秩父路・桃源郷

マチュピチュの空中都市や，真っ白なウユニ塩湖の絵葉書をもらうだけで，アンデスを旅してみたくなる。
たった１枚の絶景写真に感動し，芭蕉ではないが，そゞろ神の物につきて…道祖神のまねきにあひて…
そんな直後はカラスを見ただけで，コンドルは飛んでいくを口ずさむ私だ。

そんな私が今日１枚の風景写真に衝撃を受けた。

朝からはっきりしない天気で，出掛ける気も起こらず，みん●●を見ていたが…
公園などの桜ばかりで少々消化不良だった。
もっと夜桜や，雨に咽ぶ桜はないもんかねと，スワイプする指が，だんだん早くなっていたその時だ。
突然，幻想的な写真が目に飛び込んできた！
それは，ライトバン５９（みん友）さんの花冷えの中でのワンショットだった。

素人なら春風駘蕩の桜を撮りたがるが…
花曇りだからこそ，艶やかさが映える１枚に，只者ではない美意識の高さが窺えた。
解説を読むと，そこは秩父路・桃源郷。
え？南半球じゃないし，関越道も使えば２時間圏内の距離だ。
そうなってくると，私の中のそゞろ神が黙っちゃいない。
さっそく面識もないライトバン５９さんに不躾にも正確な場所を教えて頂き，取るものも取らずに埼玉県小川町を目指した。

目印は砂利の駐車場の脇にある馬頭尊。
馬頭尊とは，人のために働いてくれた馬の供養塔のようなものだ。
建立を見ると，文化甲子元年六月吉且。
調べたら１８０４年のことだった。
フランスではナポレオン１世が皇帝に即位し，その近隣国にオーストリア帝国が建国され，初代皇帝にはフランツ２世がその座に就いている。

そこから桃源郷に向かって，山道に分け入って行く。
昨夜来からの雨で足元が悪いが，道祖神の助けも借りて先を急ぐ。
途中で師匠も写しておられた，目にも眩しいボケの花を見つけた。
辺りは鳥の声がこだまするだけで，誰とも会わず不安になったが…
さらにぬかるみを５分ほど歩くと…
ついに，見覚えのある風景が目の前に広がった。
とうとうたどり着いたぞ！
この目とこの足で確かめたかった絶景が…　これである！