先日こちらでご紹介しました浅草「金寿司」ですが、本当に色々な方から思わぬ反響を頂きました。
「食べログ」を見るとキワモノ的な扱いで書かれた口コミが多く、それも恐らく大多数の普通の人なら当たり前の事だろうと思います。が、読めば「店も汚くてシャリも麦茶のような色で云々…」というような内容もありましたが、味の好き嫌いや接客などは別にして「赤酢も知らないような奴が食い物の事を書くな!」と私は思うのです。
まあ私の場合は自身を異端だと自認しておりますが、そんな異端の書いた内容に良い意味での反響を頂戴しました事は大変嬉しく思います。
さて、金寿司、アンヂェラスと続きました浅草シリーズですが、この2店はもともと池波正太郎さんのエッセイ等で知名度も高いお店だったと思います。そこで今回はあまり色々な媒体に登場せずに長年の間ひっそりと営業されている和菓子のお店であります。

「浅草柳小路」と呼ばれる小路ですが、そのお店は金寿司からもアンヂェラスからも徒歩2分です。
観光客で溢れる仲見世とは正反対で、ごく普通の生活道路的なこの小道が好きです。

その一角に今回の和菓子「千茶」があります。このお店も私が幼稚園くらいからのお付き合いで、夏に行ってもいつも涼しげな記憶があります。それは物理的にエアコンの涼しさではなく、打ち水で感じる視覚的な涼しさと表現することが出来ます。

客が3人入ったら足の寄り場も無くなる程コンパクトなお店ですが、この凛とした空気は大店の和菓子屋でも感じない気合を感じます。

和菓子の陳列もさることながら、お店に置いてある小物ひとつに至るまで良い雰囲気を感じます。

今の代のご主人はものすごい趣味人で、この茶道具ひとつ見ても只者ではない雰囲気を感じます。

このお店は茶会で使うお菓子が多く、饅頭などは扱っていません。目的はこの栗蒸し羊羹なのですが、本当のオススメは夏季の水羊羹なのです。

こちらにお邪魔すると、ついついお道具などのお話で長居をしてしまうのですが、ある時は普通のお茶を変わった淹れ方で出して下さったり、全国品評会一位の凄いお茶だったりとバラエティに富んでいて楽しみだったりします。

この朱の器、どちらも明治期のもので左が京漆器で右が輪島塗です。どちらも素晴らしいものですが、絵の細かさや華やかさは京漆器のほうが繊細に感じます。ご主人曰く「京漆器は晴の日に使うもので、輪島は日常使いのお道具」との事で、その使用目的が違うので絵の雰囲気も違うのは当然だそうです。

同じく明治期の九谷ですが、私的にこの九谷の赤ってものすごく印象的に感じます。柿右衛門もそうですが、日本には沢山の「赤」があり、その焼き方や表現は海外の陶器には見られないものだと思います。以前横浜元町のお店で聞いたのですが、現在は環境の問題から赤の顔料が変わってしまい、非常に表現が困難であるようです。
実はこの「赤」のお話は次回以降の布石のつもりなのですが、話を元に戻すと、こんな器の話が出るとものすごく敷居の高いお店に思われるかも知れません。が、そこは浅草なので敷居の高さは一切ありませんので念の為。
ただこのお店は私的に本当にとっておきなので、正直あまり騒がしい客人にはご遠慮願いたいです。
Posted at 2016/12/14 18:03:29 | |
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