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123. 大仏破壊 4点
この人の本は
戦争広告代理店に続いて2冊目。1冊がいいとこうして芋づる式に読んでいくことがあるが、最初は大仏破壊?そんなに重要なテーマか?と半信半疑だった。しかし、この本はタリバンによる大仏破壊に至る過程と、国際社会の関係を軸に世界の秩序をどのように構築していくかの問題を投げかけている。
話は飛ぶが911からアメリカがアフガニスタン空爆からイラクに侵攻し、その後にIS拡大の泥沼を見ていると、トランプが世界の警察の座から降り、海外への国に関与を弱めて自国の利益に専念するのは当然のことのように思われる。なぜわざわざ莫大な費用をかけて軍隊を派遣し、自国の若い兵士達の命を散らさなければならないのか。世界の秩序を担う「大国の責任」などと言われても虚しく響くだけである。
しかし、この本はそのような国際社会の無関心こそが、アフガニスタンがテロ組織の温床となることを助長してしまったのだと警告する。

国際社会はタリバン穏健派と協力し大仏破壊阻止に奔走する
もともとタリバンはソ連のアフガニスタン撤退で内戦が続いていたアフガニスタンの秩序維持を目的に義勇的に設立された組織で、指導者のオマルは家柄も貧しく正規の教育も受けていない人物だった。タリバンが支配下に置いた地域は治安が確実に回復し、民衆の熱狂的な支持を受け勢力を拡大しカブールを制圧する。しかし、ケシの栽培や女性の権利制限なども絡み、国際社会はタリバンを正式なアフガニスタン政府としては認めなかった。
そして北部同盟との戦いに苦戦する中でビンラディン率いるアルカイダの資金力・軍事力に付け入る隙を与え、やがて寄生虫が宿主を乗っ取ってしまう。
「今世界は我々(タリバン)がバーミヤンの大仏を壊すといったとたん大騒ぎを始めている。だが、我が国が旱魃で苦しんでいるとき、彼らは何をしたか、我々を助けたか。彼らにとっては石の像の方が人間より大切なのだ。」
著者はこのタリバンの言葉を否定しつつも、説得力の断片を認めざるを得ないという。国際社会が提案した大仏の前に壁を作ったり、国外に移設するなどの費用を、なぜもっと早くアフガニスタンの人々に向けてやることができなかったのか。そうすれば、タリバンの最高指導者である孤独な支配者オマルがビンラディンの過激思想に飲まれ、テロの世紀の幕を開けてしまうこともなかったのではないか。
どうすれば良かったのか。これについてもっと援助すれば良かったという太陽派と、タリバン支援をコントロールすべきという北風派で答えは出ない。最近はコロナでテロも話題にならない。個人的には自国のことは自国でどうにかするしかないのではないか、という気もするが、それは傍観者のつまみ食いだろうか?太陽派であれ北風派であれ「放置すればよい、我々には関係ない」という、タリバン初期の一時のアメリカのようなNo policy、wait and seeの立場は取らないようだ。
Posted at 2020/06/25 02:21:04 | |
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