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皆さん、計算はどんな方法を使っていますか。
暗算、計算機、スマホの計算アプリ、パソコンのエクセル、そろばんなど。

簡単な計算なら、暗算が早い。
足し算や引き算は、そろばんが早い。
掛け算や割り算は、計算機が早い。
同じ式で数字を入れ替えながら計算するのは、パソコンのエクセルが早い。
何も道具が無ければ、紙で筆算して手計算する。

計算方法といえば、現在はこのくらいの選択肢ですが。
昔は、写真の機械式計算機がありました。
ハンドルを向こう側に回せば足し算、手前側に回せば引き算ができます。
桁を移動させながら足し算や引き算を繰り返すことで、掛け算や割り算も素早くできます。
掛け算や割り算の筆算をやるのと原理は同じです。
このマシンが能力を発揮するのは、同じ数を足す（引く）ことを繰り返す場面。
そして、他のどんな機械よりも能力を発揮する場面は、割られる数が同じ数で、割る数が毎回微妙に変わり、何度か計算する場面です。
具体的には、半製品の濃度を測定した後、希釈して目標の濃度に調整する作業で、希釈液量を計算する場面。
会社に入って間もない頃、実際に仕事で使いました。

（目標濃度と希釈液濃度の差の逆数）を何倍すれば、（半製品濃度と希釈液濃度の差）になるかを計算することで、希釈後重量を算出していました。
半製品濃度は、ロット毎に０．１とか０．２しか変わらないので、機械式計算機で途中まで計算しておいて、ハンドルを１回転か２回転すれば希釈後重量が算出されました。
氷点下でしかできない工程で、分析も寒い土間の分析室で、植物性樹脂まみれで有機溶媒を使って分析を行い、すぐさま計算して希釈量を決定するという作業。
植物性樹脂で手がベタベタだし指がかじかんでいるのでそろばんは不可、電子計算機は植物性樹脂が入ってキーがすぐに動かなくなって不可、PCもキーボードが汚れるし、半分屋外で粉塵が多くて不可。
桁数が多くて暗算不可、手計算は時間が掛かって不可。
機械式計算機が最強のツールでした。
この事業場も惜しまれながら２０１８年に閉鎖され、機械式計算機も使われなくなりました。
この世で最後まで実戦で使われていた機械式計算機だと信じています。

例としては、
目標製品濃度15.0％、希釈液濃度0.4％、製品バッチサイズ1000kg、の条件で、半製品濃度が16.1％だった時の希釈液投入量をできるだけ早く確実に算出します。
希釈後の製品数量をＡとすると、
｛1000×16.1÷100+（Ａ-1000）×0.4÷100｝÷Ａ＝15.0÷100　①
両辺にＡを掛けて、
10×16.1+0.004Ａ-10×0.4＝0.15Ａ　②
移項して、
0.146Ａ＝（16.1-0.4）×10　③
両辺を0.146で割って、
A＝157÷0.146　④
割り算をすると、
A≒1075

実は、④の式は、以下のような計算です。
A＝（16.1-0.4）÷（15.0-0.4）×1000
つまり、
A＝（半製品濃度－希釈液濃度）÷（目標濃度－希釈液濃度）×１０００
注目すべきは、割る数の（目標濃度－希釈液濃度）はずっと同じ数値であることです。
機械式計算機は掛け算が得意なので、割る数の逆数を求めておいて掛け算をします。
A＝（半製品濃度－希釈液濃度）×｛１÷（目標濃度－希釈液濃度）｝×１０００
この例題では、
1÷(15.0-0.4)＝0.068493151を16.1-0.4=15.7倍すると1.075342466と、希釈後重量の1000分の一値（トン）が算出されます。
16.1は、ロット毎に変わるのですが、変わったとしても0.1とか0.2の幅なので、ハンドルを多くても1～2回転させれば答えが出せるというわけです。