと再び立ち上がり、こちら側を向いたまま、ゆっくりと、一歩ずつ後ろにさがって行った。
少しづつ硝子に映る『中年女』の影が薄れ、やがて消えた。。
『行ったのか・・・?』
俺は全く安堵出来なかった。
何故なら、『中年女』は去ったのか?
俺がここ(玄関)にいることを知っていたのか?
まだ家の周りをうろついているのか?
もし、『中年女』に俺がこの家に入る姿を見られていて、『俺の存在』を確信した上で、さっきの行動を取っていたのだとしたら、間違いなく『中年女』は家の周囲にいるだろう。。
俺はゆっくりと、細心の注意を払いながら靴を脱ぎ、居間に移動した。
一切、部屋の明かりは点けない。明かりを燈せば『俺の存在』を知らせることになりかねない。
俺は居間に入ると真っ直ぐに電話の受話器を持ち、手探りで暗記している慎の家に電話をかけた。
3コールで慎本人が出た。
『慎か?!やばい!来た!中年女が来た!バレた!バレたんだ!』
俺は小声で焦りながら慎に伝えた。
『え?どーした?何があった?』と慎。
『家に中年女が来た!早く何とかして!』俺は慎にすがった。



546 『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M sage 2006/05/05(金) 05:04:28
ID:8b48b6KiO
慎『落ち着け!家に誰もいないのか?』
俺『いない!早く助けて』
慎『とりあえず、戸締まり確認しろ!中年女は今どこにいる?』
俺『わからない!でも家の前までさっきいたんだ!』
慎『パニクるな!とりあえず戸締まり確認だ!いいな!』
俺『わかった!戸締まり見てくるから早く来てくれ!』
俺は電話を切ると、戸締りを確認しにまずは便所に向かった。
もちろん家の電気は一切つけず、五感を研ぎ澄まし、暗い家内を壁づたいに便所に向かった。
まずは便所の窓をそっと音を立てず閉めた。
次は隣の風呂。
風呂の窓もゆっくり閉め、鍵をかけた。
そして風呂を出て縁側の窓を確認に向かった。
廊下を壁づたいに歩き縁側のある和室に入った。
縁側の窓を見て違和感を覚えた。
いや、いつもと変わらず窓は閉まってレースのカーテンをしてあるのだが、左端。。。
人影が映っている。。
誰かが窓の外から、窓に顔を付け、双眼鏡を覗くように両手を目の周辺に付け、室内を覗いている。
家の中は電気をつけていない為、外の方が明るく、こちらからはその姿が丸見えだった。
窓に『中年女』がヤモリの如く張り付いている。
俺は腰が抜けそうになった。



548 『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M sage 2006/05/05(金) 05:31:11
ID:8b48b6KiO
これは
【動物の本能】
なのだろうか?
肉食獣を見つけた草食動物のように、俺はとっさにしゃがみ込んだ。
全身が無意識に震えていた。
『中年女』からこちらは見えているのか?
『中年女』はしばらく室内を覗き、そのままの体勢で、ゆっくりと窓の中心まで移動して来た。
そして『キュルキュルキュル』と嫌な音が窓からしてきた。
『中年女』の右手が窓を擦っている。左手は依然、目元にあり、室内を覗きながら。。。
『キュルキュルキュル』
嫌な音は続く、俺の恐怖心はピークに達した。
何かわからないが、『中年女』の奇行に恐怖し、その恐怖のあまり、声を出す事すら出来なかった。
すると『中年女』は急に後ろを振り返り、凄い勢いで走り去って行った。
俺は何が起きたかわからず、身動きも出来ずに、ただ窓を見ていた。
すると、窓の向こうの道路に赤い光がチカチカしているのが見えた。
「警察が来たんだ!」
俺は状況が飲み込めた。
偶然通りかかったパトカーに気付き、『中年女』は逃げて行ったんだと。

しばらく俺はしゃがみ込んだまま震えていた。
『プルルルルル!』
その時、電話が突然鳴った。もう心臓が止まりかけた。
ディスプレイを見ると慎の自宅からの電話だった。



551 『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M sage 2006/05/05(金) 05:47:22
ID:8b48b6KiO
俺は慌てて電話に出た。
慎『どう?』
俺『なんか部屋覗いとったけど、どっか行った。。。』
慎『そっか、親帰って来たんか?』
俺『いや、たまたまパトカー通って、それにビビって中年女逃げたんや思う。』
慎『そーなんや!良かった。俺、お前んちの近くに不審者がいるって通報しといてん。
でも、あいつに家バレたんやったら、そろそろ親にも相談しなあかんかもな。。』
俺『・・・』
慎『俺も今日、親に言うから。。お前も言えよ!もうヤバイよ!』
俺『・・・うん・・』
そして電話を切った。
その30分後、母親がパートから帰って来た。
俺は部屋の電気を消したまま玄関に走り、母の顔を見た瞬間、安堵感からか、泣き出した。
母親はキョトンとしていたが、俺はしばらく泣き続けた後、『ごめんなさい、』と冒頭に謝罪をし、『あの夜』の出来事から『さっき』の出来事まで説明した。
説明の途中、父親も帰宅し、父には母が説明した。
その後、父が無言で和室の窓硝子を見に行った。
窓硝子は鋭利な何かで凄い傷が付けられていた。
『鋭利な何か』が『五寸釘』だと直感でわかった。
両親は俺を叱らず、母親は俺を抱きしめてくれ、父は警察に電話をかけていた。
Posted at 2011/06/17 22:37:19 | コメント(0) | トラックバック(0) | オカルト | パソコン/インターネット
2011年06月15日 イイね!

危険な好奇心 No.2

852 本当にあった怖い名無し 2006/04/22(土) 13:45:51 ID:moTdWLP+O
>>801

続きを1話だけ書きます

興奮の為、明け方まで眠れず、朝から昼前まで仮眠を取り、俺達は山に向かった。
皆、あの『中年女』に備え、バット・エアーガンを持参した。
山の入口に着いたが、慎が『まだアイツがいるかも知れん』と言うので、いつもとは違うルートで山に入った。
昼間は山の中も明るく、蝉の泣き声が響き渡り、昨夜の出来事など嘘のような雰囲気だ。
が、『中年女』に出くわした地点に近づくに連れ緊張が走り、俺達は無言になり、又、足取りも重くなった。
少しずつ昨日の出来事が鮮明に思い出す地点に差し掛かった。
バットを握る手は緊張で汗まみれだ。

例の木が見えた。女が何かを打ち付けていた木。

少し近づいて俺達は言葉を失った。

木には小さな子供(四・五歳ぐらいの女のコ?)の写真に無数の釘が打ち付けられていた。
いや、驚いたのはそれでは無い。その木の根元にハッピーの変わり果てた姿が。
舌を垂らし、体中血まみれで、眉間に一本、釘が刺されていた。
俺達は絶句し、近づいて凝視することが出来なかった。
蝿や見たことの無い虫がたかっており、生物の『死』の意味を俺達は始めて知った。

950 本当にあった怖い名無し New! 2006/04/23(日) 02:32:23 ID:0yX4mhCZO
>>852
続き

俺はハッピーの変わり果てた姿を見て、今度中年女に会えば、次は俺がハッピーのように・・・と思い、すぐにでも家に帰りたくなった。
その時、淳が『タッチ・・、タッチの死体が無い!タッチは生きてるかも!』と言い出した。
すると慎も『きっとタッチは逃げのびたんだ!きっと基地にいるはず!』と言い出した。
俺もタッチだけは生きていて欲しい。と思い、三人で秘密基地へと走り出した。

秘密基地が見える場所まで走ってきたが、慎が急に立ち止まった。
俺と淳は『!中年女?!』と思い、慌てて身を伏せた。黙って慎の顔を見上げると、
慎は『・・なんだあれ・?』と基地を指差した。
俺と淳はゆっくり立ち上がり、基地を眺めた。
何か基地に違和感があった。何か・・・

基地の屋根に何か付いている・・。
少しずつ近づいていくと、基地の中に昨夜忘れていた淳の巾着袋(淳は菓子をいつもこれに入れて持ち歩いている)が基地の屋根に無数の釘で打ち付けてあるではないか!
俺達は驚愕した。
【この秘密基地、あの中年女にバレたんだ!】

慎が恐る恐る、バットを握り締めながら基地に近づいた 。

955 本当にあった怖い名無し New! 2006/04/23(日) 02:47:25 ID:0yX4mhCZO
俺と淳は少し後方でエアーガンを構えた。基地の中に中年女がいるかもしれない。
慎はゆっくりとドアに手を掛けると同時に、すばやく扉を引き開けた。

『うわっ!』

慎は何かに驚き、その場に尻餅を付きながら、ズルズルと俺達の元に後ずさりをしてきた。
俺と淳は何に慎が怯えているのか解らず、とりあえず銃を構えながら基地の中をゆっくりと覗いた。

そこには変わり果てたタッチの死体があった。
『うわっ!』
俺と淳も慎と同じような反応をとった。
やはりタッチも眉間に五寸釘が打ち込まれていた。
俺はその時、思った。あの中年女は変態だ!いや、キチ●イだ!普通、こんなことしないだろう。
とてつもない人間に関わってしまったと、昨夜、この山に来た事を心から後悔した。

しばらく三人ともタッチの死体を見て呆然としていたが、慎が小屋の中を指差し、『おい!!あれ・・・』

俺と淳は黙りながら静かに慎が指差す方向を覗き込んだ。
基地の中・・・
壁や床板に何か違和感が・・・何か文字が彫ってある・・ 近づいてよーく見てみた。




















『淳呪殺淳呪殺淳呪殺淳呪殺淳呪殺淳呪殺淳呪殺淳呪殺淳呪殺淳呪殺淳呪殺・・・』


















無数に釘で淳・呪・殺と壁や床に彫ってあった。

959 本当にあった怖い名無し New! 2006/04/23(日) 03:02:43 ID:0yX4mhCZO
淳は『え??・・』
と目が点、というか、固まっていた。いや、俺達も驚いた。なぜ名前がバレているのか!

その時、慎が『淳の巾着や、巾着に名前書いてあるやん!』
『?!』
俺は目線を屋根に打ち付けられた巾着に持って行った。
無数に釘で打ち付けられた巾着には確かに
【五年三組○○淳】
と書かれてある。
淳は泣き出した。
俺も慎も泣きそうだった。学年と組、名前が中年女にバレてしまったのだ。もう逃げられない。俺や慎の事もすぐにバレてしまう。
頭が真っ白になった。
俺達はみんなハッピーやタッチのように眉間に釘を打ち込まれ、殺される。。。
慎が言った
『警察に言おう!もうダメだよ、逃げられないよ!』
俺はパニックになり
『警察なんかに言ったら、秘密基地の事とか昨日の夜、嘘付いてここに来た事バレて親に怒られるやろ!』
と冷静さを欠いた事を言った。いや、当時は何よりも親に怒られるのが一番恐いと思っていたのもあるが。。。
ただ、淳はずっと泣いたまま、
『ッヒック、ヒック・・』
何も掛ける言葉が見つからなかった。

淳は無言で打ち付けられた巾着を引きちぎり、ポケットにねじ込んだ。

967 本当にあった怖い名無し New! 2006/04/23(日) 03:41:01 ID:0yX4mhCZO
俺達は会話が無くなり、とりあえず山を降りた。淳は泣いたままだった。
俺は今もどこからか中年女に見られている気がしてビクビクしていた。
山を降りると慎が
『もう、この山に来るのは辞めよ。しばらく近づかんといたら、あの中年女も俺らの事を忘れよるやろ。』と言った。
俺は『そやな、んで、この事は俺らだけの秘密にしよ!誰かに言ってるのがアイツにバレたら、俺ら殺されるかもしれん。』

慎は頷いたが淳は相変わらず腕で涙を拭いながら泣いていた。
その日、各自家に帰り、その後、その夏休みは三人で会うことは無かった。
その二週間後の新学期、登校すると、淳の姿は無かった。慎は来ていたので、慎と二人で『もしかして淳、あの女に・・・』と思いながら、学校帰りに二人で淳の家を訪ねた。
家の呼び鈴を押すと、明るい声で『はぁーい!』と淳の母親が出て来た。
俺が『淳は?』と聞くと、おばさんは『わざわざお見舞いありがとねー。あの子、部屋にいるから上がって。』
と言われ、俺と慎は淳の部屋に向かった。
『淳!入るぞ!』と淳の部屋に入ると、淳はベットで横になりながら漫画を読んでいた。
以外と平気そうな淳を見て俺と慎は少し安心した。

972 本当にあった怖い名無し New! 2006/04/23(日) 03:56:52 ID:0yX4mhCZO
慎『何で今日休んだん?』
俺『心配したぞ!風邪け?』
淳『・・・』
淳は無言のまま漫画を閉じ、俯いていた。
そこにおばさんが菓子とジュースを持ってきて、
『この子、10日ぐらい前からずっとジンマシンが引かないのよ。』と言って『駄菓子の食べ過ぎじゃないのー?』と続けた。
笑いながらおばさんは部屋を出ていった。
俺と慎は笑って
『何だよ!脅かすなよー、ジンマシンかよ!拾い食いでもしたんだろ?』とおどけたが、淳は俯いたまま笑わなかった。
慎が『おい!淳どうした?』と訪ねると淳は無言でTシャツを脱いだ。

体中に赤い斑点。
確かにジンマシンだった。俺は『ジンマシンなんて薬塗ってたら治るやん。』と言うと、淳が、
『これ、あの女の呪いや・・・』と言いながら背中を見せて来た。
確かに背中も無数にジンマシンがある。
慎が『何で呪いやねん。もう忘れろ!』と言うと
淳は『右の脇腹見て見ろや!』と少し声を荒げた。
右の脇腹・・たしかにジンマシンが一番酷い場所だったが、なぜ『呪い』に結び
付けるかが解らなかった。
すると淳が『よく見ろよ!これ、顔じゃねーか!』
よく見て俺と慎は驚いた。確かに直径五㌢程の人、いや、女の顔のように皮膚がただれて腫れ上がっている。

979 本当にあった怖い名無し New! 2006/04/23(日) 04:15:51 ID:0yX4mhCZO
俺と慎は『気にしすぎだろ?たしかに顔に見えないことも無いけど。』
と言ったが、
『どー見ても顔やんけ!俺だけやっぱり呪われてるんや!』と言った。
俺と慎は淳に掛ける言葉が見つからなかった。と言うより淳の雰囲気に圧倒された。
いつもは温厚で優しい淳が・・少し病んでいる。青白い顔に覇気のない目、きっと精神的に追い詰められているのだろう。
俺と慎は急に淳の家に居づらくなり、帰ることにした。
帰り道、俺は慎に『あれ、どー思う?呪いやろか?』と聞いた。
慎は『この世に呪いなんてあらへん!』と言った。なぜかその言葉に俺が勇気づけられた。

それから三日過ぎた。依然、淳は学校には来なかった。
俺も慎も淳に電話がしづらく、淳の様子は解らなかった。ただクラスの先生が『風疹で淳はしばらく休み』と言っていたので少し安心していた。
しかし、この頃から学校で奇妙な噂が流れ始めた。
【学校の通学路にトレンチコートにサンダル履きのオバさんが学童を一人一人睨むように顔を凝視してくる】
という噂だ。


982 本当にあった怖い名無し New! 2006/04/23(日) 04:26:47 ID:0yX4mhCZO
その噂を聞いた放課後、俺は激しく動揺した。何故なら俺は唯一、間近で顔を見られている。
慎に相談した。
慎は『大丈夫!夜やったし見えてないって!それにあの日見られてたとしても、忘れてるって!』と、俺を落ち着かせる為か、意外と冷静だった。
何よりも嫌だったのが、俺と慎は通学路が全くの正反対。俺と淳は近所なのだが、淳が休んでいる為、俺は一人で帰らなければいけない。
俺は慎に『しばらく一緒に帰ろうよ!俺、恐い。』と慎に頼んだ。慎は少し呆れた顔をしていたが、『淳が来るまでやぞ!』と行ってくれた。
その日から、帰りは俺の家まで慎が付き添ってくれる事になった。
Posted at 2011/06/15 20:39:26 | コメント(0) | トラックバック(0) | オカルト | パソコン/インターネット
2011年06月14日 イイね!

危険な好奇心 No.1

801 本当にあった怖い名無し 2006/04/22(土) 03:48:18 ID:moTdWLP+O
少し長い話ですが、暇な方、読んでください。

小学生の頃、学校の裏山の奥地に俺達は秘密基地を造っていた。
秘密基地っつっても結構本格的で、複数の板を釘で打ち付けて、雨風を防げる3畳ほどの広さの小屋。
放課後にそこでオヤツ食べたり、エロ本読んだり、まるで俺達だけの家のように使っていた。
俺と慎と淳と犬2匹(野良)でそこを使っていた。
小5の夏休み、秘密基地に泊まって遊ぼうと言うことになった。
各自、親には『○○の家に泊まる』と嘘をつき、小遣いをかき集めてオヤツ、花火、ジュースを買って。修学旅行よりワクワクしていた。
夕方の5時頃に学校で集合し、裏山に向かった。
山に入ってから一時間ほど登ると俺達の秘密基地がある。基地の周辺は2匹の野良犬(ハッピー♂タッチ♂)の縄張りでもある為、基地に近くなると、どこからともなく2匹が尻尾を振りながら迎えに来てくれる。
俺達は2匹に『出迎えご苦労!』と頭を撫でてやり、うまい棒を1本ずつあげた。
基地に着くと、荷物を小屋に入れ、まだ空が明るかったのでのすぐそばにある大きな池で釣りをした。まぁ釣れるのはウシガエルばかりだが。(ちなみに釣ったカエルは犬の餌)

803 本当にあった怖い名無し 2006/04/22(土) 04:11:40 ID:moTdWLP+O
釣りをしていると、徐々辺りが暗くなりだしたので、俺達は花火をやりだした。
俺達よりも2匹の野良の方がハシャいでいたが。
結構買い込んだつもりだったが、30分もしないうちに花火も尽きて、俺達は一旦小屋に入った。
夜の秘密基地というのは皆始めてで、山の奥地ということで、街灯もなく、月明りのみ。聞こえるのは虫の鳴き声だけ。
簡易ライト一本の薄明るい小屋に三人、最初は皆で菓子を食べながら好きな子の話、先生の悪口など喋っていたが、静まり返った小屋の周囲から、時折聞こえてくる『ドボン!』(池に何かが落ちてる音)や『ザザッ!』(何かの動物?の足音?)に俺達は段々と恐くなって来た。
しだいに、
『今、なんか音したよな?』
『熊いたらどーしよ?!』
など、冗談ではなく、本気で恐くなりだしてきた。
時間は9時、小屋の中は蒸し暑く、蚊もいて、眠れるような状況では無かった。
それよりも山の持つ独特の雰囲気に俺達は飲まれてしまい、皆、来た事を後悔していた。

806 本当にあった怖い名無し 2006/04/22(土) 04:35:31 ID:moTdWLP+O
明日の朝までどう乗り切るか俺達は話し合った。
結果、小屋の中は蒸し暑く、周囲の状況も見えない(熊の接近等)為、山を下りる事になった。
もう内心、一時も早く家に帰りたい!と俺は思っていた。
懐中電灯の明かりを頼りに足元を照らし、少し早歩きで俺達は下山し始めた。5分ほどはハッピーとタッチが俺達の周りを走り回っていたので心強かったが、少しすると2匹は小屋の方に戻っていった。
普段、何度も通っている道でも夜は全く別の空間にいるみたいだった。
幅30㌢程度の獣道を足を滑らさぬよう、皆無言で黙々と歩いていた。
そのとき、慎が俺の肩を後ろから掴み『誰かいるぞ!』と小さな声で言ってきた。
俺達は瞬間的にその場に伏せ、電灯を消した。
耳を澄ますと確かに足音が聞こえる。
『ザッ、ザッ、』
二本足で茂みを進む音。
その音の方を目を凝らして、その何者かを捜した。
俺達から2、30㍍程離れた所の茂みに、その何者かは居た。
懐中電灯片手に、もう一方の手には長い棒のようなものを持ち、その棒でしげみを掻き分け、山を登っているようだった。

808 本当にあった怖い名無し 2006/04/22(土) 04:44:54 ID:moTdWLP+O
俺たちは始め恐怖したが、その何かが『人間』であること。また相手が『一人』であることから、それまでの恐怖心はなくなり、俺たちの心は幼い『好奇心』で満たされていた。
俺が『あいつ、何者だろ?尾行する?』と呟くと、二人は『もちろん』と言わんばかりの笑顔を見せた。

微かに見える何者かの懐中電灯の明かりと草を書き分ける音を頼りに、俺達は慎重に慎重に後を着けだした。

809 本当にあった怖い名無し 2006/04/22(土) 04:57:38 ID:moTdWLP+O
その何者かは、その後20分程、山を登り続けて立ち止まった。

俺達はその後方30㍍程の所に居たので、そいつの性別はもちろん、様子等は全くわからない。
かすかな人影を捕らえる程度。
ソイツは立ち止まってから背中に背負っていた荷物を下ろし、何かゴソゴソしていた。
『アイツ一人で何してるんだろ?クワガタでも獲りに来たんかなぁ・』と俺は言った。
『もっと近づこうぜ!』と慎が言う。
俺達は枯れ葉や枝を踏まぬよう、擦り足で、身を屈ませながら、 ゆーっくりと近づいた。

810 本当にあった怖い名無し 2006/04/22(土) 05:19:30 ID:moTdWLP+O
俺達はニヤニヤしながら近づいていった。頭の中で、その何者かにどんな悪戯をしてやろうかと考えていた。
その時、
『コン!』
甲高い音が鳴り響いた。
心臓が止まるかと。

『コン!』
また鳴った。一瞬何が起きたか解らず、淳と慎の方を振り返った。
すると淳が指をさし、
『アイツや!アイツ、なんかしとる!』と。

俺はその何者かの様子を見た。
『コン!コン!コン!』
何かを木に打ち付けていた。いや、手元は見えなかったが、それが【呪いの儀式】というのはすぐにわかった。と 言うのも、この山は昔から【藁人形】に纏わる話がある。あくまで都市伝説的な噂だと、その時までは思っていたが。

俺は恐くなり、『逃げよ。』と言ったが、
慎が『あれ、やっとるの女や。よー見てみ。』と小声で言い出し、
淳が『どんな顔か見たいやろ?もっと近くで見たいやろ?』と悪ノリしだし、慎と淳はドンドンと先に進み出した。
俺はイヤだったが、ヘタレ扱いされるのも嫌なんで渋々二人の後を追った。

その女との距離が縮まるたびに『コン!コン!』以外に聞こえてくる音があった。
いや、音と言うか、
女はお経?のような事を呟いていた。

814 本当にあった怖い名無し 2006/04/22(土) 05:34:10 ID:moTdWLP+O
少し迂回して、俺達はその女の斜め後方8㍍程の木の陰に身を隠した。
その女は肩に少し掛かるぐらいの髪の長さで、痩せ型、足元に背負って来たリュックと電灯を置き、写真?のような物に次々と釘を打ち込んでいた。すでに6~7本打ち込まれていた。

その時、
『ワン!』
俺達はドキッとして振り返った、そこにはハッピーとタッチが尻尾を振ってハァハァいいながら「なにしてるの?」と言わんような顔で居た。
次の瞬間、
慎が『わ゛ぁー!!』と変な大声を出しながら走り出した。
振り返ると、鬼の形相をした女が片手に金づちを持ち、『ア゛ーッ!!』みたいな奇声を上げ、こちらに走って来ていた。



819 本当にあった怖い名無し 2006/04/22(土) 05:49:00 ID:moTdWLP+O
俺と淳もすぐさま立ち上がり慎の後を追い走った。
が、俺の左肩を後ろから鷲づかみされ、すごい力で後ろに引っ張られ、俺は転んだ。
仰向きに転がった俺の胸に『ドスっ』と衝撃が走り、俺はゲロを吐きかけた。何が起きたか一瞬解らなかったが、転んだ俺の胸に女が足で踏み付け、俺は下から女を見上げる形になっていた。
女は歯を食いしばり、見せ付けるように歯軋りをしながら『ンッ~ッ』と何とも形容しがたい声を出しながら、俺の胸を踏んでいる足を左右にグリグリと動かした。
痛みは無かった。もう恐怖で痛みは感じなかった。女は小刻みに震えているのが解った。恐らく興奮の絶頂なんだろう。
俺は女から目が離せなかった。離した瞬間、頭を金づちで殴られると思った。

826 本当にあった怖い名無し 2006/04/22(土) 06:10:53 ID:moTdWLP+O
そんな状況でも、いや、そんな状況だったからだろうか、女の顔はハッキリと覚えている。
年齢は40ぐらいだろうか、少し痩せた顔立ち、目を剥き、少し受け口気味に歯を食いしばり、小刻みに震えながら俺を見下す。
俺にとってはその状況が10分?20分?全く覚えてない。
女が俺の事を踏み付けながら、背を曲げ、顔を少しずつ近づけて来た、その時、タッチが女の背中に乗り掛かった。
女は一瞬焦り、俺を押さえていた足を踏み外し、よろめいた。
そこにハッピーも走って来て、女にジャレついた。
恐らく、2匹は俺達が普段遊んでいるから人間に警戒心が無いのだろう。
俺はそのすきに慌てて起きて走りだした。
『早く!早く!』と離れたところから慎と淳がこちらを懐中電灯で照らしていた。
俺は明かりに向かい走った。
『ドスっ』
後ろで鈍い音がした。
俺には振り返る余裕も無く走り続けた。


慎と淳と俺が山を抜けた時には0時を回っていた。
足音は聞こえなかったが、あの女が追い掛けてきそうで俺達は慎の家まで走って帰った。


慎の家に付き、俺は何故か笑いが込み上げて来た。極度の緊張から解き放たれたからだろうか?
しかし、淳は泣き出した。

831 本当にあった怖い名無し 2006/04/22(土) 06:27:53 ID:moTdWLP+O
俺は『もう、あの秘密基地二度と行けへんな。あの女が俺らを探してるかもしれんし。』と言うと
淳は泣きながら『アホ!朝になって明るくなったら行かなアカンやろ!』と言い出した。
俺がハァ?と思っていると、慎が俺に『お前があの女から逃げれたの、ハッピーとタッチのおかげやぞ!お前があの女に後から殴られそうなとこ、ハッピーが飛び付いて、代わりに殴られよったんや!』

すると淳も泣きながら
『あの女、タッチの事も、タッチも・・うっ・』と号泣しだした。

後から慎に聞くと走り出した俺を後から殴ろうとしたとき、ハッピーが女に飛び付き、頭を金づちで殴られた。女は尚も俺を追い掛けようとしたが、足元にタッチがジャレついてきて、タッチの頭を金づちで殴った。
そして女は一度俺らの方を見たが、追い掛けてこず、ひたすら2匹を殴り続けていた。

俺達はひたすら逃げた。

慎も朝になれば山に入ろうといった。
もちろん、俺も同意した。

しかし、そこには、さらなる恐怖が待っていた。
Posted at 2011/06/14 23:18:08 | コメント(0) | トラックバック(0) | オカルト | パソコン/インターネット
2011年06月12日 イイね!

リョウメンスクナ

452 その1 sage 2005/09/21(水) 16:10:58 ID:GJUzoiep0
俺、建築関係の仕事やってんだけれども、先日、岩手県のとある古いお寺を解体することになったんだわ。今は利用者もないお寺ね。んでお寺ぶっ壊してると、同僚が俺を呼ぶのね。
「~、ちょっと来て」と。俺が行くと、同僚の足元に、黒ずんだ長い木箱が置いてたんだわ。

俺「何これ?」
同僚「いや、何かなと思って・・・本堂の奥の密閉された部屋に置いてあったんだけど、ちょっと管理してる業者さんに電話してみるわ」

木箱の大きさは2mくらいかなぁ。相当古い物みたいで、多分木が腐ってたんじゃないかな。
表に白い紙が貼り付けられて、何か書いてあるんだわ。相当昔の字と言う事は分ったけど、凡字の様な物も見えたけど、もう紙もボロボロで何書いてるかほとんどわからない。
かろうじて読み取れたのは、

「大正??年??七月??ノ呪法ヲモッテ、両面スクナヲ???二封ズ」

的な事が書いてあったんだ。木箱には釘が打ち付けられてて開ける訳にもいかず、業者さんも「明日、昔の住職に聞いてみる」と言ってたんで、その日は木箱を近くのプレハブに置いておく事にしたんだわ。


453 その2 sage 2005/09/21(水) 16:31:26 ID:GJUzoiep0
んで翌日。解体作業現場に着く前に、業者から電話かかってきて、

業者「あの木箱ですけどねぇ、元住職が、絶対に開けるな!!って凄い剣幕なんですよ・・・
   なんでも自分が引き取るって言ってるので、よろしくお願いします」

俺は念のため、現場に着く前に現場監督に木箱の事電話しておこうと思い、

俺「あの~、昨日の木箱の事ですけど」
監督「あぁ、あれ!お宅で雇ってる中国人(留学生)のバイト作業員2人いるでしょ?
    そいつが勝手に開けよったんですわ!!とにかく早く来てください」

嫌な予感がし、現場へと急いだ。プレハブの周りに、5~6人の人だかり。
例のバイト中国人2人が放心状態でプレハブの前に座っている。

監督「こいつがね、昨日の夜中、仲間と一緒に面白半分で開けよったらしいんですよ。
   で、問題は中身なんですけどね・・・ちょっと見てもらえます?」

単刀直入に言うと、両手をボクサーの様に構えた人間のミイラらしき物が入っていた。
ただ異様だったのは・・・頭が2つ。シャム双生児?みたいな奇形児いるじゃない。
多分ああいう奇形の人か、作り物なんじゃないかと思ったんだが・・・

監督「これ見てね、ショック受けたんか何か知りませんけどね、この2人何にも
喋らないんですよ」

中国人2人は俺らがいくら問いかけても、放心状態でボーっとしていた(日本語はかなり話せるのに)。



459 その3 sage 2005/09/21(水) 17:07:49 ID:GJUzoiep0
あ、言い忘れたけど、そのミイラは
「頭が両側に2つくっついてて、腕が左右2本ずつ、足は通常通り2本」という異様な形態だったのね。俺もネットや2ちゃんとかで色んな奇形の写真見たことあったんで、そりゃビックリしたけど、「あぁ、奇形か作りもんだろうな」と思ったわけね。

んで、例の中国人2人は一応病院に車で送る事になって、警察への連絡はどうしようかって話をしてた時に、元住職(80歳超えてる)が息子さんが運転する車で来た。
開口一番、

住職「空けたんか!!空けたんかこの馬鹿たれが!!しまい、空けたらしまいじゃ・・・」

俺らはあまりの剣幕にポカーンとしてたんだけど、住職が今度は息子に怒鳴り始めた。
岩手訛りがキツかったんで標準語で書くけど、

住職「お前、リョウメンスクナ様をあの時、京都の~寺(聞き取れなかった)に絶対送る言うたじゃろが!!送らんかったんかこのボンクラが!!馬鹿たれが!!」

ホント80過ぎの爺さんとは思えないくらいの怒声だった。

住職「空けたんは誰?病院?その人らはもうダメ思うけど、一応アンタらは祓ってあげるから」

俺らも正直怖かったんで、されるがままに何やらお経みたいの聴かされて、経典みたいなのでかなり強く背中とか肩とか叩かれた。結構長くて30分くらいやってたかな。
住職は木箱を車に積み込み、別れ際にこう言った。

「可哀想だけど、あんたら長生きでけんよ」

その後、中国人2人の内1人が医者も首をかしげる心筋梗塞で病室で死亡、もう1人は精神病院に移送、解体作業員も3名謎の高熱で寝込み、俺も釘を足で踏み抜いて5針縫った。まったく詳しい事は分らないが、俺が思うにあれはやはり人間の奇形で、差別にあって恨みを残して死んでいった人なんじゃないかと思う。
だって物凄い形相してたからね・・・その寺の地域も昔部落の集落があった事も何か関係あるのかな。無いかもしれないけど。長生きはしたいです。


468 その3 sage 2005/09/21(水) 17:40:58 ID:J0sPTefW0
ID変わっちゃったけど452です。いきなりブラックアウトして電源落ちたんでビビッた・・・
俺だってオカ板覗くらいだから、こういう事には興味しんしんなので、真相が知りたく何度も住職に連絡取ったんだけど、完全無視でした。
しかし、一緒に来てた息子さん(50過ぎで不動産経営)の連絡先分ったんで、この人は割と明るくて派手めの人なんで、もしかしたら何か聞けるかも?と思い今日の晩(夜遅くだけど)飲みに行くアポとれました。何か分ったら明日にでも書きますわ。




476 本当にあった怖い名無し sage 2005/09/21(水) 18:24:34 ID:K2+tPFpq0

リョウメンスクナの話、「宗像教授伝奇考」という漫画に出てきた覚えがある。
スクナ族という、恐らく大昔に日本へ来た外国人ではないかと思われる人が、太古の日本へ文化を伝えた。それが出雲圏の文化形成となり、因幡の白ウサギの伝説もオオクニヌシノミコトの国造りの話もこれをモチーフとした話だろう、と。
そして大和朝廷による出雲の侵略が起こり、追われたスクナ族がたどり着いたのが今の飛騨地方だった。
日本書紀によれば、飛騨にスクナという怪物がおり、人々を殺したから兵を送って退治した、という話が書かれている、と。

つまり、スクナというのは大和朝廷以前の時代に日本へ文化を伝えた外来人のことで、恐らくは古代インドの製鉄を仕事とする(そして日本へ製鉄を伝えたであろう)人々のことではないかと書かれていた。
そして、出雲のある場所で見つけた洞窟の奥にあったものが、

  「リョウメンスクナ」(両面宿儺)

の像だった、とあった。



477 476 sage 2005/09/21(水) 18:40:24 ID:K2+tPFpq0
スクナ族は、日本へ羅魔船(カガミノフネ)で来た、と書かれ、鏡のように黒光する船であったとのこと。羅魔は「ラマ」で、黒檀系の木の名である、と書かれていたけど、黒ずんだ長い木箱とあったので、これももしかするとラマなのかも・・・?
とすると、リョウメンスクナ様も、逃げ延びて岩手地方に来たスクナ族の末裔なのかもしれないな。

・・・と、オカ板的にはあわない内容かも、と思いつつ書いてみたが。





491 452 sage 2005/09/21(水) 22:27:34 ID:ERc7KoX60
すんません。直前になって何か「やはり直接会って話すのは・・・」とか言われたんで、元住職の息子さんに「じゃあ電話でなら・・・」「話せるとこまでですけど」と言う条件の元、話が聞けました。時間にして30分くらい結構話してもらったんですけどね。
なかなか話し好きなオジサンでした。要点を主にかいつまんで書きます。

息子「ごめんねぇ。オヤジに念押されちゃって。本当は電話もヤバイんだけど」
俺「いえ、こっちこそ無理言いまして。アレって結局何なんですか??」
息子「アレは大正時代に、見世物小屋に出されてた奇形の人間です」
俺「じゃあ、当時あの結合した状態で生きていたんですか?シャム双生児みたいな?」
息子「そうです。生まれて数年は、岩手のとある部落で暮らしてたみたいだけど、生活に窮した親が人買いに売っちゃったらしくて。それで見世物小屋に流れたみたいですね」
俺「そうですか・・・でもなぜあんなミイラの様な状態に??」
息子「正確に言えば、即身仏ですけどね」
俺「即身仏って事は、自ら進んでああなったんですか!?」
息子「・・・君、この事誰かに話すでしょ?」
俺「正直に言えば・・・話したいです」
息子「良いよ君。正直で(笑) まぁ私も全て話すつもりはないけどね・・・
   アレはね、無理やりああされたんだよ。当時、今で言うとんでもないカルト教団がいてね。教団の名前は勘弁してよ。今もひっそり活動してると思うんで・・・」
俺「聞けば、誰でもああ、あの教団って分りますか?」
息子「知らない知らない(笑)極秘中の極秘、本当の邪教だからね」
俺「そうですか・・・」


499 その2 sage 2005/09/21(水) 23:25:00 ID:ERc7KoX60
スマソ。またいきなりPCの電源切れて遅くなりました・・・

息子「この教祖がとんでもない野郎でね。外法(げほう)しか使わないんだよ」
俺「外法ですか?」
息子「そう、分りやすく言えば(やってはいけない事)だよね。ちょっと前に真言立川流が、邪教だ、外法だ、って叩かれたけど、あんな生易しいもんじゃない」
俺「・・・具体的にどんな?」
息子「で、当時の資料も何も残ってないし偽名だし、元々表舞台に出てきたヤツでもないし、今教団が存続してるとしても、今現在の教祖とはまったく繋がりないだろうし、名前言うけどさ・・・物部天獄(もののべてんごく)。これが教祖の名前ね」
俺「物部天獄。偽名ですよね?」
息子「そうそう、偽名。んで、この天獄が例の見世物小屋に行った時、奇形数名を大枚はたいて買ったわけよ。例のシャム双生児?って言うの?それも含めて」
俺「・・・それで?」
息子「君、コドクって知ってる?虫に毒って書いて、虫は虫3つ合わせた特殊な漢字だけど」
俺「壺に毒虫何匹か入れて、最後に生き残った虫を使う呪法のアレですか?(昔マンガに載ってたw)」
息子「そうそう!何で知ってるの君??凄いね」
俺「ええ、まぁちょっと・・・それで?」
息子「あぁ、それでね。天獄はそのコドクを人間でやったんだよ」
俺「人間を密室に入れて??ウソでしょう」
息子「(少し機嫌が悪くなる)私もオヤジから聞いた話で、100%全部信じてるわけじゃないから・・・もう止める?」
俺「すみません!・・・続けてください」
息子「分った。んで、それを例の奇形たち数人でやったわけさ。教団本部か何処か知らないけど、地下の密室に押し込んで。それで例のシャム双生児が生き残ったわけ」
俺「閉じ込めた期間はどのくらいですか?」
息子「詳しい事は分らないけど、仲間の肉を食べ、自分の糞尿を食べてさえ生き延びねばならない期間、と言ったら大体想像つくよね」
俺「あんまり想像したくないですけどね・・・」



503 その3 sage 2005/09/21(水) 23:47:39 ID:ERc7KoX60
息子「んで、どうも最初からそのシャム双生児が生き残る様に、天獄は細工したらしいんだ。他の奇形に刃物か何かで致命傷を負わせ、行き絶え絶えの状態で放り込んだわけ。奇形と言ってもアシュラ像みたいな外見だからね。その神々しさ(禍々しさ?)に天獄は惹かれたんじゃないかな」
俺「なるほど・・・」
息子「で、生き残ったのは良いけど、天獄にとっちゃ道具に過ぎないわけだから、すぐさま別の部屋に1人で閉じ込められて、餓死だよね。そして防腐処理を施され、即身仏に。この前オヤジの言ってたリョウメンスクナの完成ってわけ」
俺「リョウメンスクナって何ですか?」

※>>476氏ほど詳しい説明は無かったが、神話の時代に近いほどの大昔に、
   リョウメンスクナと言う、2つの顔、4本の手をもつ怪物がいた、と言う
   伝説にちなんで、例のシャム双生児をそう呼ぶ事にしたと、言っていた。

俺「そうですか・・・」
息子「そのリョウメンスクナをね、天獄は教団の本尊にしたわけよ。呪仏(じゅぶつ)としてね。
   他人を呪い殺せる、下手したらもっと大勢の人を呪い殺せるかも知れない、とんでもない呪仏を作った、と少なくとも天獄は信じてたわけ」
俺「その呪いの対象は?」
息子「・・・国家だとオヤジは言ってた」
俺「日本そのものですか?頭イカレてるじゃないですか、その天獄って」
息子「イカレたんだろうねぇ。でもね、呪いの効力はそれだけじゃないんだ。
   リョウメンスクナの腹の中に、ある物を入れてね・・・」
俺「何です?」
息子「古代人の骨だよ。大和朝廷とかに滅ぼされた(まつろわぬ民)、いわゆる朝廷からみた反逆者だね。逆賊。その古代人の骨の粉末を腹に入れて・・・」
俺「そんなものどこで手に入れて・・・!?」
息子「君もTVや新聞とかで見たことあるだろう?古代の遺跡や墓が発掘された時、発掘作業する人たちがいるじゃない。
   当時はその辺の警備とか甘かったらしいからね・・・そういう所から主に盗ってきたらしいよ」


511 その4 sage 2005/09/22(木) 00:13:22 ID:mdYgh3LB0
俺「にわかには信じがたい話ですよね・・・」
息子「だろう?私もそう思ったよ。でもね、大正時代に主に起こった災害ね、これだけあるんだよ」

   1914(大正3)年:桜島の大噴火(負傷者 9600人)
   1914(大正3)年:秋田の大地震(死者 94人)
   1914(大正3)年:方城炭鉱の爆発(死者 687人)
   1916(大正5)年:函館の大火事
   1917(大正6)年:東日本の大水害(死者 1300人)
   1917(大正6)年:桐野炭鉱の爆発(死者 361人)
   1922(大正11)年:親不知のナダレで列車事故(死者 130人)

   そして、1923年(大正12年)9月1日、関東大震災、死者・行方不明14万2千8百名

俺「それが何か?」
息子「全てリョウメンスクナが移動した地域だそうだ」
俺「そんな!教団支部ってそんな各地にあったんですか?と言うか、偶然でしょう(流石に笑った)」
息子「俺も馬鹿な話だと思うよ。で、大正時代の最悪最大の災害、関東大震災の日ね。
   この日、地震が起こる直前に天獄が死んでる」
俺「死んだ?」
息子「自殺、と聞いたけどね。純粋な日本人ではなかった、と言う噂もあるらしいが・・・」
俺「どうやって死んだんですか?」
息子「日本刀で喉かっ斬ってね。リョウメンスクナの前で。それで血文字で遺書があって・・・」
俺「なんて書いてあったんですか??」

日      本      滅      ブ    ベ    シ




515 その5 sage 2005/09/22(木) 00:27:58 ID:mdYgh3LB0
俺「・・・それが、関東大震災が起こる直前なんですよね?」
息子「そうだね」
俺「・・・偶然ですよね?」
息子「・・・偶然だろうね」
俺「その時、リョウメンスクナと天獄はどこに・・・??」
息子「震源に近い相模湾沿岸の近辺だったそうだ」
俺「・・・その後、どういう経由でリョウメンスクナは岩手のあのお寺に?」
息子「そればっかりはオヤジは話してくれなかった」
俺「あの時、住職さんに(なぜ京都のお寺に輸送しなかったんだ!)みたいな事を言われてましたが、あれは??」
息子「あっ、聞いてたの・・・もう30年前くらいだけどね、私もオヤジの後継いで坊主になる予定だったんだよ。
   その時に俺の怠慢というか手違いでね・・・その後、あの寺もずっと放置されてたし・・・話せることはこれくらいだね」
俺「そうですか・・・今リョウメンスクナはどこに??」
息子「それは知らない。と言うか、ここ数日オヤジと連絡がつかないんだ・・・
   アレを持って帰って以来、妙な車に後つけられたりしたらしくてね」
俺「そうですか・・・でも全部は話さないと言われたんですけど、なぜここまで詳しく教えてくれたんですか?」
息子「オヤジがあの時言ったろう?可哀想だけど君たち長生きできないよってね」
俺「・・・」
息子「じゃあこの辺で。もう電話しないでね」
俺「・・・ありがとうございました」


以上が電話で話した、かいつまんだ内容です・・・はっきり言って全ては信じてません。
何か気分悪くなったので今日は落ちますね。連投・長文スマソ。
Posted at 2011/06/12 22:44:37 | コメント(0) | トラックバック(0) | オカルト | パソコン/インターネット
2011年06月11日 イイね!

リゾートバイト No.6

真相

リゾートバイトの真相を書くってことで、宣言したんで一応載せる。

今までで一番長いかも知れないからね。ひとつにまとめちゃったからね。

では、始める。


続編


あの後、俺達は死んだように眠り、坊さんの声で目を覚ました。

坊「皆さん、起きれますか?」

特別寝起きが悪いAをいつものように叩き起こし、俺達は坊さんの前に3人正座した。

坊「皆さん、昨日は本当によく頑張ってくれました。
無事、憑き祓いを終えることができました」

そう言って坊さんは優しく笑った。

俺達は、その言葉に何と言っていいか分からず、曖昧な笑顔を坊さんに向けた。
聞きたいことは山ほどあったのに、何も言い出せなかった。

すると坊さんは俺達の心中を察したのか、
坊「あなたたちには、全てお話しなくてはなりませんね。お見せしたい物があります」
と言って立ち上がった。

坊さんは家を出ると、俺達を連れて寺の方に向かった。

石段を上る途中、Bはキョロキョロと辺りを警戒する仕草を見せた。
それにつられて俺も、昨日見たアイツの姿を思い出して同じ行動を取った。

それに気づいた坊さんは、俺達に聞いた。
坊「もう大丈夫のはずです。どうですか?」

B「大丈夫・・何も見えません」

俺「俺も平気です」

その返事を聞くと坊さんはにっこりと笑った。

大きな寺に着くと、ここが本堂だと言われた。
坊さんの後ろに続いて寺の横にある勝手口から中に入り、さっきまで居た座敷とさほど変わらない部屋に通された。

坊さんは俺達にここで少し待つように言うと、部屋を出て行った。
Bは落ち着かないのか貧乏揺すりを始めた。

暫くすると、坊さんは小さな木箱を手に戻って来た。

そして俺達の対面に腰を下ろすと、
坊「今回の事の発端をお見せしますね」
と言って箱を開けた。

3人で首を伸ばして箱の中を覗き込んだ。
そこには、キクラゲがカサカサに乾燥したような、黒く小さい物体が綿にくるまれていた。

AB俺(何だこれ?)

よく見てみるが分からない。

だがなんとなく、どっかで見たことのある物だと思った。
俺は暫く考え、咄嗟に思い出した。

昔、俺がまだ小さい頃、母親がタンスの引き出しから大事そうに木の箱を持ってきたことがあった。
そして箱の中身を俺に見せるんだ。すげー嬉しそうに。
箱の中には綿にくるまれた黒くて小さな物体があって、俺はそれが何か分からないから母親に尋ねたんだ。

そしたら母親は言ったんだ。
「これはねぇ、臍(へそ)の緒って言うんだよ。お母さんと、○○が繋がってた証」

俺は子供心に(なんでこんなの大事そうにしてるんだろ?)って思った。


目の前にあるその物体は、あの時に見た臍の緒に似ているんだと思った。

A「これ何ですか?」

坊「これは、臍の緒ですよ」

というか似てるもなにも臍の緒だった。

A「俺初めて見たかも」

B「おれ見たことある」

俺「俺も」

坊「みなさん親御さんに見せてもらったのでしょう。
こういうものは、大切に取っておく方が多いですから」

坊「この臍の緒も、それはそれは大切に保管されていたものなのです」

俺たちは黙って坊さんの話を聞いていた。

坊「母親の胎内では、親と子は臍の緒で繋がっております。
今ではその絆や出産の記念にと、それを大切にする方が多いですが、臍の緒には色々な言い伝えがあり、昔はそれを信じる者も多かったのです」

B「言い伝え?」

坊「そうです。昔の人はそういう言い伝えを非常に大切にしておりました。今となっては迷信として語られるだけですが」

そう前置きをして坊さんは臍の緒に関する言い伝えを教えてくれた。

主に”子を守る”という意味を持っているが、解釈は様々。
”子が九死に一生の大病を患った際に煎じて飲ませると命が助かる”とか”子に持たせるとその子を命の危険から守る”というのがあって、親が子供を想う気持ちが込められているところでは共通しているらしい。

俺たちはその話を聞いて、「へぇ~」なんて間抜けな返事をしていた。

坊さんは一息入れると、微かに口元を上げて言った。

坊「ひとつ、この土地の昔話をしてもよろしいですか?
今回の事に関わるお話として聞いいただきたいのです」

俺達は坊さんに頷いた。

ここから、坊さんの話が始まる。
結構長くて、正確には覚えてない、所々抜け落ち部分があるかも。

坊「この土地に住む者も、臍の緒に纏わる言い伝えを深く信じておりました。
土地柄、ここでは昔から漁を生業として生活する者が多くおりました。
漁師の家に子が生まれると、その子は物心がつく頃から親と共に海に出るようになります。
ここでは、それがごく普通のしきたりだったようです」

坊「漁は危険との隣り合わせであり、我が子の帰りを待つ母親の気持ちは、私には察するに余りありますが、それは深く辛いものだったのでしょう。
母親達はいつしか、我が子に御守りとして臍の緒を持たせるようになります」

坊「海での危険から命を守ってくれるように、そして行方のわからなくなったわが子が、自分の元へと帰ってこれるようにと」

俺「帰ってくる?」

俺は思わず口を挟んだ。

坊「そうです。まだ体の小さな子は波にさらわれることも多かったと聞きます。
行方の分からなくなった子は、何日もすると死亡したことと見なされます。
しかし、突然我が子を失った母親は、その現実を受け入れることができず、何日も何日もその帰りを待ち続けるのだそうです」

坊「そうしていつからか、子に持たせる臍の緒には、”生前に自分と子が繋がっていたように、子がどこにいようとも自分の元へ帰ってこれるように”と、命綱の役割としての意味を孕むようになったのだと言います」

皮肉な話だと思った。
本来海の危険から身を守る御守りとしての役割を成すものが、いざ危険が起きたときの命綱としての意味も持ってる。

母親はどんな気持ちで子どもを送り出してたんだろうな。

坊「実際、臍の緒を持たせていた子が行方不明になり無事に帰ってくることはなかったそうです」

坊「しかしある日、”子供が帰ってきた”と涙を流して喜ぶ1人の母親が現れます。これを聞いた周囲の者はその話を信用せず、とうとう気が狂ってしまったかと哀れみさえ抱いたそうです。
何故なら、その母親が海で子を失ったのは3年も前のことだったからです」

B「どこかに流れついて今まで生きてたとかじゃないんですか?」

坊「そうですね。始めはそう思った者もいたようです。そして母親に子供の姿を見せてほしいと言い出した者もいたそうなのです」

B「それで?」

坊「母親はその者に言ったそうです。”もう少ししたら見せられるから待っていてくれ”と」

どういう意味だ?
帰って来たら見せられるはずじゃないのか?

俺はこの時、理由もなく鳥肌が立った。

坊「もちろんその話を聞いて村の者は不振に思ったそうですが、子を亡くしてからずっと伏せっていた母親を見てきた手前、強く言うことができずそのまま引き下がるしかできなかったそうです」

坊「しかし次の日、同じ事を言って喜ぶ別の母親が現れるのです。そしてその母親も、子の姿を見せることはまだできないという旨の話をする。
村の者達は困惑し始めます。」

坊「前日の母親は既に夫が他界し、本当のところを確かめる術が無かったのですが、この別の母親には夫がおりました。
そこで村の者達は、この夫に真相を確かめるべく話を聞くことになったそうです」

坊「するとその夫は言ったそうです。”そんな話は知らない”と。母親の喜びとは反対に、父親はその事実を全く知らなかったのです。
村人達が更に追求しようとすると、”人の家のことに首を突っ込むな”とついには怒りだしてしまったそうです」

まあ、そうだよな。
何にせよ周りの人に家の中のことをごちゃごちゃ聞かれたらいい気はしないだろうな、なんて思ったりもした。

坊「その後何日かするとある村の者が、最初に子が戻ってきたと言い出した母親が、昨晩子共を連れて海辺を歩く姿を見たと言い出します。暗くてあまり良く見えなかったが、手を繋ぎ隣にいる子供に話しかけるその姿は、本当に幸せそうだったと。
この話を聞いた村の者達は皆、これまでの非を詫びようと、そして子が戻ってきたことを心から祝福しようと、母親の家に訪ねに行くことにしたそうです」

坊「家に着くと、中から満面の笑顔で母親が顔を出したそうです。村の者達はその日来た理由を告げ、何人かは頭を下げたそうです。
すると母親は、”何も気にしていません。この子が戻って来た、それだけで幸せです”と言いながら、扉に隠れてしまっていた我が子の手を引き寄せ、皆の前に見せたそうです」

坊「その瞬間、村の者達はその場で凍りついたそうです」

AB俺「・・・」

坊「その子の肌は、全身が青紫色だったそうです。そして体はあり得ない程に膨らみ、腫れ上がった瞼の隙間から白目が覗き、辛うじて見える黒目は左右別々の方向を向いていたそうです。
そして口から何か泡のようなものを吹きながら母親の話しかける声に寄生を発していたそうです。それはまるでカラスの鳴き声のようだったと聞きます。
村の者達は、子供の奇声に優しく笑いかけ、髪の抜け落ちた頭を愛おしそうに撫でる母親の姿を見て、恐怖で皆その場から逃げ出してしまったのだそうです」

坊「散り散りに逃げた村の者達はその晩、村の長の家に集まり出します。
何か得体の知れないものを見た恐怖は誰一人収まらず、それを聞いた村の長は自分の手には負えないと判断し、皆を連れてある住職の元へ行くことにします。
その住職というのが、私のご先祖に当たる人物らしいのですが・・」

坊「相談を受けた住職は、事の重大さを悟りすぐさま母親の元に向かいます。そして母親の横に連れられた子を見るや、母親を家から引きずり出し寺へと連れて帰ったそうです。その間も、その子は住職と母親の後をずっと付いてきて奇声を発していたのだとか」

坊「寺に着くとまず結界を強く張った一室に母親を入れ、話を聞こうとします。
しかし、一瞬でも子と離れた母親は、その不安からかまともに話をできる状態ではなかったと聞きます。ついには子供を返せと、住職に向かってものすごい剣幕で怒鳴り散らしたのだそうです」

A「それでどうなったんですか?」

坊「子を想う母は強い。住職が本気で押さえ込もうとしたその力を跳ね飛ばし、そのまま寺を飛び出してしまったのだそうです」

坊さんは少し情けなそうな顔をしてそう言った。

坊「その後、村の者と従者を何人か連れて母親の家に行きましたが、そこに母と子の姿はなかったそうです。
そして家の中には、どこのものかわからない札が至る所に貼り付けられ、部屋の片隅には腐った残飯が盛られ異臭が立ち込めていのだとか」

この時俺は思った。あの旅館の2階で見たものと同じだと。

坊「そこに居た皆は同じことを思いました。母親は子を失った悲しみから、ここで何かしらの儀を行っていたのだと。
そして信じ難いことだが、その産物としてあのようなモノが生まれたのだと。その想いを悟った村の者達は、母親の行方を村一丸になって捜索します」

坊「住職はすぐさま従者を連れ、もう一人の母親の家に向かいますが、こちらも時既に遅しの状態だったそうです。得体の知れないモノに語りかけ、子の名前を呼ぶ母親に恐怖する父親。
その光景を見た住職は、経を唱えながらそのモノに近づこうとしますが、子を守る母親は住職に白目を向き、奇声を発しながら威嚇してきたのだそうです」

現実味のない話だったのに、なぜかすごく汗ばんだ。

坊「村の者は恐れ、一歩も近寄れなかったと言います。しかし住職とその従者は臆することなくその母親とそのモノに近づき、興奮する母親を取り押さえ寺へ連れ帰ります。
暴れる母親を抱えながら、背後から付いて来るモノに経を唱え、道に塩を盛りながら少しずつ進んだのだそうです」

坊「寺に着くと住職は母親をおんどうへ連れて行き、体を縛りその中に閉じ込めたのだそうです」

A「そんなことを・・」

Aが哀れみの声を出した。

坊「仕方がなかったのです。親と子を離すのが先決だった、そうしなければ何もできなかったのでしょう」

坊さんがしたことではないが、Aは坊さんから顔を背けた。

少しの沈黙の後、坊さんは続けた。

坊「母親の体には自害を防ぐための処置が施されたようですがその詳細は分かりません。
その後、おんどうの周りに注連縄を巻きつけ、住職達はその周りを取り囲むようにして座り経を唱え始めたそうです。
中から母親の呻き声が聞こえましたが、その声が子に気づかれぬよう、全員で大声を張り上げながら経を唱えたそうです」

坊「住職達が必死に経を唱える中、いよいよ子の姿が現れます。子は親を探し、おんどうの周りをぐるぐると回り始めます。
何を以って親の場所を捜すのか、果たして経が役目を成すのかもわからない状態で、とにかく住職達は必死に経を唱えたのです」

そこで坊さんは一息ついた。

B「それで、どうなったんですか?」
Bの声は恐る恐るといった感じだった。

坊「おんどうの周りを回っていたそのモノは、次第に歩くことを困難とし、四足歩行を始めたそうです。
その後、四肢の関節を大きく曲げ、蜘蛛のように地を這い回ったそうです。それはまるで、人間の退化を見ているようだったと。
さらにその後、なにやら呻き声を上げたかと思うとそのモノの四肢は失われ、芋虫のような形態でそこに転がっていたのだとか」

坊「そしてそのモノは夜が明けるにつれて小さくすぼみ、最終的に残ったのが、臍の緒だったのです」

俺は、坊さんの話に聞き入っていた。
まるで自分達の話に毛が生えて、昔話として語られているような感覚だった。

するとAが聞いたんだ。

A「え、もしかしてその臍の緒って・・」

すると坊さんは静かに答えた。

坊「今朝、おんどう奥の岩の上に転がっていたものです」

B「マジかよ・・」

Bは呆然として呟いた。

俺「なんで?なんで俺達なんですか?」

坊「詳しくはわかりません。この寺には、代々の住職達の手記が残されていますが、母親でない者にこのような現象が起きた事例は見当たりませんでした」

坊「何より、肝心の母親の行った儀式について。これがまだ謎に包まれたままなのです」

B「母親に聞かなかったんですか?」

坊「聞かなかったのではなく、聞けなかったのです」

ポカンとしていると坊さんはまた話し始めた。

坊「住職達がおんどうを開け中を確認すると、疲れ果ててぐったりした母親がいたそうです。
子を求めて一晩中叫んでいたのでしょう。すぐさま母親を外に運びだし手当てをしましたが、目を覚ました時には、母親は完全に正気を失っておりました。
二度も子を失った悲しみからなのか、はたまた何か禍々しいモノの所為なのか、それも分かりかねますが」

坊「そして村の者が捜索していたもう一人の母親ですが、一晩経を読み上げ疲れ果てた住職達の元に、発見の知らせが届いたそうです。
近海の岸辺に遺体となって打ち上げられていたと。母親は体中を何かに食い破られており、それでいて顔はとても幸せそうだったとあります。
何が起きたのかはわかりませんが、住職の手記にはこうありました。”子に食われる母親の最後は、完全な笑顔だった”と。」

信じられないような話なんだが、俺達は坊さんの話す言葉一つ一つをそのまま飲み込んだ。

坊「遺体となって見つかった母親の家は、村の者達による話し合いで取り壊されることとなり、その際に家の中から母親の書いたものらしいメモが見つかったそうです」

そう言って坊さんはそのメモの内容を俺達に説明してくれた。
簡単に言うと、儀式を始めてからの我が子を記録した成長記録のようなものだったそうだ。
どんな風に書かれていたのかは憶測でしかないんだが、内容は覚えているので以下に書く。わかりづらいかも。

○月?日 堂の作成を開始する
×月?日 変化なし

・・・

△月?日 △△(子の名前)が帰ってくる
△月?日 移動が困難な状態
△月?日 手足が生える
△月?日 はいはいを始める
△月?日 四つ足で動き回る
△月?日 言葉を発する
△月?日 立つ

この成長記録に、母親の心情がビッシリと書き連ねてあったらしい。

ちなみに、もう一人の母親は、屋根裏に堂を作っていたらしく、父親はその存在に全く気づいていなかったのだそうだ。

坊「私もすべてを理解しているとは言えませんが、この母親の成長記録と住職の手記を見比べると、そのモノは自分の成長した過程を遡るようにして退化していったと考えられませんか?」

確かにその通りだと思った。
そして坊さんは、それ以上の言及を避けるように話を続けた。

坊「これ以降手記には、非常に稀ですが同じような事象の記述が見られます。だがその全てに、母親達がいつどのようにしてこの儀を知るのかが明記されていないのです。
それは全ての母親が、命を落とす若しくは、話すこともままならない状態になってしまったことを意味しているのです」

坊さんは早期に発見できないことを悔やんでいると言った。

坊「今回の現象は初めてのことで、私自身もとても戸惑っているのです。何故母親ではないあなたがそのモノを見つけてしまったのか。
子の成長は母親にしか分からず、共に生活する者にもそれを確認することはできないはずなのです」

そんなデタラメな話有りなのか?と思った。
そしてBが、話の核心を知ろうと、恐る恐る質問した。

B「あの、母親って、・・・もしかして女将さんなんですか?」

坊さんは少し黙り、答えた。

坊「その通りです」

坊「真樹子さんは、この村出身の者ではありません。○○さん(旦那さんの名前)に嫁ぎこの村にやってきました。息子を一人儲け、非常に仲の良い家族でした」

そう言って話してくれた坊さんの話の内容は、大方予想が付いていたものだった。

女将さんの一人息子は、数年前のある日海で行方不明になったそうだ。
大規模な捜索もされたが、結局行方は分からなかったらしい。

悲しみに暮れた女将さんは、周囲から慰めを受け、少しずつだが元気を取り戻していったそうだ。
旅館もそれなりに繁盛し、周囲も事件のことを忘れかけた頃、急に旅館が2階部分を閉鎖することになったんだって。

周りは不振に思ったが、そこまで首を突っ込むことでもないと、別段気にすることはなかったそうだ。

そしてこの結果だ。

女将さんは、どこから情報を得たのか不明だが、あの2階へ続く階段に堂を作り上げそこで儀式を行っていた。
そしてその産物が俺達に憑いてきたという訳だが、ここがこれまでの事例と違うのだと坊さんは言った。
本来儀式を行った女将さんに憑くはずの子が、第3者の俺達に憑いたんだ。

考えられる違いは、女将さんは息子に臍の緒を持たせていなかったということ。
そこの村の人達は、昔からの風習で未だに続けている人もいるらしいが、女将さんはその風習すら知らなかった。
これは旦那さんが証言していたらしい。

そして妙な話だが、旅館の2階を閉鎖したというのに、バイトを3人も雇った。
旦那さんも初めは反対したそうだが、女将さんに「息子が恋しい。同年代くらいの子達がいれば息子が帰ってきたように思える」と泣きつかれ、渋々承知したそうなんだ。
これは坊さんの憶測なんだが、女将さんは初めから、帰ってきた息子が俺達を親として憑いていくことを知っていたんではないかということだった。

結局これらのことを俺達に話した後坊さんはこう言った。
坊「あなた達をあのおんどうに残したこと、本当に申し訳なく思います。しかし、私は真樹子さんとあなた達の両方を救わなければならなかった。
あなた達がここにいる間、私達は真樹子さんを本堂で縛り、先代が行ったように経を読み上げました。あのモノがおんどうへ行くのか、本堂へ来るのか分からなかったのです」

つまり、俺達に憑いてきてはいるが、これまでの事例からいくと母親の女将さんにも危険が及ぶと、坊さんはそう読んでいたってことだ。

俺は、別に坊さんが謝ることじゃないと思った。
それにこの人は命の恩人だろ?と思ってBを見ると、肩を震わせながら坊さんを睨み付けて言ったんだ。


B「納得いかない。自分の息子が帰ってくりゃ人の命なんてどーでもいいのか?」

坊「・・」

B「全部吐かせろよ!なんでこんな目に遭わせたのか、それができないなら俺が直接会って聞いてやる」

B「旦那さんだって知ってたんだろ?それなのに何で言わなかったんだ?」

坊「○○さんは知らなかったのです」

B「嘘つくな。知ってるようなこと言ってたんだ」

坊「この話は、この土地には深く根付いています。○○さんが知っていたのは伝承としてでしょう」

坊さんが嘘を吐いているようには見えなかった。
だがBの興奮は収まりきらなかったんだ。

B「ふざけんじゃねーぞ。早く会わせろ。あいつらに会わせろよ!」

俺達はBを取り押さえるのに必死だった。

坊さんは微動だにせず、Bの怒鳴り声を静かに聞いていた。
そして、
坊「この話をすると決めた時点で、あなた達には全てをお見せしようと思っておりました。真樹子さんのいる場所へ案内します」
と言って立ち上がったんだ。

坊さんの後を付いて、しばらく歩いた。本堂の中にいるかと思っていたんだが、渡り廊下みたいなのを渡って離れのような場所に通された。
近づくにつれて、なにやら呻き声と何人かの経を唱える声が聞こえてきた。

そして、その声と一緒に、

バタンッバタン

という音が聞こえた。かなりでかかった。
離れの扉の前に立つと、その音はもうすぐそこで鳴っていて、中で何が起きているのかと俺は内心びくびくしていた。

そして坊さんが離れの扉を開けると、そこには女将さん一人とそれを取り囲む坊さん達が居た。

俺達は全員、言葉を発することができなかった。

女将さんは、そこに居たというか・・なんか跳ねてた。エビみたいに。うまく説明できないんだが。
寝た状態で、畳の上で、はんぺんみたいに体をしならせてビタンビタンと跳ねていたんだ。

人間のあんな動きを俺は初めてみた。
そして時折苦しそうにうめき声を上げるんだ。

俺は怖くて女将さんの顔が見れなかった。

正直、前の晩とは違う、でもそれと同等の恐怖を感じた。

呆然とする俺達に坊さんは言った。
坊「この状態が、今朝から収まらないのです」

するとAが耐え切れなくなり、
A「俺、ここにいるのキツイです」
と言ったので、一旦外に出ることになった。

音を聞くことさえ辛かった。
つい昨日の朝に見た女将さんの姿とは、まるで別人の様になっていた。

そこから少し離れたところで俺達は坊さんに尋ねた。

憑き物の祓いは成功したのではないかと。

坊「確かに、あなた達を親と思い憑いてきたものは祓うことができたのだと思います。現にあなた達がいて、ここに臍の緒がある。しかし・・」

すると急にBが言ったんだ。
B「そうか・・俺が見たのは、1つじゃなかったんだ」

初めは何のことを言ってるのかわからなかったんだが、そのうちに俺もピンときた。
Bはあの時、2階の階段で複数の影を見たと言っていなかったか?

坊「1つではないのですか?」

坊さんは驚いたように聞き返し、Bがそうだと答えるのを見ると、また少し黙った。
そして暫く考え込んでいたかと思うと急に何かを思い出したような顔をして、俺達に言ったんだ。

坊「あなた達は鳥居の家に行ってください。そしてあの部屋を一歩も出ないでください。後で人を行かせます」

ポカンとする俺達を置いて、坊さんはそのまま女将さんのいる離れの方に走って行った。

俺達は急に置いてけぼりを食らい、暫く無言で突っ立っていた。
すると離れの方から、複数の坊さんが大きな布に包まった物体を運び出しているのが見えた。
その布の中身がうねうねと動いて、時折痙攣しているように見えた。

あの中にいるのは女将さんだと全員が思った。
そのままおんどうの方に運ばれていく様を、俺達は呆然と見ていたんだ。

ふとお互い顔を見合わせると、途端に怖くなり、俺たちは早足で家に向かった。

そこからは、説明することが何も無いほど普通だった。
家に行って暫くすると、別の坊さんがやって来て「ここで一晩過ごすように」と言われた。
そしてその坊さんは俺たちの部屋に残り、微妙な雰囲気の中4人で朝を迎えたというわけ。

次の朝、早めに目が覚めた俺達がのん気にめざにゅ~を見ていると、坊さんがやって来た。

俺達は坊さんの前に並んで話を聞いた。

坊さんは俺達の憑き祓いは完全に終わったと言った。
昨日言っていた通り、俺達に憑いてきたモノは一匹で、それは退化を遂げて消滅したのを確認したんだと。

俺達はそれを聞いて安堵した。

しかし坊さんはこう続けた。

女将さんを救うことができなかったと。

泣きそうなのか怒っているのか、なんとも言えない表情を浮かべてそう言った。

死んだのかと聞くと、そうではないと言うんだ。

俺はその言葉から、女将さんが跳ね回っている姿を思い出した。
(ずっとあの状態なのか・・?)

恐る恐るそれを聞くと、坊さんは苦い顔をしただけで、肯定も否定もしなかった。

女将さんの今の状態は、憑きものを祓うとかそういう次元の話ではなく、何かもっと別のものに起因してるんだって。
詳しくは話してくれなかったんだが、女将さんが行った儀式は、この地に伝わる「子を呼び戻す儀」と似て非なるものらしい。

どこかでこの儀の存在と方法を知った女将さんは、息子を失った悲しみからこれを実行しようと試みる。
だが肝心の臍の緒は自分の手元にあったわけだ。
こっからは坊さんの憶測なんだが、女将さんはこれを試行錯誤しながら完成系に繋げたんじゃないかということだった。
自分の信念の元に。そしてそこから得た結果は、本来のものとは別のものだった。

堂には複数のモノがおり、そこに息子さんがいたかは分からないと。

坊さんが言ってた。

この儀の結末は、非常に残酷なものでしかないんだと。
それを重々承知の上で、母親達は時にその禁断の領域に足を踏み入れてしまう。
子を失う悲しみがどれ程のものなのか、我々には推し量ることしかできないが、心に穴の開いた母親がそこを拠り所としてしまうのは、いつの時代にもあり得ることなのではないかと。

Bは、女将さんのこれからを執拗に聞いていたが、坊さんは何も分からないの一点張りで、俺たちは完全に煙に巻かれた状態だった。

俺達が坊さんと話終えると、部屋に旦那さんが入ってきた。
俺は正直ぎょっとした。

顔が土色になって、明らかにやつれ切った顔をしてたんだ。
そして、俺達の前に来ると泣きながら謝って来た。

泣きすぎて何を言ってるのかは全部聞き取れなかったんだけど、俺達は旦那さんのその姿を見て誰も何も言えなかった。

俺達に申し訳ないことをしたと泣いているのか、それとも女将さんの招いた結果を思って泣いているのか、どっちだったんだろうな。
今となってはわかんねーな。

その後、俺達は何度も坊さんに確認した。
これ以降俺達の身には何も起きないのか?と。

すると坊さんは困ったような顔をしながら「大丈夫」だと言った。

その後、坊さんの所にタクシーを呼んでもらって俺達は帰ることになった。

一応、昨日の朝俺を家まで運んでくれたおっさんが駅まで同乗してくれることになったんだが。

このおっさんがやたら喋る人で、それまでの出来事で気が沈んでる俺達の空気を一切読まずに一人で喋くりまくるんだ。

そんでこのおっさんは
「それにしても、子が親を食うなんて、蜘蛛みたいな話だよなぁ」
と言ったんだ。

俺達は胸糞悪くなって黙ってたんだけど、おっさんは一人で続けた。

「お前達、ここで聞いた儀法は試すんじゃねーぞ。自己責任だぞ」

そう言って笑うんだ。

俺達の気持ちを和らげようとして言ってるのか本気でアホなのかわかんなかったけど、一つ確かなことがあった。

俺達は、坊さんに真実を隠されて教えられたんだ。

儀の方法は、その結果と一緒にこの地に伝わってるんだ。

このおっさんが知ってて坊さんが知らないはずないだろ?
そう思うと、これだけの体験をさせといて、結局は大事なところを隠して話されたことにすげーショックを受けた。
坊さんを信用していた分、なんか怒りにも似たものが湧き上がってきたんだ。

タクシーが駅に着くと、おっさんが金を払うと言ったが俺達は断った。

早くこの場所から逃げ出したい、その一心だった。

坊さんが「大丈夫」と言った一言も、全部嘘に思えてきた。

それでも俺達には、あの寺に戻る勇気はなくて、帰りの電車をただただ無言で待つことしかできなかったんだ。

----

その後、帰って来てからは、なんともない。
まあ、なんともないからここに書き込めてるわけだけど。

「もう2度とあの場所へは行かない」
3人で話してると必ず1回はその言葉が出てくるくらい、俺達にとってトラウマになった出来事だったんだ。

あと、Bはあれから蜘蛛を見るのがどうもダメらしい。
成長過程のアイツの姿を見てるからね。

俺はと言うと、今は普通に社会人やってます。
若干暗闇が苦手になったくらい。
人間のど元過ぎれば熱さ忘れるって、あながち間違いじゃないかもしれないな。

本当の本当に後日談なんだが、その話を残りの友達2人に話したんだ。
2人とも俺達3人の様子を見て、一応信じてはくれたんだけど。

でもそいつらその後に、興味半分で旅館に電話を掛けてみたんだって。(最低だろ)
そしたら、電話に出たのは普通のおばさんだったらしい。

そいつら俺達に言うんだよ。女将さんか確認しろって。そんで、後ろでカラスが異様に鳴いてるって言うんだ。
絶対無理だと思った。女将さんが無事でも無事じゃなくても、俺にはその後を知る勇気なんか出なかった。




タラタラ書いて正直すまなかった。
真相といっても的を得ない内容だったかもしれないが、ご勘弁願います。
これがありのままっす。オチなしですが。

長々読んでくれてどうもありがとう。
Posted at 2011/06/11 23:23:12 | コメント(0) | トラックバック(0) | オカルト | パソコン/インターネット

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