車ブログで 車語らず モノ語り
一句w
この前、ハードオフをうろついてたら
ジャンクかごの中にこんなのが転がっていた。
パチモンが跋扈するなかで、燦然と輝くリンゴのエムブレム、
そして、ケーブルに刻印されたシリアルナンバー。

Apple EarPods…
紛れもなく、正規品です。
300円。
いや、いやいや、それは値付け放棄してるやろ毎度のようにwww
というわけで捕獲してきたわけですが、正直驚きましたね。
こういうものは「信者効果」で評判がいいのだろうとタカを括ってたんですが
実際に鳴らしてみて一言
「
畏れ入りました _(⌒(_`ω、)_ 」
そもそも用途として「ユニット移植」が主眼となるので、分解記事を調べてみたんですが
振動板からして、安価なポリエステルフィルムじゃないんですね。
なんと「ペーパーパルプコーティング」されている。擬似ペーパーコーン。
つまり、ドライバユニットに余計なコストをわざわざ掛けているということ。
素材の内部減衰特性などが最も音響振動板に適しているのは、今でも「紙」です。
これが、外から見ただけでは解らない「アップルの本気」のひとつ。
(実際に製作施工してるのはOEM大手「フォスター」社だと予想していますが、OEM先と協議の上そういう指定をする…ということ自体が本気っちゅうことですぜ)
さらに、ユニット移植のために実際に内部を開けてみて、二度驚いた。
「そもそもケーブルが本体とリジッドに固定されていて、ユニットを引き抜いて別のケーブルに取り付けることが、基本出来ない」
この原因となっている、ケーブル固定具を強引に剥ぐってみて、さらに驚いた。
「ケーブル固定具は、ケーブルを完全に飲み込んだ状態で樹脂整形されており、この固定具がイヤホンハウジング内部の空間密閉と、低音補償ダクトのパイプ形成のため、ハウジングに完全に接着されている」
軟質なABSか、硬質ラバーに近似した素材で組まれている。
これが、図らずも(または狙った通りなのか)ハウジングの硬質ABS材のもつ固有振動を打ち消す制震材の役割を果たしている。
耳に付けたまま、ハウジングを爪で軽く叩いてみても、カチカチという安っぽいプラスチックの音がしない。コンコンと重い音がする。つまりハウジングが安っぽい共鳴音を持たないということ。
…従来品のように、ハウジングケースにコード通して半田付けしてパチパチと組み込んでハイ終了、なんてものじゃなかった。
どんだけコスト掛けたんだよこれ…
ていうか製造コストが定価に反映されてないんじゃないのかこれ…ハウジング通してドライバに繫いだ状態のケーブルを後から整形材に封入固定したものをおもむろに接着固定って、並大抵の事じゃないぞ…。
これが、開けてみてはじめて痛感する「アップルの本気」。
──とりあえず頭抱える。
これでは通常型イヤホンとしての汎用性はあっても、従来用意しているiPod専用ネックストラップへの転用が出来ない。
考えた結果、辿り着いた結論
「ケーブル固定具にドリルで穴開けよう」
つまり、もともと通ってるケーブルを、ドリルで掻き出してしまって
貫通ホールを開けてしまおう、というわけ。
意を決して筐体をもう一度開ける。

一体整形にすら見えてしまう筐体は、よく見るとハウジングとドライバ(含むホーン部)に分かれており、うっすらと継ぎ目が見える。
実にタイトな実装となっており、分離するには半ば切り開くような強引さで刃物を差し込み、こじ開けてゆくしかない。
(この時点で、組み直しても元の質感には戻らない)
で、開けたところ

なにやらハウジングからケーブルが生えている部分、上げ底のように見える。
これが

ケーブル固定具であり、なおかつ柄杓の柄のようなパイプ部分へ音波を導く「低音補償ダクトへの導入部分」。
(空気取入口のようなものから深い溝が切ってあるのがそれ)
外すのがものすごく大変。正直、破損覚悟。
元のケーブルをすっぱり切り捨て、その道筋を辿らせるように

ドリルで貫通する。

そこへ新規のケーブルを通せばいいわけだ。
但し、これも基本的に「何度も施工は出来ない」。
新たに挿入したケーブルも、この固定具に完全接着固定する必要があるのだ。
結び目で抜け止めをしようにも、そんなものが入るクリアランスはハウジング内にはない。くだんの固定具が容積を殆ど満たしているうえに、唯一結び目の入りそうなところには中音域用のダクトが開いていて、これを塞いでしまう。
やり直しは出来ないものとして、また、ユニットに何かあればケーブルごと切り詰めることになるものと割り切って、慎重に、慎重に工作。
こうして、ありえへん流用工作が完成した。

既に絶版、プリンストン製ドックコネクタ一体型ネックストラップ(USB接続可能)
http://news.kakaku.com/prdnews/cd=kaden/ctcd=2046/id=6600/imageno=0/
iPod nanoの第4世代専用品で、ほぼ転用が利かないため
ヘッドホン部撤去のうえ眠っていたのだが
これからこいつらの出番が出来そうなので、こちらへ移植したかった次第。
(その本来の用途は、また後日に)
さて、安定したので、じっくり聴き込んでみよう。
ウチには前々から「ゼンハイザー」製のインナーイヤ型が各種揃っているが
これらとは違う方向で「いい音」だ。
ゼンハイは重く、線が太く、力強い押し出し感がある。
こちらはそれよりも、いくぶんスッキリと爽快に鳴る。
低音から高音までレンジは広くフラットで、解像感も充分ある。
なにより、聴感上ほぼ対等に勝負できてるのが驚きだ。価格帯も位置づけも、まるで違うというのに。
その音を実現している大きな要素が、この

本体に三箇所刻まれた、スリット状のダクト。(低音用は柄の部分の先端に二箇所開いている)
上の穴を塞ぐと、中低音がスッポ抜け、厚みのない軽薄な音になる。
下の穴はさらに致命的で、低音が全く響かなくなる。
両方塞ぐと、100均のイヤホンでもここまで酷くないかもしれないぞという音になる。
この手のダクトは何処のメーカにも多く見られるのだが、ここまでハッキリと差が解るものは、なかなかない。
これもまた、外から見て解る「アップルの本気」のひとつだ。相当追い込んだチューニングを施されているとみえ、それらはこのスリットダクトの配置に依存しているのだ。
さて最後に
この写真、黒いイヤホンカバーを被っているのだが

実はこれが、最後の総仕上げ。
EarPodsの評価が真っ二つに割れたのは、その特有の形状が
「装着する人の耳に合致するかどうか」に大きな要因があったと思われる。
600人の被検体に装着テストをしてもらったうえでの形状決定だというものの、
こうした人間工学…エルゴノミクスデザインというものは、10人居たら10人が全く異なる結果を出すことも珍しくない。
少なくとも、個人差の大きい「耳」という空間に、リジッドな固体物を当て嵌めるというのは、並大抵の事じゃない。
カナル型の大きな利点はここにある。イヤパッドで封鎖して、耳腔と直結してしまえば、システムが完結してしまうのだ。(そのかわりステレオ感の拡がりに欠け、狭い音場が頭の中で鳴り響いているような感じになりやすい。あと、あれは基本的に野外で使うものじゃない。危ない。)
で、誰が考えついたか
このハウジング形状設計を無に帰してしまう(と言ったら言い過ぎなんだが)
「100均で買えるスポンジ製イヤパッドを掛けて、見た目普通のインナーイヤホンの状態にする」
という装着方があるのだ。
これが効果覿面w
持ってる人、やってみてください。劇的に音が安定するはずです。
とにかく装着の精度に依存してるようなイヤホンなので、歩いてるだけで…いや、普通に装着してるだけで動いてしまい、本来の性能が出なくなってしまう。
これをスポンジ製パッドで補っているわけだ。
結果、ホーン部の出口は安定して耳腔を向き、カナルと違って外部と遮断することなく耳と一体化する。
ここまで来ると、国内メーカの1万円以下程度のものの大部分が追随できない…と評されるのも頷ける音になる。
見た目がちょっとアレですが(アップルのアイデンティティが…w)
100円で劇的な改善があるので、オススメです。
たかがアップルの付属品…という固定観念なしに、一度使ってみて欲しい。
きっと8割の方が、純粋に「いい音だ」と思ってくれるだろう。
但し、パチモンに注意。