
まずは基本中の基本から。
エンジンオイルの5つの役割と言えば…?
1. 潤滑
2. 冷却
3. 清浄
4. 密封
5. 防錆
ですね。
参考:イエローハット 〜エンジンオイルの役割とは
https://www.yellowhat.jp/column/oil/045/index.html
で、これらの機能を持たすためにエンジンオイルには容量%にして約10〜30%、様々な添加剤が入れられているのですが、この添加剤のうち半分ほどを清浄剤が占めると言われています。
それくらい、3.清浄はオイルの性能維持に大事なものとなります。
清浄剤には主に、
・スルホネート
・サリシレート
・フェネート
の3種が挙げられますが、その内、今回は清浄剤の代表格である『スルホネート』について書いてみましょう。
(つか他2種はよく
(゚⊿゚)シラネ)
【スルホネートの役割】
〈1.清浄〉
スルホネート(sulfonate)は、エンジンオイル業界では清浄剤の名前として広く認知されています。
(一方、他業種においては防錆剤としての認識が支配的な模様。)
エンジンオイルにおいてのスルホネートの代表的な働きとは、スルホネート内に数%含まれる金属分によって、金属面に付着した汚れを掻き落とすことにあります。

参考:シェル 潤滑油に使われる添加剤 ~清浄分散剤~
https://shell-lubes.co.jp/lubes-grease/lubes-technology/tech-additive/240/
これによって、エンジン内に発生したスラッジが堆積して大型化する前に剥がし落としてくれるわけです。
つまり、オイル(ひいてはエンジン)が汚れるのを未然に防いでくれているんです。
悪い芽は早いうちに摘むに限りますね。(?)
〈2.防錆〉
前項にも書きましたが、他業種(例えば食品加工機械等)においては、スルホネートは防錆剤の名前として知られているようです。
スルホネートはその中に含まれる金属分(DNNS塩という)によって、金属表面に疎水性のバリア層を形成します。
この膜が水分と金属の接触を妨いでくれて、結果サビの発生を防止してくれます。
ちなみにこの疎水性がスルホネートのキモな訳で、もし水分と混ざって乳化してしまったらこの機能は果たせなくなります。
なのでスルホネート(というか防錆剤)には、水分離性(抗乳化性能,加水分解耐性)が強く求められます。
【スルホネートの種類】
スルホネートと言っても種類は様々です。
先程の文中にちらっと書きましたが、含まれる金属分(DNNS塩)には種類があり、それぞれが持つ特徴によって用途が分かれるからです。
(ちなみに細かいことを言えば、金属分を含まない無灰型(アミン塩)のスルホネートもあります。)
で、その金属塩の種類については代表的なところで
・カルシウム(Ca)
・バリウム(Ba)
・マグネシウム(Mg)
の3種が挙げられます。
ナトリウム(Na)もあるみたいだけど今回は除外しますね。
で、それぞれの特徴について、ここからはChatGPT-4さん(Copilot)に協力してもらって調べてもらいました。
つきましては以下にAIの回答を転記。
・カルシウムスルホネート・
清浄作用: スラッジやデポジットを除去し、エンジン内部を清潔に保つ効果があります。
防錆作用: 金属表面に保護膜を形成し、錆の発生を防ぎます。
私の注釈追記:カルシウムスルホネートは特に低温下でのスラッジ清浄性に優れる。スラッジは高温下だけでなく低温下での水分混入でも生成される。
→昨今の油温の上がりにくいハイブリッド車にも適。
・バリウムスルホネート・
高温安定性: 高温環境下でも安定して機能し、スラッジの形成を抑制します。
優れた清浄作用: 特に高温スラッジに対して効果的です。
・マグネシウムスルホネート・
酸中和作用: 燃焼生成物やオイルの劣化生成物に含まれる酸性物質を中和し、エンジンの腐食を防ぎます。
清浄作用: スラッジやデポジットの形成を抑制し、エンジンの性能を維持します
低灰分: マグネシウムスルホネートは燃焼後に生成される灰分が少ないため、排気システムの詰まりを防ぎ、エンジンの寿命を延ばすのに役立ちます
と、このように、各種金属塩の種類によって得意分野があることが分かると思います。
なお、アメリカでのエンジンオイルコミュニティではよくオイル解析結果を持ち寄って情報交換と議論が活発になされていますが、オイルの成分にはこれらCa,Mg,Baがそれぞれ含まれているのをよく見ます。
比率はオイルによって様々ですが、万遍なく含めることで全包囲バランスをとっていることが伺えますね。
このように様々な清浄剤をオイルメーカーは選定,組み合わせして作っているようですが、添加剤メーカーのラインナップは多く、
アメリカのとある添加剤メーカーではカルシウムスルホネートだけで商品ラインナップが13種類もありました。
グリース用だったり作動油用だったり、様々。
【LSPIの原因物質】
最近ではAPI規格でSN-plusからSPにかけてLSPI対策が盛り込まれ、その影響で清浄剤界隈にも変化がでています。
というのも、清浄剤成分の金属塩として使われるカルシウムが燃焼室内で酸化反応を起こす際に高温を発し、それがLSPIを引きおこすといわれているからです。
APIのSN-plus以降、SP規格ではLSPIの発生頻度にかかるテスト項目が盛り込まれ、これをクリアするためにオイルメーカーは、これまでメインに使用してきたカルシウムスルホネートからマグネシウムスルホネートへの一部置き換えをすることで対応しているようです。
(マグネシウムは酸化反応温度がカルシウムより小さい)
とは言え、LSPIでエンジンが壊れましたという"市場"報告は一度も見聞きしたことがないし、発生する条件もかなりの低速&超高圧環境でのみの話なので、個人的にはそんなにシビアに考える話でもないのでは?と穿って見ています。(よほどカルシウム分を濃くしなければ。)
【最後に】
疲れた。
極圧剤との競合と対策についてはマニアックすぎるし自分も勉強不足なのでまだ書けない。
でもスルホネートについてこんな丁寧に書かれたページは今の所ないんじゃないかな。
まぁ普通は知る必要ないけど。
空いた時間でちょっと漁った程度の素人調べではありますが、それほど致命的に外したことも書いてないと思ってます。
が、ご指摘あればお知らせください。
加筆・修正します。
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Posted at
2024/08/05 01:04:15