人が車に求めるものは十人十色で、どれが正解なのかは私には皆目見当が付きません。
ただ大きく分類するならば「実用性」と「趣味性」、この二つの柱のどちら寄りかで分類する事は可能だと思います。今回お話の中心になるアウディに関しても今までは実用性という軸に近く、それを実現する為の術は他のどのメーカーよりも高いものを持ったメーカーという印象を持っておりました。
その反面、車に抒情的な面を重視する私などはアウディの完璧主義的な部分を理詰めに感じておりまして、自分のプライベートカーに選ぶ可能性はあまり考えた事がありませんでした。
が、今回試乗した新型A8がこれまでの理数系的な印象のみならず、抒情的とまで言わないものの「和み」を感じる乗り味を身に付けて登場した事に大きな変化を感じたのでありました。
今回じっくり試乗したのは、V8の4000ターボを搭載した60と呼ばれるモデルです。

あまり変わり映えが無いようにも見えますが、面の構成などはガラリと変わりました。

全長5170mm、全幅1945mm、全高1470mm、ホイールベース3000mmとかなり大きくなりました。

「クールビューティー」という言葉が相応しい印象です。最近はとにかく無理矢理クーペに成りたいセダンが多い中で、これはちゃんとセダンしてます。

リアフェンダーの一部をドアで隠すなどは荒天時の乗降の際に衣服を汚さない配慮か、単なる生産性の向上かは謎ですが、綺麗なリアビューです。

最近は真一文字に光るテールランプが流行しているようですね。

私的にはこの6ライトのピラーのデザインがとても綺麗に思います。同じ6ライトでも新型クラウンやレクサスLSのそれとは違い、やはりデザインに関して一日の長を感じます。

内装もクールビューティーで、このクラスに相応しいだけの贅沢感は持っていると思います。このあたりの緻密なクリーンさは流石であります。

大ぶりのシートですが、体の小さな女性が乗ってもキチンとホールドする良く出来たシートです。この個体にはエアマッサージシートが装着されておりましたが、そのマッサージシートの出来はフライングスパーを凌ぐ出来栄えで驚きました。

一見4座に見える後席ですが、5人乗りです。

広さに関しては何の不満もありません。

最近はLEDのインテリアライトが増えましたが、これもふんだんに使用されておりました。

メーター内にもナビが表示されますが、私的にこれは過剰に感じます。

ナビやエアコン、オーディオが集中された画面もようやく完成された感があります。同じVWグループのフライングスパーのこの部分に関しては思わずアホかと言いたくなる完成度の低さでしたが、操作性も視認性に関しても納得出来るものに進化しています。ただジャガーやベントレーのアナログ時計に慣れた目からすると、この虫眼鏡で見なくては分からないかのように小さなデジタル時計しか無いのは到底頂けません。

460ps/5500rpmのV8ですが、これに8速ATが組み合わされます。
動力性能に関しては何の不満も無く、今や貴重なV8の潤沢なトルク感は気持ちの良いものです。この車もスポーツやコンフォートなど色々なモード選択が可能ですが、ここはオートで車に任せてゆったり走るのが正解なのでしょう。ただ昨今の流れで8速ATのアクセルを離した際の空走感は嘗てのヨーロッパ車の面影を微塵も感じられません。ここは燃費対策で致し方ないのかなと思いますが…

前後共にエアサスペンションで、265/40R20というレアなサイズが装着されています。
で、ここが一番の進化を感じた部分でありまして、以前のように車重で路面の凹凸を踏み潰してフラット感を出すようなこのクラス特有の印象が無くなって、どちらかと言えばジャガーXJ的な軽いフットワークで路面の凹凸をいなす軽快なものに変わっておりました。恐らくV6搭載のモデルは更にこの傾向が顕著なものと思われますが、積極的にドライバーが楽しめる軽快さを身に着けたのは個人的にポイント高く思います。

奥行きは相当ありますが、幅がやや狭いのはフライングスパーと同じです。トランクのヒンジがパンタグラフ式にも関わらずオート機能付きのフライングスパーはヒンジの分が無いだけ広いですが。
そんな訳で昨今はどの車も好戦的なキャラクターに変貌する中で、この新型A8に関してはこのクラスに求められる要素を満たして余りある魅力的なモデルに進化していました。私的には本来レクサスLSが目指すところはここだったと思う程でしたが、理数系一辺倒だった人がヴァイオリンを趣味にしていたのを知った時のような新しい驚きがありました。
実はこの後でV6モデルにも乗ってみましたが、ドライバーズカーとしては断然V6が良いと思います。年配ユーザーやショーファーカーにはV8がオススメですが。
少し褒め過ぎてしまいましたので、多少の苦言を…

あまり見えない部分ではありますが、シートのコンソール側の部分にレザーではなく布が使われていました。これは以前キャデラックでも書きましたが、興醒めであります。

右ハンドル車は相変わらず左足の置き場が狭いです。最近は輸入車も右ハンドルのみになる車種が増えましたが、このA8は左ハンドルもオーダー可能でした。かと言って今更左ハンドルをオーダーするほうがネガな面が多いので、この辺は改善の余地があるようです。
加えてこのクラスをニューカーでオーダーする富裕層には関係ないのですが、2年落ちで走行少ないA8の中古車が1/3以下の価格で出ているリセールバリューの悪さに二の足を踏むところです。それでも良いセダンが欲しい人がこれを買って、10年くらい付き合うには良いクルマだと思うのですが…
次の社有車はこれも良いな…とか本気で思います。
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2019/01/20 13:06:52