私の10代後半から数え切れない程に足を運び、これまた幾つもの思い出が生まれた場所でありますホテル西洋銀座が遂に昨日閉館を迎えてしまいました。
去年の今くらいに閉館が発表された時にはあまり実感を伴わなかったのですが、やはり営業終了が近付くに連れ感慨深いものがあり、最後の最後にお別れを告げる為に出掛けて参りました。

今から26年前、それこそバブル期に当時の日本では珍しかった「スモールラグジュアリーホテル」を標榜してオープンし、77室というコンパクトながらも極めてクオリティの高いサービスが印象的なホテルでした。今でこそ広く知られた「コンシェルジュ」や「バトラー」、「ソムリエ」という言葉を日本で最初に使ったのはこの西洋銀座だったのではないでしょうか。一度宿泊した顧客の好みは本当に細かな部分まで覚えていて、右利きか左利きかで室内の調度品の位置を変えたり、そばがらや羽など枕の中身だけで相当な種類がありました。
私自身、ここがオープンした頃はこの近辺に住んでいて、奥まったエントランスに停まっていた珍しい外車に目を奪われたものです。そして背伸びしてランチに訪れたりしましたが、銀座の喧騒を忘れさせるこの雰囲気が気に入って我が家の様々な節目で訪れるお気に入りの場所となりました。思えばウチの奥さんを最初に食事に誘ったのもここのレストランでした。
去年他界した母の最後の闘病中、永遠に訪れる事の無い退院の日を夢見て「退院したら西洋銀座でお祝いするよ」と元気付け、生涯最後の食事となったのはここのプリンであった事もまた思い出です。

2階にあるフランス料理のレペトワも魅力的ですが、ここは若い頃に背伸びをしてランチに通った思い出深いイタリアンのアトーレを訪れます。

アトーレ前菜の盛り合わせ
初夏を感じる爽やかなお味でした。

八百屋さん自慢の野菜スープ
具沢山のミネストローネです。

真鯛と帆立貝を詰めたラビオリ ウニのクリームソース
贅沢な中身に、これでもかという程の濃厚なソースです。

牛ホホ肉の赤ワイン煮込み
ナイフが不要なくらいに柔らかく煮込んだ一品でした。

アトーレクラシックティラミス
マスカルポーネチーズを使用していないので、濃い料理の後でもしつこくありません。
かなり長い滞在時間となりましたが、これが最後と思うとあっと言う間に時間が過ぎました。その後で館内を回ったのですが、色々なところに思い出が沢山残っています。

学生時代、初めて手にしたバイトの給料を持って家族への土産を買いにこのケーキショップを訪れたものです。

エントランス階段も最後は綺麗な生花でドレスアップです。
これまでも閉店したお気に入りのお店は沢山ありますが、これほど寂しく感じたのは今回が初めてかも知れません。今の世の中は何でもお気軽でリーズナブルなものに流れる風潮がありますが、若いうちのとびきりの思い出作りには、思いっきり背伸びする事も大切だと言う事を学んだように思います。
このホテルでの思い出は、永遠に忘れえぬ輝く記憶となりました。そんな素敵な記憶に彩を添えて下さった西洋銀座スタッフの皆さんには心からの感謝と、今後のご活躍をお祈り申し上げます。

最後の記念写真はスタッフの方もご一緒に入って下さいました。
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2013/06/01 06:18:31