【はじめに】
参院選、舛添問題そして都知事選、と話題には事欠かない今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか?
私は日々調査分析、戦略オプション立案とブリーフィングで一日が終わっています。今日も午後からずっと某ホテルでそんなことやってたわけで…そんなことしてるともう、資料作成やらプレゼンでお腹一杯、いい加減文書綴るのなんて嫌気がさしてます。
しかし、日本を取り巻く内外の事態が雪だるま式に悪化していくなか、〝綴らない自分〟に自己嫌悪しているのも確かで…だから今回、久しぶりにブログ書きますね。
といっても、不評の経済ネタだけど。
【Brexitとは?】
ブレグジット。旬のなかの旬、お値段は時価w
今回はこれについて触れておこうと思います。
(メディアでさんざん採り上げられてますが)ブレグジットとは端的に言えば、
EUの域内生産性の1割くらいに影響のある、EU内でも特権だらけの大英帝国が、
「なんで敗戦国(ドイツ)の言うこと聞いて、敗戦国(イタリア・スペイン)や雑魚(ポルトガルやギリシア)の面倒見なきゃアカンの?」
「なんで遠いシリアの難民世話せにゃならんの!?」
「馬鹿馬鹿しい、もうEUやめるわ!!」
と、上記三段論法を展開して、極めて無責任でワガママな不満を実行することをいいます(シリアの問題はイギリスに大いに責任あり=サイクス・ピコ協定&マクマホン協定)。
で、(国内の不満の声に耐え切れなくなった)キャメロンが、このBrexitを実行するかどうか「多数決(国民投票)で決めるわ!」って言っちゃったのが、2月20日のEU首脳会議。
そしてその投票日が今日(23日)で、結果判明が明後日の午後3時くらいなわけ。
その趨勢は、思ったより、というかかなりの勢いで、離脱派がはびこってるのが確認できている。
折りしもフランスで(難民に紛れた)ISの工作員がテロやったり、ドイツで女の子が沢山レ○プされたりする今日この頃、各国ともただでさえ社会保障資金が足りないのに、他国救ったりするのに自国の税金投入ニダ!なんて言われたら…そりゃあ「世界はウリから孤立すればいいニダ!」ってなるわな、心情的に。
参考に数値で言うと、イギリスのEU拠出金は2014年度で500万€、そのリターンは対して250万€。ああ…半分しか恩恵無いのね。
↓イギリスの所得と富の偏在…確かに、これでカネを他国や難民に振り分けられたら、怒るわな。
【Brexit発動の悪影響】
で、もしBrexitが実行されたら、よいことは…ないな、日本としては。
その予兆は、様々な経済指標に現れてる。
例えば6月16日、英Evening Standard紙において離脱派が残留派を6ポイントも上回った、と報じられると、
(ひとりで生きていけるアメリカ除いて)市場は一気にリスクオフに動いた。株が大幅下落したところへ、ヘッジファンドのシステムトレードがこれに輪をかけた。(安全資産視される)円と金、そして長期米国債への買いが一気に進んだ。
日本ではさらにマイナス金利の悪影響で、国債に流れる筈のお金も円転され、えらいことになった。株価なんて一時14000円台になったし。
でも、これは予兆。その背景にあるのは危機感からくるパニック。
予兆から投機筋がパニくるのは毎度のことだけど、今回のコレは、ちょっと真面目に見てやる必要がある。
理由は、Brexitが産み出すクライシスが、とんでもないから。
だから、市場の動きを笑って見過ごすのもためらわれる。
ここではBrexit発動後の世界について、そのシミュレーションをしてみよう。
1.もし今日の投票でBrexitが発動したら…
①.発動後1ヶ月。
日本国内。
為替だけど、下手したら100円切ってるかも。株は輸出株中心に今よりもっと売られ(日経平均14500円割り)、外国人投資家を中心にすごい円買いに晒されてることだろう。
少なくとも一時的に1ドルは100円台前半、1ユーロ110円にはなるだろうね。
そうなると為替介入もあるけど、規模の割りに効果は長続きしない(大勢に飲み込まれる)。結局緩和したお金は金融期間内で滞留して、市場には流れない。金利はもっと下がるだけにとどまる(これを経済学では“流動性の罠”という)。
②.そしてその後は…実はシナリオは3つくらいあるんだけど、書き出したら凄いことになるから、今回は最悪のシナリオについてのみ綴ってみる。
それはブレグジット発動後にイギリスが事態を収拾できなかった場合、最悪世界はどうなるか、ということ。
結論から先に言うと、EU崩壊と世界恐慌、最悪の場合は戦争ですな。
A.まずは張本人=イギリス。
以下、政府発表。
成長率は-3.6%。失業者は2年で100万人増加。賃金も下落、ポンドは12%下落…インフレの嵐ですな。
これを鎮めるため英政府は補正予算組むが、財源は増税、そして社会保障費と治安分野の歳出削減…スタグフレーションですな。
ここでイギリスと言う国の信用は失墜です。最初は一旦最低になった金利は、この時点で上昇に転じます。
ポンドは140円を割り、加えてイギリス輸出企業はEUからの関税で大ダメージ。おまけにスコットランドがイギリスから抜けるかもしれない。
ロータス?ああ、BREハイコムはすぐに手放して倒産でしょ!?
B.これを横目で見ていたEUでは、離脱のドミノが起きる。
チェコ、国民戦線が躍進したフランス、税負担の高すぎるスウェーデン、国内治安ガタガタのドイツ、借金でがんじがらめのスペイン、ローマ市長が独立急先鋒になったイタリア、他にもオーストリア、オランダ。
EUの盟主たるドイツも、こう↓です。
これを黙って見ていられない連中も裏で跳梁跋扈する。コイツ等を買い漁る
( `ハ´)と原油で揺さぶるロシアの姿が目に浮かぶ。欧州が中露の傀儡になりかねない。
自由貿易協定は企画倒れになり、ユーロ暴落、域内企業の資産デフレが起きる。購買力も低下して経済が凍ってしまう。域内成長率も数年はマイナスになる。
失業者が一杯出て治安も悪化する。特に金融機関の債券価格が暴落する。
C.そして世界。
欧州金融“大”危機が飛び火したアメリカでは、取り付け騒ぎが起こり、EUに融 資していた或いはEUのハイ・イールド債などを保有していた投資家がひっくり返る。
( `ハ´)やインドでは融資元が大幅に減って倒産が続出する。北京政府は再びバブルを起こしてこれをごまかそうとするが、結果貧富の差は拡大、SDRで取り返しがつかなくなったインフレと相まって社会不安がついに爆発、ガス抜きとシーレーンと資源確保に、人民解放軍が九段線から尖閣あるいは沖縄まで一気に進出する。
行き場を失った原油や資源も下落するだろうし、特に買い手を失う中南米では食い詰めた貧困層の不満が爆発して、政治体制の崩壊があちこちで起きるかもしれない。五輪後のブラジルなんか、政治空白を突いてクーデターもありうるかも。
欧州から多額の投資を受けていたASEAN経済共同体も、金づるが途切れてボロボロになるでしょ。そしてシナはそれを機に紙幣増刷、地域の分断を謀ると思われ。
ん?南北トンスルランド?どうでもいいわwww
D.再び日本。
日本では補正予算と金融緩和が展開されるが焼け石に水、欧州依存の高い輸出企業が大ダメージを受け、当然金融機関の不良債権も膨らむ。
下請け以下も含め倒産が続発する。なにせ日本の“外需変動への影響度”は、輸出依存度の低さなど問題にならないのだから。(参考:『<水準>と<振れ>は区別しよう-池尾和人 』http://agora-web.jp/archives/653021.html)
…ま、他にも沢山あるけど、この先書いたら3日はかかるからここらでやめとく。
要は、Brexitという事象は、世界全体に激震を走らせるに十分な可能性を持っている、ということ。
現在の世界経済は、先進国の中央銀行が牽引してる。その母体が破綻すると、被害は世界中に及ぶ。
経済による相互依存体制と金融グローバリズムってのは、ホント、ダメージコントロールが難しいんです。
一方、よいことと言ったら…離脱マンセー!の大英帝国懐古主義者の溜飲が下がるくらいか。
【Brexitなくてよかった場合】
Brexitなければ…世界経済面では、短期的には基本現状維持。
市場の不透明感が晴れて、金融面でも企業の設備投資も、ちょっとやりやすくなる。
欧州では消費者心理も改善されて、お金が遣われる。だからビジネスがちょっぴり活性化して、EUの成長率もちょっとよくなる。
日本ではちょっと円安(1$107円くらい)になりやすくなって、輸出株主導で株価も16000円後半台回復。マイナス金利も手伝って設備投資が少し持ち直すかな。
【Brexitない最大の恩恵】
寧ろ大事なのは、日本の政治体制。
Brexitがなければ、日本経済は当面現状からの悪化はない。
年内アメリカはあと2回、利上げやると言ってる。
その第1回タイミングである秋(9月頃?)に、ポリシーミックス(金融と財政)同時発動をやれるようにして内需喚起のきっかけを作れば、(あくまで当面だけど)我が国経済は上向く。
そうすれば現安倍政権の勢力は維持され、(参院選勝ってれば)衆院解散総選挙、憲法改正で日本の安全保障を担保する道が開かれる。
【現状】
で、午前4時現在(笑)…いいんだよ、このブログ、今日の仕事の下準備にもなってるんだから♪
イギリス、何とか離脱は回避できそう。
オッズだけどブレグジット、離脱が30%に低下。世論調査も逆転したし、朝まで何も無ければ、イギリスはほぼ残留確定だ。為替もその線で動いてる。
いまのところ安心。
【所感】
16日のジョー・コックス議員殺害事件。巷ではこれがきっかけで、残留派の勢力が高まったと言われている。
その意味では彼女の死は無駄ではなかったのだと思いたい。彼女の死は、結果として世界を救う福音となるのかもしれない。同時に(亡くなった彼女とそのご家族には申し訳ないけれど)実はあの事件、残留派の工作だったのでは?、と勘ぐってしまう自分もいる。
“感傷”によって、無秩序に移民を受け入れた罰。
その災禍を乗り越えるための、ひとりの母の死。
私は公人として、そして世界の安定を望む者としては、勿論EU護持は賛成だ。
が、同時に私人としては、離脱派の気持ちもわかる。
今回の問題の根底には、EUが政治的リアリズムに徹し切れなかった空気があるのだと思う。
マーストリヒトが間違いだったとは思わん。
しかし、難民問題という、地域の安全保障に関わる問題を、ポピュリズムによって解決しようとしたEUの脳内には、今後においても看過し得ない問題が残っていると思う。
国家とは、政治とは一体、誰のためにあるのか?
それを考えよ、短期視点ではなく、長期的な視点で。
勉強して、いろいろ見聞きして、また学んで。
何より想像力を働かせて。
今回のこと、本当に教訓にせねばならない。
ポピュリズムに流されると、人はその先の災厄を考えなくなる。
その恐ろしさその危うさを、私たちは絶対に政治に持ち込んではならない。
おしまい