お若い方には馴染みの無い言葉かも知れませんが、「バタ臭い」という言葉があります。
これは西洋を感じさせるものに対して違和感を持っていた時代の日本人独特の言い回しであり、彫の深い顔なども「バタ臭い顔」等と言われていました。
言葉の起源は文字通り西洋料理に使われるバターの香りからのもので、想像ですが明治時代頃から言われていたのかなと思います。その時代にはまだまだ西洋料理などはごく一部の階層の限られた人のみが口にするもので、ごく一般的な日本人が本格的に西洋料理に親しむのは昭和に入って戦争が終わって何年も経った頃のお話です。
今でこそ世界中のどんな食材でも日本で手に入らないものはほぼ皆無となりましたが、それも考えてみれば平成に入った頃のお話であります。そこで思うのは日本の洋食黎明期に本格的な食材が手に入らず、代用品を工夫して見事な料理を作り上げた帝国ホテルの村上信夫シェフやホテルオークラの小野正吉シェフがいかに偉大だったかと思うのです。
さて、話は変わりますが…
クラウンエステートの用件で近所のトヨタディーラーに寄った際、新型のシエンタが展示されておりました。

最近は発表になっても現物が来ないケースが多いのですが、こちらはキチンと展示されています。
これはコンパクトミニバンというジャンルにカテゴライズされるのかと思いますが、良い意味で件の「バタ臭さ」を感じるセンスの良さを感じました。
自分にはあまり縁の無いジャンルではありますが、この種の車に大切なものはパッケージングとスタイルだと思います。正直なところ走行性能などは普通に走りさえすればある程度は見切っても問題無い要素だと考えます。
そんな中でこのイメージカラーになっている「アーバンカーキ」と言われるカラーや、トヨタ特有のプレスラインを多用せずにシンプルな面の優しさを残したスタイルからはどことなくフランス車的な印象があります。同時に「同じメーカーでアルファードも作ってるんだよね」と複雑な気分にもなりますが。

コンパクトクラスはインパネにもファブリックを用いるものが増えましたが、これも良いと思います。

私はごく一部のスポーツモデル以外は黒内装を嫌いますが、この車のファブリックはグレーで柔らかい印象です。そして最近のトヨタでは珍しく色違いでカーキのオプションもあるようです。(それを選択した場合はBピラー外観がブラックではなくボディ色になるのもポイント高いです)
この車でお値段は乗り出し300万円オーバー位がMAXと思われますが、その金額を投資する人に対して「この車を買うと、こんな楽しい生活が待ってますよ」とイメージさせるものを感じました。また外車贔屓かいと言われる事を承知で申すなら、この楽しい生活を想像させるという部分が日本車コンパクトに著しく欠けている要素で、シルバーカラーの社用車で時間に追われた営業マンがぶっ飛ばす姿や、農家のお嫁さんがJAに行く道具としての姿しか連想出来ないものが大半であります。
例えばイタリアやフランスのコンパクトには「楽しい生活」を連想させてくれる何かを強く感じるもので、このシエンタからも僅かながらそんなバタ臭さを感じた事は良い意味での意外性を感じました。
少なくとも新型クラウンの数百倍シエンタが魅力的に見えました。
Posted at 2022/09/04 11:56:58 | |
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