
今回紹介するカタログはホンダのアクティの3代目バンです。
3代目のアクティは1999年に前年の軽自動車の規格改正に伴う11年ぶりのフルモデルチェンジで登場しました。どのメーカーも軽トラ/軽バンは乗用車と比べて遅れてモデルチェンジしましたが、アクティはその中でもかなり遅れての発売でした。
乗用モデルはそれまでのストリートからバモスへと名称が変更されており、アクティとはボディこそ同じながら大きく差別化されたものとなりました。
衝突安全確保のためにかつてのT360以来となるセミキャブオーバーへと変更されましたが、MR(ミッドシップ)やド・ディオンアクスル式リアサスペンション、荷台までフレーム一体式のモノコック構造といったアクティ独自のメカニズムは引き継がれています。
↑当時のCMです。エノケンこと榎本健一さんの生前の映像を合成したものらしいです。
しかしセミキャブへの変更に伴い設置されたクラッシャブルゾーンが他社よりも大きかったことから
安全性ではトップレベルだった一方で
車内はかなり狭いものとなってしまいました。
後方にスライド出来る空間があるバンはまだしも、
特にトラックではかなり深刻なレベルで狭いものとなってしまいました。
某アンサイクロペディアではホビット族専用車とまで書かれていましたし…
当然のことながら商用車では重要な部分となる荷室・荷台も狭くなってしまいます…
さらに安全性にもこだわった上に独自のメカニズムを装備するとなると
当然のことながら価格も他社より高めとなってしまいます。そして
バリエーションも他社より少ないことなどから販売は伸び悩みました。
この手の軽トラ/軽バンでは安全性よりも実用性と耐久性、そして何より価格の安さが重視されるにもかかわらず、そこから大きくずれたものとなってしまったのです…それでも一定の需要があったために生産は続けられました。
2009年をもって
特に深刻だったトラックが先にフルモデルチェンジしてキャブオーバーに回帰しましたが、バンと乗用モデルのバモスは生産を続けました。
ホンダの軽自動車がそれまでのライフやゼストからNシリーズへと移行していく中でほぼ放置プレイ状態のまま生産が続けられましたが、2018年にN-BOXをベースにバンに仕立てたN-VANが登場したことでようやく生産終了となりました。
残るトラックも2021年をもって生産終了とのことなので、アクティの名は完全に消滅してしまうことになります…サンバーと並んで個性派メカニズムのトラックとして頑張ってきただけに非常に残念ですね…

コンセプトのページです。ちなみにこのカタログは2009年発行ですが、構成自体は1999年の登場から2018年の絶版に至るまで20年近くもほとんど変わりませんでした。
キャッチコピーのスモール・ビジネス・ムーバーというのは90年代当時のホンダがRVをクリエイティブムーバーと称していたので、それに便乗したものだと思われます。時代を感じますね…
このデザインも長く生産されたためにだいぶ見慣れたものですよね…ただシルバーよりはホワイトの方が多い気もします。

積載性のページです。商用バンで一番需要な部分ではありますが、キャブオーバーからセミキャブオーバーとなって積載量が減少したこともあり、助手席を倒して長尺物を載せられるようになっています。全車ハイルーフのため天井が高く広々としています。

メカニズムのページです。アクティ最大の特徴でもあるMR(ミッドシップ)レイアウトやド・ディオンアクスル式リアサスペンションを引き続き採用しており、これにより
農道のNSX、
農道のフェラーリといった名称でも知られています。
しかしまさかのアクティトラック生産中止が決定してしまったので、この伝統も途絶えてしまうのは本当に残念ですね…
エンジンはE07Z型というエンジンで、元は1988年トゥデイの3気筒化(丸目から角目への変更もこの時)の時から使用されているため非常に設計の古いエンジンとなっていますが、今のアクティトラックにも未だにこのエンジンが搭載されています。
しかしこれも2021年の生産中止によって幕を下ろすことになってしまったため、33年に渡るE型エンジンの系譜も途絶えることになる訳です…
トランスミッションは5速MTを基本に、2WDのみに3速AT・4WDのみに4速ATを搭載していますが、この4速ATはシビック用のものを流用しており、
わざわざエンジンを縦置きに搭載しているのも特徴です。
4WDシステムはCR-Vあたりから使われるようになった
悪名高いなんちゃって4WDのリアルタイム4WDです。デュアルポンプ式スタンバイ4WDと呼ばれるものですがタイムラグが長くいざと言う時にはあまり使えないんですよね…

インテリアのページです。インパネは2001年のマイナーチェンジで変更されており従来のトラックの共通のものから専用のデザインとなりました。これはバモスも同様の変更を受けています。
ミッドシップのため床の高さが低く乗り降りしやすいものとなっています。パワーウィンドウも全車標準装備となっています。

安全性のページです。余裕のあるクラッシャブルゾーンを装備しており、1999年の登場時は軽バン最強レベルの安全性を誇っていました。

グレード一覧です。4人乗りのSDX、パワステレスとしたSDX-N、2シーターのPRO-A、ルートバン仕様となるPRO-Bの4種類となります。なお以前はSDXより上級となるTOWNもありましたが、右下にあるバモスホビオプロの登場で廃止となりました。SDX-NとPRO-Bもこの後のマイナーチェンジで廃止されます。
バモスホビオプロはバモスをベースにアウトドア向けに仕立てバモスホビオの4ナンバー貨物仕様となるモデルで、他社で言うとエブリイジョイン・ハイゼットカーゴクルーズなどに相当します。

主要装備・主要諸元です。

裏表紙です。モザイクのところは名入れの図となりますが、書き込みがあるためモザイクをかけています。

オプションカタログです。トラックと共通となっています。

トラック用オプションです。幌がアオリまで伸びているのは珍しいですね。インパネは木目調パネルやカーボン調パネルまで設定されており軽トラとしては充実しています。現行型にはこれらのオプションは無いんですよね…

バン用オプションです。何気にモデューロのアルミホイールまで設定されていますが、これはバモスと共通だからであると思われます。
クロームメインのラインも設定されていますが、装着している個体を見たことが無いんですね…

バン用オプションです。スライドレールシステムと呼ばれるオプションが設定されており、レール上にパーティションやトレイを設置することが出来ます。

インテリアのパーツです。バモス用と思われるヘアライン調のパネルをバンに装着することが出来ます。まだ義務化される前であったためかリアシートベルトもオプションとなっていました。
ハンズフリーキットが軽バンに設定されていたのはかなり意外ですが、90年代らしいもので時代を感じさせますね…実際PDCやCDMAoneといった第2世代の古い携帯向けですし、当然ながら今のスマホの接続なんて出来ません…
よく見たらこれは以前紹介したアプローズのオプションカタログに掲載されていたものと同じですね…

コーティングとチャイルドシート、トラック用オーディオのページです。トラックは1DINのスペースしかいないため2DINのオーディオやナビは装着出来ません。設定されているオーディオも90年代チックのものが多いですね…
そう言えばこのマルチコントロールコンポはドマーニOEMのジェミニにも同じ物がついていて、ちゃんとISUZUのロゴが入っていました。

バン用オーディオのページです。2DINのサイズはありますがナビの設定はありません。ただバモスには設定があったので装着自体は可能となっています。
まだオーディオがそこそこ需要があった最後の時代ですね…2000年代らしいメタリックデザインのオーディオが懐かしく感じます…

オプション一覧表です。

裏表紙です。