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その白いクルマは全体的には僕の記憶にあるRX-8のようだ。大きさも同じくらいだろうか。でも「かもめマーク」はついていない。
フロントバンパー下半分の大きなグリルと薄っぺらいヘッドライトの組み合わせが「となりのトトロ」に登場するネコバスが目を細めて笑っているようにもみえる。
フロントウィンドウの付け根からボンネットの半分くらいまで巨大な穴があいていて、さらに左右のリアフェンダーにはエアインテークが設けられているので、相当なカスタマイズを施したRX-8のようにも思えたが、そうではないようだ。

助手席側にまわってみると観音開きの「フリースタイルドア」があり、当時の記憶を呼び起した。
ちょっと面倒くさいときもあったけど、全開にしたときの気持ち良さは今でも記憶に残っている。
ただ前後のフェンダーは盛り上がりが強調されているような気もするし、フロントフェンダーにはエアアウトレットがあったはずだけど無くなっている。
新たに追加されたリアフェンダーのエアインテークはダミーでははく、実際に機能しているみたいだ。
アルミホイールはエンケイの19インチ、タイヤはミシュランのPS4を履いている。

そのままリアにまわると、センター1本出しのマフラーに目がいく。出口はお約束のローター型だ。本来はそこにリアフォグがあったはずだけど・・・。
トランクにも「かもめマーク」と「RX-8」のエンブレムはなかったけど、記憶にあるRX-8の後姿の雰囲気がそこにはあった。

運転席側にまわってコクピットを覗こうとしたとき、はじめてそこにひとがいることに気付いた。

「お、親父！？」


（続く）

RX-8は僕が一番好きなクルマだ。
RX-8のリアシートで育った僕は、「大きくなったらコイツを運転するんだ」と思っていた。
けど、オヤジはRX-8を手放してしまった。あんなに大切にしていたのに。
なぜだか僕には分からなかった。そして、それ以上に悲しかった。僕もオヤジのRX-8が大好きだったのだ。

そんな僕も運転免許を取得した。そしてバイトも始めた。もちろんRX-8を買うためだ。
あのころオヤジは「マニュアルが欲しい」が口癖だった。だから僕はマニュアルのRX-8を買うつもりだ。できればボディーカラーは白がいい。ただ、程度のいいタマが少ないのがネックだ。

バイトから帰ると、家の車庫に見慣れない白いクルマが停まっているのがチラっと見えた。低いシルエットからスポーツカーなのは想像できた。
「誰か来てるのかな」
興味本位で車庫に向かう。

僕は絶句した。

RX-8だけどRX-8じゃない白いクルマが僕を見ていた。

（続く）

当初の目的とは別のスーパーで買い物を済ませ、私がアクセラに荷物を積んでいる間に、奥様は隣のドラッグストアでお買い物です。

荷物を積み終え、車内で奥様を待ちます。

先ほど再会した「はっちん」のことを考えていました。

カーステレオからは嵐の「マイガール」（娘が嵐好きなので）が流れてきました。

歌詞の内容と「はっちん」との思い出が妙にシンクロして、気が付いたら泣いていました。
こどものように（大のおとなが情けないな～）。

ドラッグストアから帰ってきた奥様が驚いた様子で、
「どうしたの？具合でも悪いの？」
と訊いてきましたが、

「何でもないよ。何でもないけど泣けてきた」
と意味不明な返答をしました。

「あのね、隣の車のオジサンが不思議そうに見てるよ～。夫婦喧嘩で旦那が泣かされているようにしかみえないよね（笑）」


超カッコワル～。

目的のスーパーへの道はいつも混雑するので、私はあまりそのスーパーへは行きたくありませんでした。
しかし奥様が（特に理由が無いのに）ココに行きたいと言うので、その道を走っていたわけなのですが、おかげで「はっちん」に逢えました。

案の定、はっちんとすれ違ってすぐに、渋滞にハマりました。いつもより混雑しています。なかなか進みません。
「道が込んでいるから、別のスーパーにしようよ」と奥様。
結局、その道を左折して別のスーパーに行きました。

今思えば、私よりウチの奥様のほうが「はっちん」を運転していた時間が圧倒的に長かったのです。
私以上に「はっちん」の気配を感じ取っていたのかもしれません。
奥様に感謝。

奥様と二人で近所のスーパーに行く途中のことです。

前方（対向車線）から強い意識を感じました。

白いRX-8がこちらを見ています。

「はっちん」です！

間違いありません。

すれ違うまでの僅かな時間でしたが、「はっちん」と話ができた気がしました。