
今回紹介するカタログはいすゞの2代目ビッグホーンの後期型です。
2代目ビッグホーンは1991年のモーターショーでコードネームの960として参考出品された後、同年末より販売開始されました。
初代登場以来10年ぶりのフルモデルチェンジで登場した2代目は3ナンバーサイズの大型ボディが特徴で、ピックアップの派生としての色が強く武骨だった初代よりも迫力と高級感のあるものとなりました。
途中の1993年には販売不振と経営悪化に伴い乗用車から撤退しSUVと商用車に絞るという苦境の中でしたが、90年代のRVブームにおいてランクルやパジェロには及ばなかったものの一定の需要と販売台数を保ち、いすゞの主力車種として販売され続けました。
その後1998年にビッグマイナーチェンジが行われ、今回紹介するカタログはこの時のモデルとなります。新デザインのフロントデザインやDdエンジンと呼ばれるコモンレール式ディーゼルエンジンを採用しています。
本来なら同年登場のウィザード・ミュー同様にフルモデルチェンジしたかったらしいですが、バブル崩壊による業績悪化とRVブームの終息によって販売台数が減少していたことからビッグマイナーチェンジに留まりました。
↑当時のPVです。全て北米向けのトゥルーパーを使用しています。
↑当時のCMです。上記のPVを短縮したものになります。
その後2002年にSUVからも撤退しトラック・バスに集中したことから国内販売を終了し、2004年には海外向けの生産・販売も終了しました。
ビッグホーンは初代・2代目共にいすゞと同じGMグループの様々なメーカー・ブランドにOEM供給された上、国内においても本格SUVを持たなかったスバルとホンダにOEM供給されたため、同じ車なのにかなり多くの車名がありました。恐らく1車種でここまで多くのブランド・車名を持つ例は他に無いはずです…
まあ、、中の人が知っているだけで、
・いすゞ ビッグホーン
・いすゞ トゥルーパー(輸出名)
・いすゞ カリベ442(初代の南米向けの輸出名)
・スバル ビッグホーン
・ホンダ ホライゾン(2代目のみ)
・アキュラ SLX(2代目のみ)
・シボレー トゥルーパー
・ホールデン ジャッカルー
・ホールデン モントレー(2代目のみ)
・オペル モントレー(2代目のみ)
・ボクスホール モントレー(2代目のみ)
・サンヨン コランドファミリー(初代のライセンス生産車)
とこれだけある訳です…
これら全て同じ車の車名なんですよ…恐るべし…
ちなみにウィザード・ミューもビッグホーンよりは若干少ないですが同じように様々なメーカー・ブランドにOEM供給されていました…
このため、日本車のシェアは低いと言われるヨーロッパ、とりわけドイツにおいてもオペルで販売されていたおかげで日本車にしては結構見かける方らしいです…
画像検索してみたところ現地ではパトカーとしても使われているようですが、ヨーロッパらしい石畳の街並みにビッグホーンがいる姿は違和感バリバリですね…
ちなみに本家いすゞでも
ビッグホーンの車名は日本でしか使われず、海外では初代の南米向けがカリベ442と名乗っていたのを除けば全てトゥルーパーという車名で販売されていたのですが、、、これにも深い理由があって……
ビッグホーンというのが英語圏でデッカいオ〇ン〇ンという意味の隠語だからなんです……
信じられないですよね……他に日産のホーミーも似たような理由で沖縄では販売されず代わりにキャラバンが販売されていましたし、同じSUVの三菱のパジェロもスペイン語圏でアウトな名前ってことでモンテロという名前で販売されてます……
まあこれはあまり関係無いかもしれませんが、いすゞは何故か国内と海外で名前を分けることが多いんですよね…
ピアッツアはインパルスでしたし、ジェミニはIマークとかスタイラスという名前でしたね…またトラックは型式名そのままで販売されています…

コンセプトのページです。コモンレール式ディーゼルエンジンをDdエンジンとしてアピールしていたため、Ddビッグホーンという名称を使用していました。

イメージ画像です。大人の優雅な雰囲気…といったところでしょうか…でもビッグホーンはライバルよりも大人しく上品なデザインだったためかそこまで違和感は無いですね…

イメージ画像です。

イメージ画像です。やっぱりこういう荒れたところを走るのがビッグホーンらしく思いますね…このショートボディはこの後のマイナーチェンジで消滅してしまいました…

イメージ画像です。画像は最廉価グレードのLSです。

ディーゼルエンジンのページです。前述した通りコモンレール式ディーゼルエンジンのDdエンジンを搭載しています。これはウィザード・ミューとも同じエンジンで3.0Lの4JX1型となります。
J型エンジンというシリーズになり、元は4代目エルフの中期型で登場したエンジンで、設計の古くなった現在でもエルフ用として生産が続いています。見開きのページとなっているので詳細は次のページで紹介します。

ディーゼルエンジンのページです。コモンレール式高圧燃料噴射システムを採用しており、インジェクター内の燃料を加圧し、直接燃焼室に超高圧で噴射します。
噴射量とタイミングは電子制御によってコントロールされ、全回転域で高い燃焼効率を発揮し、燃費の向上とうCO2の大幅な低減を実現させています。またバランサーシャフトの採用によってディーゼルエンジン特有の騒音も低減させています。

ガソリンエンジンのページです。V6・3.5Lの6VE1型というエンジンで1991年の2代目ビッグホーン登場に合わせてクロスカントリー車初のV6・DOHCエンジンとして登場しました。その後SUV撤退に伴い生産を終了しています。

イメージ画像です。こちらも見開きのページとなっています。

4WDシステムのページです。TOD(トルク・オン・デマンド)と呼ばれるシステムで1995年のマイナーチェンジから搭載されるようになりました。
正式名称は電子制御トルクスプリット4WDシステムと呼ばれ、後輪駆動をベースに、電子制御により路面状況や走行状態に応じて必要な駆動力を前輪にも配分するシステムです。
さらに必要に応じて前後輪のトルク比を50:50まで近づけ、4WDならではの駆動力と走破性を発揮することも出来ます。
ただし電子制御4WDではあるものの、現在のようにダイヤルやボタンでワンタッチで操作出来るものでは無く、昔ながらのトランスファーレバーを使って2WDと4WDの切り替えを行います。

メカニズムのページです。トランスミッションは4速ATと5速MTを設定しています。それにしてもこういった透視図ってカッコイイですよね…今のカタログでは見かけなくなりましたがこの時代でも珍しかったのではないでしょうか。

インテリアのイメージ画像です。

インテリアのページです。電動本革シートを最上級グレードのロータスSEにオプション設定しています。フィールドセンサーという方位、気圧、標準高度、相対高度、外気温の5つの情報を表示するモニターを装備しています。こういう装備はいかにも4駆らしくていいですよね。
インパネは1995年に一度変更されていますが、モデルライフを通してオーディオスペースは1DINのままで基本的にナビを装着することが出来ませんでした。ここはビッグホーンの中でもかなりの欠点と言われていますね…

実用性のページです。フルフラットにすることも出来ます。

安全性のページです。デュアルエアバッグを全車標準装備としています。

グレード一覧です。ハンドリング・バイ・ロータスはその名の通りロータスによるチューニングを施したグレードです。
以前はオペル傘下のチューニングメーカーであるイルムシャーによってチューニングされたイルムシャーもあったのですが、このビッグマイナーチェンジの際に廃止されています。
最上級グレードのハンドリング・バイ・ロータスSEはロングボディ・7人乗りのみの設定で木目調パネルを装備し、オプションで電動本革シートも設定しています。ハンドリング・バイ・ロータスは若干装備を落としたグレードで、ロングボディのみですが5人乗りと7人乗りが設定されます。

グレード一覧です。プレジールはお買い得グレードで、モデルライフの途中から追加されました。ロングボディとショートボディから選べる上にロングボディは5人乗りと7人乗りから選べるなど充実しています。プレジールⅡはさらにABSやTODを追加したグレードでロングボディのみの設定となります。

グレード一覧です。LSは最廉価グレードでカラードピラー・鉄チンホイールなど質素な見た目が特徴となっており、5人乗り・ロングボディのみの設定となります。
ロータスSEの高級感ある見た目もいいですが、この素のままのLSの見た目も味がありますね…まあ主に業務用といったところでしょうが…
スポーツパッケージはプレジールのみに設定され、ジェミニなどでもお馴染みだったレカロシートが装備される上、本革ステアリングやシートヒーター、LSDなど充実させています。

装備のページです。このリアフットレストが装備されているのは快適でいいですね。

オプションのページです。今回はオプションカタログを持ってないので紹介出来ないのが残念ですがネットで見る限り、かなり豊富に設定されていたそうですね。
(いすゞ車体)によるキャンパー仕様も用意されています。限られたスペースではりますがコンロやシンクも装備していて中々本格的です。
ところでいすゞ車体はトラックの特装車を作る子会社というイメージが強かったのですが、かつてはこのようにSUVの特装車も作っていたのですね。実際にこのカタログにあるロゴがトラックに貼られているのをよく見ますし…

主要装備です。

主要諸元です。

裏表紙です。