
今夏、私の運命を切り開くための試験を受けた。
1次試験は7月某日、松江市くにびきメッセにて筆記試験。
試験の3日前、左自然気胸発症。(たぶん)
軽症なので受診はしなかった。
じっとしていれば痛みはそんなにないけど、脳にしっかり酸素が行き届くのかだけを心配していた。
試験前日、松江市に宿泊した。
松江に向かう途中、いつもの神社で神頼みすることにした。
登り口に来ると、神社がある上のほうからトンカチトンカチと音が聞こえてきた。
改修工事をしているようだ。
参拝可能みたいなので、階段を上がった。少し左胸が痛む。
大工さんふたりが作業していた。
ふたりとも高齢のように見えた。
「(境内に)入ってもいいですか」と問うと、
「どうぞ。大丈夫ですよ。」と返事をもらった。
本殿前に進み、お賽銭を入れ、神様にお願い事をゴニョゴニョ。
(明日の試験、うまくいくようにお力添えをお願いします。なんならR1の助手席に乗って一緒に行きましょう。)
この「なんなら」の使い方も最近気になるところであるが、これはまた別の機会にしておこう。
本殿は瓦を葺き替え、壁もキレイになっている。
私が毎回入れるお賽銭が少しは貢献しているかもしれないと思うとちょっとうれしくなった。
帰り際に大工さんが、「今日だけで階段を三往復したけど、それだけでもう大変。ヘトヘト。」と言っていた。
私は、「そうですよね。200段くらいありそうですもんね。私も今上ってきただけで足がガクガクです。お疲れ様です。」と答えておいた。
心の中で、「本殿をキレイに改修してもらって、神様はさぞお喜びのことでしょう」と言いながらゆっくりと階段を下りた。
松江に入り、ホテルチェックインする前に夕食をとった。
学園の「たまき」。
ゲン担ぎのカツ丼とそばのセット。
夕食後、ホテルにチェックイン。
部屋に荷物を置いて落ち着いてから、ホテル一階のコンビニに朝食のパンを買いに行った。
まさかの、すべて売り切れ。ついてない。
グーグルマップで近くのコンビニを検索。
500m先にローソン。
往復1キロか…めんどくさいけど仕方なく徒歩で向かう。
左胸が痛みだしたのでペースを落とす。
明日が心配になりながらも、朝食を調達しゆっくりホテルに戻り就寝。
翌日(試験当日)、受付1時間前の9時からメッセ駐車場でスタンバイ。
最後の試験勉強をしながら受付開始を待った。
10時になり、メッセ突入。
受付の列に並び、カバンの中から受験票を取り出した時に気が付いた。
筆箱がない……………………
いや、大丈夫。手提げカバンに入れていないだけで、きっと車の中にある着替えとか入れている旅行バッグに間違えて入れたのだろう。とりあえず受付してから取りに行こう。
少し焦りながら急いで車に戻って筆箱を探すも、ない。
手提げカバンに常備している筆記用具は、シャーペン1本、3色ボールペン1本、蛍光ペン1本。
これでは試験を戦えない。
どうするか…。試験官に正直に話して借りるか…。
借りることはできても、もしかするとやばいやつだと認定されるおそれがある…。
受付終了時間まであと20分。それまでに着席していなければならない。
たしか近くにファミマがあったはず。
急いで向かう。
100m先くらいにあると思っていたコンビニ、そこになかった。
思い違いをしていた。もう一本向こうの通りだった。
さらに300mくらい先に見える。
こんなことなら車で出ればよかった。でももう戻っている時間もない。
この日の松江市の最高気温は31.2度。晴れ。
日射しが強く暑い。
やむをえず走り出すと、すぐに左胸が痛む。
なんとかコンビニにたどり着き、シャーペン、消しゴム、替え芯の、後に家宝となる「3種の神器」を購入。
すでに汗びっしょり。
太陽が照り付ける中、来た道400mをできる限り最速の走りで戻る。
なんとか時間内で戻れた。
もう誰も並んでいない受付の前を、「あ、トイレ行ってました~」の感じでしれっと通過し、自席へ。
会場内では、数百人の受験者が静かに開始を待っている。
私だけ息を切らして汗びっしょり。
イスと密着しているお尻の部分が特に気持ち悪い。
いいウォーミングアップになったぜ…と強がりを言いたいところだが、相当なハンデを負ってしまった。
試験開始まであと20分。
冷たいお茶をがぶ飲みし、呼吸を整え回復を図る。
汗を大量にかくと、塩分も摂取しないといけない。
思い出した。カバンの中に頂き物の塩がある。
ただの塩ではない。「神迎の塩」だ。シランケド
これでドーピングのごとくパワーアップできる。
開封!
やばい、アウト!アウト!
警察24時で見たことあるよ…
なんでアレと同じパケに入ってんのよ…
試験官に見つかったら連行されそうである。
こっそりコソコソひとつまみ、もうひとつまみ経口摂取。乱用はまずい。
薬物塩のおかげもあり、なんとか午前中を乗り切った。
お昼休憩時にも追加摂取し、14時半に無事試験終了。
帰り道、神様に報告するため神社に立ち寄る。
登り口付近に、昨日は気付かなかった立て看板があった。
あれ?神様留守だったのね…どおりで…orz
帰宅すると、テーブルの上に置き去りにされた筆箱を見つけた。
7月下旬、合格発表があった。
数々の試練を乗り越え、1次試験突破。
1か月後の2次試験に向けてしっかり準備をしないといけない。
やはり平日は疲れて全然勉強できない。
土日しか時間を確保できない中、阻害となる出来事がふたつあった。
ひとつは2泊3日の家族旅行。
もうひとつは、夏の甲子園。島根県代表大社高校の奮闘。
家族旅行は、どうせ1次も通らないだろうと見込んでいた妻が計画したものだった。
一生忘れない。
甲子園については、島根県代表校が勝ち上がることは滅多にない。
今年も1回戦の相手が常連校で選抜準優勝の報徳学園だったから、1回戦で負けちゃうんだろうなと思っていた。
ところが3勝を上げベスト8に入り、計4試合戦った。
島根県民にとっては、4試合なんて4年分だし、3勝なんて10年分の価値である。
楽しんでる余裕なんてないのに、テレビに釘付けとなっていた。
馬庭投手の感情、闘志むき出しのプレー、選手のひたむきな姿に心を打たれまくっていた。
特にベスト8をかけた早稲田実業戦。
9回裏に同点に追いつき、センターのタイムリーエラーを帳消しにした時点からもう泣きそうになって見ていた。
スクイズでサヨナラのチャンス。
早稲田実業の内野5人シフトの奇策で防がれ、延長突入。
タイブレークでも、お互い好守で得点を許さない。
1回戦からひとりで投げ続けている馬庭投手の肩の心配があるので勝っても負けても早く決着をつけてほしいけど、両チームのぶつかり合いをいつまでも見ていたいような複雑な感情。
延長11回裏、神バントと称される三塁線へのバント。
私には、転がるボールに地面に這いつくばって「フーッ!!」と息を吹きかける神の姿が見えた。
息が強すぎてボールが切れないだけでなく少し内側に戻ってきていた。
試験前の最後の土曜日を大社高校の応援に費やした。
落ちたらキミたちのせいだからねと言いながらも、勝手に戦友のように感じていた。
あきらめずに全力でひたむきにぶつかっていく、最後までやりきる姿勢に勇気をもらった。
この死闘は一生忘れない。
8月下旬の某日、松江市某所で行われた2次試験。
1次同様に前泊。
同様にたまきで夕食。

同じメニュー、同じ席でゲンを担ぐ。
面接試験では自分の全てをさらけ出した。
試験直前に神パワーの塩ドーピングをしたせいか、自分でも神ってると思うような返答をしていた。
2次試験も合格。
4月からの新生活を楽しみにしている。
おしまい。