ここを御覧の多くの方は、何らかのカタチで趣味人の方が多いのではと思います。そして私が気になるのは、その趣味は周囲に受け容れられているか否かの点にあります。
「俺はそんなの関係ねーぜ!」というロックな方は羨ましい限りなのでありますが、多くの場合は人に理解されないものこそが趣味と言えるような気がします。
かく申す私自身もそんな一人でありまして、スポーツカーというものに理解の無い奥さんに四苦八苦している最中であります。
そこで先ずは「百聞は一見にしかず」という訳で、現物に触れさせる事こそが一番の早道という事もあって、予約制で行われた三越自動車部のフェラーリ試乗会に出かけて参りました。この催しはイタリア展の一環で行われ、カリフォルニア、458スパイダー、FFの三車種を用意するという贅沢な企画でありました。
まずは朝の開店直後に458スパイダーに乗ってみましたが、以前に乗った458イタリアと同様の車でありますので、サクッと走ってみました。やはり現状で考えると一点の非の打ち所も無い素晴らしい車でありますが、サーキット等ハードな走行の機会が少なければスパイダーを選ぶべきと思いました。それはやはり「音」でありまして、この快音とより一体になれるスパイダーの真価を改めて確認しました。
次はFFですが、この車のサイズは全長4907mm、全幅1953mm、全高1379mm、ホイールベース2949mmという全幅が広い以外はメルセデスのEクラスあたりと同様のサイズを持ち、4WDでありながらセンターデフのない「4RM」というシステムのお陰で車重1790kgという重量に留まっています。そこに合わさる心臓はV12の6.3Lで660psという無敵のユニットで、最高速335km/hで0-100は3.7秒という文字通りのスーパーカーです。
まずは大きなドアを開けて乗り込むと、458のレーシーな雰囲気とはまた違う上質な空間が広がります。ポルトローナフラウ製のレザーの発色の良さは毎回感心しますが、これぞイタリアメイドの魅力なのでしょう。新型ベントレーコンチネンタルGTと同様に電動で前に出てくるシートベルトを締め、シリンダーに差し込んだキーを捻ってステアリングセンターの赤いボタンと押すとV12は目を覚まします。
右側のパドルでインジケーター内の表示が「1」になった事を確認してソロソロと発進します。既にこの辺りで458シリーズとは異なるキャラクターを意識しますが、まるでサルーンのような静寂さです。
中央通りに出て、シグナルが青に変わった時にこの車が跳ね馬をエンブレムに持つ特別な存在である事に改めて気付きます。更に回転を上げると、458シリーズよりもF1に近い高らかなエンジンサウンドを奏で始めます。よく「フェラーリはV12に限る」と耳にしますが、その最大の理由はここにあるのではと思う程に素晴らしい音です。そして低速では静寂を保ち、現在生産されているV12エンジンの中にあっても肌理の細かさはピカイチです。
昨今ではシリンダー数を減らして過給でパワーを稼ぐユニットが増えました。確かに効率の面から過給技術の向上で不足を感じる車はありません。しかしこうした出来の良い大排気量の自然吸気エンジンに乗ると、実に気持ちの良いものです。
乗り心地に関しても458のレーシーな硬さではないものの、これまたサルーンも顔負けなほどに快適です。この大パワーをコントロールする上で、ある程度の電子制御デバイスが顔を出す事もありますが、その介入のタイミングが実に自然なところも好印象です。このFF、とにかく走りに関して死角がありません。1950mmの全幅も、運転して10分程度で慣れて来ます。
少なくとも車両感覚の掴み易さはポルシェパナメーラより上だと思われます。
私的に発表直後はこのスタイルに多少違和感を持ちました。が、嘗て英国の貴族が狩猟用に既存のクーペを改造して作ったシューティングブレークと考えれば納得出来ます。きっとコレのルーフにスキー板を載せて雪道にGo!という使い方も大いにアリでしょう。
さて、今回の奥さんにフェラーリを実際に触れさせるという目的は充分に果たせたようです。どうもフェラーリに関してはネガな印象が強かったようですが、今回の試乗で内容も伴った存在である事でプラスの印象に変わったようです。4WDで12気筒で4座というとベントレーのコンチネンタルGTあたりが浮かんで来ます。価格や成り立ちも異なる2台ですが、このどちらかを選ぶとしたら…かなり難しい選択になりそうです。
最近ではコーンズの専売ではなくなったフェラーリですが、やはりこの車にはこのステッカーが素敵です!
コーンズさん、ありがとうございました。
Posted at 2012/04/16 14:29:31 | |
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