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国連気候変動枠組条約（ＣＯＰ２６）が来週１０月３１日から約２週間にわたり，英国グラスゴーで開かれる。
世界的なＣＯ２排出削減の目標や手段等，パリ協定の具体的な実施ルールについての合意を目指すものだ。
世界で報じられた大きなニュースと前後して，ある小さな記事が私の目に留まった。
必ずや後世に語り継がれるであろうスペシャルティー・カーの国内販売が，今週末に開始されるのだ。
その名もロータス・エミーラ。
説明するまでもなく，英国を代表するスポーツカーメーカーのロータスが，世に放つレシプロエンジン最後のモデルである。

キャブや空冷式が終わるといった類（たぐい）の話をしているのではない。
ガソリンなどの燃料を爆発させて，熱エネルギーを運動エネルギーに変換させる内燃機関が，世の中から姿を消そうとしている。
地球温暖化に伴い，各国がこぞって打ち出した温室効果ガス削減の矢面に立たされているのが，ガソリン車だ。
その余波は昨年ぐらいから急展開を迎えた。
各メーカーは，大きく舵を切り始め，次々とガソリン車の製造中止を発表している。
それは名車と呼ばれるモデルも決して例外ではない。
むしろ，利益よりもイメージ戦略でラインナップされているフラッグシップモデルが，非難の的にされては，逆にイメージダウンの憂き目にあう。
多くの車好きにとって複雑な思いで受けとめるニュースばかりだが，そんな中にあってロータスの最後っ屁とも言えるのがエミーラ。
製造中止が相次ぐ中で，あえてニューモデルの投入に踏み切ったのだ。

実は先日，愛車エリーゼの修理でロータス・ディーラーへ立ち寄った際に，エミーラの予約を持ち掛けられた。
待ちに待った日本仕様や価格の通達がついにメーカーからあり，発売日が決定しロータスオーナーに限り，発売日の前日まで優先的に予約を受け付けるという，甘い誘いだった。
ロータスの生産工程は，ハンドメイドなので大量生産がきかず，初めから限定１５０台の枠しかない。
値上り確実な未公開株のように投資目的のオーダーもあるだろう。
昨年のエリーゼ・ファイナルエディションのときのように，発売日に即日完売の可能性すらある。

眠れぬ夜が何日か続きそうだ。
近い将来には絶滅危惧種の珍獣のごとき扱いを受けるガソリン車で，なおかつ数々のレースシーンを飾ってきたロータスのファイナルともなれば…
えーい！悩むぐらいなら注文するか！買って損はないはずだ。

カタログすらないエミーラのスタイリングを公式ＨＰで眺めると，実車でなく未だにＣＧだった。
しかし，それでもロータスのエンブレムだけは誇らしげに輝いている。
エンブレムに刻まれたＡＣＢＣの４文字は創業者である故アンソニー・コーリン・ブルース・チャップマンのイニシャルだ。
レーサーでありエンジニアでもあったチャップマンは，自らの理論を実証するためにロータスを設立した。
理論とは，クルマを加速する・曲がる・止まるの三大要素だけに絞って語るなら，軽量であればあるほど各々の特性も上がるというもの。
数々のレースに勝利し，ライトウェイトスポーツを前面に押し出したクルマ作りを進めてきたのが，ロータスの歴史だ。
だから，ロータスを愛するマニアの中には，現行最上級モデルに当たるエヴォーラを認めない向きもある。
何故ならば，車重が１４００ｋｇ近くもあるからだ。
他のスポーツカーと比較すれば遜色ない数値であるにも関わらず，ロータスファンに取っては許し難い車重なのだ。
このことを踏まえるとライトウェイトスポーツを身上としたコーリン・チャップマンは，１４００ｋｇ以上もあるエミーラを是とするのだろうか？

２０１７年ロータス・カーズは中国巨大資本の吉利汽車（ジーリー）に買収された。
冷蔵庫メーカーだったジーリーの設計介入が噂されるエミーラをロータスと見なすなら…
ロータスのエンブレムこそ付いていないが，１９７３年にセブンの生産権を引き継ぎ，５０年近く生産を続けるケータハムの方が，よっぽどロータスと呼べるのではなかろうか？（実はケータハムも今では名古屋の会社の資本なのだが）

不眠症に悩むぐらいなら買ってしまおうか？それとも寝不足で注文し忘れるか？
ＣＯＰ２６が開会するころには答えが出ているだろう。マジ悩む…