
■家庭用200V電源にて7時間で充電可能
電気自動車の「i-MiEV」が、ついに発売の時を迎えた。軽自動車の「i」に、小型軽量の永久磁石式同期型モーターと高性能なリチウムイオン電池を搭載し、電気だけで走るi-MiEVは、走行中にCO2などの排出ガスを一切発生しないゼロエミッション・ビークル。1度の充電で走行できる距離は、10・15モード走行の場合で160kmと、日常の使用に十分耐えられる航続距離を実現している。
充電は、家庭用のAC100VやAC200Vに対応し、ほぼ空の状態から満充電までに要する時間はそれぞれ約14時間と約7時間。電力会社営業所やコンビニ、ファミリーレストランなどへの設置が期待される急速充電器を利用すれば、約30分で容量の80%まで充電することが可能だ。
価格は459.9万円。なお、一般社団法人次世代自動車振興センターによる補助金対象車両として承認されており、所定の手続きにより上限139万円(2009年度)の補助金が交付される。この場合、購入者の負担は320.9万円となる。また、国土交通省による環境対応車普及促進税制の対象車となり、重量税と取得税が免税となる。
■ガソリンモデルと変わらぬパッケージング
i-MiEVのボディは全長3395×全幅1475×全高1610mmで、全高が10mm高い以外はガソリンエンジンモデルと同じサイズ。室内長、室内幅、室内高、荷室容量も同一だ。これを実現するために、モーターやインバーターなどをエンジン&トランスミッションのスペースに収めるとともに、合計88セルのリチウムイオンバッテリーをホイールベース間の床下に収納した。
搭載されるモーターは、最高出力47kW(64ps)/3000~6000rpm、最大トルク180Nm(18.4kgm)/0~2000rpmのスペックを持つ永久磁石式同期型モーター。電気自動車化により、ガソリンモデルよりも200kg重量が増加(車重は1100kg)しているにもかかわらず、0rpmから最大トルクを発生するモーターのおかげで、0-80km/h加速が10.6秒(iのターボ車は11.2秒)、0-400m加速が20.6秒(同20.9秒)、40-60km/hの追い越し加速が2.8秒(同4.0秒)と、ガソリンターボモデルを上回るパフォーマンスを手に入れている。
新時代の電気自動車には欠かせないリチウムイオンバッテリーは、GSユアサ、三菱商事、三菱自動車が共同で設立した「リチウムエナジージャパン」製の電気自動車用大容量タイプを搭載した。1セルあたり3.7V/50Ahのバッテリーを計88セル、直列に接続することで、総電圧330V、総電力量16kWhの駆動用バッテリーとして機能する。
■実用航続距離は80km以上
大容量の駆動用バッテリーを積むi-MiEVは、10・15モードで160kmの航続距離を実現している(国土交通省審査値)。実際には、走行パターンや冷暖房の使用状況により航続距離は短くなるが、それでも市街地走行で暖房を使用した場合で80km、冷房使用時が100km、冷暖房を使用しなければ120km程度の走行が可能だという。メーカーの調査によると、平日に走行する距離は、約9割が40km未満で、休日でも約8割が60km未満という結果が出ていることから、三菱自動車は「軽自動車として日常ユースに十分な航続可能距離を達成した」と見ている。
ガソリン車と同様、走行パターンによって消費エネルギーが大きく変わることから、i-MiEVには3つの走行モードが用意されている。セレクターレバーでDポジションを選ぶと、電気自動車らしい力強い走りが楽しめる一方、Ecoポジションなら、Dポジションより出力は控えめだが、そのぶん消費電力が節約できるので走行距離を伸ばすことが可能となる。Bポジションは長い下り坂などで強く回生ブレーキを効かせ、エネルギー回収を高めるモードである。
エコドライブを補助するため、メーターパネル中央には電力の消費度合いがひと目でわかるパワーメーターが備わる。またその脇にはバッテリー残量計を配置。16個の目盛りで細かく残量が示されるうえ、切替ボタンで航続距離を表示することも可能である。
■個人向けの販売は2010年4月から
バッテリーで駆動する空調システムは、冷房時は電動コンプレッサーを、暖房時は温水ヒーターを使って室内の温度を調整する。当然、空調の消費電力が航続距離に影響を与えるから、きめ細かい制御で消費電力を抑えるとともに、消費電力の少ない送風のみのモードも用意されている。
軽自動車としては初搭載となるLEDヘッドライトも省電力に貢献。ハロゲンタイプに対して50%、ディスチャージタイプに比べても35%、消費電力が抑えられるといい、寿命もディスチャージに比べて2.5倍となる。テールランプとストップランプにもLEDを採用している。
安全性に関しては、万一の衝突の際でも強固な井げたフレームがバッテリーを保護するとともに、衝突などを検知した場合に高電圧回路をバッテリーから遮断するシステムを搭載。エアバッグ、ABS&ブレーキアシスト、トラクションコントロールといった、アクティブセーフティ機能も標準で搭載される。
1960年代後半から、環境エネルギー対策のひとつとして電気自動車の開発に取り組んできた三菱自動車。1990年代後半には、技術の核となるリチウムイオンバッテリーの開発を進め、2006年からは「iMiEV」(市販車の車名表記はハイフン付きのi-MiEV)により、急速充電器の開発を含めた試験を重ねてきた。当初、2010年の市場投入を表明していたが、予定を前倒し、2009年には1400台を販売。翌2010年からは5000台にペースアップする。しばらくは、官公庁や企業向けの販売となり、個人ユーザーに対しては2010年4月以降を予定している。なお、予約は2009年7月下旬から受け付ける。
また「EVを究極の環境対応車」と位置付け、今後の主力車種にしたいとの考えを示した。2009年度のi-MiEVの販売目標である1400台分は、既に受注しているという。
実用化時期は未定としたが、i-MiEVに続いて、個人向けや商用車向けのEVを計画する。また、EVよりも長い距離を走行できるPHV(プラグインハイブリッド)の開発も進めている。2020年までに、年間生産台数の20%をEV/PHVにする計画だ。
Posted at 2009/06/05 12:01:53 | |
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