
今回紹介するカタログは日産のバネットラルゴのC22型です。
C22バネットは1985年に登場し、バネットとしては2代目になります。当初はバンとコーチのみで、このラルゴは1986年に遅れてモデルチェンジしています。またトラックも遅れて1988年にモデルチェンジしています。
従来のC20型と比べてスタイリッシュで流麗なデザインとなり、ラルゴは従来型以上にバネットコーチとの差別化がされて上級モデルとしてより明確なものとなりました。
C20ではあくまでバネットコーチの上級グレード的な位置付けでしたが、C22では内外装のデザインが全く別のものとなり上級モデルとして高級感があるデザインとなりました。またワンボックス初のガソリンターボが設定されており、ディーゼルエンジン搭載で重たく遅いイメージのあったワンボックスの中ではかなり異例の存在でした。
その後1989年にマイナーチェンジが行われ、フロントデザインの変更やスポーティグレードのクルージングシリーズの追加などが行われ、今回紹介するカタログはこの時のモデルとなります。
↑当時のCMです。
またその前の1988年にはそれまでチェリーバネット・サニーバネット・ダットサンバネットと販売店ごとに分かれていた車名がバネットに統一されました。
さらに欧州・北米向けの輸出仕様バネットはこのラルゴをベースとしており、欧州では単にバネット、北米では日産バンとして発売されました。恐らく北米向けはトヨタ・バン(マスターエース輸出仕様)への対抗馬と思われます。ちょうど小型ワンボックスの上級モデルとして国内でもライバルだった訳ですし…
当時の日産のワンボックスは最上級のキャラバン/ホーミーコーチ、中間のバネットラルゴ、一番下のバネットコーチといった形となります。
その後1991年にバネットコーチはセレナ(当初はバネットセレナ)にバトンタッチした後もラルゴはC22を継続しましたが、1993年にバネットラルゴがラルゴにモデルチェンジして生産終了しました。
この新型のラルゴはセレナベースでボンネット付きのセミキャブオーバーとなったため、キャブオーバーのラルゴはこれが最後になりました。

コンセプトのページです。このマイナーチェンジではスポーティグレードのクルージングシリーズが追加され、左側を見てわかるようにこれには専用のフロントマスクを採用しています。従来から存在したグレードはサルーンシリーズとされています。
まあ今のミニバンで言うならサルーンシリーズが標準系、クルージングシリーズがカスタム系(日産ではハイウェイスター)といったところですね…
ただ、当時はまだまだセダン主流で今のようにミニバン主流になるとは考えられず、まだまだワンボックスは傍流という考えが多かった時代にスポーティ志向のグレードやガソリン高性能エンジンを設定していたのはかなり珍しいことだと思います。
90年代後半までワンボックス・ミニバンはまだまだ商用車の延長線上でディーゼルエンジンが主流でしたし…
写真はサルーンシリーズのグランドサルーンになります。

コンセプトのページです。写真はクルージングシリーズのグランドクルージングで、前述した通り専用のフロントマスクとなっています。グリルレスの平面基調のものとなっていますが、これは元々北米向け輸出仕様(日産・バン)で使われていたものを流用したものになります。

コンセプトのページです。リアデザインはバネットコーチとは全く別のものでより傾斜の強いものとなっています。またガーニッシュも大型のものとなっています。
セカンドシートにもバネットコーチに存在しないキャプテンシートを装備し、これをリムジンシートと称しています。この名称は後にルネッサにも使われていましたね。

イメージ画像です。このC22バネットラルゴも今や全く見なくなりました…数年前にずっと放置されているようなボロボロの廃車体を見たのが最後になりますね…

インパネのページです。このインパネもラルゴ専用のものになります。ステアリングもクルージングシリーズとサルーンシリーズでは異なり、左側がサルーンシリーズで丸みを帯びたステアリング、右側がクルージングシリーズでスポーティなステアリングとなっています。またメーターパネルも異なっています。

インテリアのページです。前述した通りバネットコーチに存在しないキャプテンシートを装備し、これをリムジンシートと称しています。このリムジンシートには無段階調整が可能なアームレストを装備しています。
さらに最上級グレードでのエクスクルージブサルーンにはギャザーが入ったベロア調のシートを装備しています。これは今見ても中々上質で高級感が出ているのがいいですね…
昔のワンボックス・ミニバンって今のミニバンよりも面白みがあって好きなんですよね~回転対座などの豊富なシートアレンジや豪華さを競い合ったサンルーフ…などなど

装備のページです。当時の各社が競い合った大型のサンルーフはパノラマルーフという名称で、このマイナーチェンジでさらに面積を拡大させて超パノラマルーフに進化しています。
3列それぞれ独立しているのも特徴で、動作も1列目はチルトアップ・2列目は後方スライド・3列目は固定となっています。
またこれまた当時のワンボックスでは採用例が多くないアルミホイールを設定しており、BBS風のメッシュタイプまで3種類も豊富に設定されています。
リアスポイラーも設定されているのですが、バックドア全体を覆う独特なタイプとなっています。

インテリアのページです。シートアレンジは8人乗りはバネットコーチと同様に2列目の左側をテーブルにするテーブルモードがありますが、リラックスシートの設定はありません。また当時のワンボックスらしく7人乗り・8人乗り共に回転対座が可能となっています。
オーディオはディーラーオプション設定や社外品での装着が基本だったためか標準装備のものはあまり特徴的でない電子式のカセットデッキorラジオとなっています。
この頃はハイエースやタウンエースなどが純正の高級サウンドシステムを搭載していたのに比べると遅れが目立ちましたね…
ツインエアコンは前後それぞれで温度調整が可能となっています。また当時のワンボックスのステータスでもあった電動カーテンはサルーンシリーズにオプションで設定されています。
充実した装備をアピールしていますが、ディーラーオプション設定のものが多いですね…

メカニズムのページです。エンジンはガソリンエンジンが直4・2000ccのCA20型と直4・1800ccターボのCA18E-T型、ディーゼルエンジンが直4・2000ccターボのLD20T型エンジンとなっています。
前述した通り、直4・1800ccターボのCA18E-T型は当時のワンボックスとしては数少ないガソリンターボエンジンで、元々重たくさらに5ナンバー・3ナンバーの縛りが強い(当時は3ナンバー車の税金がかなり高額)故に2000cc以上にすることも難しかった中、パワー不足で遅いワンボックスのイメージを払拭させました。
当時の日産は1クラス上のE24キャラバン/ホーミーコーチにもV6エンジンのVG30型を積んでいた程ですから、ワンボックスにおいては高速化・パワー向上にかなり重点を置いていたことが考えられます。
他社ですとトヨタは豪華装備の充実・高級化、三菱は悪路走破性の向上…に重点をといったところでしょう。
また最新エンジンだったCA20型やディーゼルターボのLD20T型は商用のバン・トラックに無いエンジンで、乗用モデルらしく最新鋭の高性能エンジンを搭載しておきたかったのでしょう。
CAエンジンは80年代の日産の中型車ではお馴染みだったエンジンで、初搭載は
失敗作となったバイオレットリベルタ・スタンザFX・オースターJXとなります。
4WDシステムは当時のワンボックスの多くが旧来のパートタイム式だった(バネットコーチもパートタイム式)中で、いち早くフルタイム4WD化しており、このことからもやはり他社のような悪路走破性の向上より、高速性能の向上に重点を置いていたことが伺えます。
トランスミッションは4速ATと5速MTが設定されており、これは2WD・4WD問わず全グレードで両方の選択が可能となっています。

サルーンシリーズのグレード一覧です。上から順にエクスクルーシブサルーン・グランドサルーン・スーパーサルーンとなりますが、エクスクルーシブサルーンは2WDのみの設定となります。またスーパーサルーンはパノラマルーフの有無が選択可能です(他のグレードは標準)。
またスーパーサルーンは8人乗り、それ以外は7人乗りとなります。

クルージングシリーズのグレード一覧です。グランドクルージング・スーパークルージングの2つとなりますが、スーパークルージングはパノラマルーフの有無が選択可能です(グランドクルージングは標準)。

ボディカラー一覧と主要装備・主要諸元です。

オーテック扱いの特装車のウミボウズです。専用のグリルガードやRV色の強いフォグランプ、ロードホイール、専用デザインのシートなど主に海水浴向けにRV色の強めたものと言えるでしょう。

裏表紙です。