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きリぎリすのブログ一覧

2025年06月30日 イイね!

雨に唄えば(哀歌)

雨に唄えば(哀歌)

「日本には四季がある」なんて言葉に風情を感じていたのは,はるか昔のことのようだ。
セブンが来た翌日からは,雨季と乾季,すなわち雨かそれ以外である。
そして雨季のキング・オブ・キング,それが梅雨だ。

雨音が軒を叩くたび,世の中の人たちは「今日は電車はやめてクルマにしよう」と思うであろう。
屋根があって濡れずに,エアコンで湿度も快適―――つまり,文明の利器に屈しているのである。
だが,私は違う。
玄関を出て,空を見上げ,「この程度じゃ小雨だし,電車で行くまでもないか」とつぶやいて,セブンに乗り込む。
傘をさすか,ささぬか―――私は小雨なら傘をささない英国紳士よろしく,後者の人生を選んだのだ。

いや,正確には,まだ幌の掛け方がよく解らないだけである。
何しろ,セブンに乗り始めてまだ日が浅い。
幌の張り方は熟練の技がいるので,YouTubeで予習はしたものの,幌を留めるあっちこっちのスナップボタンが,ツンデレな彼女のように言うことをきかない。
道端でモタモタしていたら,通行人の「大変だね~」という言葉に心が折れたので,私は決めたのだ。

「濡れたほうが早いし,楽だし,クールだ」と。

結果,雨に濡れるセブンのシート。雨に濡れる自分のジーンズ。ほおを流れる雨しずく…
そして,雨を受け止め,気象と一体化する自分をストイックと感じている。
傍から見ればただのアホだが,哲学なしだと本物のアホだ(汗)



ある日,ドライブのついでに銀行に寄った。
ところが,幌なしセブンで突然の雨に見舞われ,全身びしょ濡れ。

自動ドアの開扉速度に,もどかしさを感じながら店に飛び込むと…
入った瞬間,待合室の視線が一斉にこちらを向いた。
一瞬,静まり返るロビー。
行員たちが,妙に緊張した表情で私を見ている。

しばらくして窓口に呼ばれ,通帳を差し出すと,若い行員が震える声で言った。
「ご用件は………お振込み,ですね?」
その間に,背後ではガードマンが,ゆっくりと姿勢を正している。
鋭く光る防犯カメラが,私の一部始終を捉えていた。

「いや違うんだ!びしょびしょなのは,クルマで来たからなんだ」
しかし,そんな弁解したら,もう怪しさマシマシである。



今日も私は,雨上がりの街を行く。
濡れても,風を浴びても,晴れ間を信じて走る。
助手席にはタオルとドライTシャツ,そして微妙な後悔。
でも,そのすべてが,セブンとの梅雨の思い出になっていく。
今はまだ「濡れる自由」を楽しんでいたいから―――

(後記)
ちなみに幌は…家の押し入れで眠っている。
実は私は,練習している姿を人に見せないタイプである。
幌の成功率はいまだ低気圧並みだが,いつかスナップボタンを手なずけ,日の目を見る日も近いであろう。

Posted at 2025/06/30 00:37:09 | コメント(12) | トラックバック(0) | クルマ
2025年06月23日 イイね!

ステアリング・リムーバブル・ライフ

ステアリング・リムーバブル・ライフ

セブンといえば,ステアリングは当然クイックリリース。
…のはずが,納車されたセブンのステアリングは,ヴィンテージワインのコルク並みに抜けない。

は!もしかして組立工程を飛ばされた?たぶん欠陥車両がそのまま紛れ込んだのだ。
このままでは,乗り降りの度にあん馬のソロ大会だ。
そこで,リコールまで待てないので,クイックリリースに改造することにした。

ところで,F1でリタイアしたドライバーが,ふて腐れてステアリングを外す光景をよく目にするが…
その割には,外したブツは,ピットまで後生大事に持ち帰る。
どうやら,近ごろのステアリングは,データやら何やらで,お値段も1千万ぐらいするとのこと。
怒りで投げつけでもしたら,来シーズンのシートは約束されないw

だからという訳じゃないが,ステアリングは外してバッグに仕舞うのが一番だ。
少しかさばる丸いカギだと思えば造作ない。

セブンは,駐車してちょっと目を離した隙に,誰でも勝手に乗り放題。
少々変わった芝刈機だと思われているから,無理もない。
しかし,ステアリングさえなければ,ただの鉄パイプだ。
セブンはシンプルな作りゆえ,セキュリティーもアナログでいくのが,案外,理にかなっているかも。

ステアリングを外すという行為には,実用と遊び心が仲良く同居している。
走り終えたあとに,ステアリングを外して降りるだけで,なぜか満足度2割増しだ。
だから,セブンと共にある日々には,そんな小さな儀式がよく似合う。

Posted at 2025/06/23 17:14:33 | コメント(10) | トラックバック(0) | クルマ
2025年06月16日 イイね!

「必ずや,新車が買える大人になろう!」と誓ったが…

「必ずや,新車が買える大人になろう!」と誓ったが…

この人と一生,歩んでいこう。
この仕事こそ天職と考え,まっとうしよう。

人は人生の節目ごとに,幾つかの大きな決意を胸にする。
それは,未来を自らの手で掴み取ろうとする,強い意志の表れだ。

実は,そこまで深い話じゃないが,私にもある。
もしも,新車が手に入るなら,そのときは新車と決めている。
以前も書いたが,クルマの見極めが下手な私は,中古車に泣かされ続けた。
中古車を買い替えても,買い替えてもトラブル続き。
小雨ぱらつく山道で,白煙を上げるポンコツを前に…
こぶしを固く握りしめ「必ずや,新車が買える大人になろう!」と誓った。

ところがである!
新車で買ったセブンは,慣らし運転から故障するのが大前提。
次々と繰り出される故障を直しながら,少しずつ完成形に近づけるのだという―――
直しても直しても,次が出てくる「故障わんこそば品質」だ。
近い将来,月旅行が可能になっても,ケータハム製の宇宙船には,絶対に搭乗しないだろう。

さて,月旅行ではないが,ライダーたちに根強い人気の北海道ツーリング。
私もロングバケーションには,何処までも続く大自然の中をセブンで駆け抜けてみたい。

「…ん?故障して立往生したら,どうすんだ?」

そう,問題はそこだ。
地平線の彼方まで続く一本道,そのど真ん中でエンジンが沈黙したらどうするのか?
積載車を呼ぼうにも電波は圏外,目の前には「熊出没注意」の黄色い看板。
スマホを持つ手が震えるのは寒さのせいか,それとも人生の選択を間違えた後悔か?
いつしか陽は落ち,風が立つ。
時折り飛び立つ鳥の羽音や,ざわつく熊笹の音に,私は身構え,一心に暗闇を見詰める―――

だが,そんな旅こそ後々になって笑い話になる。
そして,セブンはその笑いを一生分,納車時に標準装備してくる。

だから私は,今日もハンドルを握りしめながら祈るのだ。
「どうか,あと50キロだけ…いや,せめて10キロ無事に走ってくれますように」と。
そしていつか,その祈りが通じると信じている―――
セブンと過ごす人生そのものが,もう既に「走る旅」なのだから…

Posted at 2025/06/16 06:11:27 | コメント(12) | トラックバック(0) | クルマ
2025年06月11日 イイね!

箱根の風と干物の匂い

箱根の風と干物の匂い

クルマと過ごす時間が,ただの移動ではなくなる瞬間がある。
新入生のセブン480Rで湯河原へと向かい,箱根・椿ラインでヒルクライム。
今日は「慣らし運転」という目的があるが,峠道にそんな概念は通じない。
こちらが控えめに行こうとしているにも拘わらず,道のほうが執拗に挑発してくる。
「どうせ回りたいんだろ?さぁ回れよ」と。


Tsubaki_Line.jpg


椿ラインはカーブの見本市…いや,万博だ。
すべてのコーナーが「ほらほら,気合を入れて!」と,カツを入れてくるのだ。
こちらは,まだ入学まもない新入生なのに,1時限目から全開フルスロットル。
セブンも「おい,話が違うぞ」と,文句を言うかと思いきや,あっさりと挑発に乗るタイプ。

どこでABCペダルを踏むか?,どれだけステアリングを切り込むか?
私の挙動は,セブンに完璧に読まれている。
こちらの出方を見越しているかのように,路面をしっかり掴んで離さない。
ついつい道とマシンにせき立てられながら,夢中でコーナーに挑んでいた。


IMG_7896.jpg


我を忘れて登り切った先は,猛者たちのオアシス大観山。
棺桶から抜け出し,空に向かって大きく伸びをする。
あのまま続けていたら,箱根駅伝・第5区のランナー並みに,こっちの心臓がオーバーヒートだった。


IMG_7902.jpg


帰りは,某CGTVのセブンの回で,M任谷氏が強化クラッチに苦戦し,5回もエンストしていたターンパイクを下る。
だか,ヒルクライムを思えば,こちらは一転,ゆとり教育だ。
次のコーナーまでの十分な間隔は,心と体に余裕を与えてくれる。
まるで,さっきまでの椿ちゃんが「それでも好きって言ってくれる?」と,聞いてくるメンヘラ女子に思える。



ターンパイクを下り切ると,いつもの干物の工場直売店「山安」。
お目当ては,カマスの干物とイカのクチバシ(とんび)。
私は昔からこの一辺倒で,身体を流れる血液のあちこちに,カマスとイカが泳いでいる。


IMG_7910.jpg


現在の店舗は,なんちゃって神殿のような佇まいだが,入口と出口が決められた「トコロテン方式」には閉口する。
だが,建替え前から変わらず守り続けているのが,店先で自分で焼いて食べられる試食。
誰かが焼いていると,その匂いで次の客がおびき寄せられ,気づけば店内で干物を手にしている。
あれは営業というより,漁法である。「セルフ香り撒き餌漁」だ。
干物の脂がはぜる音と,煙幕に包まれた罠のような空間が,昔から好きだ。


IMG_6560.jpg


助手席には,こちらを見つめるカマスと,何か言いたそうなクチバシ。
「おい,今夜は酒あんだろうな?」
うるさい干物とクチバシの入った袋を結び直し,帰路を急ぐ。

さて,問題はここからだ。
買った干物は冷凍だったので,保冷剤も入れず助手席へ。
都心に近づき,恒例の渋滞に差し掛かったころ,干物が目を覚ました。
溶けた汁がシートに染み出し,納車早々,もはやセブンは事故物件車両である。
こんなことなら,エキマニに挟み,焼きながら帰るんだった(涙)


IMG_7882.jpg


何はともあれ,熱を帯びたセブンと,焼かれるのを待つ干物。
どちらも,今日という新たな1ページを,しっかりと脳裏に焼きつけてくれた。

Posted at 2025/06/11 07:41:21 | コメント(15) | トラックバック(0) | クルマ
2025年06月07日 イイね!

オーナーの証

オーナーの証

長嶋茂雄。その男は,昭和を…いや,日本を代表するヒーローだった。
幼いころの記憶に,MVP受賞だろうか?ミスターが,リボンのついた巨大なキーを,誇らしげに掲げていた姿がある。
光を受けてきらめくそのキーは,栄光の証。
選ばれし者だけが手にする勲章だった。

そんな象徴にさえされるクルマのキー。
それは,単なる備品のひとつに過ぎないが,不思議な力を持っている。
ディーラーでキーを手渡された瞬間,エンジンの音より先に,心の中でファンファーレが鳴る♪「俺のクルマになった」と。
家のカギを持つ者が,その家を自由にできるように…
クルマのキーはオーナーの証であり,新たな門出の号砲でもある。

さて,私が最初に手にしたキーは,ヘッド部分にニャロメのイラストが描いてある合カギだった。
中古のセリカで,純正のキーもなければ,プラスチックの被覆もされていなかった。
乾燥した日には静電気が火花を散らし,手荒い歓迎をしてくれる。
夜,そっとクルマに近づき,ビクビクしながらドアを開ける自分は,どう見ても車上荒らし。
クルマに乗るというより,職質一歩手前だった。
オーナーという響きにはほど遠いが,それでも凄く嬉しかった思いがある。

アルテッツァのときは,当時,珍しかった内溝キー。
たしかトヨタ車としては,クラウンと共に初の試みだったはずだ。
未来を感じ,あたかもタイムマシンに乗っているかのように,見せびらかした。

ワーゲンのジャックナイフキーでは,意味もなくブレードを飛び出させ,アウトバーンなんて行ったことなかったのに,ドイツの不良気取り。

メルセデスのスマートキーは,「キーレスゴー」とオリジナルネームまで付け,モデルチェンジのたびにデザインも変わる。
誇らしげに光るスリーポインテッドスター,でも型落ちになると,ポケットから出せないという,副作用つき。

他にも,ポルシェのミニカー型キーやアストンマーティンのクリスタルバー,アルピーヌのカードキーなど,各メーカーは一風変わったキーでオリジナリティを競っている。

そして,今回のケータハム・セブンのキー。
妙にギザギザである―――
とにかく,ギザギザ。
近くで見てもギザギザ,遠くで見てもギザギザ。
ノコギリみたいで「絶対,キャンプで重宝するっしょ」というレベル。

これまで様々なキー遍歴を持つ私にしてみれば…
「今どき,こんなのありかよ」と思わず口に出たが,同時にふっと笑ってしまった。
あの長嶋茂雄が掲げた巨大なキーに,一番近いのはこのギザギザかもしれない。
最新式のスマートキーよりも,よっぽどオーナーになった実感が湧くのだから…


IMG_7869.jpg

Posted at 2025/06/08 18:32:15 | コメント(5) | トラックバック(0) | クルマ

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きりぎりす(旧GRASSHOPPER)と申します。 ここ10年ほどで,やっと実用性0(ゼロ)のセカンドカーを持てるようになりました。 サルはエクスタシー...
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