![[本の小並感 72]株式会社化する日本 [本の小並感 72]株式会社化する日本](https://cdn.snsimg.carview.co.jp/minkara/blog/000/042/597/588/42597588/p1m.jpg?ct=2c2bfea1c3c8)
72. 株式会社化する日本 2点
霞が関でのセミナーが17時前に終わってしまい、会社に帰ろうかと思ったが、帰りたくなかったので本屋に寄ってぶらぶらしていたら目に付いた。最初は買う気は無かったが、チクリッシモの新刊も出ていたのでセットで購入。近くのエクセルシオールで1:30で一気に読了した。
内田樹は珍しく嫌いな作家である。ただ意見が合わないだけなら、どうという事はないが、彼を論破できるような知識がないことが自分で分かっているからかも知れない。嫌いだが無視はできない。そういう存在だ。しかし、実際にこの本を読んでみると、やはり荒唐無稽というか、あり得ない言説が目立ち、地頭が良くても、知識があっても、文章が上手くても、「分かってない」というのは致命的なのだと改めて感じる。突っ込みどころは大量にある気がするが、二つに絞ろう。
・対米従属を批判するのはいい。対米従属史観は右派にも左派にも共通するもので、全く的外れとも言えないだろう。問題はその対案として提示される体制が「東アジア共同体」だという。これは宮崎駿の映画に何ら現実的な解が示されないのに似ている。政治的に全く現実性がない(だから支持は得られない)。さらに問題なのは、これが「いつか来た道」だということだ。太平洋戦争以前にも親米か反米(=新アジア)で割れ、戦前には前者が少数派だった。石原莞爾や北一輝はアジア諸国が平等な立場で集まる「東亜連盟」を構想した。反対に、福沢諭吉は脱亜論を唱えて親欧米の立場を取る。それが正しいかは分からないが、現実的な対応策を打ち出せないのが現在の左派、野党の致命的な欠点だろう。
しかし、「対米自立の志」など右派が使いそうな言葉である。その意味で、課題認識は右派も左派も共通なのだ。
・株式会社化する日本というタイトルにある部分がもっとも興味のあるところだった。主張としては、株式会社というのは短期的な利益を追求しがちで、かつ国の場合はマーケットに相当する選挙が機能していないから問題なのだという。安倍政権が長期的な問題から目を背けて耳障りのいいポピュリスト的な政策である事は否定しないが、それは株式会社のせいではない。むしろマーケットは長期的な観点を評価して株価に織り込まれる。そして、選挙が機能していないのは、左派が現実的な政策を打ち出せていないからだ。
・丁稚奉公するとご褒美に独立させてくれるという無意識はあるかも知れない。
・何のためにアメリカ軍が沖縄にあるのかは確かにきっちり問う必要がある。
・統治システムは楕円のように焦点が二つある方が良い、というのは権威と権力を分離する二重構造を認めている。
・バブルの頃は余裕があった。今は余裕がないので貧乏臭いというのはそうだろうが、つまり金銭的な余裕がまずあり、精神的にはその後である。
・資本主義は戦争に行き着くとか、アホかと思う。
愛国的リバタリアンという怪物、というブログを書いていた気がするが、それはまだ読むべきところはあった。しかし、この本は苦笑せざるを得ないところが多い。もう嫌いですらない。どうでもいい感じ。
Posted at 2019/03/12 00:48:02 | |
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