![[本の小並感 No. 99]火花、男のFカップは世界との違和感、決して取り返せない10年間 [本の小並感 No. 99]火花、男のFカップは世界との違和感、決して取り返せない10年間](https://cdn.snsimg.carview.co.jp/minkara/blog/000/043/569/768/43569768/p1m.jpg?ct=9bb7cc772b7c)
99. 火花 3点
同僚にめっちゃdisる男がいる。とにかく、右も左も老いも若きも、およそ目に付くものを片っ端からdisっていくので、もはや逆に大したものだと感心するのだが、その人間がこの火花は褒めていた。最近の小説はつまらないのか検証シリーズ、乳と卵に続くその2。
世界との距離の取り方。主人公は漫才師として売れず、人間関係で器用に立ち回ることもできず、その不器用さを漫才に活かすこともできない隠キャなコミュ障。一方の先輩である師匠は、天才肌で自らの笑いを決して変えない異端児。世間におもねる能力も持ちながらも、誰からも理解を得られないまま自分の道を進んでいく。
小さいながらもテレビに出られるくらい仕事が来るようになった自分、一方この師匠である先輩は売れないまま借金が積み上がり、テレビに出ようと豊胸手術をしてしまう。それもFカップ。世間には性の問題、ジェンダーの問題で悩んでいる人がたくさんいる、師匠に悪気はない、差別意識がないのは分かっているが、不愉快に思う人、馬鹿にされたと思う人が多いでしょう。「世間を無視することは、人に優しくないことなんです。それはほとんど面白くないことと同義なんです。」。
精悍で世間におもねることなく、自分の笑いを追求してきた奇才が「これで、テレビ出れると思ってん」そういって泣く。「一瞬とも永遠とも思える間、周囲を憚らず咽び泣いた」。世界と自分とは、どのように折り合いを付ければいいのか。笑いをテーマによく書いていると思う。
元に戻せば?とも思うが、戻せないのだろうか?いや、これは今までどのような形であれ過ごしてきた10年の象徴なのだ。胸は戻そうと思えば戻せるかもしれないが、決して取り戻せないものもある。なお、最後はこの先輩が「すごい漫才を思いついたぞ」と嬉しそうに飛び跳ね美しいFカップを揺らして終わる。この生き方を(も)肯定して終わる。
他の人の感想も聞きたい。書評検索しようか。乳と卵を2点にしているが、厳しかったかな?
Posted at 2019/12/24 01:51:19 | |
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