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イイね!
2024年06月02日

最後のハイパワー内燃機

初夏です。

最近では気候の変化でクールビズがGW前にスライドするケースもありますが、私が中学生の頃は6月1日が衣替えの日で、重い詰襟の学ランから半袖の開襟シャツになり、学帽には白い綿の覆いが付いた記憶があります。

が、私は開襟シャツは着ないで、暑くても我慢して兄が買ってくれたブルックスブラザーズのボタンダウンの長袖を着て、髪の長いピアノを弾く少年を演じるあざといガキだった訳ですが(笑)

そして家に帰ると応接間のソファが籐で編んだ椅子になり、その敷物も麻になっていたり変化が見られて「ああ、夏になるんだな」と季節の移り変わりを感じたものです。

東京という場所はあまり季節感を感じない場所だと思うのですが、そんな中でも浅草や上野という下町ではその折々の風物詩から季節を感じる事が出来るものです。暑い時期に蝉の声を聴きながら歩いていても老舗の大店が並ぶ一角では打ち水がされて玄関のタタキに敷き詰められた玉石が光る様子を見るだけでも涼を感じますし、朝顔祭りや花火大会を心待ちにした頃が本当に懐かしく思うのです。

で、花火大会も終わりに近づく頃になるとその日の真打登場とばかりに大輪の花火が盛大に打ち上がりますが、全ての花火が終わって漆黒の夜空が戻った瞬間にはその対比で何とも言えない寂しさを感じるものです。でも花火大会は「また来年」という事があるのがまた良いものですが。

そんな消え去る直前に煌めく大輪の花火を連想させる車に乗って来ました。

招待された場所はド平日のグランドハイアット東京です。この日は既に生産の終了がアナウンスされたジャガーFタイプのV8スーパーチャージャーモデルを体感出来る最後の機会という事でした。こんなド平日の日中からそんな目的で集まる人とは一体どんな人達なのだろう?(オメーもだろと言う突っ込みは無しで!)

このグランドハイアットの内装は今のジャガー&ランドローバー的なモダンさがリンクしており、この場所が試乗会に多用されるのも何となく理解出来ます。

このイベントに他ブランドで乗り付けるのは無粋に感じたのでXJを引っ張り出して六本木に向かい、そこで対面したのは…

ジャガーFタイプR75 P575クーペでありました。
簡単に概要をご紹介すると…
ボディサイズ:全長×全幅×全高=4470×1925×1315mm
ホイールベース:2620mm
車重:1670kg
駆動方式:4WD
エンジン:5リッターV8 DOHC 32バルブ スーパーチャージャー
トランスミッション:8段AT
最高出力:575PS(423kW)/6500rpm
最大トルク:700N・m(71.4kgf・m)/3500rpm
タイヤ:(前)265/35ZR20 99Y/(後)305/30ZR20 99Y
という車で、文字通りジャガーが生産する最後のハイパワー内燃機です。

この車の初期モデルには何度か乗った事がありますが、その時の印象は結構スパルタンだったのを記憶しております。その記憶を思い出して走り出してみると良い意味でその記憶が塗り替えられる好印象だったのでした。

グランドハイアットのエントランスを出て麻布十番の一般道を通り首都高の飯倉入口を目指して大人しく走ってみると、明らかにボディが鍛えられたようで硬い中にも良好な乗り心地を見せます。これはこのタイヤサイズを履きながらも大したものです。

高速に入りモードを切り替えて踏み込んでみると速いのは当然ですが、驚くべきはそこではなく2WDモデルとの足回りの個性の違いで、英国ライトウェイトスポーツ特有のミズスマシ的な身のこなしで軽く走るFRに比べると、基本的には同様な味付けの中にも4WD車は安定方向に振られていた事でしょうか。つまり4WDはジャガーや英国車のお得意様のみならず多くの顧客に門戸を開いた乗り易さを感じました。これなら東京圏でも乗り易いでしょう。

例えば大谷翔平氏がアンバサダー的なポルシェに対し、この車の持つキャラクターやスペックからはどことなくヒール的な印象を持ちます。で、それはとても好ましい部分であり、この内容は十二分にそれらの好敵手と拮抗できる内容を持ち、斜に構えたアンチヒーロー的なキャラからはステータス性を求めるユーザーを拒絶するかの潔さを感じます。この車を選んだ人は間違いなく「好きだから乗っている」人だけでしょう。

で、このハイパワー内燃機からは花火大会が終わる直前に上がる大輪の花火的な寂しさを感じる訳で、その鼓動や咆哮という部分は絶対にEVには望めない部分であります。


で、いつまでも遊んでいる訳にもいかずにオフィスに戻るべくXJに乗り込むと、そのハンドリングや身のこなしからはジャガーの血統というものを感じる訳です。これは古くはXK120やE-Typeがあり、そこからF-Typeへの強い脈絡を感じるのです。同じようにMkⅡサルーンから現代のXJサルーンへ繋がる流れも同様であり、これは今後EV専業となるジャガーにとっても大きな財産であります。

相当な車重になるEVに軽快さを再現可能かは謎ですが、そのパワーユニットが電動化されてもこの美点であるハンドリングは忘れないで欲しいものです。

ただ先日発表されたジャガーEVのスタイルは全く受け入れられませんが。


昨日近所に買い物に出た際、W140のオーナーさんとお話しました。

何と35年乗り続けたワンオーナー車で「この後のはスタイルや質感がイマイチで買換えられなくなっちゃったんですよ」とのお言葉が印象的でした。

私も或る意味同様ですが、これから先はこんな人が増えるような気がします。
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Posted at 2024/06/02 14:35:15

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この記事へのコメント

2024年6月2日 17:49
いい色ですね。買うならこの色ですね。

昨夜V12AMR運転中にF-typeRと並走する機会があったのですが、音的にもF-typeのほうが悪そう?に聞こえました(こちらも相当な音だったのですが...)。Mk IIの時代から銀行強盗のクルマとか、007の映画でも悪役はジャガーだったりと、走り好きのバッドボーイのクルマというイメージは根底にありますね。
かといってアストンが善良とはいえず、むしろ孤高の存在で、それぞれに独特のキャラと雰囲気があって好きです。

これが本当の最後の内燃機関になり、英国車の反骨精神というか骨太なロックスピリットを示す墓標になってしまうのは非常に残念です。
コメントへの返答
2024年6月2日 20:07
丁度「この色良いですね」と聞いたら、何とかグリーンと呼ばれるカラーだそうで、Ian*さんのアストンと近いかなと思いました。因みに内装はホワイトで流石英国車です。

思うにアストンは貴族に愛された車で、ジャガーは貴族の下のジェントリー階層に愛された出自があります。が、その多少の卑屈さこそがやんちゃさを許した理由で、模倣がいつしか本物に昇華した一例ではないでしょうか。

ロックは元々反逆から始まっていて、このF-Typeを見ていると昨今では珍しいほどにワルそうな車で、そこにロックを感じました。

よくEVは充分速いとか言われますがクルマにとって大切なのはそれだけでは無い訳で、こういう内燃機関の車に乗るとやっぱり素晴らしいものがありました。
2024年6月2日 23:14
こんばんは。
575馬力ですか!うーん、もう怖いですよ…汗

35年前ベンツ、ちょうどうちの911と同い年なんですね。今日もバンさんに新車時に装着したカセットデッキが動かなくなったので、直してもらったところでした。キカイな年代は直せる可能性が高いのでいいですね。
コメントへの返答
2024年6月2日 23:57
こんばんは。

この575psは無理をしている印象が無くて自然な感じでした。しかしこの数字を思い出すと怖くなりますね。

このW140は初期モデルでサイドガラスが二重のものですね。私的にはやはりW126が最強ですが、各部のコストの掛け方はW140が頂点なのかも知れません。

プロフィール

「元白鵬の宮城野親方の相撲協会退職が決まったと言う。確かに調子に乗った感は否めなかったものの現役時代の活躍を思うと実に寂しく思います。千代の富士、曙、若貴、朝青龍、白鵬、大乃国…記憶に残る大横綱が冷遇を受け、北勝海の八角理事長が絶大な権力を持つ今の相撲協会には違和感を覚えます。」
何シテル?   05/31 07:13
東京は日本橋を中心に活動しております。 趣味としての車は輸入車贔屓で、中でも英国車を好みます。また実用品としての車はトヨタ&レクサスを愛用し、好き嫌いを抜...
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