
またエンジンオイルの話です。先日のブログで純正オイルのAPI規格がSNからSPに変わっていたと投稿しました。その中でLSPI(Low Speed Pre-Ignition=低速早期着火→以下便宜上ノッキングと表記)を防止するための評価項目をクリアしていると引用しましたが、ではオイルがどうしてLSPI防止に寄与するのかという疑問が残ったのでありました。ちなみにSN以前のオイルにはLSPI防止とタイミングチェーン摩耗防止の性能に関する評価項目はありません。
その前に窓を開けながらマイカーを運転していてエンジン音に耳を傾けていたのですが、確かにノッキング音は以前より明らかに少なくなった気がします。気候は涼しくなってきましたが、以前は年中カツカツと聞こえていたような… もちろん効率良く燃焼するためにノッキングぎりぎりのところで点火制御が働いているので微細なノッキングは発生しているはずです。ノッキングしにくいということは負荷の大きな状況でも粘り強く走れるということで、劇的ではないですが確かに実感はありました。
直噴エンジンの宿命であるノッキング。調べると以下のような理由とSPグレードオイルの対策がありました。
△エンジンオイル内に含まれるCa(カルシウム)分が燃焼室内で熱を持ち自然着火することで通常の点火タイミングよりも早期に爆発を起こし不完全燃焼やノッキングを起こす。直噴エンジンのカーボン発生の一つの要因であると言われている。
△エンジンオイルがシリンダ壁面とピストン・ピストンリングの間で潤滑・清浄・密閉等の働きをしているが、シリンダ壁面にあるエンジンオイルを直噴エンジンが高圧で燃料を噴射することで燃焼室内に気化または油滴として流れ込み、燃焼室内で空気と共に圧縮されることでCa分が火種として着火を促す。
△エンジンオイル内のCa分といえば主に清浄分散剤として使用される成分として含まれる。Ca分を使用しなければいいのだが、そう簡単にはいかない模様。
△以前はCaスルホネートという清浄分散剤が主流だったが、ディーゼルエンジンや最近のガソリンエンジンではエンジンオイルに含まれる硫黄分がDPFなどの排気フィルターを詰まらせたり劣化させる原因になっていたため使用が制限され、Caサリシレートという清浄分散剤が使用されるようになった。
△LSPI対応オイルにCa成分を制限されることになれば、また新たな清浄分散剤を使用する必要がある。
△LSPI防止性能確保のための一例として、清浄分散剤を従来のCa系清浄剤の単独使用から、Ca系とMg(マグネシウム)系清浄剤を併用する配合としたり、さらに低燃費性を実現するため低粘度化するとともに境界潤滑領域での摩擦低減効果に優れるMo(モリブデン)系摩擦調整剤を使用するなど改良がされているが、Mg系清浄剤の使用は境界潤滑領域において摩擦係数の上昇を引き起こすのだがその背反性能をB(ホウ素)系分散剤を併用することで克服している。
※参考・引用記事:Unil opal ウェブサイト、公益社団法人石油学会ウェブサイト
恥ずかしながらノッキングはエンジン本体や制御の課題であるとばかり認識していましたが、エンジンオイルに含まれるカルシウムにも原因があったのですね。LSPIの防止・ノッキング対策はカーボンの堆積を抑えることになり、結果的には環境性能の維持やエンジンの長寿命化に繋がります。純正オイルにもそのような性能が備わるのは喜ばしいことです。しかし現在のSPグレードのオイルを以てしてもLSPI防止性能は長続きしないらしいので、それも課題とした次世代新規格への研究は各メーカーで日夜進められています。いつまでガソリンエンジンに乗り続けられるかわかりませんが、末永く乗るためにもエンジンオイルの進化にはこれからも期待したいところです。
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2023/09/20 21:44:41