【論文】
超高負荷運転におけるオイル添加剤がLSPI発生に与える影響
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsaeronbun/51/3/51_20204256/_pdf
なんか論文タイトルの日本語がしっくりこないんだが…
それはともかく、オイル内の清浄成分であるCa(カルシウム)が多いとそれがスラッジ内で熱を持って発火源になるというのは従来から知られている通り。
ただこの論文内の実験結果によれば、Caを少なく(半減)させてLSPIが減ったと思いきや、そこにMo(モリブデン)が足ささるとまたLSPI発生が同じくらい増えるという面白い発見が。
LSPIの発生率が高くなるのはいずれも高負荷運転時に顕著な傾向なので、上り坂だったりアクセル開度が大きかったりした時によく起こるのだろう。
ちなみに添加剤中の清浄成分は主にCaとMg(マグネシウム)がメインなんですが、単純にCaを減らしてその分をMgに置き換えてやるとやはりLSPIは減る結果ですね。
それはMgが保持する熱量がCaに比べて約半分くらいの温度だからとの事。
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API規格の要件の表を見ると、SN-Plus以降はLSPI発生回数に係る項目が追加されてて、反復試験中、発生5回以内にしなさいよと決められています。
(テストメソッドのASTM D8291を検索したけど、どういう条件下かよく分からなかったぞ)
https://www.infineuminsight.com/media/2841/api-engine-oil-classifications-brochure2.pdf
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んで何が言いたいかって言うと、私は昔からモリブデンは(゚⊿゚)イラネ派です。
一、モリブデンは対応温度域が高い(低温時には役に立たない)
有機モリブデン 使用上の注意 その7 温度依存性
https://www.mikadooil.com/blog/2020/08/13/587/
一番エンジンの劣化状況となるドライスタート(コールドスタート)に対して役立たず。
二、そのうち劣化してごみになる
モリブデンの効果は永久ではありません。(モリブデンに限らずだけど)
しっかり劣化してしまうんです。
固体潤滑剤の劣化と寿命 | ジュンツウネット21
https://www.juntsu.co.jp/qa/qa0903.php
三、エステルとの相性最悪
そもそも私はエステル自体も(゚⊿゚)イラネ派です。(加水分解起こして寿命短いから。→ジエステル)
んで、エステルはモリブデンの働きを阻害します。
MoDTC の境界潤滑特性に及ぼすリン酸エステル添加剤の影響
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tribologist/60/7/60_60.07_461/_pdf
これは怖い話で、市販のオイル添加剤にはMoが配合されている物が数多くありますので、謳い文句に惹かれて良かれと思って追加しちゃうと、元がエステル配合オイルの場合は逆に性能を低下させちゃうっていう。
本当怖いね。
四、そして今回読んだ論文にある通り、
Moの含有によってLSPIの発生確率を上げてしまうという副作用。
まぁLSPIは直噴ターボエンジン特有の問題ですが。
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でね、もうFM剤 兼 極圧潤滑剤としてはIF-WS2(無機フラーレン-二硫化タングステン)でいいじゃんとなる。高いけどこれが最適解だもの。
https://gearsolutions.com/features/nanomaterials-for-gear-lubrication-solutions/
二硫化モリブデンは層状(板状)なのに対して、無機フラーレン二硫化タングステンは球状。しかも多層の。
板とベアリングだったらどっちが滑りが良いか、誰でも分かる話よね。
しかもIF-WS2はトライボフィルム(保護被膜)も作ってくれますし。
ついでにモリブデンの拠り所である極圧性能についても、IF-WS2の方が
"数倍"上です。
あと適用温度域も関係なし。低温域から高温域(450℃あたり)までちゃんと効く。
。。。いつかそのうちオリジナルでエンジンオイル作りたい。
追記:作りました。
https://verior-oil.org/
Posted at 2024/02/22 10:17:18 | |
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