
オリジナルエンジンオイルの設計プランはほぼほぼできているのだけど、二硫化タングステンの扱いについて少し考えた。
1.動機
まず疑問をいだいたきっかけは、世の中に出回っているエンジンオイル用添加剤としての二硫化タングステンは、みんながみんなIF-WS2(無機多層フラーレン構造二硫化タングステン)ばかりだということ。
自分でも事業をしながら各業界を見て確信しているのは、”主流の影には思考停止がある”ということ。
どの会社もこれを採用しているから正解なんだ。きっと間違いは無いんだ。無難なんだ。という思考停止。
私のように根拠がないと納得できない性格をしている人間にとっては、ここが差別化のチャンスなのです。
住宅の仕様も薪ストーブも、自分でオリジナルを作る背景にはこんな流れが必ずあります。
2.WS2とIF-WS2の比較
てことで話を戻して二硫化タングステン(以下WS2)だけど、化学合成で作られるこの物質には、添加剤用途として使われる形態として2種類あります。
それがタイトルにも書いたIF-WS2とWS2。
それぞれについてAIに聞いてみました。
以下、黄色マーカー部分はCopilotの回答コピー。
WS2(二硫化タングステン)
特性: 板状の積層構造により、摩擦を低減し、耐摩耗性を向上させます。
IF-WS2(無機多層フラーレン二硫化タングステン)
特性: フラーレン構造により、圧力に応じて異なる働きをします。低圧では球状の粒子が転がり摩擦を軽減し、高圧では層が剥がれて潤滑効果を発揮します。また、ナノ粒子が金属表面の微細な傷や凹凸を埋めることで、さらに摩擦を低減します。
IF-WS2は特に過酷な条件下での使用に適しており、極圧性能が求められる場面で非常に効果的です。
次に、摩擦係数と極圧性能について具体的に数値の比較を聞いてみる。
WS2(二硫化タングステン)
極圧性能: WS2は高い耐圧性能を持ち、極圧条件下でも優れた潤滑性能を発揮します。
通常の潤滑剤と比較して、極圧性能は30〜40倍高いとされています。
摩擦係数: 通常の条件下で約0.03〜0.07
IF-WS2(無機多層フラーレン二硫化タングステン)
極圧性能: IF-WS2はさらに優れた極圧性能を持ち、特に高圧環境下での潤滑性能が非常に高いです。
IF-WS2の極圧性能は、WS2の30〜40倍、PTFEの170倍以上とされています。
摩擦係数: 圧力に応じて変動し、通常の条件下で約0.01〜0.03
Copilotの回答には出てこなかったけど、IF-WS2の極圧性能は懸念する必要がないくらいとんでもないもの(GPa/cm2単位)で、極限の環境下でも焼付きの心配は皆無と言っていいくらい。
ともすれば乗用車エンジン程度の用途であれば、極圧性能に関してはIF-WS2はちょっとオーバースペックなんではないか?
そして摩擦係数については、これら2つの他に有機モリブデン(エンジン内で熱反応によって二硫化モリブデンに変化)の数値とも比較してみましたが、みんな0.0いくつの違いでしか無く、どれも十分すぎるくらいFM剤として優秀なことがわかる。
3.トライボフィルム(保護被膜)
亜鉛やモリブデンやタングステンなどの耐摩耗剤は、エンジン内で高熱や高圧にさらされることによってトライボフィルムという保護被膜を形成して摩擦面を保護します。
二硫化タングステンにおいてはWS2もIF-WS2も形成する条件は同じで、
1. 高温・高圧環境
温度: 高温環境が必要で、通常は200°C以上。
圧力: 高圧条件下での摩擦がトライボフィルムの形成を促進します。
2. 摩擦
摩擦力: 摩擦によるエネルギーが化学反応を引き起こし、トライボフィルムの形成を助けます。
3. 潤滑油の添加剤
極圧添加剤: 硫黄系極圧添加剤が含まれる潤滑油が使用されると、IF-WS2のトライボフィルム形成が促進されます。
4. 化学反応
反応機構: 摩擦による高温・高圧がドライビングフォースとなり、IF-WS2が化学反応を起こしてトライボフィルムを形成します。
これらの条件が揃うことで、IF-WS2は金属表面にトライボフィルムを形成し、摩擦や摩耗を低減する効果を発揮します。
ということなので、ここにおいては2つの差は無し。
4.結論
極圧性能を除いて、2つの間にそれほど有意な差は感じなかったかなぁ。
そしてもちろんコスト面においてはWS2の方が当然安いわけで、結局タイトルのような考えに至ったのであった。
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Posted at
2024/07/12 16:52:35