新聞記事を読んで

毎月第一、第三日曜日、朝日新聞にGLOBEという日曜版がついてきます。その中にデザイナー和田智氏のインタビューが載っていました。こちらでも前半6割ほどを無料で読むことができます。



その中にグサッと突き刺さる言葉がありました。

>「誰もが奇抜なデザインを求めがちだが、大きく変えることが重要なのではない。心の中に入り込むことが大切だ」

>「デザインは、受け継がれてきた特徴を保たねばならない」

>「数カ月おきに目先をかえて、いいものが生まれるはずがない」



そして、和田氏がアウディに移って社長から受けた言葉

>「新しくてかっこいいが、僕は選ばない。サトシのデザインは軽いんだ」

和田氏は日産時代に、自分のデザインした車とドイツ車が並んだとき、自分のデザインの軽さを感じていたそうです。
この社長の一撃の後、デ・シルバ氏の助言を受け、アウディ本社隣の博物館に通い詰めて歴史を学び、1930年代のレースカーをヒントにシングルフレームグリルを完成させたとあります。



>欧州には数百年も前の建物や造形物が多い。単に革新的なデザインではなく、過去から積み上げたデザインに新しい解釈を吹き込むようにしない限り、歴史ある街では浮いてしまう。

日本において数百年の歴史ある建物は、神社・仏閣などごくごく一部で、風景のほとんどは築20-30年未満の何LDKというスペックだけの街並みばかりです。

日本の家屋が木造で火災に弱く、また地震大国であることから古い家屋は残りにくいですが、1990年代初頭に砲撃によって壊滅的被害を受けたクロアチアのドゥブロヴニクは同じ街並みを再建しています。やればできるのですが、私もそうなのですが、日本人は古いものを捨て去り、新しいものと入れ替えてしまう人種です。つまり「受け継がれた特徴を保つ」ことが苦手で、「流行」という目先の新しさを常に追いかけています。

そんな自分の生きてきた時間分だけの歴史しか感じない日本にいては、BMWにとって代わるようなデザインが描けるデザイナーは出ないでしょうし、そんなデザインを求める自動車メーカーのトップもいないでしょう。なんてったって世界一のT社のあの方がピンクのクルマにマジ顔なんですから。

でもそれは悪くないです。日本国内の受けはいいようですから。

むしろ和田氏のような方が、そしてそんな氏の言葉に感銘を受ける私のような者が、日本ではむしろ異端児です。