
オリンピックへの道
競歩50kmは、東京五輪が「最後」。
ひしめく日本の有力選手たちは……。
posted2019/04/22 07:00
日本選手権1位の鈴木、2位の川野がともに従来の日本記録を更新するなど、ハイレベルな争いとなった。
text by 松原孝臣 Takaomi Matsubara
photograph by Kyodo News
日本陸上が誇る種目の1つに、競歩がある。特に男子50kmは近年、結果とともにそれを示してきた。
2015年の世界選手権では谷井孝行が銅メダル。2016年のリオデジャネイロ五輪で荒井広宙が銀メダル。そして2017年の世界選手権でも、小林快が銅メダルを獲得している。メダル獲得者がそれぞれの大会で異なるように、層の厚さも強みである。
4月14日の日本選手権でも、層の厚さは改めて浮き彫りになった。
今年9~10月に行われる世界選手権の代表選考を兼ねた大会だったが、3枠のうちすでに2枠は決定していた。昨年の全日本50km競歩高畠大会で優勝した野田明宏と、アジア大会で金メダルを獲得した勝木隼人である。つまり最後の1枠を、最近の世界大会でメダルを獲ってきた選手たちが争う形だったのだ。
そして優勝を手にしたのは初めて50kmの試合に挑戦した20kmの第一人者、鈴木雄介だった。また50kmに新たな強豪が加わったことになる。
■人気のなさと、競技時間の長さ。
ただ日本が培ってきた強さの系譜は、今後断絶することが決まっている。2022年以降、競歩50kmは種目自体が廃止されるからだ。オリンピックで言えば、2020年の東京五輪が最後となる。
50kmの存続問題がクローズアップされたのは、一昨年の春だった。国際陸上競技連盟の理事会で、オリンピック、世界選手権から除外するかどうかが議論された。
その背景には、国際オリンピック委員会(IOC)の意向があった。競歩50kmが問題視された点はいくつもあるが、最も大きかったのは人気や注目の度合い、そして競技時間の長さ(日本記録は3時間39分4秒)だっただろう。
競歩に限らず、IOCはオリンピック競技について常に「査定」を続けてきた。オリンピック期間中の視聴者数や、会場の観客動員数といったデータを調査してきた。その上で、競技をランクづけすると言われている。
競技団体も、当然それを意識する。だからこそ放送や視聴者への配慮で、度々ルール変更も行われてきた。'99年に、バレーボールがサイドアウト制からラリーポイント制に変更されたのは特に有名だ。
■この廃止は必然だったのか。
結局2017年の時点で、競歩の50kmは廃止に至らなかった。だが昨年、存廃の問題が再浮上し、今年3月ついに国際陸上連盟は、オリンピック・世界選手権での実施を2021年までとすることを決定したのである。
大枠で言えば、必然的な決定だったという考え方もある。競歩への一般的な関心は、決して高くない。これだけ多くの日本人選手が活躍していても、注目が高まっているとは言いがたい。無論それは、海外でも同じだ。
IOCの姿勢を考えれば、オリンピックにおける競歩そのものの存続問題にもつながりうる。陸上200mさえも除外が検討されたことがあると聞くが、そのIOCのシビアな査定を考えれば、50kmを取りやめる改革は、オリンピックで生き残っていくために評価されるべきかもしれない。
■先人たちの努力を考えれば……。
ただ、50kmを中心に活躍してきた選手やその周囲の人々、日本が強豪国になってきた過程を考えれば、受け止め方は異なる。
もともと強化費をはじめ環境面で厳しい状況にあった競歩は、「個」の努力で道を切り開いてきた。オリンピック強化コーチを務める今村文男が海外研修で強化方法をつぶさに学んで持ち帰ったり、海外のナショナルチーム合宿に同行してどのような練習をしているかを学び、国内に還元したのは最たる例だ。
世界選手権で銅メダルを得たあと、谷井は「土台作りをしてくれた先輩方は偉大です」と語った。鈴木の「作ってくれた土台に、うまく乗っかれています」という言葉も象徴的だ。
そうした地道な土台作りがあり、さらに選手個々や指導者がそれぞれの場で練習を重ねて世界に挑んできた。世界有数の強豪という地位は、そうして生まれた。
彼らが目指してきた50kmが失われることになる。そう考えたとき、廃止されることがよかった……とは言いがたい。
多くの有力選手がひしめく50kmのオリンピックでの最後のレースは来年。“最後”の代表枠に向けて、しのぎを削る争いが続いていくことになる。
Sport Graphic Number Webより
50キロメートル競歩
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
50km競歩(50キロメートルきょうほ、50 kilometres race walk)とは主に道路を使用して競技を行い、50kmの順位とタイムを競う競歩競技である。周回コースの設定や、コースの一部に陸上競技場を使用することもある[1]。男子50km競歩は夏季オリンピックや世界陸上競技選手権大会など主要国際大会の実施種目であるが、競技規則の改定により2021年の東京オリンピックが最後となる[2][3]。
[1]^ 第7部 競歩競技 日本陸上競技連盟. 2012年4月16日閲覧
[2]^ 競歩50kmは、東京五輪が「最後」。ひしめく日本の有力選手たちは……。 - Sports Graphic Number
[3]^ 競歩50キロ、東京五輪が最後に 国際陸連が22年から距離短縮 - 日本経済新聞 2019/3/12 13:23 (2020/4/4閲覧)
最終更新 2021年6月18日 (金) 18:22 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
≪くだめぎ?≫
野球・ソフトボールの様に開催国枠の"人気種目"としては復活もあるが・・。
Posted at 2021/07/30 13:41:26 | |
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