
私のブログを読むような方であればオイル選びの際には商品スペックにも目を通していると思いますが、その一つが粘度指数ですよね。
聞き飽きているかもしれませんが、粘度指数について簡単に説明すると、「温度による粘度変化」を示す値になります。
単純に、粘度指数の値が
低い → 低温で硬く、高温で柔い
高い → 低温で柔く、高温で硬い
と捉えることができます。
下のグラフを基に言うと、「粘度指数が高いほどグラフが平たくなって粘度が安定する」ということです。
ただしこれは基準値から見た話ですので、例えば20W-50のような硬いオイルは、粘度指数が高くても低温時はそれなりに硬いですので、「絶対的ではなく相対的な指標」という意味合いです。
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┃粘度指数がずば抜けて高いオイルは高性能と言えるのか?
エンジンオイルは低温時に柔らかいほど良く、高温時に硬いほど良いわけですが、それを実現するための代表的なアイテムが「粘度指数向上剤」、つまり高分子ポリマーです。
低温時にはオイルの流動性を妨げず、逆に高温時には流動性に抵抗をもたらすという、なんとも(良い意味で)都合の良い性質を持っています。
「じゃぁ粘度指数が軒並み280~310なんていうとびぬけた数値を持った某純正GRオイルは超最高じゃないですか!」
「…あれ? GR純正でもNA用のCircuitは粘度指数310だけど、ターボ車用のEnduranceは165しかないぞ。」
「より厳しい環境で使うターボ車用オイルの方が粘度指数が低い。よく読んだらノンポリマー処方って書いてる。しかもこっちの方が高価。」
「なんで粘度指数高い=ポリマー足した方が安いの? つーかなんで310とかまで粘度指数を求めたの? じゃぁ165だと低いの?高いの?なんかよく分からんくなってきたぞ?」
GRオイルに限らず、粘度指数に関してこんな感じのことを思った方も多くいるのではないでしょうか。
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┃粘度指数向上剤のデメリット
前段で書きました。「粘度指数は相対的な指標」だと。
あくまで基準値からどれくらい変化するかという指標。
基準値...。
そういえばベースオイルの区分のグループI、グループII、グループIIIとかって、何の要素で分けられてましたっけ?
はい、粘度指数ですよね。

(引用:AZ)
グループVは別として、ベースオイルの性能を決める一因は「粘度指数の高さ=性能の高さ」と言えます。
なぜなら最初に書いたように、粘度指数の高さは粘度の安定性の高さだから。
でもそれは素材(ベースオイル)での話。
粘度指数向上剤を使って数値を上げるのは話が別。
なぜか。
粘度指数向上剤にはデメリットがあるから。
1.ピストン運動によってせん断される
→効果が無くなる=粘度指数が低下する
2.高温で酸化・分解する
→分解生成物がスラッジ(汚泥)になる
→スラッジを処理するために清浄分散剤の消耗を早める
→オイルの寿命を縮める
3.その添加分がもったいない
→粘度指数のためだけに、ものによっては10%前後かそれ以上添加されているので、もし少量or無添加にできればその枠を別の物に使える
なので、デメリットを消すためには初めから粘度指数の高いベースオイルを使えばそれ以上はあまり上げる必要がない。
高価なオイルほどSDSを見ると添加剤割合が小さい理由もそれ。
粘度指数向上剤の劣化による性能低下の懸念が無くなればオイルの寿命も伸ばせるし。
逆に粘度指数の低いベースオイルを使っている場合は補うためにどうしても粘度指数向上剤が必要。
なぜなら、劣化を見込んでも一定期間はマージン(安全率)を確保しておきたいから。
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私は高耐久であることが良いオイルという価値観を持っているため、短期間交換を前提としたオイルには興味がありません。
その意味で、新油時の評価値としての粘度指数やHTHSはほとんど気にしなくなりました。
もし公的に劣化試験が義務付けられてその評価値が出るようになれば、もっと業界のレベルも上がる(底上げされる)だろうにね。
Posted at 2025/08/02 05:27:18 | |
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